2002年1月1日

 まだ初日の出も出ていない薄闇の早朝。
 人気のないさびれた町工場の狭い通りをゆっくりと車が通る。
 車幅の大きい高級車は、その場所では非常に浮いている。しかも元旦にこんなところを走っていること自体にだれもが首をかしげるに違いない。
 この通りにある工場の社長の車なのだろうか?
 しかし車はどの工場の前にも止まらず、鉄臭い界隈の中ひっそりと建つ小さな神社の前に止まった。
 運転席側のドアが開く。神経質に撫で付けたセンター分けの髪型の背の高い男が出て来た。灰色のコートを着込み、車外の寒さにブルっと震える。彼は小走りで反対側に回ると、助手席のドアを開けた。
「ほらりな、早く出てくるんだ。……寒いのはこっちだって一緒なんだ」
「ぅああああ、っいやっ! 恥ずかしいですっ。やっぱりこんなのやめましょうよぉ」
「もうすぐそこなのに何を言ってるんだ! さ、ほらっ!」
「きゃっ!」
 男に引き出され車から飛び出て来たのは、裸の女であった。年にして二十歳ほど、髪の毛を茶けさせた今時の若い女性だ。
 いや、裸というにはちょっと語弊があるのかもしれない。スレンダーな白肌には縦横無尽に紅白彩りよくよじられた縄が食い込んでいた。首の根に巻き付いて、胸の谷間で交叉して両乳房の上下を締め付け、ウエストのくびれに深く食い込んでいる。そして縄の末端はさながら着物の帯飾りのように、背のところで大きな花を模したような豪勢な結びが施されている。
「……いやぁ……、いきなり引っ張るのやめてくださいよぉ……パンプス履いているのに……」
 そのパンプスも普通以上にヒールが高い。立てばまるで爪先立ちでもしているかのようになる。実際体制を整えた後も、女――りなは非常に歩きにくそうに男に手を引かれて神社に入った。
「だめっ、やっぱり恥ずかしいです大司さぁん。誰かに見られたら……誰かに見られたら……」
「別にいいじゃないか。凄く似合ってるじゃないか、りなの縄衣装」
 赤面してその足の歩みが鈍りがちな緊縛の裸姫の尻を撫で、それからその柔肉を波打たせるようにぽんぽんと優しく叩く。
 鳥居をくぐってから数歩歩けばすぐに本殿だった。本殿、と言ってもせいぜい祠が二、三倍ほど大きくなっただけのようなスケールである。実際こんな工業地帯にひっそりと建っているものだから、初詣シーズンだというのにこのアンバランスな二人以外には全くといっていいほど人気はない。
 だが、もしかしたら散歩にやって来た人がこの神社の境内に立ち寄るかもしれない――! そう思っただけで、りなは寒さとは別の震えを覚えて鳥肌を浮き立たせる。
「そらりな、お賽銭」
 背中に体を密着させて、男――大司氏はりなの恥骨を右手でぐっと押さえる。
「……やめて下さいっ、出すですぅ、出しますよぉ」
 大司氏の手を払い除けると、りなはゆっくりとその場にしゃがみ込み、股を開いて相撲のそんきょの姿勢になる。体に絡む飾り縄もあいまって、その姿は褌をつけぬ女相撲の力士のようでもある。
 陰毛を剃り上げてこころなしか青くすら見える股間に手を回し、りなは肉襞の間から何かを引っ張り出した。
「……きうぅ……」
 ねっとりと甘い性臭を微かに漂わせる透明な体液にまみれた小さなビニール袋が石畳ににひたりと落ちる。その中には五円玉が二枚。
「よし。りな、気持ち良かったかどうか知らないが、座ってないでとっとと立つんだ。手を合わせてお祈りするぞ」
 彼女の肩を持って立たせると、袋から取り出した五円玉一枚を握らせる。それから一緒に賽銭箱の中にお互いの五円玉を放り込んだ。
 ぱん、ぱんと二度手を打って、祈ろうとしたその時に大司氏がりなに言う。
「りなは口に出してお祈りするんだ」
 そして自分は無言で祈り始め、しばらくして二度手を打って一歩下がった。
 そこからふたたびりなの背後に回ってそっと声をかける。
「声を出して祈れといったはずだぞ?」
「……今それを考えてたんです……」
「なんだ、ここに来るまでエッチな妄想ばっかりしてて、何お祈りするか考えてなかったのか」
「そ、そんなことないですっ!」
「じゃあ何で考えてなかったんだ?」
「だって……。だって前に初詣行ってお祈りしたけど、結局かなわなかったからです」
「何祈ってたんだ?」
「……スターになるんだって。アイドルとまではいかなくても、どんな形でもいいから芸能界入りしてやるんだって……祈ったんです」
 話すりなの表情が曇る。
「結局、芸能界入りはできなかったし、どころかこんな恥ずかしい格好させられる羽目になったし……」
「叶ってるじゃないか」
「……は?」
「りな、お前は私の『種付けアイドル』になったんだよ」
 そっと両腕を回して、大司氏はりなを抱き締める。
「……そ……そんなっ! そんなのになりたかったんじゃないですっ!」
「もう引き返せないよりな。君は僕のスペルマをその肉壷にたくさん蓄えた『種付けアイドル』として一生を捧げるんだ」
「やっ! そんなのやだっ! いやあ――っ!」
 諌めるように大司氏は彼女の耳朶を噛む。りなは顔をしかめて声を押し殺した。
「しょうがないな。これじゃあらちがあかない。私がりなの願いごとを作ってやろう。ちゃんと声に出して手を合わせてお祈りするんだ」
 それからそっと耳打ちする。
 たちまちりなの顔が恥辱で赤くなる。
「そんなぁ……、そんなことお祈りできないですぅ!」
「じゃあ他になにか祈りたいことがあるというのか?」
 りなは黙り込んでしまった。
「……いいな。ちゃんと願いごとが叶うようにくり返し口に出していうんだぞ」
「そんな……私、もうどこにも逃げられないんですね……」
 きゅっと唇を噛んだりなだったが、すぐに向き直って手を叩いて祈る。
「……もっとエッチになって、たくさんスペルマおねだりしますから、大司さんの元気な子供が『種付けアイドル』の私の淫らな子宮に宿りますように」
「もっと気持ちをこめて、もう一度」
「もっとエッチになってスペルマたくさんおねだりしますから、元気な大司さんの赤ちゃんが『種付けアイドル』のやらしい私の子宮に宿りますように」
「ちゃんと心を込めて祈ってるか?」
「い、祈ってますぅ! ……ひぅう、もっとたくさんアソコにスペルマ、たくさんたくさんおねだりしますから、どうかこのやらしい『種付けアイドル』に大司さんの元気な赤ちゃんを身籠らせて下さいっ!」
「よおし、それでいいだろう」
 恥骨の辺りを優しく撫で回して、もう一方の手で肩を叩いた。
「大司さん……今年から私、大司さんの……」
「さあ、車に戻るぞりな」
 彼女の声はどこか恍惚としていたせいか小さく、大司氏の耳に入らなかったようであった。

