第1章 楽園にやって来た鬼達

 その日レミは朝遅く目覚め、静かにブランチを食していた。
 ゆったりしたピンクのパジャマは薄い生地だが、せいぜい朝の光に彼女の体のシルエットをにわかに黒く現わすのみであった。最近買ったもので、今ではレミのお気に入りだ。
 水子地蔵と観音菩薩に手を合わせる日課は相変わらずだが、しかし彼女は随分立ち直った。
 ブランチを食べながら、テーブルに広げられているのはアルバイト情報誌。喫茶店のウェイトレスの募集欄に赤いペンで丸印がついている。食事補助・交通費付き、朝11時から夜8時まで、給料面はそこそこ。
 食べ終わった後、レミは募集先に電話をしようとした。だが受話器に電話を掛けようとして、ふと部屋が暗いのが気になった。そういえば、窓のカーテンをずっと締め切っていた。西向きなために日光は直接入って来ないのだが、しかしレミには外の光がすごく明るく感じた。
 今まで外の明るさを不快に感じていたが、今日は開けることで随分心が晴れやかになるだろう。レミはそう思ってゆっくりとカーテンに手を伸ばす。
 掴んで思いっきり開こうとすると、玄関の呼び鈴が鳴った。
 電気やガスの支払いはすべて口座引き落としになっているから、集金は来ないはずだ。それにここに住んでからというもの、宗教や保険の勧誘からただの来客に至るまで、この部屋を訪ねる人間は一人としていなかった。
 レミは少しの恐怖と好奇心を抱きながら、おそるおそるドアに向かう。覗き穴から相手の顔を見ようとしたが、ドアにはその類いはついていなかった。
「……どなたですか?」
 少し怯えた声で、レミは見えぬ相手に問いかけた。
「あ、どうも。休みもらって藤吾先輩に挨拶に来ましたぁ」
 耳をそばだててみると、相手方は複数いるようだった。何やらがさごそして落ち着きなさそうだ。
 だが特に疑ることなくレミはドアを開けた。
 そこにいたのは三人の男であった。三人ともレミとそう年は違わないような顔をしているが、その体は彼女より一回りも二回りも大きい。藤吾の後輩であることは本当のようだ。服装もごく普通のストリートファッションで、一人が贈答用の包装をした箱を抱え、別の一人は紙袋をぶら下げている。セールスマンの類いでもなさそうだ。
 三人は、ドアを開けたレミを見て驚いた様子だ。何しろ自分と同じ位の年代の顔をした、パジャマ姿の女が応対しているのだ。
「あ、あのぅ、先輩の……奥さんで?」
 なんら荷物を持っていない男が、目を丸くしながら質問した。
「ええ、そうですが?」
 なんでそんなことを聞くのか、と首をかしげん口調でそう答えるレミ。だが考えてみれば、驚くのも無理はないかもしれない。藤吾は三十五歳だった。普通なら年が離れていても五歳ぐらいが普通だろう。それが、こんなに若い未亡人が家から出て来たのだ。
 三人はどよめき立つ。
「あの……立ち話もなんですから、中にどうぞ」
 レミは半開きにしていたドアを大きく開け放つと、三人を中に入れた。それから自分はいそいそと上着を羽織る。
 ダイニングルームに入って来た三人は、部屋を見回して何かに気付いた様子である。
「あれ、先輩の遺影とか位牌とかは何処にあるんスか?」
「置いていないんですよ」
 あっさり答えた中にも、彼女の藤吾に対する嫌悪感がにじみ出る。
 何のことはない、強引な婚姻と肉体関係を強いた藤吾の顔を、例え彼が死んだ後であったとしても、もう一生見る気にはなれなかったのだ。それ以上に、自分の周りから藤吾の臭いのするもの全てを排除したいレミは、遺影も位牌も部屋に置くのが耐えられなかった。
