05コンビニでの恥辱

 夜ほど暗くはないが、午後の空は雨雲で立ちこめて太陽の光を遮ってしまっていた。さらに朝から降りしきる雨は、その薄暗い天気をさらに憂鬱にさせる。
 こんな日だと、自然と買い物へ行くのがおっくうになるものだ。
 ましてや都会から離れた住宅街の中にあるコンビニともなると、この雨の日の昼間というのは非常に暇な時間となる。
 客のいない店の中で、店員はこの時間の間に掃除をしてしまおうと、モップを持って床を磨いていた。奥の事務室でたいていこもって伝票の整理などをしている店長が何か指図してこなければ、こういう日のコンビニの昼は、ただこうやって静かに過ぎていくのだ。
 だがそんな時、チャイムとともに店の扉が開いた。
 マニュアル通りに扉の方を向いて、客に元気よく挨拶しようとする。
「いらっしゃいま――?」
 店員は絶句してしまった。
 入ってきたのは若い女の人。身長は、扉横の身長シールから判断して百五十センチ後半。ウェーブのかかった長い髪は、降りしきる雨のせいかなかば濡れている。
 しかし店員が驚いたのは、その服装であった。
 ボンテージを思わせる、前開きチャック付きの黒いラバーのVフロントTバックのスキャンティ。上半身にはボタンのないレースの半袖カーティガンしか身にまとっていないようである。その隙間からちらちらと、柔かそうな胸の谷間と縦筋にそって控えめに開いた臍の穴が挑発的にのぞく。左太ももには白いリングガーターを着け、異様なくらいヒールの高いパンプスを履いていた。
 さも歩きにくそうにパンプスをカツ、カツと鳴らすと、彼女――美露は買い物カゴを持って店の奥へと入っていく。
(い、いやぁ……店の人にジロジロ見られてる……)
 胸の上に組む腕に、すっかり硬くなった乳首の感触を覚える。
 さっきから彼女は鳥肌を立て続けていた。今は店の外で隠れて待っている俊司に、この服装を着せられて鳥肌が立ち、さらにそれで買い物に行くように言われて再び鳥肌を立たせた。
「そんなのいやぁっ! こんな格好で外に出たら変に思われるじゃない!」
「じゃあ別にいいよ。だけど冷蔵庫の中にはほとんど食べ物がないよ。買い物にいかないなら、これは全部僕のもの。君は食事抜き。お腹空いたまま、エッチしたい?」
 理不尽もいいところだったが、そのまま強制的に、彼女には耐え難いほどに恥ずかしい買い物の支度を体に施されて、また鳥肌を立たせる。
 何と、買い物のリストを、右乳の下、ちょうど正面から見て影になるところに小さくペンで書き込まれたのだ。それを見るには、自分で乳房を持ち上げて胸の下を覗き込むようにして見なければならないのだ。はたから見れば、まるで自分で片乳を揉んでいるようにしか見えない。おまけに、書いたあとすぐカーティガンで覆って、買い物の内容を暗記させようとしない徹底ぶりだ。
 そればかりでない。買い物に必要な金はフィルムケースの中に入れられ、それをこともあろうに彼女のヴァギナの奥に押し込まれたのだ。これには美露も鳥肌を立たさざるを得ない。
「ひぃあっ! ……こ、こんなのどうやってお金出せばいいのよぉ!」
「子供を産むように、大きく股を開いて力めばいいのさ。なぁに、いろいろ試せばすぐにコツつかめるって。そうそう、おつり貰ったらちゃんとそれもケースに入れてオマンコにしまっておくんだぞ」
 それで俊司は外に出そうとした。嫌がる美露の腕を引っ張って、玄関から放り出した。湿っぽく冷たい空気と廊下のコンクリート床の冷たい感触が、またも彼女の鳥肌を立たせる。
 君のために買ってあげたんだよ、とパンプスを履かされたが、それは歩くのさえ不自由なほどにヒールが高かった。ほとんど爪先立ちでもしているような感覚で、尻をぺちぺち叩かれて先をせかされながら、ゆっくりと歩く。
 もう彼女は逃げられなかった。後は傘の中にも入らせてもらえず、冷たい雨に体を濡らされて鳥肌をざわつかせながら、このコンビニに入ったのである。
(あぁ……アソコのケースがコリコリしてたまらない……)
 思わず腰をわずかに引いて股間を押さえたが、やや突き出し加減になった臀肉に、店員の視線が突き刺さって、慌てて姿勢を正す。
(Tバックだったんだ。いやっ、お尻丸見えじゃない!)
