07ランジェリーショップにて
「私の……変態……」
朝、自分に対して思ったことを美露は数時間後口にした。
全裸の上からまとった半透明ビニールのフード付きレインコートを見ながら。
抵抗したのにいとも易しく俊司に引っ張り出されると、彼女はそのままその格好で街を歩かされていた。
外は大雨であった。降りしきる雨の中、さすがに外に出歩きたいと思う人間はいないようだ。それだけがある意味彼女には幸いであった。
だが、俊司に傘もさしてもらえず、素肌からじかに着ているレインコートに打ち付ける雨はあまりに冷たかった。氷のように冷えたビニールが肌に当たるのを、裸でいることの恥ずかしさとともに美露は歯を食いしばって耐えなければならない。
「私の、変態……」
彼女の乳首はすっかり尖り切って、胸のこんもりと乳肉で盛り上がった辺りに小さなテントを作っていた。他のところ以上に、レインコートの冷たさを強く感じる。しかし、乳首はさらにそれで熱くなっていく。
しかも歩くたびにこすれているのだ。
「あっ……、――っ!」
乳首を押さえようとする彼女の手を、俊司が握って止める。
「……やめて」
「だめだ。体を隠さない」
「許して……乳首が、乳首がもう……」
「痛いくらいにピンピンなの? ――うわぁ、いっちょ前に二つテント張ってるじゃん」
「い、いやっ!」
俊司に胸を覗き込まれて彼女は身をすくめる。だがすぐに羽交い締めをかけられて背を正される。
「ほら、隠さない」
「ひうんっ!」
胸を張ると、乳首が更に敏感にレインコートの冷たい感触を強く感じる。
「美露さん、裸でいるのが凄く気持ちよくなってるんだね」
「そ、そんな……違うぅ!」
体の鳥肌を立たせながら、とっさに否定する美露。しかし他人に視線に今の姿がさらされた時の恥ずかしさを想像しただけで体を火照らせる彼女は確かにここにいた。
「違うわけないよ、きっとアソコもジュクジュクなんだろ。確かめてやるよ」
「あ、やぁっ!」
おもむろに俊司の手がレインコートの前ボタンの間をくぐり、下腹部をまさぐってバイパンの陰唇に辿り着いた。
実際肉襞が中からこみ上げる熱いもので湿っぽくなっているのは、美露自身にもわかっていた。しかし、それが自分以外の人間に知られることがひどく恥ずかしい。
「ほらやっぱり。オマンコのビラビラがネチョネチョだよぉ」
「くぁあ……」
陰唇と肉襞の谷間をぐりぐりとたどられて、美露は思わず口を半開きにして喘ぐ。
(外でこんなことされて、ひどく感じてる……腰がたまらなくなってる、アソコも我慢できないぃ! 私の……変態っ、ヘンタイィィ!)
「そ、そうなのぉお! こんな格好で外に出されてから私、体がウズウズして仕方ないのっ!」
唇をぷるぷると震わせて美露は告白した。
「ほらやっぱり。最初っからそう言えばいいんだ」
あきれたように俊司は言った。だが、それで終わりにしなかった。
「ヒあぁあっ!」
彼の指が肉華を奥深く貫いたのだ。
思わず体を硬直させた美露。だがこの突然で不粋な来訪者を、彼女の膣口は離さんばかりに締め付けた。膣壁までもそれを優しく包み込む――お願いずっと私の中にいて、とばかりに。
しかし俊司はすぐに指を抜いた。
「ひゃっ!」
ひどく飢えたように空虚を感じた膣内には、彼の指の形と硬さと温度だけが残る。
「なんだか凄い締め付けだったぞ。相当飢えてるね、美露さん」
「ああ、あ……」
腰を引いたままの美露。
太ももに生暖かくて粘っこい液体が伝うのを感じる。
(ここまで感じてる、私って……この、変態)
彼女は自分の体が、俊司と会う前とすっかり変わってしまっていることに恐怖を感じると同時に、それを自分で罵ることで卑猥な興奮を覚え始めていた。