「弱ったっスねぇ。折角先輩の好きな地酒持って来たのに」
「ごめんなさいね。何なら私がお骨納めたお寺に持っていきますけど」
「いや、それは僕らがしますんで」
 それから会話は止まってしまった。レミは小さな座卓を押し入れから出し、三人にそれを囲ませるように座らせると、コップにお茶を汲んで差し出した。
「奥さん、失礼スけど年は?」
「十九です」
 またも三人は騒ぐ。「色めきたった」と言ってもいいかもしれない。暫くして、さっき何も荷物を持っていなかった男(ひょっとしたらレミに喋っているのは彼一人かもしれない)が言う。
「無茶苦茶年近いじゃないスか。俺十七っすよ。こいつはタメで、この太ったやつは一つ下」
 年齢を紹介された男達はそれぞれレミに軽く頭を下げる。
 今度は、「タメ」と紹介された男がレミに問いかける。
「でも、未成年で結婚するとなると、結構大変でしょう」
「ええ、まあ……」
 曖昧に答えて、レミは逃げるようにキッチンに向かった。皿にビスケットを開けると、三人の前にそれを差し出す。
「馴初めとか、どんな感じなんですか?」
「いや、それは……」
「やっぱいきなり押し倒されて――」
「お前何言ってるんだよ、バカ」
「バカって何だよ、あ?」
「今どきいきなり押し倒されてそんまま結婚するやつなんかいるかよ。ねぇ」
「……はぁ」
 レミはまたあいまいな答えを返す。
「ほら見ろよ」
「何を偉そうに」
「んだとぉ? 最近フラれたばっかりのお前に言われたかぁねえよ」
 十七歳同士は、こんな調子で話を盛り上げていった。時々飛び出す問いかけにレミが遠慮がちに、時には曖昧にそれに答えるといった塩梅であった。しかし、彼女もだんだんと男達に打ち解けはじめ、いつしか彼等と肩を並べて会話を楽しみはじめた。そういえば彼女自身、藤吾が側にいる間こうして他人と話すことはなかった。そして、いつしか笑い顔を見せるレミがそこにいた。
 彼等は会話が弾んだところで名を名乗る。さっきからずっと喋り通しの男はトシといい、タメの男はケン。二人より一つ下の、さっきからあまり口を開いていない男はトドと呼ばれていた。トシとケンはそう変わりない体型をしているのだが、トシはやや痩せているのに対し、ケンは心無しか腹が出ている。一方トドの方は、年上である二人より体が大きいのだが、筋肉よりぜい肉が体にまとわりついているといった方がいいかもしれない。
「そうだ、レミさんにもプレゼント持って来たんですよ」
 会話で盛り上がっている時、突然トシが思い出したように言った。レミは、何故自分にプレゼントを渡す必要があるのか脈絡分からずに戸惑う。だがトシは彼女に構うことなく、トドに目配せした。
 トドは側に置いていた紙袋から、リボンを巻いた小さな箱を取り出す。いかにもプレゼントといった感じの包装なのだが、それを見てますますレミは戸惑う。
「あの、そんな……結構です」
「いいからいいから。今ここで開けてみて下さいよ」
 トシは促すようにレミの手に箱を握らせる。
 仕方なく、彼女は箱を座卓に置くとリボンを解き、包装紙を開ける。何も描いていない、ピンクの箱。おそるおそる開けてみると、そこには奇異な物が入っていた。
 細長いヘビの卵のような形の物体とリモコンっぽい細長い箱が、螺旋状に巻かれた細いコードで繋がっている。全くのピンク色をしたそれはビニール袋に入っており、それ以外には何も箱に入っていない。
 何か分からず、レミはただ呆然とそれを見つめる。
