2001年1月4日

 立ったままで朝を迎えた。
 しかしりな自身朝を迎えたのかどうか分からないでいた。何しろ窓もない真っ暗の部屋で一人閉じ込められていたのだ。時間の経過さえまともに感じられないでいた。
 だがそれ以上に彼女はゆっくりと彼女の体の中で発酵して大きくなるむずがゆい欲求にときおり体を痺れさせていた。それまで絶えず体をまさぐられ、あるいは一方的にセックスを強要される毎日に、いつしかりなの体は慣らされてしまっていたのだ。だから何もされなくなると彼女の体は性楽を求めて疼くのだ。しかし自分で体を慰めようにも両手は天井から垂れる縄に爪先立ちになるほど高く縛り上げられており、両足も鉄の重い足枷で拘束されている。自由なのは腰と背中と胸と首、そして口だけである。
 かくしてりなは本能のままに暗闇の中で淫らな踊りを舞う。のったりと腰をうねらせ、激しく胸を揺する。背中をよじらせ、欲求不満そうに首をのたうちまわらせる。口からは沸き上がる性欲にかすれたよがり声を奏でる。
 冬なのにとても暑苦しく感じていた。ねっとりとした汗が全身にまとわりついているのをいやでも感じざるをえない。
 目を閉じているのかどうかさえもわからぬほどに真っ暗闇の部屋に一人身を震わせるりな。
 底に突然一筋の光が飛び込んで来た。
 大司氏がりなの様子を伺うために部屋の扉を開いたのだ。
「どうだりな、少しは落ち着いたかな?」
「ぅあ……はぁ……んぁ」
 りなは腰をもじもじとさせて嬉しそうな顔をする。
 既にりなの裸体からは正月の縄衣装は解かれていた。代わりに別の衣装を纏わせていた。
 白いリボン飾りのついた黒いチョーカー。太ももまでの黒い網タイツ。それから腰紐から小さな白いレースの布がエプロンのようにひらひらぶら下がっているだけのセクシーショーツ。
 昨日宅配便で届いたりなへのプレゼント衣装だ。
 しかし許しなくオナニーをしていたりなにそのことは一言も言わなかった。この暗い部屋に彼女を縛り付けると、緊縛衣装を取り去り、かわりに黙ってこの衣装を着けさせたのだ。
「ひぅ……っん、体が……疼きますぅ……」
「全く落ち着いてないみたいだな。しょうのないコだな」
「ふぁ……お願いします大司さん、もう許して下さい、もうここから出して下さい」
 息絶え絶えに願い出ながらも、りなは体をむずがゆそうによじらせている。
「ここから出したらまたオナニーするだろ?」
「ああ……だって、だってぇ……」
 りなは一層体を激しく揺すりながら、目を硬く閉じて眉間に皺を寄せる。
「体が……体がウズウズするからぁあ」
「りなもとんだ淫乱娘だな。エッチに目覚めてからすっかりやらしくなってしまったんだものな」
「ひぅっん!」
 太ももをもじもじと擦り合わせてりなは口からせつない喘ぎを漏らす。
「……そんなに私のペニスが欲しいのか」
 その「ペニス」の言葉にりなは敏感に、しかも激しく反応した。
「あ……あ、あああ! 大司さんのオチンチンっ、オチンチン欲しいっ!」
 唇はじっとりと涎に濡れそぼり、叫ぶ度に唾が飛ぶ。
「はぁあぁ、オチンチン、オチンチン欲しいっ、欲しぃですぅ!」
「そこまで欲しいか。……どこにだ?」
 その段になると、りなはゆすっていた腰をさらに激しく振り立てて叫ぶ。
「アソコぉぉぉ! アソコにほしいぃぃひいい!」
 目からとめどなく流れる涙。
 大司氏はゆっくりりなに歩み寄ると、尻を軽く叩いてやる。
 それから足枷、次に手の縄を優しく解いてやる。
 手の縄が解けた途端、りなは大司氏の体に手を回して、まるで自分の体重を全て預けるかのように抱き着いた。
 大司氏もそっと彼女を抱き返してやると、りなは甘えた声で彼にねだる。
「私の体を撫で回して下さい……、優しく、愛おしく撫で回して……お尻やおっぱいや、お腹や背中を優しく撫でて下さい……」
「ああ、わかったわかった。りなはよく頑張ったな」
 彼女のいう通りに大司氏が撫で回してやると、りなは彼の胸に自分の顔をうずめて眠る猫のように目を細めた。