「あーあー、レインコートがお尻にくっついてスケスケになってるよ」
言われて美露は「きゃっ!」と叫んで尻に両手を当てる。彼の言う通り、レインコートの布地が尻の皮膚にぴっちりひっついて、その輪郭と肌の色があらわになってしまっている。
「いいじゃんエロエロで。隠さないでそのまま歩こうか」
だがさすがに美露は尻にひっついたレインコートを引き剥がした。
再び歩き始める二人。
雨は勢いを弱めることなく、傘持たぬ美露のレインコートに降り注ぐ。
これほどの雨になると、レインコートの中にも雨水がしみ込んでくる。特に襟元あたりに冷たい雨水が流れ込んでくる。
それは最初こそ微々たるものだったのだろうが、時間が経つにつれて次第に多くの水滴が群がり、さらにそれらがくっついて大きな水滴となる。
ついにその大きな水滴の一つが美露の体を伝う。レインコートの内側で何にも邪魔されることなく、水滴は彼女の胸の谷間を通り、腹の筋を通って臍の穴に入ってくすぐると、そのまま稲妻さながらの奔放な軌跡を引きながら下腹部を伝い、膨らみかけているクリトリスのあたりにじわりと染み込んでいった。
「ひっ!」
突如クリトリスを襲った冷たい感触に、美露は背を跳ね上げた。
「おいおい、いきなりどうしたんだ? ええ?」
「あ、あ……」
「ええ? 詳しく説明しろよ。どうしたんだ?」
駆け寄って詰め寄る俊司。
言うべきなのか、言わなければならないのか……水滴が当たった恥ずかしい部位の名称が彼女の口をためらわせる。
そして、言ってしまった。
「襟から雨の水が入り込んで……く、く、クリトリスに当たった、の……」
「へえ! 水滴が当たるほどに美露さんのクリトリスまでビンビンなんだ」
(そんな大きな声で言わないでぇ!)
思わず腰を引いて両手を股間に当てる美露だったが、前に回り込んできた俊司にその手を払いのけられてしまった。
「それじゃあそのビンビンのクリトリスがどうなってるか確かめてみようかぁ?」
わずかにめくれ上げれば簡単に股間を覗けられそうな短い丈のレインコートの裾をまくって、俊司は彼女の秘部に顔を潜らせる。
「んー、おー。あったあったビンビンのクリトリス。御挨拶に舐めちゃおっと」
「あ、ひゃあぁ!」
ぬちゃ、ねちゃ、とわざとらしく音をたてられながら、美露のクリトリスが俊司の舌先で弄ばれる。雨が地面を打つ音で辺りは騒がしいというのに、彼の舌のねちゃつく音は執拗に彼女の耳について離れようとしない。
「んああぁ、ああああ……」
足がガクガクする。このままだと自分で立つことすらままならない。すっかり体中に心地よい疼きが回り、力という力が持っていかれそうになる。
しかしこのまま体の力に変わって、この快感が自分を包み込んで絶頂に至らしめてくればどれだけ気持ちがいいだろうとも美露は思った。
だが、すんでのところで俊司は舌を引っ込めてしまった。
「さ、とっとと行かないと。ほら、歩いて」
「ん、うぅぅ……」
蛇の生殺しのような愛撫に、美露の秘芯は淋しさにうちひしがれる。もっと構ってほしいという気分で、さらに自らをたまらないほどに昂らせる。
思わず美露は鼻からうめき声を出してしまった。
(このまま私、どこに連れてかれて、どうなっちゃうんだろう?)
火照った体を持て余しながら、美露はそんなことを考える。
彼女は俊司から行き先を教えてもらっていない。
ひょっとしたらこのまま商店街までつれていかれるのかもしれない――そう考えたとたん、美露は股間に熱い愛液がじわりと湧き出るのを感じた――雨とはいえ、商店街なら多少の人がいる。裸にレインコートをまとっただけの自分が現れたら、みんな何と思うんだろう? そして私は? 私は沢山の目に裸同然の姿をさらされて、どうなってしまうのだろうか?