   *    *

 元旦の昼、大司氏の屋敷の食堂で、裸姫の「種付けアイドル」りなはまたも驚いた。
 クリスマス・イヴのときよりはさすがにこじんまりとしていたが、そこには六重ものおせちが置かれていたのだ。
「お腹が空いたろう。遠慮なく食べるがいい」
 実際りなはものすごく腹を空かしていた。大晦日から今まで大司氏にいろんなことをさせられたからだ。彼の許しがなくても、彼女はそのままおせちに飛びついた。
 そもそもおせちの内容が豪華なものばかりだったのもりなを喜ばせた。
 しかしこんな豪華なおせちを口にしながら、食事中にそぐわない妄想が彼女の頭をよぎる。
(でも沢山食べたら、浣腸とか大変そう……)
 毎日日課のようにされているイチヂク浣腸。しかし暴発する便意に屈して大司氏の前で柔らかくなった汚物を尻の穴から噴出させてしまうその行為は、やはりりなにとっては恥ずかしい行為に違いなかった。きっとこれだけ沢山食べたら、トイレで長いこと自分の痴態を晒すことになる。
 しかし、かといって遠慮は出来ない。大司氏もそんな彼女の懸念を知っているのか、強引にでも目の前の食事を全て食べさせようとするのだ。
 結局、妊娠初期の妊婦さながらにぷっくりとお腹が膨らむまで食べ続けるしかないのだ。
 と、大司氏がりなの横にやってくると、何を思ったか突然ズボンを脱ぎ始めた。そのままパンツごとずり降ろして、カチカチに硬くなったペニスを飛び立たせる。
「ぅあっ、何ですか食事中に」
「りなの大好きなお屠蘇じゃないか。そら、しゃぶれ」
 ペニスの赤黒く膨らむ先端をりなの頬にめりこませて、食事中のフェラチオを強要する大司氏。
 口の中のものをこきゅっと飲み込んで、りなはぼそりと呟いた。
「ああ……こんな正月でも一筋縄ではいかないんですね……」
 ゆっくりと唇を大司氏のペニスに這わせると、ちゅううと吸い込む。そのままりなは自分の頭を前後に動かし、時折上目遣いで大司氏の顔を見ながら白いお屠蘇を舌でねだり始めた。
 さっきまで食べていたおせち料理の味や香りが、ペニスの匂いに全てかき消される。この後しばらくすれば、熱い精液の濃厚な香りが口の中に充満するのだ。
 りなは今、変態的な行為を強要されている自分に欲情していた。その目はうっとりとたるみ、漏れる鼻息は生暖かく大司氏の黒い茂みをくすぐっていく。
(これが……「種付けアイドル」の生きる道なんだ……)
「くっ……ううっ」
 りなの口の中で、大司氏のペニスがスペルマをほどばしらせた。一気に濃厚な香りが口の中に充満し、熱い奔流が喉に滑り込んで胃袋の中に落ちていく。
 きゅっと唇に力をこめてペニスを締め付けると、りなは大司氏のことを受け入れることを誓うかのようにゆっくりとスペルマを嚥下し始めた。

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