第三章 決心、あるいは屈服

 飯を作れと尻を叩かれ、レミは裸でキッチンに向かっていた。下着も何もつけておらず、股間も白濁の粘液でしとどに濡れて汚れたままだ。
 食事とは言っても、大したものはつくらない。一昨日作った味噌汁を暖め、持て余して冷蔵庫に入れていた冷や飯を電子レンジで温めるだけだ。そう時間のかかるものでもない。
 一通り温めて茶椀によそおうと、座卓に置く。
 座卓にはトシとケンとトドが、トランクス一丁の姿であぐらをかいていた。見ればケンはレミの体を見てむっくりとトランクスでテントを張っている。「ゴリにも裸で料理作ってたのかよ」と言われ、彼女はケンの股間から目を反らし、まるで彼の問いに恥じらうようにいそいそとキッチンに戻り、後片付けをした。
 その後ろ姿を、三人は舐めるように眺める。
 すきっと背筋が通った胴は細いくせに、尻は大きくてふくよかだ。だが互いに微妙なバランスで均整を保っているのは、彼女の裸の魅力たりえる。
 そうして、座卓での食事が始まる。三人の男が御飯と味噌汁を飲んでいる間、レミはそばでじっと立ったまま。男達が食べているのを見つめながら、レミはキュルルルルと腹の虫を鳴かせてしまった。
「おいおい、下品に腹鳴らしたりして下品な女だぜ」
「遠慮しなくても食わしてやるよ、口移しでな、うへへ」
「け、結構です」
 レミは全身に鳥肌を立たせる。トシやケンが今そこにあるパサパサした飯を口に含んで噛み潰し、さらに自分達の唾を混ぜこんでそのまま自分の口に押し込むのを想像して、悪寒が走ったのだ。
 その様子を見て、二人は少し考える。思惑ありげの薄ら笑いが彼等の顔に浮かぶ。
「……ははぁ、そういうことか。おい、どうやらレミさんは俺たちのスペルマが飲みたいらしい」
 ケンが意地悪そうにそう言うと、トシがそれに調子を合わせるようにゆっくりとトランクスを脱ぐ。あきれたことに、日が昇っている間、それこそ何度も子宮に注ぎ込んだにも関わらず、彼の肉棒をビンビンに屹立している。
「いいぜぇ、レミさんなら幾らでも飲ませてやっていいぜぇ。――ただなぁ、さすがにヤリ過ぎでいい加減股の所がいてぇんだよな。ちょっと根元とキンタマをマッサージしてもらわんと」
 ほれ、と彼はレミの前に自分の雄々しい性器を突き出す。青臭さが強く漂う。言われた通りにしようと手指を肉棒の根元に持っていこうとした時、トシは一喝する。
「手は使うな! 口と舌で吸い付くようにやってみな」
 仕方なく、レミは彼の根元に口をつけた。ツボを押す要領で、尖らせた舌を強く突きつけながらちゅぷちゅぷと吸い付く。根元が突かれるたび、吸われる度に、トシの肉棒は卑猥に揺れる。
 それから彼女の唇はゆっくりと、命令されることなく陰嚢に触れる。口を開くと、その皺だらけの皮の袋の片方を吸い込むようにくわえこんだ。柔らかい、だが中に少し柔らかい玉を秘めたその袋を、レミは唾液に濡れそぼった舌でねろねとと転がし、時々飲み込まんばかりに吸い込む。