 口元にひきつった笑いを浮かべてヒソヒソと言い合っているトシとケン。
「あのぉ、これ何ですか?」
 全く分からない様子でレミはトシに聞いた。
「え? 御存じないですかレミさん」
「ええ」
「じゃあ使い方をお教えしますよ」爽やかな笑顔でそう言うトシ。だが、ケンに放った言葉はレミの背筋に嫌な悪寒を走らせた。
「ケン、作戦だ。こいつの手を押さえろ!」
 レミが逃げるより早く、ケンが彼女の両手首を後ろに回してがっちり掴んだ。
「や、いや! 何するんですか」
「だから使い方を教えるんじゃないスかぁ」
 箱からそのピンク色の機材を手に取り、トシは細長い箱のツマミの一つに指をスライドさせる。ブゥゥゥゥ……と小さな音をたてて、蛇の卵の物体が小さく震えはじめた。
「これはぁ」蛇の卵を持って、トシは座卓越しにレミの前に身を乗り出すと、彼女の胸に手を伸ばす。「こう使うんスよぉ」
 着ている上着に潜り込み、トシの手はやさしくもしっかりとレミの左乳房をパジャマの布地越しにつかみ取った。蛇の卵を、その握られた乳房の先端に押しやった。
「や、あぁあんっ!」
 払おうにも手は押さえ付けられており、レミはせいぜい体を揺すって抵抗するのがやっとだった。
「ほぉら、なかなかいいっしょ? レミさん早速コレ気に入ってくれて嬉しいっスよ。でもそんなに体揺すって喜んでもらうと、うまいことローター押さえられないっスよ」
「いや! あぁ……喜んでなんか、……ひゃっあ!」
 レミの大きな乳首をトシがつまみ上げたのだ。そこをローターで軽く撫でるようにねちっこくこねくり回す。
「やめて……お願い、いやっ! あ、はぁ、んんんっ!」
「やめてやめてって言う割には、結構いい具合に感じてるじゃないスかぁ。乳首ピンコ立ちだし」
 「苦しそうだから、はだけちゃいますよぉ」とトシは片手でパジャマの胸元のボタンを取り、一気に開いた。
 ノーブラだった。白い胸が弾けるように外に顔を出す。トシの言った通り、乳輪の割に大きな乳首は硬くなっていて、指の腹で押し込むとまるで機械のボタンのように中にめり込む。
「あぅ、あぁあ!」
 痛がるレミを気づかうことなく、トシはにたにた笑いながら、乳首を押し込む指をぴくぴくと震わせはじめる。たちまち乳房全体が指の動きにシンクロするようにたぷたぷと揺れはじめる。
「いいっスよぉレミさん、おっぱいは柔らかくてしっとり冷たいのに、乳首はカチコチで熱いっスよ」
「やめて、痛いから、痛いから……ひぅぅう!」
 ようやくトシは指を離す。めり込んでいた固い乳首が乳房の柔らかい肉からぴょこんと姿を現わす。
 そこを、トシは指で弾く。
「んあぁっ!」
 目に涙を滲ませて叫ぶレミ。
 しかしトシはこれで終わらせない。
「じゃ、次は右のおっぱいいきますか」
「やぁ、やめて! ――あああぁっ!」
 今度は右の乳首に直にローターが当てられる。
「はあぁああ、あぁあ……」
「切なく喘ぎますねぇレミさん。やっぱ藤吾のゴリ野郎が死んでから随分タマってたみたいっスね」
「な、なんで……ひう……何でこんなことするの?」
「まだわかんないんスかぁレミさん? ……あんたの体が目的でここに来たんだよ!」
 右の乳首が、左より強く押し込まれる。
「ひぎぃぃぃ!」
「ちょっとした仕返しっすよ。あんたの夫のゴリには随分してやられたもんでね。あんたが俺たちにマワされているのを、あいつの遺影の前で見せつけてやりたかったんだよ」
「わ、私だってあいつのことなんか――」
「うっせえよ、お前は大人しくよがってろってんだよぉ!」
