2001年12月28日

 今でさえ、りなは自分の身体が自分のものでないような不思議な感覚に囚われていた。
 昨日のアナルセックスで、何だか自分の身体になにか変化がもたらされてしまったようであった。
 まず、どうも自分の意識で体が動かしにくくなったような気がする。
 それに、大司氏に弄ばれるのがひどく気持ちよく思えてきた。
 セックスしていない時でも、胸を撫でてみれば、痛いほどに乳首が硬く勃っている。決しておさまることなく、まるで期待しているかのように両方とも斜上を向いてつんと勃っているのだ。
 股間でも、クリトリスがピリピリと疼いていた。見てみれば、この屋敷に来る前よりどこか腫れ上がっているようにも思えた。
 何もかも、この数日でおかしくなってる! りなはそう思った。同時に焦りも覚えた。自分はこのままでいいのか? 逃げ出さなくていいのか?
 しかしそんな思いさえ、大司氏に体を撫で回された途端にすっかり吹き飛ばされてしまっていた。そうして、「いやっ」と言いつつも体を火照らせてしっかり感じている自分がそこにいるのだ。
 どういうわけだかわからない。しかしりなの体は大司氏にさからえないようになってしまっているようだ。
「さありな、一緒にシャワーでも浴びようか」
 そう言われて、眠っていたベッドから起き上がるのはいいが、正直りなは大司氏と肩を並べて歩くのは嫌だった。だが、腰に腕を回して臍の下、子宮のあるあたりをさわさわと撫でられて強引に抱き寄せられるのを、なぜか彼女は拒めなかった。
「ぅあっ」
 短い驚きの声を上げて肩をすくめることしかできない。あとは黒いブリーブだけの姿の大司氏の引き締まった体に自分の体を寄せて歩いていくだけ。
 端から見れば、アツアツのカップルだ。
 自分は――いや、自分の体は一体何をしているのだろうか? りなは目線を落として自問自答する。しかし突き詰めて考えようとした時、大司氏が片乳首をつまんで引っ張った。
「ぅあっ、やっ! 何するですか!」
「さっきからうつむいてどうしたんだ? 前を向いて歩け」
 りなの遅い足をせかすように、彼はつまんだ乳首を前へ前へと引っ張る。
「ぅあ、あっ、あっ!」
「そらそら、早く歩くんだ。……何だ、ちゃんと前を見て歩けるじゃないか」
「いやっ、痛いっ、痛い! そんなに上に引っ張らないで下さいぃ!」
 大司氏は引きちぎらんばかりにりなの乳首を引っ張り上げていた。
「気持ちいいんだろ。おっぱいこんなにされて、りなは嬉しいんじゃないのか?」
「こ、こんなの、こんなの――ああ、いやぁあっ、痛いぃ!」
「そんなにキイキイ鳴かなくてもいいだろう。それとも、こうされたいのか?」
 りなの背に回って後ろから手を伸ばして彼女の両胸をすくい上げるように持つと、彼は手のひらで揉み上げる。
「あ、あぁっ!」
 彼女自身、胸はそれほど感じない。しかし自分の体の一部が柔らかく弄ばれるのを見た場合は話が別だ。綺麗な丸みを帯びた両胸が他人の手で歪められているのを見て、一層自分の置かれている立場を再認識させられるのが、何よりりなには辛かった。
「ああっ、やっ、やめて下さい、いやっ、ああ……いやぁ!」
 耳を赤くして、ときおり声までもうわずらせてりなは必死に訴える。
 しかし大司氏は全く聞こうとせず、ただ体全体をぴったり密着させて彼女の背を押して前進を促すだけだ。
 そうこうしながら、ようやく二人は浴室に着いた。三日前に陰毛を剃られた洗面所の鏡に、二人の裸が映っている。毎日朝に欠かさず剃り上げられてパイパンになっているりなの白い肌と、
大司氏のしまった細身の黒い体。
 ブリーブを脱ぎ捨てて完全な裸になると、大司氏はりなの背中を押してせかす。
「さあ、とっとと入るんだ」
 仕方なくりなは浴室の方に歩いたのだが、それよりも大司氏の押す力の方が強かった。とたんにバランスをくずしてつんのめり、浴室の中に転がる。
 冷たいタイルの上に倒れたりなは上体を起こして大司氏の方を向く。だか、目に飛び込んで来たのは彼の顔ではなく、血管を浮き立たせて屹立する男根であった。
 亀頭は赤黒く大きく膨らんで一掃そのかさを反り返らせて淫猥なオーラを発散していた。時折かすかに前後に脈打つさまは、まるでりなに催促しているかのようでもあった――こっちに来い、こっちに来ていつものように悶え苦しんでみろ、と。