「ぐぉ、なかなかなテク持ってるじゃん……さすが人妻……くおぉ、タマの袋の筋が引っ張られて気持ちいいぃ」
 ちゅちゅっと引っ張るように吸い付いて、じゅぽんと栓の抜けたような音をたてて濡れそぼった陰嚢の片側を吐き出す。今度はもう片方を優しく唇ではみながら口に入れる。
「もう……そろそろ来る……、しゃぶれ、しゃぶってくれぇ!」
 レミの口から自分で陰嚢を抜き取ると、トシは自分の肉棒を文字どおり突き刺すように彼女の唇を貫いて口の奥、喉に至らん程にインサートする。
「ぐむふぅっ!」
 むせるレミに構うことなく、ひたすらトシは腰を動かして彼女の口や舌の粘膜の潤いと柔らかさを堪能する。陰嚢がレミの小さい顎をくすぐる。
 撫で回すようにレミの頭を抱えながら、トシは恍惚の表情を浮かべる。
「すげぇ気持ちいい。もう、出る……さあ、飲めよ、飲めよぉ……っ!」
 口の中で反り上がったトシの肉棒がビクッと弾むと、レミの喉に熱い精液を流し込む。
「んん……む、んぐっ……」
 肉棒をくわえたまま喉の粘膜を焼け焦がす精液を嚥下するのは難しい。歯が当たらぬように顎を開け切ったまま喉をこくっと鳴らしつつ、さらに噴き出てくる精液を喉奥で受けておかないとならないのだ。苦しくても、射精の途中で口から吐き出してしまうと、たちまち後から噴き出した精液で顔が汚れてしまう。それだけはなんとか避けようとしていた。
 ようやく精液の出が弱まると、レミは唇をきゅっとすぼめてゆっくりと陰茎を抜き出す。鼻の息でぬめった陰茎をくすぐりながら、最後はピンク色の亀頭をちゅぷっと吐き出す。
 口角からはレミの唾液とトシの精液が混じった滴が粘っこく細い線を引いて首元に降りていく。その首は、最後の一滴を飲み干すべくこきゅっと音を立てて喉を引きつらせる。
「そら、出したらとっとと変われトシ」
 トシを脇に突き飛ばし、今度はケンがびんびんにそそり立つ陰棒の先をレミの半開きの唇に当て、その上唇を押し上げる。
「俺はマッサージいらないぜ。存分に舐め回してくれよ」
 またトシみたいにいきなり喉元まで入れられると苦しい。レミは自分から唇を開くと、ケンを口一杯に頬張り、裏筋のあたりを舌で包むように舐め回す。願ってもない歓迎にはしゃぐケン。
「おいおい、そんなにおいしそうに舐めるなよ。あ……もう出そうだよ俺、うっ、ぐ……」
 本人は本人なりにこらえていたつもりだったに違いない。だが、ケンはあっけなく射精してしまった。
 口の中で爆ぜた精液は、レミの舌によって喉に流し込まれる。トシと同じように、射精が収まるまで肉棒を口から離さない。
 尿道に残る精液を絞り出すように、レミは亀頭まで唇に力を入れてゆっくり抜き出す。こぼれ出たケンの陰茎は皮をたるませてくったりと垂れてしまった。