   *   *

 寝室で裸で横になると、その上にりなを跨がらせた。――ちょうど屹立するペニスの上にりなの濡れた肉唇がくるように。
「りなの体は、こうやって下から見ると本当に可愛いよ」
 両手をそれぞれりなの網タイツの脚に絡み付かせて大司氏は言った。
 彼のいう通り、下から見ると彼女の均整のとれた体の凹凸はなお一層際立って目に写る。特に発情して頂きを尖らせた乳房の柔らかい盛り上がりと、縦割りの臍まわりのなだらかな窪みは山と湖さながらの趣深い対称となって彼の目に映る。
 太ももを撫でられる感触に敏感に身悶えしながら、これから一体何をされるのかという期待にりなの陰唇はじわじわと愛液を沸き立たせる。
 彼女の顔は明らかに、もう焦らさないでという表情になっていた。どこか目が細まり、頬も赤みを帯び、息はどこかオナニーの切なさを感じさせる。
「ではりなのお望みどおり、こいつでお前を貫いてやろうな」
「ああ、ようやくしてくれるんですね。……嬉しいです、さあ早く――」
「何を言っている。入れるのはお前だ。その手でオマンコおっ広げて自分で私のペニスを入れるんだ。さあ、やってみろ」
「ふあぁっ、それってすごくやらしいですぅ……」
 だが彼女の両手はゆっくりと大陰唇を引っ張って大きく広げはじめていた。咲き乱れ、濡れそぼる肉の花。その中心には湿った色香を放つ穴がじわじわと愛液を湧かせながらぱっくりと開いていた。
 それを片手指でしっかり止めておいて、りなは開いた手で大司氏のペニスを握りしめる。もの凄く熱くて、火傷しそうなくらいだ。これが私の中に入ってくるんだ――もうそう考えただけでりなの頭は朦朧となる。
 しかしなんとかそれを堪え、りなはペニスをしかるべき照準に合わせる。
「い、……いきます……」
 ゆっくり腰をおろしていく。なんとかペニスの先端が肉襞に触れるが、緊張しているせいかなかなか腰は下に降りていかない。
「あっ、……だめ、あっ、ううぅ、はぁはぁっっくっ!」
「じれったいなぁ――そらっ!」
 待ちくたびれた大司氏は、ためらうりなの腰をぽんと後押しした。
 そのまま彼女の腰はすとんと落ち、一気に肉唇は彼のペニスを根元まで飲み込んでしまった。
「ぅあ――っ!」
 子宮を突き抜かんばかりの強烈でありながら官能的な衝撃が脳天まで貫く。弓なりに背をのけ反らせ、声なき叫びを上げんばかりに口を大きく開き、ガクガクと脚を震わせる。
 今もう軽い絶頂を味わったのかもしれない。
 しかし大司氏は許さなかった。軽く尻を叩いて先を促す。
「ほら、自分で腰を動かすんだ。突き刺さった股間を擦り付けるようにな。さあ、やってみてごらん」
「はあ、あんっ、……あっ、はあっ、はぁあ」
 ようやく我に返ったりなは、大司氏の命令どおりにゆっくりと腰を前後に揺する。まるで彼の腰に自分の突き刺さった肉唇を擦り付けるように。
 それは大司氏の視点から見ればものすごくダイナミックな光景だった。所在なく両手を横で折り曲げ、柔らかい乳房を胸で激しく弾ませながら、やや背を反らして恥骨をくいくいと突き出すりなの姿。腰を微動だにせず少しも動こうとしない大司氏のペニスを自分の中で暴れ回らせるべく大きく上下に、時折円を描くようにうねらせながら、ぐりぐりと愛液に濡れる陰唇をすりつける。
「ふっ、なかなかやるじゃないか、りな。もうすっかり私のペニスなしで生きていけないからだになってしまったのかい?」
「は、ああっ、あっ……ぅう、そうですぅ、私もうこれがないと駄目なんですぅ、もうこれなしだとらめああっ!」
 自分の腰で動かしていた大司氏のペニスが膣の一番感じる箇所にこすれたのか、りなはびくんと体を大きくのけ反らせる。
 それで官能の炎が燃え上がってしまったのか、今度はりなの腰が激しく上下にバウンドし始める。
「さぞかしいい気分だろうな。……午年の正月に気持ち良く馬に跨がれてなぁ」
 あまりの激しさに射精しそうになるのをこらえながら、大司氏はりなの腰のバウンドを助けるように自分からも腰を上下に動かしてみせる。
「は、あっ、あっ、はあっ、ぎ、ひっ……ぐぅっ」
 ぎんぎんに硬くなった大司氏のペニスをりなの膣がきゅううっと締め付けはじめた。
「そらそら、イキたかったら遠慮しなくていいんだぞ。でもその前にその口でちゃんと言うんだぞ、『イクです』ってな」
「ああもうダメ、イク、イク、イクですぅぅぅぅぅ!」
 激しく、更に激しく腰をバウンドさせながら、りなはその頭にまで性感を昂らせ、自らの意識も一気に高みに舞い昇らせる。
「あ、ああああああああああぁぁぁーっ!」
 今際の牝の叫びを上げて、りなの腰はペニスを深くまで飲み込む。
 大きく背がのけ反ったかと思えば、スペルマ注がれる子宮が絶頂の小爆発を何度も起こしているかのように、時おり体を痙攣させる。
 自らも射精の余韻に耽りながら、大司氏は改めて思った。今りなに着せている衣装の選択は何一つ間違っていなかった。淫乱に目覚め、こうやって自ら騎乗位のセックスに快感を見い出すりなにこれ以上のものがあろうものか。

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