インテグラ派

かつかつかつとヒールの音を響かせながら廊下を歩いてきたインテグラは
ふと用務員室の前で立ち止まった。
あたりを確認し、誰もいないことを確かめてすばやくその中に体をすべりこませる。
中では作業着を着たこの学校の用務員、ウォルターが楽しそうに壊れた時計の修理をしていた。
「ウォルター」
「なんでしょう、インテグラ様」
「最近後を付けられている」
ウォルターの片眼鏡がきらりと光った。
「なにか動きがあるかもしれんぞ」
それだけ言ってインテグラは用務員室を後にした。

職員専用駐車場に着くと、愛車のロータス・エスプリに乗り込む。
このスポーツカーがまた、同僚に眉をひそめさせる原因だったがインテグラは気にしていなかった。
まず腰をシートに落とし、足を狭い空間へと滑り込ませる。
「それで、なんの用だ」
彼女がドアを閉めるのを待って、先に助手席に座っていたアーカードが聞いてきた。
「教頭殿が何かたくらんでいらっしゃるようだ」
馬鹿にしきった口調でインテグラは言う。
「あの馬鹿、まだ分からんと見えるな」
アーカードも同様に笑って見せた。
「なにか手を出してくるはずだ。他の生徒達に迷惑がかからんよう、始末してくれ」
「それで交換になにをしてくれるのかね、インテグラ」
生徒らしからぬ口調でアーカードは聞く。
「お前の好きなことだ」
そう言い捨てて、彼女は車を発進させた。

 

おまけ
「うわー、先生、すごいですねえ」
セラスは最近赴任してきた臨時教師ベルナドットの拳法の演舞を見て感動していた。
彼女は空手部と柔道部に所属している。しかし格闘技全般が好きだった。
「俺、軍事マニアだからさー」
ベルナドットは軽い調子で答える。
「素手格闘もナイフ格闘も銃撃戦だってお手の物」
最後の一言は冗談だと受け取ってセラスは笑った。
「でも知ってます? アーカードさんとアンデルセンさんだってすごいんですよ。
 どっちも部活には所属していないんですけれど」
「へー、そりゃ見てみたいねえ」
あまり本気で凄いとは思っていない口調でベルナドットは言った。


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