 早く買い物をしないといけない。彼女は大慌てでカーティガンをめくると、右手で右乳を持ち上げて買い物のリストを見る。
 全部で二十数品目。詳しい品名と数量が小さな文字でびっしりと書かれていた。そこには、まるで何かの呪文のようなまがまがしいオーラが漂っているようにも思えた。
 ただでさえ多いのに、しかも今この格好でこれほどの品を買うというのは、ある意味拷問に等しい。しかし逃げられない。とにかく買い物を済ませてしまわないといけない。
 カツカツとパンプスを鳴らして美露は買い物を急ぐ。走ればバランスを乱して転ぶのは明らかだったので、できるかぎり早歩きで動く。
 そのそわそわした様子は、店員には丸見えだった。
(相当な変態だぜ、あの姉ちゃん)
 彼女が右乳を持ち上げていたのもしっかり見たし、動いている時に落ち着きのないモンローウォークで歩いているのも見える。
(ここがバイト先じゃなかったら、外に連れ出して犯してるぜ)
 まるで値踏みするような目で、店員は彼女の肢体を眺めていた。その顔は無意識ににやけていた。
 もちろん美露もその視線を感じていた。
(いやぁ、見ないで……)
 時々右乳を持ち上げて覗き込んでは品物を確認しながら、彼女はもう何度ともしれない鳥肌の波を立たせる。
 品目の順番もまた巧妙であった。食パンの次はアイス、その次はガム、その次はジュース、その次は菓子パン……といったように一見ばらばらの配列で書かれていた。だが全くの順不同というわけではない。上からの順番でいけば店内をあちこち歩き回らないといけないように巧妙な順序で並んでいるのだ。
 もちろん最初にリストを見てあらかた買うものを把握しておけば、美露は二度も三度も同じところへ行く必要がない。だがリストには上から順番に1、2、3……と番号がふられており、いかにもその順番で買いに行かねばならないように心理的な作戦が施されていた。おまけにリストアップした品物の中には名前を読んでもそれが何か分からないようなものも混じっており、たとえ彼女が買うものを整理して順番に移動しようとしても結局それを探さねばならないように差し向けていた。
 だがそんな俊司の巧妙な心理的ブービートラップにひっかかる以前に、美露はほとんど裸同然の恥辱的な格好でコンビニに入ったことにひどく動揺してしまっていた。すっかり俊司の術中にかかった彼女は、コンビニ店内のあちこちを、やや前屈みになって腰を降りながら頼りなげに歩いている。
 その様は、迷路に迷い込んだアヒルのようだ。
 コンビニは袋小路のない簡単な迷路だ。空間の中にあるのは三つの陳列棚。出入り口は一つだけ。クリアするには通過するべきチェックポイントの間を的確に通過して、入ってきたところから出ればいい。
 なのにこの露出狂のインランアヒルは、時々股間を押さえてもじもじしながら、同じところを右往左往しながら迷い続けているのだ。
 しかも、レジの前にあるガムの陳列棚に来れば、
「くぅぅぅぅぅ……んぅ」
 と小さく鳴きながらレジに尻を突き出してくれる。履いているパンツが裂けんばかりに。
 店員はそんな彼女が愉快でならなかった。我慢していても笑いはこみ上げてくるし、下半身はむらむらと立ち上がってくる。
(へっクソ、この変態パープー娘めが)
 敬遠の中にも下心をないまぜにした店員の目線は、美露の体を火照らせる。
(きっとあの人、私の事どうしようもない変態女だって思ってる。あぁ……私ダメ、ダメな女になってる)
 すっかり赤く染まった頬。目は涙でにじんている。
 それでも何とかリストの品物総てを買い物カゴに入れて、美露はいそいそとレジに向かった。
 これには店員も圧倒された。
 淫乱な女のものとは思えない、美しく形の整ったほどよい大きさの美乳が、乳首と乳肉の半分だけをカーティガンで隠して彼の前に迫ってきたのだ。その胸の谷間は遠目で見たより深く、汗か雨水か、その底にひそんでいる水滴幾粒かが、コンビニの蛍光灯に照らされて輝いている。
 失いそうになる理性を何とかつなぎ止めて、とにかくマニュアルどおりに挨拶する。
「いらっしゃいませ」
 込み上げてくるいやらしいにやけ笑いを何とか堪えて無表情を装いながら、品物のバーコードを読み込んでいく。