だが、それらはあくまで推論に過ぎない。結局どこに行って何をするのかわからないままだ。しかしそれでも彼女には妙な確信を感じていた。
多分、行った先で自分はきっとおかしくなるだろう、と
美露の推論はニアミスだった。
随分歩かされて着いたところは、商店街のアーケードの途切れた通りを少し進んだところにある店であった。
小さな雑居ビルや一戸建ちが立ち並んでいるだけの随分ひっそりとした界隈なので、商店街の客はこちらに見向きもしないようだ。しかしすぐそこに見えるアーケードのすぐそこまで人の行き来が見える。それを見ただけで美露の胸が強く脈打つ。
そこが店とわかるのは、白地にショッキングピンクで、どこかサイケデリックな英文字で屋号が描かれた看板が道端にあったからだ。
《LINGERIE SHOP NIGHT QUEEN》
看板のとげとげしい矢印は小さなビルの一階を指差している。
「さ、いくぞ」
わずかにわなわなと震える美露の尻をレインコートの上から叩いて、そのまま店の中に入れようとする。
矢印の指差すガラス扉には内側から黒いフィルムが貼られており、中が見えにくいようになっている。しかしその中にいる何人かの人の影がわずかに見えていた。
それを見たせいで、美露の足はすっかり固まって動かなくなってしまっていた。
「だめ、人がいる……」
「そりゃ店なんだから人はいるだろ」
「そんな、そんな、い、いやっ」
「何言ってんだよ、コンビニにも人がいただろ?」
「い、いやっ! コンビニのことは言わないでっ!」
「何がだよ、嬉しそうに脚おっぴろげてマンコからケースひり出してたの誰だったんだ?」
「ああ、やめて、やめて……」
毛穴から吹きださんばかりの恥辱の思いに耐えられず、美露はその場にへたり込んでしまった。
背中と尻の肌がレインコートに引っ付いて透ける。さっきから降っている雨が透けた場所に鮮やかな水玉を作る。
俊司はしばらく水玉に覆われた美露の体を楽しんでいたが、彼女の肩に手をかけて抱きかかえるように起こしてその場に立たせた。
「せっかくプレゼント買ってあげるって言ってるんだから。ほら、入るよ」
手を引っ張る俊司に、美露は抵抗一つせずただなすがままであった。
(凄く怖い……どうなってしまうんだろう? 私もう駄目になっちゃうの?)
茫然自失とした美露の顔によぎる不安。
そのまま店の扉を開ける俊司。開口一番、
「あ、前に頼んでたやつもう来てるかな?」
中にいたレジの店員の男は無口に軽くうなずくと、後ろの棚から白い大きな箱を彼に差し出してきた。
「いや、後でいいよ。買い物するから」
六畳ほどしかない店内には、四人ほどの女性客がいた。美露よりも数歳若そうないでたちの彼女たちは、この奇妙な二人連れに注目した。
なんせ男の方はごくごく普通の格好をしているのに、女の方は濡れ切ったレインコートをまとっていて、しかも店内に入ってもそれを脱ごうともしない。
しかしその理由を目で知ると彼女たちは途端に囁きあい始めた。
――ちょっと見てよほら。あの人ハダカだよ。
――マジでぇ?
――良く見てみなよほら、透けてんじゃんおっぱいが。
――うわぁ、ロシュツキョウ初めてみた。
――彼氏に無理矢理やらされてるのかなぁ?
――手ェつないで一緒に来てるんだから、彼女の方もソノキなんじゃないのぉ?
「あ、ああ……」
耳には言ってくる彼女たちのひそひそ声の単語ひとつひとつが、美露の恥辱をあおる。
俊司の手をキュっと握って、彼女は嘆願する。
「ねぇ、プレゼントなんかもういいから、ここから出ようよ……もう私、我慢できない……」
――我慢できない、だってさ。何かやってるのかな?
――エロい雑誌で見たことあるよ。きっとヤラシイオモチャとかアソコにくわえこんでるんだよ。でなかったら浣腸かな?
――それって筋金入りじゃん。てゆーか、あんたすげー詳しいし。
――でもあのコ、腰モジモジしてるよ。
――おいおい、マジかよ、本当にしてるのかよ。
(もう、見ないで! 無視してちょうだい!)