 二人の男が満足のいくフェラチオの余韻に浸っている後ろで、トドは一人うつむきがちにゆっくり味噌汁をすすっている。もちろん二人の先輩がこのまま彼に何もさせないわけがない。
「トド、しんみり飯食ってんじゃねぇよ」
「お前を男にした女の腹くらい面倒みろよ。ほら、飲ませてやれ」
 二人はトドの肩を引っ張り上げ、彼のトランクスをずり下ろした。何度ものセックスで疲れ切った陰茎が股間で揺れている。目前に突き出されたそれを見て、レミはくぷっと突然白い液体を唇からこぼす。
「おいおい、まだ吐くなよレミさんよぉ。あんたが童貞奪った本命のトドくんのザーメンを味わってからだぞぉ」嬉しそうにトシが言うと、レミの髪を掴んでトドの陰茎を頬に擦り付ける。「そら、おねだりしろよ、飲みたいって」
 レミの頬に擦り付けられると、トドの陰茎は再び勃ち上がり始める。その先が彼女の小鼻を小突き、鼻筋をなぞりながら黒い瞳孔に迫る。
「あ……」
 口を半開きにするレミ。舌の裏に白く生暖かいケンの精液が溜まっているのが見える。
 呆然とする彼女の鼻孔を突くトドの精臭。
「レミさん、僕またレミさんとしたくなってきちゃいました……」
 静かにそう呟いて、トドは自分からレミの頬に肉棒を擦り付ける。それはやがて顔を貫かんばかりに激しくなり、彼女の顔の肌を揺さぶる。
「ああ……にゃ、やめて……しちゃげぅ……したげるから……」
 ねちゃついた舌でレミはトドの肉棒にそう言うと、その裏筋を舐めあげた。
「ああぁ、あぅ」
 感極まって吠えるトドの、雄々しく勃つ肉棒にキスの嵐。キスした唇が離れる度に引いていく糸。
 ぱっくり開いている肉棒の鈴口に唇を重ねると、そのまま一気に吸い込んでいく。首を前後に振り立てる。くぷ、ぷちゅと音を立てる度に、レミの口角から唾液の泡が吹き出る。
 フェラチオが始まった。
「おお、すげぇ……」
 トシが思わず呟く。彼とケンは、彼女の体の動き一つたりとも見のがすまいとただただ見つめる。
「んんっ、ぬむうんっん……!」
 口の中でなおも大きくなっていくトドの肉茎に苦しくなったのか、眉間にやや縦皺を寄せてレミはうめく。
「ああ、レミさん良すぎ、いい、すごく……あ、あああ、出る、出るぅ」
 ついさっきまで童貞だったトドの肉棒に、レミの口腔の粘膜の感触を堪能できるだけの持久力を求めるのは無茶があった。たちまち肉棒が強く脈打ったと思ったら、その先から勢い良くぬめった液体を彼女の喉元に吐き出した。
 おまけに一、二度の射精でそのままトドはレミの口から陰茎を引き抜いてしまった。萎え始めたとはいえまだ固さを残すトドの陰茎は、勢いこそ弱まりつつも彼女の顔にひたすら乱射を続けた。
「これは……」
 レミの肌にまとわりついたトドの白濁の飛び散り方は、「精液化粧」の言葉がふさわしい。
 ――レミの顔を見て、トシは呟いてその顔をほころばせた。彼の陰茎が、根元の筋肉痛に懲りずにまた力を吹き返す。