 しかしその品物の中にエロ雑誌やコンドームを見つけると、今度は下半身が苦しくうめいた。しかも、そういった物のバーコードを読み取る時に、目の前の半裸の女はきゅっと肩をすくめて一層体を火照らせて恥じらうのだ。
「……タマってるんですねぇ」
 思わず下卑たことを口に漏らす店員。
「いやぁ……」
 両手を胸の谷間にあてて縮こまり恥じらう美露。
「随分発情してらっしゃいますねぇ」他の品物のバーコードを読みながら、店員は思うままに言葉嬲りを始める。「オマンコ熱いんスかぁ?」
「ひぃっ!」
 美露は短い悲鳴を上げた。図星だった。さっきから膣の奥深くに突っ込まれたフィルムケースが肉壁にこすれて、肉壷を卑猥な感覚ですっかり熱くしていたのだ。
 ようやく、全ての品物を読み取り終え、金額を告げる。
「あ……」
 途端に凍り付く美露。
「どうしたんですか? お金ないの?」
 金は持っていた。多分、金額も足りているはずだ。
 しかし……ある場所が問題だった。
「あるんなら早く出しなよ」
(だ、出さないといけないのね……ここで、アソコの中のあのケースを)
 こきゅっ、と喉を鳴らし、美露はゆっくりとスキャンティのファスナーに手をかける。そのまま、時々引っ掛かりつつもゆっくりと開けはじめる。
「お、おいちょっと――!」
 ファスナーが開いたその奥には、陰毛なき陰唇が赤黒い襞を間からはみ出していた。
「……お、お金だしますからっ、み、見ないで、見ないで下さいぃ!」
 じかにコンビニの床へ腰を落とし、できる限り股を開いて両手でぬらぬらと粘液で濡れそぼった陰唇と肉襞を広げる。
「ん、うううううううううううっん!」
 意識を膣壁に集中させて、彼女は力み始めた。
 後押しするのは、臨界を超えんばかりの羞恥心。
(早く出さないと……今、自分の他に誰か来たら……)
 しかし、焦る彼女の思いとはうらはらに、ケースは膣奥に収まったまま、動きもしてくれない。
(お願いぃい! 動いてぇ、出てぇ!)
 美露は必死に力んでは、すっと力を抜いて休み、また力むというサイクルをくり返す。
「出ない、出ないよぉ、お腹の……ケースが出て来ないよぉお。出てよぉ、出てぇ!」
 彼女の声にも焦りの色が濃く伺える。すうはぁすうはぁせわしなく浅い呼吸にも、追い詰められて切羽詰まった思いがこもっている。
 赤くなった頬に伝う、絶望の涙。
「お、おい……」
「きうぅぅぅぅぅぅぅぅうんっ! うううううううううぅんっ!」
 さっきは下心を膨らませていた店員も、何かとんでもない事態に陥ったような気がして慌て始める。
(こんな時に客来たらやべェよ。やっぱ店長連れてこないと――)
「――あっ」
 唐突に美露が声を出す。なにか体につかえていたものが外れたかのような快感をどことなく秘めた短い感嘆の声。
「動いた……動いたぁ! あ、あともう少し――くんんんんんんんっ!」
 店員の目には、そんな美露の姿がまるで子供のように健気でかわいらしく映った。
「ああああ、やっと出る、やっと出るよぉお!」
 充血して濃い赤みを帯びた美露の濡れそぼった肉襞の中から、ゆっくりと何かが出てくるのが店員には見えた。
 それはやがて透明な糸を引いて床に落ちて転がる。
 フィルムケース。中には一万円札が巻かれて入れられていた。どうやら、これが彼女の持ち金らしい。
 何度も何度も強く力んでいたせいなのか、あるいはケースを産み落としたときにイってしまったのか、美露は大きく股を開いたままの格好でぐったりしていた。肩で息をするのが精一杯といった様子で、立つことも、出てきたケースを拾うこともしようとしない。
 代わりにケースを拾い上げる店員。体液ですっかりネトネトで、すごく暖かい。
 キャップを開けて中の一万円札をつまむと、それをレジに入れて精算してお釣りを出す。
「ほら、お釣りだよ」
 レジのカウンタの前に座り込んだ美露に、店員はカウンタ越しにお釣りとケースを差し出す。
 なんとか呼吸を整えた美露は、手を差し出してそれを受け取る。俊司に言われた通りに、小銭と千円札をケースに入れる。再びこれをヴァギナの中に入れれば、あとは買ったものを持って足早に店を出るだけである。
(もう、もう早く家に帰りたい!)