自分の顔を見られないようにうつむいく美露。だがその腰は店の客の無意識な言葉責めに打ちのめされて、羞恥に悶えていた。
おぼろげに透けるレインコート、その下は全くの裸。彼女の今の状況は羞恥心を最大限にあおると同時に、彼女の知らぬ間にそれをむずがゆい快感に変えていく。意識もしていないのに陰唇は熱く湿っぽくなり、乳首も痛いほどに尖ってくる。
――見てよほら。
――あんまりじろじろ見てんなよ。何?
――ほら、オッパイのところ。ポツポツが二つできてるよ。
――うわマジぃ? 乳首立ってるよ、いやぁ。
――あんたらいい加減にしなよ。関わるなってば。
(ああ、私……もう駄目、こんな裸知らない人に見られて――……あっ!)
自分の太ももに伝うものを感じて美露は恥辱の極みに至る。
じわりと陰唇の奥から湧き出た愛液が、ねっとりとした触感を軌跡に残しながらつうぅっと下へと流れ落ちてきたのだ。
レインコートの短い丈は、そんな恥ずかしい筋を隠してくれはしない。空気に触れた愛液の冷たくなっていく感触が、美露の脳を強く穿つ。
(見ないで……私の足を見ないでっ!)
「見てよ、エッチな汁が垂れてるよぉ。あいつすげー変態だよぉ」
まるで我慢していたものを吐き出したかのように客の一人が大声を出した。
「ちょっと、声大きいよあんた。やばいよ、もう店出るよ」
「あーちょっと待って」
四人はまるで逃げるように我先にと店の出口に急ぐ。
震える美露を穢らわしいもののように避けつつ各々の口で「キショイ」と言い捨てて。
「あ、ああ、……ああああぁあ!」
涙を流しているのだから、多分自分は泣いているのだと美露は思っていた。恥辱と屈辱がないまぜになって、自分は辛いのだ。彼女はそう信じていた。
しかし、俊司の一言でそれが一瞬にして粉砕された。
「おい、何そんな喜んだ顔してんだよ」
何を言っているのかわからなかった。だが、店の奥にあった鏡が目に入った時、同時に見た自分の顔を見た途端に美露はその場にうずくまって頭を抱える。
(私、なんて表情を……)
喜んでいたのだ。
涙は流していたが、美露の顔は目をほころばせ口元を引きつらせて、不気味な笑みを浮かべていたのだ。
「ああ、私……もう私……」
「困るんですよねぇお客さん。みんなひいちゃったじゃないですかぁ」
さっきまで黙っていた店員が口を開いた。下目使いで冷ややかに美露を見つめながら。
「ごめんごめん。今帰った客の分も買っていくからさぁ、こいつのこと許してやってよ」
謝る俊司も、美露を上から見下ろすように見る。
二人の視線は、ペットか家畜を見ているかのようであった。
すっかり引導を渡されていた。
美露の体に、「露出狂の淫乱娘」という烙印が押された瞬間でもあった。
(駄目になっちゃった……ああ、私もう、駄目になっちゃったんだ……)
強くのしかかる敗北感? マゾヒスティックな快楽? うずくまった美露の体を震わせているのは一体どちらなのだろうか? 美露自身にはわからない。
彼女が客たちの囁きに悶えている間、俊司はコケシやバイブを見ていたようだ。彼の持つ買い物カゴには陽根のレプリカが2、3本入っている。
美露の二の腕を抱え上げて起こすと、俊司は下着のコーナーへ彼女をいざなう。
そこにあるのは俊司と会う前の美露にはほとんど無縁だったものばかりであった。そのどれも、下着本来の役割を果たしてくれているのかどうか疑わしいようなものばかりである。
その中に昨日コンビニに行く際に無理矢理はかされたラバーのショーツもあった。そのフロントのファスナーに、美露は自分のあさましい姿を重ねる。