   ‡

 彼女の姿を見て、藤吾はにやにやと笑っていた。
 椅子に座る藤吾の、上に向かって屹立した剛棒を、レミの舌が舐め上げている。その場に正座し、彼の股間に顔をうずめて、健気に奉仕をする姿。
 だが彼は彼女の、大きく膨らんだ腹に見入っていた。
 顔も髪も、乳房も乳首も、手足も、尻も、――彼女の股間の奥に秘められた桃色の媚肉も、彼にはお気に入りであった。
 しかし今は、その全ての魅力は彼女の腹に凝縮されたような気が、少なくとも藤吾にはした。
 そもそもあれだけ華奢に見えた彼女の体に、それほど大きな腹があること自体信じられなかった。弱々しい背骨の筋と、大きく前に迫り出した腹部。その違和感がなんとも言えない淫靡さを醸している。
「んあ、はむっん……」
 わざと髪を乱すように頭を強く撫で回してやると、剛直にしゃぶりついたレミは鼻からうめくように声を漏らす。その声が藤吾の耳に心地よい。彼は彼女の顔をぐっと剛棒に擦り寄せると、熱くたぎる肉の竿を押し付ける。
「あ、やっ」
「何言ってやがる、お前も本当のところこれが欲しいんだろ」
 レミは何も言わなかった。しばらく藤吾にされるがままになっていたが、再び彼の剛直に舌を伸ばす。そのぱんぱんに張り詰めた亀頭を、まるでアイスクリームかなにかを食べるようにしゃぶりつく。
「ふふん、最初会った時はあれだけいやがってた癖に、今じゃこんなにインランになりやがって。……よ、よし、そろそろ飲ませてやるよ。インラン女のお前にふさわしい栄養ドリンクをな」
 藤吾がそう言うと、レミはその唇を亀頭にあてがい、そのままゆっくり口の中に入れていく。自分の唾液をじんわりと彼の剛棒にまぶすと、時々藤吾の顔色を上目遣いに伺いながら、首を動かし始める。
「ん、うっ、んっ!」
「ああ、出してやるよ、出してやる!」
 ねだるように強く吸い付けてくるレミの頭を軽く叩いて、藤吾は自分からも腰を振り立てる。
「っぐっ!」
 藤吾の剛棒が、焼け焦がさんばかりに熱い粘液をレミの喉奥に流し込む。彼女はしっかりくわえこんだまま、最後の一滴まで飲み干していく。
 ぴくぴく動くレミの喉を見つめて、藤吾は心底満足そうな笑みを浮かべる。
「そうだ、ちゃんと飲めよ。こいつはな、お前を孕ませるだけじゃなくて、お前の体の一部になっていくんだ。いずれお前の体は俺の精液から成り立つようになるんだ。そう、それでお前の体は完全に俺のものになるんだ」
 陰茎から口を離してもなお、レミは舌で亀頭を舐め続けている。
「それだけじゃないぞ。お前の腹の子供も、この精液を栄養にして育ってるんだ。俺の精液でできたお前の体の中でな。ふは、ふはは」
 加虐的なせせら笑い。しかしそれとは裏腹に、レミは再び膨らみはじめた藤吾の亀頭を口に含んで、その鈴口に舌先を当てて舐め始める。それから一気に深くくわえこんで、再びさっきのように、唾をねちゃつかせて前後に首を振り立てる。
「おぉおぉ、随分と積極的になったもんだぜ」
 嘲るように言う藤吾に、口を肉棒から離してレミが答えた。
「もう……私の体は完全にあなたのものです……」
 レミの手指が藤吾の剛棒に絡む。
「この一本で、私はあなたのヘンタイ妻になりました。うぅ……どうしてなの? あれだけ忌わしく見えたこれが、体がこんなになった今、どうしてこんなに愛おしいの? そもそも、私もおかしくなってきた……好きでもない人間の子供を身籠らされてるのに、何だか嬉しくなってる……こんなのイヤなのに、イヤじゃない。気がついたら、お腹を優しく撫でてる私がいるの……私、私すごくヘンになっちゃったよぉ。ダメになっちゃったよぉ。ヘンだよぉ、ダメだよぉ……ふむぅっん、ぐむぶぅっ」
 もうレミ自身もわからなくなっているのだろう。わけの分からない言葉をつらねる口を自ら塞がんばかりに、レミはそこに藤吾の剛棒を押し込んだ。涙を流しながら、自身でもとらえどころのない自分の気持ちを言葉にならぬ声でうめいて、必死にしゃぶりつく。
「これがお前の本当の姿なんだよ」藤吾は静かにレミに言った。「お前をはじめて見た時、うすうすそう感じていたさ。お前はこうありたいと心の底でずっと願ってたんだ。良かったな、今こうしてチンポしゃぶってんだからなぁ」
 レミの頭をポンポンと叩いて、藤吾は再び射精する。レミは先ほどのように最後の一滴までしゃぶり尽くすと、唇をすぼめながらゆっくりと引き抜いていく。
「もう……飲み切れない……」
 口から、藤吾の白い体液がつつーっと糸を引いて床に落ちていく――。