 幸いお釣は五円玉と一円玉だけだったので、なんとかお釣りの全てをケースの中に収めることができた。
 キャップをしめると、彼女はケースの底を赤いアワビにそっとあてがい、ゆっくりと力を入れてそれを沈めていく。
「あああぁっ!」
 ヴァギナの入り口を襲う圧迫感に思わず美露は背をのけ反らせる。しかしそれでも彼女は、肩で浅く激しく息をしながら、中指でケースを押し込んでいく。
 ケースはすっぽりと彼女の胎内に入って、外からは全く見えなくなった。
 思わず口から浮ついた安堵の溜め息を漏らす美露。つられて店員も溜め息をつく。
 その時、彼女と店員をおどかすようにチャイムが鳴った。
(あ、やべ――!)
 もう遅い。
 扉にはカップルが一組、手を繋いで入ってきた。
 どちらも二十代前半といった顔立ちをしており、半袖の青いポロシャツと鈍色のズボンををペアルックで着ていた。
 雨の中、二人はきっと相合い傘で甘ったるくも健康的な会話をしていたに違いない。それほどに二人の身だしなみはきっちりしていて、難無い着こなしをしていた。
 その二人の方を向いて、美露は明らかに目を丸くして悲鳴を上げんばかりに口を大きく開けた。
「あ、あぁ……!」
 するとカップルの男の方が心底驚いたように目を見開き、彼女を指差した。
「み、美露っ! お前こんなところで――」
「いやあああああ! 見ちゃ駄目、見ないでヨシくん、お願いだから見ないで、いや、いやぁ、やああああああぁぁぁ!」
 さっきまでぐったりしていたのが嘘のように、彼女はばっと立ち上がってその場から駆け出した。しかしヒールの高いパンプスのせいか、扉の付近でバランスを失って転ぶ。しかしそれでも懸命に這い出して立ち上がると、扉を激しく開け放って、雨降る外に駆け出してそのまま見えなくなった。
 その後しばらくして、どこに潜んでいたのか、ラフな服装の男が傘をさして雨の中に駆け出して彼女の後を追い掛けていった。
 まるで嵐が過ぎ去った後のような雰囲気の中、チャイムだけが寒々しく店内に鳴り響く。
「おい、どうしたんだ? さっき大きな声がしたけど」
 店長が店の裏から出てきた。店員はどう答えたらいいものか考えあぐねた後で、
「いや、ちょっと気の触れた人が……買ったもの忘れて、叫んで何処か言っちゃったんですけど……」
 要領をえない店員の言葉を聞いて、店長は首をかしげつつそのまま事務室へと引っ込んでいった。
 暫くそこに佇んでいたカップルもさすがに気まずくなったのか、踵を返して店の外へ出て行ってしまった。ドアを開けた際に、男の方が女からなにか問いただされたようであったが、彼は「ああ、いやちょっと……」と曖昧に答えるだけであった。
 店員はレジの前の床にちらりと目をやる。さっきあの変態女が座っていた辺りにちょっとした水たまりができていた。
(せっかく掃除したのにな。まぁ存分に見せてもらったお代としては安い方か……)
 頭を掻きながら、彼はふぅっと溜め息をついた。そして、また静かな時間が訪れる。
 雨はますますその勢いを増していく。

 道路を行き通う車。歩道を通る人。立ち止まればその顔を覚えられてしまうだろう。そうなればもうこの街で生きていくことができなくなる。いや、この世の中でまともに生活することができなくなるかもしれない。「変態」とか「露出狂」とかいう不名誉なレッテルを貼られ、二度と陽の照る場所に出てくるのを許されないだろう。
 それが怖くて、美露は無我夢中で走り続けていた。しかし異様に高いヒールのパンプスを履き、しかも膣内にケースを入れた状態では普通に走ることができないから、結局アヒルの早歩きよろしく、尻と胸をたぷたぷ揺らしながら、腰を小刻みに横振りして脚を小股に動かすことしかできなかった。
 どこを通っているのか、どこへ行こうとしているのか、彼女自身にも分からない。ただ自分を見ようとする者全てから逃げるためにひたすら走り続けていたのである。
