【聞けない真実、言えない秘密】
(君に伝えたいこと)


言えない真実、聞けない言葉からの続きです。





月の光が部屋の中へと差し込む。
暗い室内は白い光で仄かに照らされているだけで、外から中の様子を窺い見るのは難しい。
此処は中に居る二人だけの静かな世界となっている。
僅かに聞こえるのは互いの唾液を求め合い、舌を絡める音。



やっと好きだと言ってくれた。
やっと愛していると言えた。




「ん・・・、み・・・はぁ・・・ぁ・ふぁっ・・・。」
「――――――――――――――――っ・・っはぁっ!ハァッ、ハァッ、ハァッ・・・苦しい!」
「・・・・・・当たり前だ、馬鹿者。口付けの間中息を止めてどうする。」
「あ・・はは、そうだな、ちょっと・・・緊張して・・・。」


三木は顔を赤らめ笑っている。可愛い、愛しい。奴を想う言葉ならいくらでも出てくる。言葉を欲しいと三木が言うならいくらでも吐いてやる。私はこの雰囲気に少し酔っているようだ。


「三木ヱ門、もう一度・・・。」


私は再び口付けを求め三木はそれに答える。私の背をきつく抱き留め深く舌を絡める。ただしそれはぎこちなく乱暴でさえあった。
長く甘い熱の篭る口付け。
しかし次第にじれったさを覚えた私は堪えきらずに三木にねだる。


「三木ヱ門、なぁ、もう口付けはいいだろう?そろそろ・・・さぁ・・・。」
「ん?・・・・・・・あ!あぁ、そ・・そうだな・・・うん・・・。」


三木は微かに震える手で合わせられた襟元を広げた。三木の喉がごくりと鳴るのが聞こえ本当に緊張しているのが手に取るようにわかる。


仄かな光に浮かび上がる白すぎる私のこの胸は今まで闇の中を生活の場としてきたせいだろうか、温もりは無いのではと自分でも思う。しかしこの内では明らかに熱い思いが滾り続けている。


「ぁ・・・んっ・・・。」


軽くサワサワと触れる三木の掌の冷たさに声が漏れる。私の示した反応が嬉しかったのか、三木の手の動きは次第に大胆になり襟は大きく広げられ胸の突起を執拗に二本の指先で転がす。


「滝夜叉丸、これ・・・気持ち良いか?なぁ・・・・コレは?・・・・・ねぇ、滝夜叉丸?」
「バ・・・・カ、そんな事・・聞くな・・・ぁ・・・くっ。」


ピクリと肩が跳ね夢中で三木の腕にしがみつく。気持ち良いのかどうか、私の反応を見ていれば一目瞭然だろう。


頬と身体が桃色に染まる。熱くこぼれる息すらも百日紅の花のように紅く色付いているのではと思う。三木は私の目を見ながら胸に唇を這わせ、そっと身体を布団に倒す。右手は私の背を支えたまま、左手でするすると夜着の紐を解いた。
指に代わって私の胸で遊んでいた唇が、鎖骨をするりと這い上がったかと思うと首筋と耳たぶを行き交い、いたずらめいた動をして私をからかっているかのようだ。


「やっ・・三木ヱ門、くすぐったい、ふふっ・・くくくくっ・・・。」
「嫌か?もうちょっとだけ堪えてくれよ。俺、夢だったんだ、お前の首筋に顔を埋めるの。良い匂いがする。」


三木は鼻から大きく息を吸い込み口から深く息を吐きその息がまた耳元から首筋をくすぐる。
クスクス笑っている間に胸で遊んでいた左手はいつのまにやら下腹部へとたどり着いていた。熱をもった私に三木の手が触れゆっくりと動き出すと背が反り返り、より一層身密着した身体に三木の熱い体温が伝わってくる。


意識せぬのに漏れる声は三木の口付けに吸い取られてしまう。


「んん・・・ふ・・・・・んぁっ。」


三木は酔った目つきで私を見下ろし手は休むことなく私を弄る。私の腕も三木の首に絡み着いていた。



私の身体を好き勝手にしていた三木の額には汗が浮いていた。玉になった汗が滴り落ちて私の胸を濡らす。
確かに身体は熱く気分も高揚しているだろう。だが、春とはいえ陽が落ちればかなり冷え込む季節だ。現にこの部屋の中も布団の外は冷えている。それなのに汗が滴り落ちるとはちょっとおかしい。


「そんなに汗をかいて・・どうした、気分でも悪いのでは?」


心配になり声をかけると今まで好きかってに動いていた手がピタリと止まり、三木は私の身体から飛び退き畳の上へ額をこすりつけ土下座をした。


「すまん!!滝夜叉丸・・・・俺・・・・・俺、やっぱダメだっ!!」
「な・・・に?何だ?なにがダメなんだ??三木ヱ門、どうした?」
「俺・・・・・・・俺・・・・・・・・・・・・・・・勃たない・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は・・ぁ??だって、お前・・・・ぇえっ??」


