成長日記 冒険記
ゼン爺の成長日記
  号外「グロッブ攻略戦従軍記」
日本時間の2003年4月19日。巷に流れた噂によれば、今日この日の「日のあるうち」に、フロッグロックの大軍がトロルの街グロッブを攻め落とすというイベントが発生するらしい。
来る追加パック「レガシー・オブ・イキーシャ」に先駆けた、時代の節目とでも言うべき大きなイベントだ。僕も是非これに参加し、歴史的瞬間をこの目で目撃しようと、日本時間で13:30からグロッブ手前のゾーン、イノシュール沼に潜入し、時を待つことにした。

 
僕がイノシュール沼に入った時点で、ゾーン内の総人口は53人。まだ実際はなにも起こっていないというのに、人口が異常に多い。皆、事件の気配を感じ取ったのか、レベルも種族も職業も多種多様に渡る冒険者達が、イノシュール沼に集結しつつあるようだ。その後も続々と人口は増えてゆく。
 
イベントの渦中に置かれるであろう街、グロッブを遠望できるところまで行くと、グッド系の種族の人々がそこかしこにたむろしていた。彼らはトロルのガードに襲われるためグロッブにそれ以上近寄れないでいるのだ。僕も彼ら同様(一応)グッド系の種族なので、同じようにグロッブから少し離れたところに座り込むことにする。

ゾーン内に人が集まるにつれ、シャウトやOOCでの会話もテンションが上がってきた。特に目を引くのが、この日のために結成されたトロルの、トロルによる、トロルのためのギルド<グロップ防衛隊>の人々だ。シャウト等による会話でも、うまくトロルらしい頭の悪さ(失礼)と、「グロッブを守るのだ」という気概を感じられるように工夫して話していて、会話ログを見ているだけでもおもしろい。
 
よーし、このゼン爺も微力ながら助力しようかなー、などと思っていたんだけど。
 
 見学の人「うわ、トロルガードに殺された!」
 
・・・トロルめ、なんと見境のない。
さらに、この件についてやんわり抗議すると・・・。
 
 グロッブ防衛隊の人A「ミー、カエル食う!」
 グロッブ防衛隊の人B「ゼン爺いるのか?」
 グロッブ防衛隊の人A「ゼンも食う!!」
 グロッブ防衛隊の人CDEF「ゼン食う」「食う」「食う」「肉堅い」

 
・・・ニャロウ。
 
ということで、この後、しばらくシャウトを駆使してトロルの人々とじゃれあった結果、僕はなし崩し的にトロル討伐隊という立場になってしまった。こうなったらひたすらグロッブが陥落するのを高みの見物させていただこうではないか。せいぜい無駄なあがきをしたまえ、トロルの諸君。
 
日本時間で14:00を過ぎた。なかなかイベントが始まる気配がない。本当に今日イベントなのかな、と若干不安になる。

 
暇なので敵に挨拶でもしてやるか、という感じで、Invisibilityで姿を消し、ガードの目をかいくぐりつつグロッブ入口近くまで潜入し、おもむろに姿を現してみる。
 
・・・囲まれた。
 
とはいえ、特に危害を加えられることもなく、サインの応酬をしたりしてそれなりに友好的な扱いを受けた後、そそくさとグロッブからまた少し離れる。戦争開始前の、つかの間の平和な時間なのであった。

 
そして日本時間14:30ごろ。
 
ガック入口を張っていた一部の冒険者より、ゾーン全体に通達があった。

 
 ガック監視の人「ガックに新しいタイプのカエルが!」
 
!!!
 
ゾーン中に緊張が走る。一部の人は、すかさずガックへむけて疾走を開始する。僕も遅れをとるまいと、疾風のごとく走る!
 
ガック入口についてみると、なにも起きていない。あれ? と思っていると・・・・・・来た来た来た来た来た! 大量のフロッグロックが、しかも従来のフロッグロックとは違うモデルのヤツが、ガック入口より殺到した!
 
