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第48話「ペガサスを追え!」 |
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2003年4月5日は波乱の日だった。個人的にも、サーバー規模にも、イベントや事件が連発したのだ。
その中でも最たるものは、Tranquilサーバーで初めてドラゴン"Lord Nagafen"が倒されたことだろう。
僕は残念ながら、まだドラゴンに挑戦できるレベルではなかったのだけど、ハイレベルの勇者達によってLord Nagafenが倒されると、サーバー内の全ゾーンにGMによる祝福メッセージが流れて、リアルタイムでそのメッセージの出る瞬間は目撃することができた。
一方そのころ、僕はちょうどガック下層に篭もって、キャンプをしていた。
このメッセージが流れたときは、ドラゴンスレイヤー達には聞こえもしないのに、ガック下層でも「/OOC」や「/shout」で
「おめでとう!」「Gratz!」 といった祝福の声が飛び交って、奇妙な一体感を感じたものだ。
が、そんな明るい雰囲気のさなかではあったのだけど、個人的にはなかなかしんどかったのもまた事実だ。
というのも、その日のガックは大荒れに荒れていて、トレインにつぐトレイン、CRにつぐCRといった凄惨な状況を呈していて、キャンプポイントまでたどり着くことさえなかなかできずにいた。
たどり着いたかと思うと死者が出たりして、さらにグループにはクレリックがいなかったので、クレリックを探して蘇生依頼をしてみたりと、狩りがなかなか進捗しない状態が続いていた。
結局、そんなことを数時間続けて、なんとか経験値がマイナスにはならなかったかな、というところでガック下層から引き揚げ、解散しようということになった。
すると、そこで先ほどの祝福メッセージに続いてGMのメッセージが飛び込んできた。以下は、その内容をかいつまんだものだ。
宝石商「わしの手に入れた快速の愛馬(ペガサス)に触れることができた者、
先着8名に報酬をやろう」
むむ。GMイベントだ。ちょうどキャンプも終わったことだし、気分転換に行ってみますか。
ってなわけで、イベントが行われているという、南カラナ平原へと移動する。
南カラナ平原へ到着すると、すでにそこには100人を越えるプレイヤーが集合し、ペガサスの居場所についての情報交換や、他愛のないおしゃべりが「/OOC」で飛び交う、にぎやかな状況になっていた。
僕も負けじと、参戦表明を「/OOC」で飛ばす。すると、想像以上に熱狂的な反応をもって出迎えてもらえた。
曰く、
「おお!」「でた!」「お〜ゼンさん〜」 (うむうむ)
「日記読んでるよ〜」 (ありがとうございます)
「のーむぱわぁ!!」 (POWER!)
「爺さん、死にますよ」 (失礼な!)
「ゼン爺殴ってもOKかも!」 (NGです)
「レタスさんはこないのかーー!!」 (しりません!)
「爺はギックリ腰になるからやめといたほうがいいぞぃ」 (ひどい・・)
一部容認しがたい無礼者(ふふ)もいるようだけど、とりあえずいい雰囲気だ。反応していただいて、みなさんありがとうございます、と、この場を借りて感謝いたします。
さて、そんな雰囲気の中イベントを始める。すでにイベントは始まっていて、現在までに5人の冒険者がペガサスに触れることができたらしい。ここで言う、「ペガサスに触れる」とは、ペガサスに武器で攻撃を加え、命中させることを指すらしい。
そ、それはウィザードにはつらいかも・・・。
そんなことを思いながら、広いカラナ平原を走り出す。しばらく走っていると、同じように走っている多くの冒険者の流れに一定の方向性があることに気が付く。どうやら、恐ろしく長い「冒険者のトレイン」状態になっていて、この流れに沿って走ればそのうちペガサスの居場所にたどり着けるらしい。ひたすら流れに乗って走る。
すると、前方上空に真っ白なペガサスが舞っているのが目に入った。
いたああああ! 突撃!
わき目もふらずにオートアタックをONにして、ペガサスに駆け寄る僕。もらったー!
・・・あれ?
ペガサスに接近したつもりが、とんでもない速さでペガサスが遠方に走り去ってしまった。その速さときたら、尋常ではない。SoWをかけたPCや、バードの早足ソングを聴いているPCよりも、数倍早いのだ。ペガサスに手が届く範囲に近寄ることもできずに、ペガサスは再び視界外に逃げ去ってしまった。写真を撮る暇もない。
また、人の流れを延々と追いかけるところに逆戻り。そうやって僕が走っている間にも、偶然運良くペガサスの進行方向と交差できた冒険者が、一人、また一人とペガサスに触れることに成功していく。
そしてついに、僕はペガサスに触れることができないまま、8人目の成功者が現れ、イベントが終了した。
あとは、宝石商ことGMから、成功者8人が報酬をもらうだけだ。宝石商が、北カラナ平原への橋にいるというので、ぞろぞろと冒険者の波が北カラナ平原への橋を目指す。そして、ほとんど全てのイベント参加者が、橋付近に集合した。
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これがまた、すごかった。
この時点で南カラナ平原の人口は227人。その大半が一ヶ所に集まったわけだから、その混雑っぷりたるや前代未聞といっていい。
あまりの人混みに、肝心の宝石商も埋もれ気味という有様だ。
ともあれ、なんとか8人の成功者には、それぞれ報酬が与えられ、成功者の発表の度にゾーン中に「おめでとう!」の声が響きわたった。
かくして、このイベントもなかなかの盛り上がりを見せ、成功裏に幕を閉じた。成功のために必要な運と実力との割合が、ほどほどに調整されて、しかも皆が最後まで全力で参加できる、いいイベントだったように思う。
また、こんなイベントがあるといいな、と思いつつこの日の冒険を終える僕なのであった。
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13日21時間21分 |
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