 その太い肉の茎が、前と後ろの処女を奪ったのだ――そう思うと自然とりなの心に憎しみが宿る。いっそ両手でつかんでひねりちぎってやりたいくらいであった。
 しかしそれができない。
 その一方でむずがゆい感覚がりなの体に沸き起こっていた。頭ではどう思っていても、体はペニスの感触や衝撃を求めているようでもあった。
「ああ、ぅあ、いや……」
 いくら否定しても否定しきれない、体の本能的な欲求。
 いつしか子宮は燃え上がるように熱くなり、肉唇にじわりとそれがにじみ出てくるのを覚える。
 心と体の不一致に戸惑うりなを、大司氏は面白そうに眺めていた。
「遠慮する必要はない。欲しいなら『欲しい』と言えばいい」
 彼が一歩踏み出せば、ペニスもまた喜び勇んでいるかのように上下に揺れる。それを見て、りなの心もつられて揺れる。
 目が逸らせない。見たくないのに、ペニスの迫力に圧倒されてすっかり瞳が固まってしまっていた。
 そうこうしているうちに、ついに大司氏のペニスがりなの鼻先を突いた。その匂いと温度とオーラがねっとりと彼女の顔にまとわりつく。
「あ、あ――」
 呆然とするりなに言葉吐かせる暇を与えず、ペニスは彼女の片頬をぺちりと打ち付ける。
「ぅあんっ!」
 大したダメージもないのに、ただ迫力だけに気押されて、本当に平手打ちでもされたかのようにりなの顔は反対に振れる。
 怯えた目でペニスを見るりなに、大司氏は命令する。
「舐めろ。舐めてみせるんだ。今までいい思いさせてもらったお礼にその舌で舐め回してみろ」
 頭を両手で掴まれ、唇にペニスを突き出された。
 それはあまりに屈辱的で、汚らしい行為であった。そんなことできるわけがない。
 しかしりなの意志に反して、彼女の唇はペニスに飛びついてその柔らかい感触で中へと迎え入れていた。
 りなの本能が意志を凌駕した瞬間であった。
 悪魔の肉茎が口の粘膜を擦るたび、りなの心臓は激しく高鳴る。口を塞がれた息苦しさより、自分を凌辱したペニスをいやらしく咥えていることに、りなは強い屈辱感を覚えていた。しかしそれは自分で望んだことなのかもしれない。子宮と直腸に男の肉欲を注がれ、絶望の淵に追い込まれたりなは、心地よい敗北感に目覚めてしまったのだ。
 自分から首を前後に動かし、太いペニスに舌を絡めていく。とめどなく唾液がこぼれ出て、ペニスの幹をぬらぬらと光らせ、りなの口角からだらしなく垂れる。
 どこを見るでもないりなの目は告白していた――私、負けました。あなたのチンポに負けました。わたしは……わたしの体はあなたのチンポに負けちゃいました。
「うぬ、ぬむ、むぅん……」
 鼻から声を漏らしながら、りなは哀しい奉仕をする。自然と彼女の両手はペニスの根元を持ち、一層集中してしゃぶり続ける。
 暖かいりなの口の中で、大司氏のペニスはびくんびくんとあやしげに跳ねる。
「いいぞ……あぁ、良すぎて……もう、出る……」
 りなもその舌ざわりで、何かがやってくるのを感じた。オマンコやお尻の穴と同じように、今度は喉にスペルマが注がれるんだ――そう思うと、なぜだか目から涙がこぼれる。
 そして、それは来た。
 りなの口いっぱいに膨らみきった亀頭の先から、喉目掛けて勢いよくほどばしり、流れていく。その量と熱さにむせ返りそうになるが、硬さ緩まずなお口の億に潜り込もうとするペニスにそれを押さえ付けられる。
 ただ、喉を粘っこく流れていくスペルマをひたすら嚥下するしかなかった。
 りなの鼻から流れる生暖かい息に青臭い性臭が混じる。
 胃袋にはスペルマの温度がじわじわと蔓延する。
 舌はすっかりペニスの味で包まれてしまった。
 ようやく最後の一滴を出し切って、大司氏は彼女の頭から両手を離した。
 ゆっくりと萎えたペニスを吐き出し切ると、りなは舌先を見せて、けぷ、と小さな水の泡の割れたようなおくびを出した。
「げっぷが出るほど満足か? ならばフェラチオを日課にしてやろう」
「い、いやです。こんなの毎日、いやです」
「決定だ。明日はおいしそうにフェラしているところをデジカメに撮ってやるからな」
「そ、そんなのいやですぅ……」
 潤んだ目でうつむくりなの頭を撫でて、大司氏は湯の蛇口をひねる。
 暖かい水がシャワーのノズルから振り落ちて、りなの体を濡らしていく。寒く冷たい雨にずぶ濡れになったあわれな捨て犬のように。

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