 そうして彼女が行き着いたところは公園であった。そこは、俊司と非運の出会いをした場所であると同時に、それ以上に悲しい思い出のある場所でもある。
 そこに来た時にはもう、美露の体はぐっしょりと濡れていた。濡れきった髪は質感を損ない、脇目を降らずに走っていたために頬や首筋、肩のあたりにまとわりついている。カーティガンも雨水を吸って軽やかさを失っており、しかもすっかり腋に追いやられてしまっているために彼女の胸は雨にさらされてつやつやと濡れている。ラバー地のスキャンティはそれ自体では水を弾いていたが、ファスナーが開きっぱなしのために、彼女の陰部まで雨水がしみ込んでしまっている。
 簡易舗装がはげてでこぼこになった公園の舗道から外れ、横の茂みの中にしゃがんで身を潜ませると、そのまま体をうずくまらせて彼女は嗚咽を漏らす。
「ひうぅ……ふっくぅ……ぅぅ」
 つやつや濡れる茂みに漂う青い臭いが、俊司のスペルマの特異臭を連想させる。雨雫が滴り落ちる中で、美露は冷たくなった俊司のスペルマを体中に浴びせかけられているような気分に陥る。
 その頭の中には、さっきコンビニで見た男――ヨシくんの驚いた顔がはっきりと映っていた。あの表情には、別れた女を久しぶりに見た驚きよりも、裸同然の格好で大股開きのポーズをとっていた女を目の当たりにしてのショックと軽蔑の感情が色濃く交じっていた。
 まさしく現実に展開された覚めない悪夢であった。
 彼女の肢体は、路傍の石のように丸く硬く固まっていく。
 俊司が公園の茂みの中に美露を見つけだしたのは、かなり時間が経ってからだった。
「こんなところにいたのか。心配したよ。すっかり体冷えきってるじゃないか」
 傘をさしたまま美露の側に寄り添うと、その背中を優しく撫でた。だが彼女はじっとうずくまったまま動こうとしない。
「さあ、家に帰ろうか。ほら、立って」
 そう言って背を叩いてはみるものの、彼女は小さな嗚咽を漏らすまま、そのままの格好で縮こまっていた。
 仕方なく俊司は、彼女の肩を握ると拳に力を入れて無理矢理起こした。
 上体を起こした美露の顔は、雨水で濡れているのか涙で濡れているのかさっぱり分からなかった。起こしてしばらく経たないうちに、彼女は堰を切ったように大声で泣き始めた。
「いやああぁぁ……。私……私……恥ずかしい格好ヨシくんに見られた……見られちゃった……こんなの、こんなのいや……死にたい、もう死んじゃいたいよぉ!」
「誰? ヨシくんって」
 肌の雨水を流し落とすように彼女の丸い肩を撫で付けて俊司は聞く。
「私の、……彼氏」
「彼氏? ああ、そういや美露さんフラれたって言ってたよね」最初に美露と会った時のような優しい声色で相槌を打つ俊司。だが、それだけだった。「で?」
「……え?」
「モトカレに自分の格好見られて、買ったもの店に置いたままスタコラサッサとここまで逃げてきたの?」
「だって、恥ずかしかったから――」
「僕のお金で買い物行ったんだよね。買ったもの置いたまま店に出ても、買い物をしたことにはならないんだよ。どうするんだよ、買ったやつ」
「……、――っ!」
「どうするんだって、聞いてんだよ俺はぁ!」
 美露の前髪を荒々しく鷲掴みして、俊司は険しい表情を彼女に近付ける。すっかり怯えきって彼女の口はふるふる震えるだけで動かない。
「黙ってちゃわからないだろ? こんなんだから、モトカレにふられたんじゃないのか?」
 挑発の言葉に唇を噛んだ美露だが、その口から出たのは泣き声だった。
「ヨシくんに、ヨシくんに恥ずかしい格好見られたぁ!」
 再び地面に伏せって泣こうとする美露の前髪を、さらに強く鷲掴みにする。
「そんなにモトカレに未練タラタラなのかよぉ。……じゃあこの場で、お前の相手が誰なのかはっきりさせてやろうじゃないか!」
 俊司は美露の体を後ろに思いきり突き飛ばす。背を地面についた彼女の足は、不意をつかれて力なくその股を開く。すかさず俊司はその中に体を潜らせる。