というか、数、多すぎ!
瞬く間に、ガック周辺にいたトロルの人々は壊滅する。このフロッグロックはグッド系なので、僕や、他の傍観していたグッド系の種族の人に襲ってくることはないようだ。そんな安全な身分を活かして観察している間にも、トロルの人はどんどん倒されていく。

 
そのうち、ガック前でフロッグロックに襲われていたトロルの中でもレベルの高い一人が、カエルに追われたままグロッブ方面へ逃走を開始した。フロッグロックをプルしているとも言えるし、フロッグロックのトレインとも言える。とにかく、清々しいまでの凶悪なトレインが、<グロップ防衛隊>をはじめとする大勢のトロルが待ち受けるグロッブ方面へと、疾走していった。
僕もこれを追跡し、戦場を追う。
そして、ついにトロル対フロッグロックの全面戦争の火蓋が切って落とされた!
 
と思ったら、あっというまにトロル軍の第一波が壊滅。なにしろ押し寄せたフロッグロックは、レベル43の私から見て青だったので、最低でもレベル30以上。一方多くのトロル軍は、この日のために急造したキャラクターで、レベルは10かそこらが大半だったのだ。

 
虐殺、といってもいいほどの凄惨な状況を、なんとかNPCのトロルガードの活躍で乗り切り、フロッグロック軍の第一波を凌いだ頃には、そこら一帯がトロルや、おもしろ半分でフロッグロックを攻撃した冒険者達の死体で覆い尽くされていた。
 
死屍累々の地獄絵図である。かくいう僕も、実は試しにフロッグロックを攻撃して、さっくり殺されてしまったのだけど、これは内緒だ。
さて、第一波を凌いでからしばし後。なんとかトロルの陣も復旧したころ、徐々に第二波、第三波のフロッグロックがグロッブに向かって、逐次投入されてきた。戦力の逐次投入とは策としては愚の愚である。第一波に比べて、その後しばらくの襲撃はやってくるフロッグロックのレベルが低かったこともあり、第一波ほどの惨状になることはなかったようだ。トロルたちは人海戦術と、NPCのガードを駆使して、なんとか第二波、第三波と撃退していく。

 
一方そのころ。第二波、第三波がやってくる頃には、トロル以外の、主にグッド系種族の人たちは、フロッグロックのあまりの勢いに対する恐怖と、暴走したトロルガードに襲われた恨みが相まって、すっかりグロッブを防衛するという意志が削がれ、グロッブ陥落を高みの見物しようと決め込むようになっていた。かくいう僕も、Invisibilityしたまま、ひたすら観察とチャットに励む。
 
その後も、幾たびかにわたるフロッグロックの襲撃を、なんとか撃退し続けていたトロル軍だったが、だんだんとやってくるフロッグロックの数も質も上がってくる。次第にフロッグロックの増援の勢いに抗しきれなくなったトロル軍は、グロッブの入口方面へと押し込まれるようになっていった。
そして、日本時間15:00過ぎ。グロッブ門前のガードは、次々に押し寄せるフロッグロックの前に崩壊を余儀なくされ、フロッグロック軍はグロッブ入口をついに制圧するに至ったのであった。

かくして、トロルの防衛隊を蹴散らし、グロッブ内部に進入したフロッグロック軍。すでにゾーン名は「グロッブ」から「ガクタ」に変更され、すっかりこの街の主導権はフロッグロックに渡ってしまった感がある。しかし、トロルも最後の意地を見せるべく、市街戦で最後の抵抗を試みるのであった。
 
15:10ごろ 中庭の戦い
 
入り口付近を完全に制圧したフロッグロック軍は、いろいろ軍を市街の中庭に進めた。すでに中庭に立てられている看板が、フロッグロックの崇める神、ミサニエル・マーをたたえる「マー・コートヤード」に変名されてしまっている中、トロルとフロッグロックが激しい戦いを繰り広げる。
 