「ひぎゃああああ!」
 思いきり乳首を押し込んでから、トシはようやく指を抜く。表面に出て来た乳首を、左同様に指で弾く。だが、それで終わらせず、乳首からはだけた両乳首を両手指で弾き続ける。
「やああぁ、ああっ、あっ、あひっ」
 指で弾かれて翻弄するレミの乳首。充血して硬直している乳首に、トシの容赦ない責めは苦痛以外の何ものでもないはずなのに、その硬さは全く衰えることはない。どころか――
「おいおいレミさんよぉ、どんどんシコってきてんぞ。そんなに気持ちいいか、おらおら」
「ああっ、違う、痛い、ちが、――ひっ、ひぃ、ひっ!」
 背中をくねらせて、乳首の痛さに堪えるレミ。だがその背中に、硬くて長くて熱いものがパジャマ越しに押し付けられた。
 手首を掴むのをやめて腕で羽交い締めにしたケンが、開いたファスナーからビンビンにそそり立つ剛直を背筋に這わせて擦り付けているのだ。
「あぁたまんねー、そんなに動かれるとレミさん、ピュッピュ出ちゃうよぉ」
 出てくるものが何であるか、レミにも理解できた。
「や、やめて! パジャマ汚さないで、最近買ったばかりなのぉ!」
「汚れたら脱いだらしまいだろうよ、あぁ!」
「そんな、いやあああああ!」
 だが、レミの涙ながらの絶叫も叶わず、ケンは剛直をビクンと震わせると、粘っこくて生暖かい液体をパジャマの薄い布地にべったりとまき散らした。
「ああ……やぁあああ」
 レミの鼻に青臭い精液の臭いが入ってくる。新しい気持ちで生活を送ろうと買ってきたパジャマがものの数日で男の汚らわしい液体に汚されたことに、彼女は悲しみの余り泣きじゃくる。
「こんなのいやぁ! 折角買って来たのに! これからちゃんとした生活送ろうと思ってたのに……うう、いやぁ……」
「何わけわかんないこと俺の耳もとで叫んでんだよ!」トシは逆ギレして、レミに怒鳴り返した。「汚れたのがいやなら脱いだらいいだろうが! おら、脱がしてやるよオラ」
 彼が乱暴にパジャマをつかみ上げると、さらに彼女は泣きじゃくって抵抗する。
「やめて! 破れちゃうから乱暴しないでぇ!」
「るせぇ指図するなぁ!」
 パジャマが、上着ともども派手に引き裂かれる。トシは物に取り憑かれたかのように乱暴にレミの服を引き裂く。たちまちピンクのパジャマがただの布地に成り下がる。
 そこには、白いショーツしか履いていない裸のレミがいた。
「いやぁ……こんなのいや……」
 レミは、逃げたい気持ちで一杯であった。

   ‡

「ほら、ここが新居だ。上がれ」
 藤吾に気押されるように、レミは部屋の中に入っていく。
 靴を脱いでおどおどした様子で部屋に上がると、いきなり藤吾にスカートをまくられる。
「きゃっ!」
 股の辺りが濡れそぼってヨレヨレになったGストリングがあらわになる。
 藤吾はすかさず、何も覆われていない彼女の臀肉をつかみ上げる。
「いつ触ってもやわらけぇケツだよなぁ」
「や、やめて下さい……」
「おいレミ。お前、着ている服を全部脱げ」
「え? ――」
「いいから脱げ! お前はこれから何も着るな! ずっと裸でいるんだ!」
 レミは「そんな、ひどい……」と涙ぐみながらも、反抗一つせずに藤吾の目の前でおそるおそる制服を脱ぎはじめる。めくられたスカートのホックを外して、足下にばさりと落とす。それからネクタイ、ブレザー、ベスト、シャツ……と脱いでいく。その手指の動きは、繊細な中にもためらいを感じさせる。
 Gストリングとブラジャーだけを身につけただけの格好になったレミは、藤吾に向き直る。