「い、いやあああぁぁ――んんっ、むんぐぅぅぅぅぅぅ!」
 口を押さえられ、下腹部に体重を乗せてくる俊司の胸を空いた両手で叩く美露。
 だが、もう片方の手指で乳首をパチンと弾かれると、びくんと背を跳ね上がらせた後に両腕で胸を隠そうとした。だが、荒々しく乳肉を揉みしだく彼の手を止めることはできなかった。
「んんんんっ、むんんふぅぅんっ」
 開かれた足を懸命に動かしても対した抵抗にならない。
 思いきり身をよじらせれば、股間にあてがわれた俊司のすっかり固くなった肉茸をいやが応でも感じることになる。
 今まで何度もそれで散々に貫かれ汚されてきた美露にしてみれば、俊司のその部分は身の毛もよだつほどに憎いはずの器官である。
 だが下腹部に屹立した俊司の肉茸の輪郭と、ズボンの布地越しに伝わってくる燃えるような熱さを感じた時、彼女の体からすっと力が消え失せる。
(なんで? あぁ、嫌なはずなのに、体が、私の体が感じてる……)
 下腹部にあてがわれた固い肉茸が、ズンと強くおしつけられた。
「うんっ……」
 押さえられていた口から喘ぎ声が漏れる。欲求不満そうに聞こえるその声に、美露自身も驚く。
(そんな。こんな声いやっ!)
「なんだ、口ではあーだこうだ言っといて、実際ヤラれる段になればすっかりソノ気なんじゃないか」
 さらに腰を突き上げるように動かして肉茸を押し付ける俊司。
「ぬぅんっ、うんっ、うんぅっ――あ、はぁあ、ああ、あんっ」
 口から手を離されると、甘美な熱を帯びた喘ぎ声がとめどなく漏れる。
「全く、この淫乱め」
「ああっ、ち……ちがっう、あっ、あっ、ああっ!」
「じゃあ本番行こうか、な」
 ズボンのジッパーを開けて、中から飛び出てきたそれは、我慢の限界を胴体に醜く浮き立つ青い血管で見せつけて高く聳えたっていた。
「ひっ」
 美露の怯え方は、まるで首元に包丁か何かの切っ先を突き付けられたかの時のようなものであった。それほどに、俊司の肉茸は異様で威圧的なオーラに暖かく包まれていた。
 その根元を指で持って、彼はラバースキャンティーの上から美露の下腹部を肉茸の亀頭でパンパンと叩く。ぱんぱんに膨れ上がった亀頭は「今からここに入ってやる」と言わんばかりにパンパンに膨れ上がっている。
 間髪を入れず、肉茸はスキャンティーの開きっぱなしのファスナーをくぐり、奥に潜んでいた肉襞の中心を串刺しにする。
「うああぁぁあ!」
 視点をさまよわせて、うわずった悲鳴を上げた。ヴァギナを分け入って入ってきた衝撃は神経までも貫き、美露の頭の中でスパークした。
「あぁ、あぁ、あぁっ、あっ、あああっ!」
 あとは、欲望のままに強く突き上げてくる俊司の腰の動きにあわせるように、亀頭のエラで膣壁を抉られる奇妙な感覚に下半身が浮き上がるような気分を味わいながら嬌声を上げるだけだった。
 ねちゃ、ねちゃ。
 肉のぶつかる音とともに、激しい交合で滴る粘液の音。茂みの外で地面を叩く雨の音よりそれは大きく卑猥に二人の耳に届く。
「いひ、いひひひ。ああ、すごくいい、いいよすごくヒヒヒ。このまま、このまま思いきり美露さんの子袋に僕の精液を叩き付けてやる。今一体そこに何があるのか、ちゃんと自覚しろぉお!」
「ひっ、ひぃいいいいいいいいっ!」
 正常位のラーゲをキープしつつも、俊司は美露の腰を持ち上げ、その中に向かって自分の腰を激しく叩き付ける。さっき以上に、粘液のねばつく音が大きく当たりに響き渡る。
「ぃあああああああぁぁあああああああぁあぁ」
 雨に打たれながら、水滴を散らしてたぷたぷと激しく揺れる乳房。先端はすっかり勃起して、木々の間から見える雨空を一心に見つめている。
 美露の目も、乳首同様に雨空を見つめていた。だが、体を揺さぶるほどに肉壷を打ち付ける衝撃にその焦点は定まらない。
「おらぁ、イクんならイっちまえぇ!」
