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第56話「もしもし亀よ」 |
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その日、フリーポートでLFGタグを出しながらぼへーっとしていると、こんなメッセージが届いた。
「これから亀やるんですが、一緒にどうですか？」
ふむ、亀？ ってなんだろう。
「アイスクラッドにいるレベル60のでっかい亀がPOPしたので、レイドで倒そうかと」
ほほー。レベル60相手に僕が役に立つのかは激しく疑問だけど、これは是非体験しておきたいものだ。
二つ返事で参加希望の返答をした僕は、直ちにアイスクラッド・オーシャンへと向かったのだった。
集合場所はアイスクラッド・オーシャンの、ノールの集落のそばらしい。アイスクラッド・オーシャンを、Invisibilityの魔法で隠れた状態で駆け抜ける。すると目の前で、巨大な物体が悠然と通り過ぎていくのが目に入った。
どうやらこいつが目的の「でっかい亀」らしい。名前はLodizalだ。しばしこっそりと遠くから観察をする。
亀の勇姿を堪能し、さらに少し走ると、やがてノールの集落へ到着した。すでにそこには何人かの冒険者達が集合していて、人数がそろうのを待っているといった状態。僕もそこに混じって、ぼーっと待つことにする。
その間に、今回僕を誘ってくれた方が、持っている盾を見せて、
「Lodizal倒すと、この盾をもらえるクエストアイテムがでたりしますよー」などと教えてくれる。
AC23、STR+10、CHA+5、WIS+10、AGI-5、耐Fire+20、耐Cold+20、耐Magic+10、装備してると水中で呼吸可能。
うーん、すごいスペックだ。見た目もユニークだし。
でも、ウィザードは装備できないですな。ははは。いらん。
しばらくしてメンバーがそろうと、いよいよBuff等をかけ始めて、戦闘準備開始だ。同時に、亀退治の作戦会議が行われる。作戦といっても、そう複雑なものではなくて、大まかに言えば以下のような感じだ。
1、 レジスト下げ魔法でプル
2、 さらにレジスト下げ魔法、
スネア、スロウを入れる（注1）
3、 おもむろに殴る
4、 亀のHPが60%を切ったあたりから、
攻撃魔法を乱射する
といった手順。
この手順に乗っ取るかたちで、いよいよ亀退治が始まった。浦島太郎上等！ といった感じであるが、亀の方もこちらに敵対的なので遠慮は無用だろう。
手順通りに各種魔法が入り、タンク達が殴り始める。レベル60のモンスターの攻撃がどの程度強烈なのかはよくわからないけど、亀に殴られているタンクはかなり痛そうだ。ひっきりなしにクレリックがヒールをかけている。
そのうちに亀のHPが60%を切った。レイドリーダーからの、「DD撃ってー」の指示と同時に、待機していた魔法使い達が、攻撃魔法を乱射し始める。僕も一緒になって魔法を連射だ。
ところがどうしたことか、というか、これがむしろ必然なのか、魔法がちっとも入らないではないか。撃っても、撃ってもレジストだ。か、かなしいぞ、これは。
役立たず感を目一杯感じながら、とりあえず働いているというアクションを見せつつ、通用しない魔法を連打する僕。
今だから白状しますが、僕、結局1ダメージたりとも亀に与えることが出来ませんでした。・・・ごめんなさい。
そんなダメウィザードがいたとて、他のメンバーが優秀だったおかげか、何とか亀を退治することが出来た。勝ち鬨をあげる一行。一人こっそりへこむ僕。とほほ。
そんなへこみっぷりを最大限隠しつつ、みんなのお楽しみ、戦利品の分配が始まる。先ほどの盾のクエストアイテムや、ドロップスペル、水中呼吸できる指輪などが出たようだ。戦利品としては、今一つな感じだったそうだけど、僕にはなにがよくて、なにが悪いのかわからないので、「へー、そーなのか」というくらいでしかない。
そんな中、アイテムをもらうのが申し訳なかった僕は、戦利品のロール大会（注2）には参加せず、一人で亀の死体とたわむれて、記念写真を撮ったりしていたのだった。
はい、チーズ。カシャ。
ともあれ、無事、Lodizalを退治し、戦利品を手に入れた僕らは、亀のいなくなったアイスクラッド・オーシャンから、それぞれの次の目的地へと、散っていった。これにて、亀レイド終了だ。
今にして思えば、もっと近づいて魔法を撃てばレジストされなかったかも？ 関係ないかな？
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17日2時間25分 |
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注釈
（注1）スロウ：
シャーマンやエンチャンターの使う、敵の攻撃速度を低下させる魔法系統の総称。味方の被ダメージを大幅に軽減できる、非常に有用な魔法。
（注2）戦利品のロール大会：
戦利品の所有権を決定する、「/random」コマンドによる抽選会のようなもの。
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