 だが、彼は首を横に振る。
「全部脱げといっただろうが」
「そんな……下着まで――」
「お前今まで俺に何度も裸見せてるだろ。今さらなにいっちょ前に恥ずかしがってんだよ! ほら、脱げ」
 ――レミの手で、手間取りつつも白いブラジャーのホックが外され、ゆっくり脚を動かしてGストリングがずり下ろされる。
 そこに立っているのは、顔こそ上品に見えるが、腕を組んで胸元を隠しつつも股間を自分の愛液でぬめらせた変態少女であった。藤吾の視線の前にさらされて、レミは縮こまる。
「あぁ……許して……こんな恥ずかしい思いするの、やだ……」
「何を言ってる。妻が夫の言うことが聞けなくてどうする。いいか、お前は俺をその裸で迎え入れるんだ。それからその裸で俺を慰めて、その裸で妻の本分を全うするんだ」
 ようやく藤吾は靴を脱いで部屋に上がった。縮こまるレミの肩を片手でぐっと押さえ込み、強引にその場に座り込ませた。
「予行練習だ。俺が仕事から帰って来た時は、正座で三つ指ついて『おかえりなさい』だ。それから……」
 話を続けながら、座り込んだレミの背中に手をかけてさらに床に押さえ付ける。だが、ちょうどレミが座って礼をする格好になった段になって、彼は少し考えた。……だが後に続けた言葉は、苦し紛れの無理難題であった。
「ええい、妻なら夫を喜ばす言葉の一つ二つポンポン出るだろ?」
 無理矢理妻に仕立てられた女が、そうも簡単に夫を喜ばせる言葉など思いつけるわけがない。しかし、藤吾の迫力に押さえ付けられたレミが、彼の言葉に反論することなどできなかった。
「さあほら、やってみろ」
 気合いを入れるためか、一発レミの白い尻にスパンと平手を打つと、彼女の前に立つ。
 レミは戸惑いを見せながらも、言われた通りにするしかなかった。脚を畳み直して姿勢を正して正座する。
 本当に日本人形のような、均整のとれた裸体が藤吾の前にあった。柔らかい丸みを帯た豊かな乳房、本当に自然に磨きこまれたウエストのくびれ、足裏の上に柔らかく載っている尻、折り畳まれて窮屈そうな太ももの肉。
 藤吾は無気味に微笑む。その目はまさしく所有物を見る目だ。
「ほら、早くやってみろ」
 彼の口調にも本来の凄みが薄れていた。しかしそれに変わって子供の残酷な期待感のようなものが滲み出ていた。
 それを不快に思いながらも、しかしレミは怖くてそれを表情に出せない。
 ゆっくりと両手を前に出すと、薬指と中指と人さし指の先を揃えて床につく。腕を曲げて、レミはゆっくりと上体を倒す。長い髪が、白くて細い背中からこぼれて腋に落ちていく。
 それから再び上体を上げる。
「……おかえりなさい。あの……」夫を喜ばせる言葉。言わねばならないが、思い付かない。
「……御飯にしますか、お風呂にしますか?」
 少しの時間、レミが考えに考えて口にした言葉。それはオーソドックスなものだ。テレビドラマでもマンガでも使われる妻の言葉。
 だが藤吾は満足しなかった。
「あぁ?」
 彼はレミの髪を鷲掴みにしてぐっと上に引っ張った。
「ひぃい、痛い!」
「お前そんなので俺が喜ぶとか思ってるのかぁ? 全く頭の血の巡りの悪いやつだ。じゃあちゃんとお手本教えてやるから、今日はそれを言ってみろ。耳貸せや」
 レミが動く前に、藤吾は彼女の髪を荒々しく引っ張りあげて身を屈める自分自身の口に耳を近付けさせる。その耳に小声で「お手本」を注ぎ込むと、ぱっと手を離す。
「じゃ、もう一回だ」
 崩れるように床に倒れるレミに構わず、藤吾は促す。
