2001年12月29日

 毎度のようにされる浣腸のせいか、このごろ肛門がぴりぴりと痛むようになった。だが今それ以上に彼女は強い圧迫感と闘わないといけなかった。
 小春日和の暖かい冬の庭園で、りなは四つん這いで歩かされていた。首には赤い皮の太い鋲付きの首輪がはめられ、それに繋がれた太い手綱は大司氏の手にしっかり握られていた。
「止まってはいけない。とにかく歩き続けるんだ」
 ときおり大きな音をたてて彼女の尻を叩いて立ち止まることを許さない。止まれば容赦なく彼は靴の裏を跡をつけんばかりに白く柔らかい尻たぶに押し付ける。
「ろくに運動していないんだ、休むんじゃない! 体は動かす時に動かしておけ」
(セックスの時に汗まみれになってるのに、それでも駄目だっていうの?)
 心の中でりなは不満を漏らす。しかし彼女はむしろ別の理由から体を動かしたくない様子である。
 一歩彼女が足を動かす度に、下腹部の中でそれはぎちぎちと擦れ合い、きしみ合う。それが一層りなの動きを鈍らせる。そうなると再び大司氏が靴底を尻に沈めてくる。
 深くずたずたにりなの心は打ちのめされる。自分を監禁して犯しに犯し抜いた男に、今度は家の外で犬さながらに裸で引きずり回されているのだ。
 抵抗しなかったわけがない。外に出まいとどれだけふんじばったことか。だが大司氏に尻や顔を強くぶたれ、ついに彼女はそれを怖がっていやいや外に出ざるをえなくなったのだ。
 しかし今はそんなことより、彼女の注意は自分の体の中に向いている。きゅうきゅうと苦しそうにきしむその物体は、入れられてから大分時間が経ったこともあり、すっかり暖まっていた。
 身重のような奇妙な感覚から気だるさを導き出され、ときおり体の力を奪われながらも、りなは大司氏に尻をぶたれたりしないように、ゆっくりのたのたと屋敷の庭園を歩き回る。弱いながらも吹き付ける風は、彼女の体に鳥肌を起こさせる。
 すると、大司氏が突然手綱を強く引っ張った。
「ぅあっ」
 りなの首が強く引き寄せられる。そのまま彼女は大司氏の持つ手綱に引かれるままに庭園の一角へ連れていかれる。
「あ……あっぅ……くるし、くる、苦しいっですぅ」
 必死に手足を動かして大司氏の足の速さについていこうとするが、そうすればするほど彼女の中で軋みあう物体達はさらに大きく暴れる。
 ようやく大司氏が立ち止まった前には、綺麗な花壇があった。冬なのに、色とりどりの花がいい香りを漂わせて咲いているのだ。
「数少ないうちの屋敷の自慢だ。冬に咲く花なんて珍しいだろう? ここに植えている分だけで数十万はする。いい買い物だ」
「す、数十万って……」
 額の大きさに牝犬りなは思わず大司氏の顔を下からあおぎ見た。
「しかし色つやと香りは春や夏に咲く花と遜色ない。鼻を近付けて嗅いでみるがいい」
 本当の所、四つん這いになっているりなの姿勢からだと十分そのままでも花の香りは嗅ぐことが出来た。だがだからと言ってそのままでいたら何をされるかわからない危うさが、大司氏の言葉に含まれているような気もした。
 頭を低くして、りなはその鼻先を花に当ててすぅっと匂いを嗅いでみせる。
 自然と彼女の尻は高く突き上がり、二つの穴が大司の目の前であらわとなる。
 きゅっと閉まってはいるがいきいきとした桃色を呈した小さな菊の穴。
 赤く爛熟した秘襞をぬらぬらした愛液で濡れそぼらせて、小さな声を出しているかのように半開きになっている薔薇の穴。
 しゃがみこみ、大司氏はつやつやした肉薔薇の真心に舌を差し入れた。
「ぅあっ、きゃっ!」
 自分から罠にはまったことにすら気付かなかったりなの驚きはひとしおだ。膣口に滑り込んでぬらぬらと愛液を掻き取る汁気に満ちたナメクジの感触にたまらず彼女は腰をぶるんと振ろうとした。
 が、尻をつかむ大司氏の両手がそれをがっちりと阻んでいた。
 もやはりなは暴れるナメクジの愛撫から逃れることができなくなっていたのだ。さらにそこに大司氏の口が覆い被さり、ちゅうちゅぶと大きな音を立てて肉襞に吸い付いてくるではないか。
 膣の中に詰め込まれていたものが出てしまうのではないかと思えるほどに、彼の吸引力は強かった。それがために肉襞はより刺激され、吸気の中で海草のように漂いながらより沢山の愛液で濡れそぼる。
