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第26話「スプリットポゥのねぐら」 |
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前回同様、南カラナ平原で気ままな野良生活をしていたときの事。
南カラナ平原の主要キャンプポイントの一つである、「スプリットポゥのねぐら(注1)」というダンジョンの入口周辺のノール(a gnoll)を狩るグループに参加して、狩りをしていると、グループ内でこんな提案があった。
「いっそのことポゥの中に突撃して狩りませんか?」
野外での、安全平和ながら単調なキャンプにやや飽いていた僕たちは、全員一致でその提案をのみ、スプリットポゥのねぐらへと進入していったのであった。
スプリットポゥのねぐらは、アントニカ大陸各地に生息するノールたちの総元締めのようなところだ。
入ってすぐのところにいるノールは、レベルも20台といった程度だけど、奧へ行けばレベル30・40のノールが生息している。
ノールと言えば雑魚モンスター、という印象が強いが、ここのノールは侮れないのだ。
僕らはレベル20台のグループということで、入口から最初の扉までの間にいる、比較的弱く、トレインにもなりにくいノールをちまちま狩っていくしかない。この辺のノールを狩るには、ゾーン際か、またはベッドルームとか呼ばれる小部屋に陣取って戦うのが一般的らしい。
僕らは、以前にもスプリットポゥのねぐらで狩りをしたことがあるというグループのメンバーに従って、全員にInvisibilityの魔法をかけ、敵に気がつかれないように一気にベッドルームまで移動し、そこでキャンプをすることにした。
ベッドルームはその名の通り、床にベッドというか、布団のようなものがしかれている部屋だった。
戦うのにちょうどいいほど広く、しかもその部屋の中にはモンスターが出現しないので、キャンプをするにはもってこいの部屋と言えそうだ。
ってなわけで、ベッドルームでノール相手のキャンプが始まった。このときスプリットポゥのねぐらには僕らのグループしかいなくて、獲物も独占状態だ。順調に狩りは進んでいく。プルされてくるノールには、白いノールと、茶色いノールがいるようなんだけど、レベル以外には色による違いはないみたいだ。
さて、しばらく狩りを続けていると、あっさりと狩りが安定してきてしまった。
入口から最初の扉までのノールを全て狩り尽くして、なおリ・ポップ(注2)までに余裕があるのだ。
こうなると欲が出るのが人というもの。
「扉のところからプルしてみようか?」
「そうしようか」 「OK、やってみよう」
これが間違いのもとだったとわかった時には手遅れだった。「INC」の声とともに本陣に帰ってきたプラーの背後には、数匹のノールが折り重なるように迫っていた。そして、本陣に付くと同時に数匹のノールに叩かれたプラーが絶命。まさに瞬殺であった。恐るべし扉の向こうのノール。
「EVAC!EVAC!EVAC!」
あわててEvacuateの魔法を唱え始める僕と、同時にSuccorの魔法を唱え出すグループメンバーのドルイド。
唱えている間にも、プラーを殺したノールの群れが、他のグループメンバーを襲っている。
早く詠唱終われ!
祈るように唱え続ける僕。減り続けるグループメンバーのヒットポイント。
ショワワワン・・・
運良くノールに殴られずにすんだ僕が、Evacuateの魔法でスプリットポゥのねぐらの入口へとグループを緊急避難させたときには、グループの生存者は4人になってしまっていた。
グループに蘇生魔法を使えるクレリックのいなかった僕らは、死んでしまったプラーが遠いハイパス・ホールドから走って帰ってくるのを待ち、なんとか死体を回収したあと、しょぼーんとしながら狩りを終えたのであった。
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5日7時間52分 |
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注釈
(注1)スプリットポゥのねぐら:
通称PAW。南カラナ平原のほぼ中央に開いた洞窟状のダンジョンで、ノールを主な出現モンスターとしている。かつては低レベルの冒険者向けダンジョンだったが、低レベルの冒険者がたどり着くには、僻地すぎる場所にあったため、訪れる人が少なかった。それで、適性レベルを引き上げ、中級者向けダンジョンに改装されたという歴史を持つ。
(注2)リ・ポップ:
Repop。「RE(再び、という意味の接頭語)」と「POP(モンスターが出現すること)」を合わせた語。倒されたモンスターが再びもといた場所に出現することを言う。英語版からの語なので、ゲーム中の会話では「Repop」と英字表記される場合が多い。 |
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