 レミは正座の姿勢を正すと、さっきやったように三つ指をついて一礼する。それから上体を起こして口を開く。
「……お帰りなさい……、あの……今日から私はあなたの妻になります。だから……あなたの太くて大きいオチンポで私のいやらしいオマンコを貫いて、いつもヒクついている私の子宮をスペルマでお腹が膨らむくらいに一杯にしてください。……そうされると私、とっても嬉しくて、その……嬉しくて、いつもアソコを濡らしてます……」
「脈絡のない挨拶だな。でもまぁいいだろう」
 藤吾はそう言うと、ズボンのファスナーを下げ、奥から雄々しくそそり立つ赤黒い男根を引っ張り出した。既にその亀頭の頂きはカウパー腺液で濡れてぬらぬらと照り輝いている。
「いいか、そういう言葉を毎日毎日考えるんだ。同じこと言ったら承知しねぇからな。ほら、ごほうびだ。丁寧に舐めな」
 突き出される藤吾の男根。それは今までにもレミの肉唇を貫き続けた禍々しい肉の牙。レミは、それを称えるようにうやうやしく手指に握り、舌でなめ回し、口に含まないといけないのだ。「ごほうび」ではない。これもまた彼女のノルマなのだ。
 男根の熱気と臭気にむせそうになりながら、レミはその舌を伸ばして、開いた傘の裏辺りを掃除するようになぞる。それから唇も使ってその茎にしゃぶりつき、むらなく唾をまぶす。その後、鈴口にキスをして、大きく開いた口に男根をくわえこむ。
 ねぷ、ぐぷちゅと大きな音を立てながら、口の中の舌を動かして男根の味をしゃぶる。
 苦しそうにしながらも、必死にフェラチオをするレミの頭を、藤吾は愛おしそうに両手で撫でる。
「お前はいい妻になれるぜ……」
「ぐむっん……」
 レミは彼の言を肯定するかのように、前後に首を振り立てはじめた。彼女の口角から唾がこぼれていく。

   ‡

 レミの顔は、二本の肉棒でサンドイッチにされていた。一本はカウパー腺液で濡れそぼっていて、もう一本は白濁とした精液で汚れていた。
 トシとケンの肉棒は、レミの頬の上でうねうねと動き、その怒張をさらにこわばらせる。
「うらやましいよなぁ、二本のチンポを頬擦りできてよぉ」
 抵抗はしていたが、藤吾との嫌な思い出が沸き起こってしまったために力が入らない。どけようと肉棒を掴んだ両手は、二人をさらに興奮させるだけであった。
 もう二人の臨界はすぐそこまで迫っていた。腰の動きはだんだんと早まり、擦り付ける力もだんだんと強くなってくる。その熱気はレミの頬に伝わっていたし、増してくる臭気は鼻に伝わってくる。
「だ、だめ! お願いだから、もうやめてぇ!」
「やめられっかよ。ああくそぉ、出る、出る……」
「俺もまた出るぅう、おおお、スペルマ顔に出してやるぅ」
 激しく動く肉棒の間でレミの顔が歪み、翻弄する。
「ああやめて、お願いだから――あああっ!」
 その顔に、白濁とした液体が弾けた。さらに出てくる二人のスペルマに、レミの顔はたちまち精液でべたべたに汚されていく。
 完全に二人の肉棒が萎え切った時には、赤い唇が白濁に埋もれてしまうほどに、レミの顔は大量のスペルマにすっかり覆われてしまった。一部は顎から首筋や胸元にまできわどく垂れていく。
「……すっげーきもちいいぜ、レミさんよぉ」
 トシが嘲る。
 レミの目から涙が湧き、顔にまとわりついたスペルマに混じる。
「うあああああぁ……」
 彼女は床に突っ伏して泣いてしまった。

 

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