トロル軍は地の利を活かし善戦するが、すでに戦いの趨勢はフロッグロックのもの。次第に後退を余儀なくされ、中庭の主導権はフロッグロックの手に渡ってしまった。
往時には考えられないほどの、グッド種族のPCたちがたむろしているのが失笑を誘う。

 
15:30ごろ Gukta Exchange、陥落
 
中庭を制圧したフロッグロック軍は、そこを足がかりにさらなる深部へと軍を進める。すっかり従軍記者化していた僕がたどり着いた頃には、Gukta Exchangeと看板を張り替えられている、トロルの建物の周辺で、激戦が繰り広げられていた。
 
Gukta Exchangeの内外は、トロルの商人街のようになっていて、フロッグロックの侵攻に抵抗するトロルのNPCも多い。

 
中庭で疲弊したフロッグロック軍は、ここで一旦壊滅してしまう。
 
しかし、数分後には援軍によってフロッグロック軍は立ち直り、再び押し寄せたフロッグロック軍の前に、Gukta Exchangeもフロッグロック軍の手に渡ったのであった。

16:03 シャドウナイトギルド、陥落
 
Gukta Exchange陥落後、フロッグロック軍は、広場やシャーマンギルドのある東部戦線へ向かう主力部隊と、シャドウナイトギルドのある北部戦線へ向かう分隊とにわかれて進軍を開始した。
 
北部方面へ向かったフロッグロック分隊は、怪力を誇るトロルのシャドウナイトマスターたちの反撃に苦戦を強いられ、なかなか進軍が進まない。
それでも、一匹やられれば二匹援軍を出すという、絶えることのない援軍によって徐々にシャドウナイトギルドを制圧。ついには、北部一帯からトロルを完全に排除する事に成功した。

 
16:14 ソウルバインダー、死亡
 
情け容赦のないフロッグロック軍。トロルと見れば見境なく襲いかかる彼らは、ボランティア精神に溢れるソウルバインダーさえも、容赦なく倒す。ミリタリーバランスが完全に崩壊し、軍事力を持て余し気味になったフロッグロックの大軍に襲われたソウルバインダーは、ほとんど一瞬のうちに退治されてしまったのであった。
16:17 シャーマンギルド、陥落
 
トロル軍最後の砦となったのは、市街の最奥部に位置するシャーマンギルドだった。すでに他の拠点は制圧され、フロッグロックの全勢力がこのシャーマンギルドにむかって、流れ込んでいく。そして、フロッグロック軍は、溶岩の池周辺にいるトロルや、その後背部にある隧道にいるトロルガードを次々と駆逐し、シャーマンギルドも制圧した。
日本時間2003年4月19日午後16時20分。シャーマンギルドの陥落によって、全拠点を制圧されたトロル軍は、ついにグロッブの覇権を失い、ここにフロッグロックによる国家「ガクタ」が誕生した。僕もかつてのシャーマンギルドの玉座に居座り、勝利の雄叫びを上げる。
 
デスバインドループにはまった一部トロルの悲鳴をBGMに、悠然と闊歩するフロッグロックのNPCたち。市街には次々とフロッグロックのNPCが現れ、早くも銀行や商店が営業を開始している。

イベントの見物に終始していた、グッド系のPCたちも、やっと訪れた平和と、Invisibilityを維持しなくてもいい開放感を満喫するかのように、新興国家ガクタの中を探険しまくる。僕も、なにか新しい魔法が売ってはいないだろうかと、魔法屋を探して歩き回ったり、ガクタ名物のカエルのガイドに道案内をしてもらったりして、新しいゾーンを満喫するのだった。
 
かくして、<グロップ防衛隊>をはじめとするトロルの人々、ならびにNPCたちの抗戦もむなしく、グロッブは今日この日をもってノーラスの地図から姿を消した。故国を失ったトロルは、当面の間はダークエルフの街ネリアックに難民として居候することになる。
 
だが、我々は忘れない。 かつてこの地にグロッブという街があったことを!
 
我々は忘れない。 この地を守らんと戦った勇者達がいたことを!
 
・・・たぶん。

 



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