   ‡

 一通りシャワーを勝手に拝借した後、三人は服を着て帰る支度を始めた。
「なかなか良かったなぁ。さすがは人妻」椅子に深々と座ったトシはそう言ってふぅっと長く息を吐く。「ていうか、ひょっとしてソープで働いてた?」
「俺もそう思った。フェラなんか凄くエロかったしな」ケンがニタニタ笑いながら口を挟む。
「ま、なんにしても頼むぜ明日も。また来るからな」トシがゆっくり椅子から立ち上がる。
「警察呼ぶんじゃねぇぞ」
「お前は余計なことを言うな!」
 ケンの言葉に、容赦なくトシは膝蹴りを入れる。加減一切なし。
「いってぇ、何すんだよ」
「お前そんなこと言って本当に呼ばれたらどうするつもりなんだよ!」
「じゃあ電話潰しちまえばいいんだろ、オラぁ!」
 ケンは、両手で電話器を抱え上げると、引っ張ってそのまま電話線を抜き取り、思いきり床に叩き付けた。受話器が死体のように転がり、本体の匡体がぱっくりと割れて、中の緑色をした基盤を不気味にむき出しにした。
 ただ無表情にそれを見つめるレミは裸のままであった。肌には三人の精液がこびりついていて、卑猥に垂れたそのままの状態だ。壊れた電話器を見ても、彼女の顔はなんら表情を生み出そうとしない。もう彼女自身壊れてしまっているからなのかもしれない。
 ふと、トシがテーブルの上のものに気がついた。
「……? なんだこれ」
 テーブルから拾い上げたそれは――
「だ、だめっ! それは大切な物だから触らないでっ!」
 途端に我に帰ると、レミはトシの手にあるそれを取ろうと体を伸ばす。が、トシはひらりとそれをかわし、ただまじまじと木で出来た丸い物体を眺める。
「……桃?」
 それは桃の形にかたどられており、ヘタにあたる部分には葉の彫刻が施されていた。しかし彩色はされておらず、表面に透明なニスが塗られている。しかし良く見ると、それほど自然な桃に似せているにもかかわらずちょうど包丁で縦に切られたような細い溝がある。そこだけ、彫刻と関係無しに機械的に切ったような、そんな感じの溝だ。多分どうにかすればぱっくり割れるんじゃないかとトシは考えた。
 彼の考えは正解だった。試行錯誤の末、すこしひねるようにして互いを引っ張ると、いとも簡単に割れてしまった。中は空洞になっているのだが、割れた一方の方には小さな地蔵が彫られていて、左右に黒い筆でお経のような文章が書かれている。
「おいレミさんよ、なんだこれは?」
「ああ……それは私の……私の子供なのぉ!」
 一体彼女は何が言いたいのか、トシは最初わからないでいた。だが彼は何か思い付いたような表情をぱっと浮かべて、にたりといやらしく口の端をほころばせる。
「なるほど。普段こいつを中に入れてヨガってるのか」
「違う、違うぅ! それは生めなかった子供の――」
「言い訳すんじゃねぇよ!」
 誤解を訂正しようとするレミの言葉に、トシは全く耳を貸さない。彼はせせら笑いながら彼女の片足を高く持ち上げると、大きく開いた股間に、合わせ直した彫刻の桃をあてがい、押し込む。
「オラ、ケンも手伝えよ!」
「言われなくても手ぐらい貸してやるよ、うるせぇなぁ」
 眉間に縦皺を寄せた顔をトシに向けながらも、ケンはレミのもう片方の脚を抱え込む。
 宙に浮いた腰。大きく開かれた股の中心に、女陰がぱっくりと奥のピンク色した媚肉を覗かせる。三人の精液か、あるいは彼女の分泌した愛液なのか、白く濁った粘液で濡れそぼっている。
 彫刻の桃は、抵抗なく、吸い込まれるように入ってしまった。
「ああああああああぁ〜、……あぁ……」
 レミの体がビクンとのけ反り、そのままぐったりと力が抜けていった。白く剥かれた目、だらしなく半開きになった口――その表情はすっかりほうけていて彼女の心中を読み取れない――いや、彼女自身完全にほうけてしまっているのかもしれない。
 それは正しく――
「イッちまったぜ」
 トシは彼女を一瞥して、ケンに言った。
「こいつ相当な変態だったんだな。変な木の彫刻入れられただけで即イッちゃうなんてな」
 トシとケンはレミを鼻で笑い、そのままドサっと床に下ろす。
「明日も来るからな。ちゃんと体洗って待ってろよぉ!」
 心底満足した様子で三人が玄関を出ていっても、レミは起き上がることなく、オルガズムの恍惚の中に意識を横たわらせていた。

   ‡

 あなたがもどって来たとたん、ママ失神しちゃった。
 苦しくて失神したんじゃないの。失神している間、まるで海の上に浮いているようにすごく心地よくて……。
 なんでだろ? すごくみたされた気分。
 いやなはずなのに。
 知らない男の人にむりやり犯されたというのに。
 ひどく悲しい気分になるどころか、
 ものすごく気分がおだやかなの。

 ねぇ、
 ママにチャンスをちょうだい。
 あなたを産むチャンスをちょうだい。
 こんどこそちゃんと産んであげる。
 ほら、ママの子宮を見て……。
 いやらしくねっとりとした私の肉のつぼの中に、あの三人の精液がたくさん入ってるでしょ?
 この中に、わたしの卵が入っていくの。さっきの私みたいに、たくさんの精子にいたぶられて、やがて迎え入れるの。
 今ならあなたをいつでも迎えられるよ。
 さあ――

 おかえりなさい。

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