 吸われるたび吸われるたびにりなの体は敏感に反応してびくんびくんと跳ねる。
「あ、あはぁあぁっ……あ……で、出ちゃ、あ、ぁっ」
「――ん? もう産まれそうなのか?」
 大司氏は唐突に吸い付くのをやめて口を離す。それでもなお、りなの腰は力が入ったまま、背中も時折ぴくぴくと痙攣している。
「よし、ならここで産めばいい。さあ、足を肩幅に開いて尻を突き出していきむんだ」
 「さあがんばれ」と大司氏がりなの横にしゃがんで背中をさする。
「ああそんな……自分で出さないといけないんです、か……?」
「何を言ってるんだ。これは出産なんだぞ。むりやり私が引っ張ってどうする?」
「ああいやあぁっ。出ないっ、出ないですぅ」
「そんな最初から弱気でどうする。さあ、しっかり産むんだぞ。息を吸って、吸って、吐く時にヴァギナに力を入れるんだ。いいね?」
 しばらくりなは「いや……こんなのやですぅ……」と小声でつぶやいていたが、やがてあきらめがついたのか、大司氏に言われた通りにすぅっと息を吸い始めた。二段階で息を吸ってから、吐くと同時に「ぅああっ……」という詰まったような声が彼女の口から漏れる。再び、吸って、吸って、吐いて……。
「ああ駄目ですぅ、動かないですよぅ」
「まだ二回ほどしかしてないじゃないか。何度も何度もくり返すんだ」
「でも……」
「そんな弱気だとずっとそのままだぞ、それでもいいのか?」
 口調はきびしかったが、大司氏の手は変わらず優しく彼女の背をさすっている。
 やるしかなかった。りなは再び息を吸い始める。
 吸って、吸って、吐いて「ぅあああっ」
 吸って、吸って、吐いて「ひうぅうぅっ」
 吸って、吸って、吐いて「あああああうっ」
 何度も何度も、懸命にいきむりな。両脚や背筋をふるふると震わせ、裸足の指を折り曲げ、細い指を地面に食い込ませる。さらに額に汗が浮き出る。
 しかしそれでも膣の中のものが動きを見せないのに焦り始める――このまま一生出なかったらどうしよう?
 焦りが彼女の呼吸をさらに速くさせる。それを大司氏が背をぽんぽんと叩いて諌める。
「焦っちゃ駄目だ。ゆっくり、ゆっくり息をするんだ」
 それから彼は、今度はりなの臍の下を撫でながら、ときおり呼吸のリズムを優しく叩く。それは、異物を詰め込まれて敏感になった膣壁にびんびんと響く。
 沸き上がる性感に鳥肌を波打たせながらも、彼女は呼吸し続ける。
 すると、彼女の体の中で変化が起きた。
「ああっ、う、動いたですっ! 動いたですぅ!」
 目を涙で潤ませながら、必死にりなは大司氏に言う。彼女自身どういうわけか嬉しかったのだ。胸の内が焦げて沸き上がってくるような喜びを体の隅々で感じていたのだ。
 子供を産んだ時にもこんな感覚になるのだろうか――そんな考えが喜び浮かれるりなの頭にふとよぎる。
「まぁまぁ、まだまだだ。さあ、さっきのを続けるんだ」
 しかしそこからは順調であった。呼吸を続けるごとにりなの膣の中のものはじわじわと外へ押し出されていく。彼女のいきむ声に、愛撫された時の喘ぎにも似た甘い響きがこもる。
 そうしてようやく彼女の肉唇にも変化が現れる。汁まみれの肉襞が騒いだかと思うと、中から白い物体がそれをゆっくり押し退けてその姿を現わし始めたのだ。
「あ、ああっ、ぅあああああああっ!」
 最後につよくいきむと、その物体は愛液にまみれながら膣口をくぐり、陰唇をこじ開ける。
 ねっとりと糸を引きながら、白い卵が一つ。続けて、二つ、三つ。
 地面に落ちて仲良く固まる三つの卵に、数滴の愛液が糸を引いて降り注ぐ。
「はあぁ……産まれたで……す……っ」
 りなはそのままぐったりと地面に伏してしまった。
 大司氏は彼女の頭を叩いて褒めると、ゆっくりと彼女の体をを両腕に抱き上げる。ちょうど彼の胸でりなは胎児のように手足を畳んで背を丸める格好になる。
 何故かその格好が気持ち良く感じた。性交からくる快感ではない、それは安心感である。たった二本の男の腕に抱かれているだけだが、自分の体が支えられているというのがこれほどリラックスできるとは。
 そのままりなは大司氏の胸元で子供のように心地よい寝息を立て始めた。

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