「ああぁあ……い……いぅうぅ、イクぅう、イクうぅう! イクぅううぁ……」
 言われるがままだった。美露の意識は俊司の肉茸の激しい動きにすっかりとらわれて、まともに物を考えることもままならない。
「イクのぉ、イクぅう、イクうううううううう!」
 深く膣内に入り込んだ肉茸の根元を優しく包み込んでいた肉襞がぴくぴくとひくつき、その根元の方がきゅっと締まる。
 腰から手を離し、俊司はすかさず美露の乳房を握りつぶす。
 両方の人さし指で、それぞれの乳首をピンと弾く。
「ひぃあああぁぁっ!」
 大きく背をのけ反らせ、嬌声を裏返らせて。
 子宮の中に流れ込んでくる生暖かく粘っこい液体を感じながら。
 美露はそのままぐったりと、汗と雨水に濡れた体を地面に横たえた。
 絶頂の余韻でびくびくと震える肉襞から、萎えた肉茎が抜かれる。その後、肉穴からねっとりとスペルマが這い出るように流れ出てきた。

 薔薇の香りのする透き通る赤い湯に、美露の体が浸かっている。だが彼女にはこの体が自分のものように思えなくなっていた。
 その体は好きでもない男に弄ばれ何度も絶頂を味わった。しかも回数を重ねるごとにいたぶられることに快感を見い出して喜んでいる。
 美露には不愉快でしかたない。不愉快になればなるほど、赤い湯の中にひたる自分の体がいやらしく目に映る。
 散々辱められて乱暴に揉みしだかれているのに、その先端をビンビンに尖らせる乳房。
 膣内で自分の場所のように暴れ回る肉茸に辛抱できず、相手の劣情を煽るかのように悩ましくうねるウエストのくびれ。
 そして彼女の目から見る事が出来ないが、今日恥ずかし気もなく人の目に触れるところで挑発的にくねり揺れていた臀肉に、グロテスクな男のモノを美味しそうにくわえこんだ恥裂。
 しかしそれ以上に許せないのは――拒みもせずに何ccもの精液を溜め込み、彼女の意志を無視して妊娠へのカウントダウンを始めている子宮。
(――こんなの、私の体じゃない!)
 きっと私が寝てる間に、俊司が体を入れ替えたんだ。何処か自分所有の手術室で短い時間の間に彼のすることなすことに無情の快楽を覚え、さらに相手を挑発するような反応をしてしまう体に入れ替えたんだ――彼女はありえもしない妄想をし始めた。
(私の、ちゃんとした体はどこなの? こんなエッチで淫乱な体、早く捨ててしまいたい……)
 自分の乳房をくやしそうに両手で握りつぶすと、唇を噛んで目に涙を浮かべる。
(こんな体、こんな体っ!)
 乳肉を潰さんばかりに強くひねる。
「っんううう!」
 ちりちりとした痛みが、当然彼女をさいなむ。
 しかし彼女はやめなかった。
「こ……こんな体――っうんんんっ!」
 美露は、自分の体が許せない。
「こんなのが、こんなのが、こんなのが気持ちいいの? 何でこんなので感じるの……!」
 彼女の手が湯の中に入り、肉襞やにわかに充血して大きくなり始めたクリトリスをつねる。
「ふぎぃぃぃぃぃっ!」
 陰唇の痛みは脳天を貫いた。
 だがその後に、心地よい疼きが沸き起こる。
 ――もっとかまってほしい、もっと虐めてほしい!
 疼きは美露の意識にそう話し掛けてくるようであった。
「こんな……」
 再び彼女は、未だにぴりぴりとうずく秘裂に手をかける。
「こんな……ぁ」
 肉襞に指をかけると、もうそれだけで背筋に快感が駆け抜けた。
「こ、こんなぁあぁ!」
 指はそのまま、性器の入り口に入っていく。
「おあああぁあ、あおおおおおぉお!」
 憎々しげに膣の壁を荒々しく暴れ回る美露の指。
「ああ、ああっ、あっあ、あああああっ!」
 涎とともに口から漏れる嬌声には、彼女の自分の体への憎しみはなかった。
 俊司の入れた薔薇風呂の中で、いつしか美露はマゾヒスティックなオナニーを始めていた……

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