451 名前:リレー 分岐エンディング437 5/5:2006/11/16(木) 23:39:23 ID:D0lXCxcc0
別邸の裏には、小さなせせらぎほどの川がある。その畔に立った従兄だが、彼の胸に去来するものはなにもない。
風が吹き抜ければただからからと音を立てそうなほどに、からっぽだった。
何かを見たいわけではなく、だがそこを離れがたく立ちつくしていた従兄の目にふと止まったものがある。
淀みに生えた丈高い草に引っかかっているそれ。
無意識に従兄の手がそれに伸び、流れから拾い上げてみる。
最初は何かは分からなかった。
だが、気づいた。
「──笹舟」
舟らしい形にすらなっていないが、それは間違いなく笹舟だった。
五つ六つの童の方がもう少し上手に作れるだろう、不格好な笹舟。
その川は別邸の庭にある池から流れ出る水が作っている。
ならばこれを流したのが誰か、自ずと知れた。

「──下手くそめ、教えてやったではないか……」

凍り付いた心にぴしりとひびが入ったような気がしたが、従兄はそれを無視した。
取り戻せぬものを求めることのむなしさと、ただ愚かなだけの意地で、従兄は広がろうとする亀裂を
凍り付かせた。
ただ、これくらいならいいだろうと手にした笹舟を折り直し、元の流れに戻してやる。
さらさらと流れていく舟を見送り、従兄はけして振り返ることなく去っていった。



以上です。

452 名前:風と木の名無しさん:2006/11/16(木) 23:53:40 ID:BACc7RjqO
分岐侍タソ、禿萌えだ…!!受けが壊れる過程がもう最高! 乙!大好き!

453 名前:風と木の名無しさん:2006/11/16(木) 23:54:59 ID:+qOmf9l20
侍GJGJ!!!切ない終わり方にテラモエです!
人形になった侍の描写にもぞくぞくきました!

454 名前:風と木の名無しさん:2006/11/16(木) 23:55:16 ID:6iQsHosi0
バッドエンディング乙!
鬱展開も(・∀・)イイ!!

455 名前:風と木の名無しさん:2006/11/17(金) 00:04:46 ID:XJ+Qgi2Q0
うおおお、泣ける。リレー乙です。


456 名前:風と木の名無しさん:2006/11/17(金) 00:33:57 ID:TO1XI06z0
笹舟がこんなに重要になるとは思って無かったよ…
お互いの思いのすれ違いがさっくり書かれてて凄く素敵でした。
最後に兄様は何を言ったのだろう。
含みの在るエンドにGJです。

457 名前:風と木の名無しさん:2006/11/17(金) 00:34:22 ID:AEpxHt3aO
侍437たん乙です!
こんなぞくぞくくるラストを先に書かれたら、
他のリレー職人さん苦しいねw
でも違うエンディングも見たい!
職人さん方、ハードル高いかもだけど宜しくお願い致します!!

458 名前:風と木の名無しさん:2006/11/17(金) 10:23:09 ID:WaPrGZKW0
>>456
「ボク達、リアル兄弟なんだよ☆」じゃね。

459 名前:テュランの筏1/8:2006/11/17(金) 12:03:58 ID:FeKqKjGS0
三日目
「これを十分間、つければいい」
藤吾が取りだしたのは、二つのクリップを紐で結んだ、奇妙な品だった。
遠まきに「船長」の命令を待つ僕たちは、楊玲が一番近い位置で、僕はタープを引きずった奇妙な格好で、何故かクリフも前の方に進みでていた。
手持ちのものをすべて吐きださせ、その後一体何を命令するのか、純粋な好奇心だろうか。
三人三様に疑問を顔にしていたのだろう。
藤吾はもっとも近くにいた楊玲を指さし、つけ加えた。
「ここに」と、人差し指は今にも楊玲の胸の先端に触れそうだった。
「はさむ。初めてだから、刺激は強くしないように………努力は、しよう」
反対の手にもつ小さなリモコンを握ると、クリップがブルブルと震えだした。
楊玲は怯えたように後ずさりし、端に行き当たっても、目を大きく見開いたままだった。
小さく舌打ちして、肩をすくめて離れていくのはクリフ。
僕は彼の為に道をあけ、それからじわじわと入りこんでくる恐怖を自覚した。
………あれを、胸につける、だって………?
文房具屋に売っているような金属のあれを………痛いに決まってるじゃないか。
それどころか潰してしまわないか? 最悪の場合切………
恐ろしくなってきたので、想像は途中で打ち切った。
藤吾に背を向け、いつもの対称位置の角へと戻ってくる。
クリフはいつもの場所で、水平線を見つめつづけていた。
空を横切るものはなく、海を行く影も、なにも変化のない風景。
飽きないのだろうか、彼は。不思議に思いながら、横に座った。


460 名前:テュランの筏2/8:2006/11/17(金) 12:05:01 ID:FeKqKjGS0
「いい天気だね」
返事はない。
「今日は暑くなりそうだね」
現に、水平線上にその全貌を出した太陽は、いつもより黄色く、まぶしく海面を照らしていた。
その跳ねかえりで輝くクリフの唇は、結ばれたままだった。
言葉は通じるのに、コミュニケーションが取れないとは、どういう事だろう。
これじゃ、せっかく取って置いた水も、渡すチャンスがない。
ギラつき、頂天に向かいつつある燃えさかる陽光は、もう構うのやめて、自分で全部食べちゃおうかな、と僕を誘惑した。
「お前、一日目のペットボトル、どうした?」
去りかける僕の背に、声がかかった。
おそらく、クリフからの質問は、これがはじめてだろう。
嬉しさに振り返る僕は、間もなく顔を赤く染めた。
一日目と言うからには………彼は知っているのだ。
僕が服を全部手放して、欲に負けて、二日目のを手に入れた事を。
いや、タープなんかずるずる引きずっているし、それで一目瞭然だろうけど。
対して、ジーンズに包まれたスラリとした足を組むクリフは、まさしく「孤高」だ。
彼は欲望に負けない。だらしない僕たちの、その倍も誇り高いのだ。
怖気つき、指をモジモジ絡ませる僕に、痺れを切らしたのだろうか。
クリフは手を突いて振り向き、こっちを睨んだ。空よりも澄んだ青い瞳で。
僕はビクリと震え、その拍子にまいていたタープを落っことした。
何とも気まずい沈黙の時間がおりた。



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