両手を胸の谷間に重ねて頬を赤らめながら展示されているショーツを眺めている美露。一方で俊司はときおり彼女の尻や胸に目をやりながら、彼女にあいそうなセクシーランジェリーを手に取ってカゴに入れていく。ラインのきわどい純白のバタフライから、ブルマーのような青いショーツまで。店員に言った通り、本当に帰っていった客の分まで買っていくような勢いだ。
突然、俊司は何かを思い出したように手を止めた。
美露の両肩をしかと握りしめると、そのまま彼はレジの前まで連れていく。
一体何をされてしまうのだろうか? 考えるだけで背筋が縮こまるような思いがする。
すっかり固まってしまった美露のレインコートの肩の辺りを掴み、俊司はまたも店員に話し掛ける。明らかに鬱陶しそうに返事する店員に、彼は唐突にこう切り出した。
「おすすめの下着ってないかな?」
「うちはお客さんに気に入ってもらえる品揃えをしているもんですから、そういうのは……」
「じゃあ、君が選んでみてくれよ。こいつにお似合いの下着をさ!」
思いきりレインコートが引っ張られる。とっさに押さえようとした美露であったが間に合わない。そのまま腕まで脱がされた。
美露は全くの裸になってしまった。すっかり硬く尖り切ったピンク色の乳首も、妖しく濡れそぼった秘裂も、なにもかも二人の男の目に晒される。
「あ、ああぁ……」
何よりも強いショックが体を駆け巡る。体を覆うことさえ忘れてしまうほど、彼女は自分が体を晒してしまったことに被虐的な快感に浸された。
「……変態だよ……」
口をぱくぱくさせながら漏らした店員の言葉が耳に入ると、途端に彼女の股間が熱くなる。
「ああああっ!」
その場に座り込み、すっかり燃え上がってしまった肉裂を両手でおさえこむ美露。
「な? こんな奴が普通に売ってるセクシーランジェリーだけで満足できるわけないだろ?」
「……ですよね。そうですね……こういう変態な女のコにはやっぱりボンデージですかね……」
そう言って店員は、店の奥に設置されたつやありの白いトルソーを指す。グラマーな胸をもつ胴体だけの人形三、四体に黒革のボンデージが着せられている。そのどれもが胸を覆っておらず、いかに窮屈に体を拘束するかが追求された構造になっている。
裸の美露をそこまで連れていくと、後ろから彼女の肩を撫で回しながら俊司はそれら一つ一つを見る。
「どれも普段着にいいねぇ。思わない?」
「ひうっん!」
俊司の質問に、小さなうめきで答える美露。
卑猥な返事を促すべく、俊司が美露の片乳を握りつぶしたのだ。
「美露さんに選ばせてあげるよ。家やお外で毎日着るものだからね」
「そ、そんな、毎日着るって――うあんっ!」
思わず美露は身を屈めて腰を引く。
愛液で濡れた彼女の肉華の真ん中を、前にしゃがみ込んだ俊司の人さし指が貫いたのだ。
「一つ一つ聞くから、お気に入りの奴があったらオマンコキュッキュッって締めるんだよ」
膣の中の人さし指がぐりぐりと肉洞をかき回す。
「ああぁああぁあぁ!」
口から涎を漏らして、あられもない声で美露は叫んだ。向こう側でそれを冷ややかな目で見る店員。
(こんなところで、やらしい声出しちゃった、でも、うあああああ! 出さずにいられないよぉお!)
「んううあああぁああ!」
既に彼女の肉襞はヒクヒクひくついて俊司の指にまとわりつき、膣口は根元の近くをキュッキュッと締め付ける。
「ほらほら、まだ早いよ美露さん」
「だ、だって、こんな、あ、あああぁああぁあ!」
さらに激しく指を出し入れされて、あわやアクメかというところまで美露は意識を振り回される。
しかし行き着くところへ行かずに途中で止められ、美露の体は肉欲に覚醒されて熱くなる。
(い、いい、イキたいぃ……イキたいよぉ、イカせてえぇ!)
