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第57話「巨人の里」 |
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ベリオス大陸は、ドワーフ、ジャイアント、ドラゴンの三つの勢力が三つ巴で対立している。このなかのどれか一つの勢力下にあるモンスターと戦い、これを倒すと、そのモンスターの勢力からは嫌われ、残り二つの勢力からは好かれる、というような仕組みになっている。
てなわけで今回、ドラゴン一族に好かれることを目標にした僕らは、ジャイアントの街を襲撃し、そこで殺戮の限りを尽くすことにしたのだった。気分はすっかり鉄砲玉である。
ジャイアントの街、カール・ドラッケルは、東の荒野とウェイクニング・ランドを結ぶ位置にある。どちらのゾーンからでも、カール・ドラッケルに入ることは出来るんだけど、ウェイクニング・ランドにはかなり強力なドラゴンが闊歩していて、まだドラゴン一族に好かれていない僕らが行くと、かなり危険だ。
というわけで、僕ら一行は、東の荒野側からカール・ドラッケルに乗り込むことにしたのだった。
カール・ドラッケルは、氷の洞窟状の街で、洞窟内部に各種建物が点在している。エバークエストの市街構造としては、もはやすっかりおなじみの洞窟型だ。いつもながら光源が足りない気がするが、その辺は言わぬが華というものである。
中に入った僕らは、ひとまずInvisibilityの魔法でカール・ドラッケル内を突っ切り、ウェイクニング・ランド側のゾーン境界まで行こう、ということにした。理由は実はよくわからないのだけど、このゾーンに慣れているふうな人がそう言うので、タッタカターとついていくことにする。
ウェイクニング・ランド側のゾーン境界までたどり着いた僕らは、そこにキャンプを張り、戦闘準備を整えることにした。Buffしてー、ペット呼んでー、ついでに調子悪かったから再起動してー、等々。
そして、いよいよ巨人狩りの始まりだ。知性のある二足歩行生物を、「狩る」というのもなんだか気がとがめるけど、近づけばあっちから襲ってくるのだから、これは立派な正当防衛なのである。うけけ。
プラーによって引っ張られてきたジャイアントは、その名の通りかなり巨大だ。遠く離れて魔法を撃っている僕からは、全身を見ることが出来るけど、前線で戦っているタンクは「脚しか見えねー」とか喚いている。しかも、巨大生物の特権なのか、スタン系の魔法(注1)が一切効かない。知的生物なので、魔法を使うジャイアントも多数いるだけに、これは結構やっかいだ。
とはいえ、いくら巨大でも、色は僕から見て青。このゾーン境界近辺にいるジャイアントは弱い部類らしく、さほどの苦労もなくさくさく倒せてしまった。
これに物足りなさを覚えた一行は、キャンプ場所をより内部の、より危険な場所に移すことにした。
移動した場所は、ジャイアントの街の銀行の側にある通路。この銀行というのも一つのキャンプポイントらしく、銀行内を制圧できればなにがしかのアイテムが取れるらしい。でも、さすがに今の戦力では銀行に攻め入るのは危険だそうだ。
ということで、今度は銀行周辺の街路を徘徊するジャイアントを標的にして、巨人狩りを再開するということにした。
このあたりのジャイアントは、見た目のバリエーションが豊富だ。普通の白い髭のジャイアントに加えて、黒い髭のジャイアント、銀の鎧のジャイアント、黒い鎧のジャイアント、さらには大富豪風のジャイアントまでいる。
これら各種ジャイアントを、ひっきりなしに引っ張ってきては倒し続ける。ジャイアント特有の装備がいくらか出るほかは、ただただひたすら、ドラゴンのファクションをあげるための狩りといった感じだ。決して経験値は悪くないんだけど、なにしろ一匹一匹が経験値の割に固いので、数をこなせない。純粋に経験値だけ見ると、少しさみしいかな、といった感じだ。
そんなこんなで、ドラゴン一族に媚びを売るための狩りは数時間におよび、それでもまだドラゴン一族に好かれるにはほど遠いまま、この日の狩りは幕を閉じたのであった。
ドラゴンに好かれる日は遠い。
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17日15時間26分 |
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注釈
(注1)スタン系の魔法:
対象の動きを数秒間、完全に静止させることの出来る魔法。モンスターの魔法詠唱を止める用途で使われることが多い。また、数種のスタン系の魔法を連続的に使用することで、モンスターをかなりの時間にわたって無力化することもできる。
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