口には出さないが、トロンとした目つきで俊司に訴える。
しかし彼は見て見ぬふりである。
「さあて、どれがいい? これは?」
俊司がトルソーを指差す。だが、ぼおっとした美露の頭にボンデージのスタイルを見る余裕はない。
「うう……ううぅ」
「なぁどうなんだよっ!」
「うううううぅん!」
強く奥深く指に突かれて、美露の膣口は彼女の意識と関係なくビクビクと痙攣する。
「そうか、これいいのか。じゃあ、これは?」
別のトルソーを指差す。しかしすっかり視点を泳がせている美露はまたもそれを見ることができない。
「ちゃんと見てる?」
「くううううんっ!」
さっきと同じように、またも指に強く突かれて膣の括約筋をひくつかせる。
そんな調子で俊司は他のトルソーを美露に見せて、自発的な返事をしないと指で強くえぐった。
だが結局美露の肉裂は、どのボンデージにも反応した。どれも俊司の指に刺激されて、だが。
ようやく俊司が膣から指を抜き、美露はほっとしたように甘いため息をつく。
「全く美露さんは欲張りだなぁ。まぁどれもエッチだし、気持ちはわかるけどね。仕方ないや、じゃあ僕が選ぶよ」
胸の谷間に指についた愛液をなすり付けられると、美露は胸を寄せて肩をすくめる。
俊司は数体のトルソーに着せられたボンデージを見比べる。
「うん、これに決定」
自分でうなずいて、彼はある一体のトルソーに着せられていたボンデージを手に取った。
そのボンデージが他と違うのは、秘部を覆うものが全くない点だ。デザイン的に、両肩と陰唇の両外縁に掛かる革の細く平たい紐が二本身体の前後をぐるりと巻き付いた形になっていて、それが両乳首を押さえ付ける構造になっている。その二本を繋げるように、胸と下腹部に銀色の細い鎖が渡されている形だ。それに鋲付きの大きな黒い首輪と手綱がセットになっているようだ。
「今ここでこれ着てみ?」
俊司に手渡されて、美露はその簡素なボンデージに四肢を通す。
股ぐらでそれぞれの存在を主張するように秘裂の両脇に食い込んだ革の紐は、彼女の股間のいやらしい隙間を大きくし、無毛の陰唇の悩ましい輪郭を浮き立たせた。
横から見ると、ツンと勃っていた乳首は平たい革紐で乳輪に寝かせて押さえ付けられてとても窮屈そうだが、上下に紐の隙間を作った彼女の乳房はとてもグラマラスに見える。
肩にかかった二本の革紐は、背中を通って尻の谷間――ちょうど菊門の上あたりで重なる。痛々しく食い込んだその部分は、他のどの部分以上にボンデージとしての淫靡な緊縛感を漂わせている。
「どう?」
「ああ、わからない……」
裸以上に淫らに映る自分の身体を見て、美露の顔はまたも恥じらいに火照る。
「エロさだけで選んだわけじゃないんだよ。子袋の中にたくさん僕のザーメンを詰め込んで幸せ一杯のドインラン妻に似合うものはどれかなって。これだったら、美露さんのお腹が胎児で大きく膨らんでも着ていられるだろ?」
耳もとでそっと囁いて愛おしそうに臍の下あたりを撫で回す俊司。
「ああ、そんな、そんなぁ……」
彼の言葉と優しい手で「妊娠」の運命を暗示されると、彼女は奇妙な気分に身体を震わせる。不安だけではない、奇妙に甘い期待をないまぜにして。
そんな彼女に首輪をはめると、手綱の端を持って俊司は言った。
「美露さん、すっかり僕の所有物だね」
「あぁあああっ!」
顎をしゃくりあげて甘い嬌声をあげると、彼女は股間に手を当ててぐらりと足をふらつかせた。
(所有物って言われただけで、こんな……。ついに……ついに私、行き着くところまでいっちゃった――)
なんと美露は、言葉だけでイってしまったのだ。
(すっかり私、変態になっちゃったんだ)
「じゃ、これ全部でいくら?」とレジにいる店員に精算させている俊司の背中を涙で潤んだ目で見つめながら、彼女は心地よくて生暖かい敗北感に身体が包まれていくのを感じていた。 |