フワフワと気持ちよく浮いた身体を急に地面にたたきつけられたようだった。互いに狼狽え訳が解らない。
私の火照った身体を放り出して三木はうつ伏したままぐすぐすと泣き出す。
怒りも込み上げてきたが今は目の前のこの馬鹿を慰めるのが先、訳も尋ねなければならない。


「三木ヱ門、その・・・、気に障ることだったら答えなくていい。その・・・なぜ勃たないのだ?仕事での事故とか、病気とか、それなら無理をしてはいけないし・・・。」
「違うちゃんと勃ってたんだ、さっきまで・・・。」
「やはり男が相手ではダメか。それなら普通だから気に病むことは無い。」


三木がその気になれないのが身体の欠陥ではないと解ると途端に不機嫌になった。私の身体に火をつけておいて今更勃たないは無いだろう。


「その気が無いなら無いと最初から言えばいいだろう。私は一人で寝るからお前はその辺で適当に女でも買って抱けば良い。ああ、金が無いと言っていたな。だったらコレだけあれば座敷にも上がれるだろう。ほら、行って来い!」
「ま・・待てよ、滝夜叉丸、先ず俺の話を聞け、これには深い理由が・・・。」
「理由?三木ヱ門、理由と言い訳とは、違うものだぞ。」
「いいから聞けって。でも・・・笑うなよ。絶対笑うなよ。」


今までに無い真剣な眼差しの三木の気迫に押されて頷いた。



「滝夜叉丸、俺は今、凄く緊張している。」
「それは私も同じだ。」
「俺が緊張している理由は・・・・お前を抱けると言うのもあるが・・・それだけじゃなくて・・・・その・・・・・、は・・は・・初めて・・だからだ。」
「・・・。まぁ、衆道というのは珍しくはないがそうどこにでも転がっているもんでもないからな。」
「いや・・・・、滝夜叉丸違うんだ。」
「なぁにぃがぁ違うのだ。」



ぼそぼそと呟くように小さな声で俯いたまま前にもまして汗をにじませている三木に対し、次第に声が荒くなっていく。三木が悪いのではない。だが想いの届かない悲しさが私を苛だたせて三木に辛く当たってしまう。


「俺は・・・・・・本当に、初めて、なんだ。」
「だから、男同士なんてそうあるものでは・・・・。三木ヱ門まさか、お前・・・・・。」




三木は真っ赤な顔のまま俯き小さく呟いた。


「俺は、人と・・・他人と肌を合わせた経験が無い。」


その言葉を理解するのに十数えた。
言葉が頭の隅々にまで行き渡りその意味を理解して、ゆっくり確かめるように三木に問い掛けた。


「女も・・・・無い・・・・とな。」
「ぅん。」
「それは、つまり・・・童・・・。」
「それ以上言わないでくれ・・・。」
「何故に?お前は性格悪くないし、器量だって人一倍美しいぞ。なのに?」
「縁が無いと言うか間が悪いと言うか、女に誘われたから『ヤれる!』と思うとくノ一の刺客で殺られそうになったり、気を惹こうとしてる間に気がついたら他の男に持ってかれたり、なんか上手く行かないんだよな・・・。金で女を買えば良いと思うだろうが俺の暮らしは食うや食わずで、とてもそっちまでは金が回らんし・・・・・・・。」


グッタリと力無くうなだれた三木の背中を慰めるように撫で、気にすることは無いと言っては見たものの私も驚いた。男は十三・四にもなれば女を知るご時世だ。実際私もそうだった。同級生達も先輩や既に経験済みの悪友に連れられ廓へ行ったり、あるいは好いた女を相手に筆下ろしを済ませていた。だが、この男は十九にもなって未だに・・・。
これ以上言うと三木が気を悪くするので言わないがそれにしても・・・言葉が出ない。



「滝夜叉丸、やっぱりお前も変だと思うか?思うよな、変だよな、十九にもなってな、忍のくせにな。」
「いや・・・そんなことは無いぞ。それは人それぞれだし・・・。」
「お前はいくつだったんだ?」
「え?何が・・・。」
「お前はいくつで女を抱いた?」
「私は・・・その・・遅かったぞ、確か、卒業してからだった・・・かな。」
「ふぅん・・・そうか・・・。」


疑うような目で私を見上げている。こういう目をした時の三木はやたらと勘が鋭い。気を使ったつもりだがまずい方向へ話が行きそうなので話題を変える。


「昔の話より今はコレをどうにかせねばならんだろう。私の機嫌を損ねたいのか。」
三木の股間を擦りながら話を元に戻す。熱をもっているのは確かだがやはり元気が無い。


「無理だろ?どうにもなんねぇよ・・・・。」


目に涙を溜めながら自分に対し怒っている三木を見ていたら思わず笑みがこぼれてしまった。






三木はよくこんな顔をしていた。火縄銃が上手く的にあたらないと言っては物に当たり私に喧嘩を吹っかけてきた。今度はどうするのだろう。一物が言うことを聞かないからと言って私に当たるか?私に当たるにはその一物を何とかしなければならなかったな。







「三木ヱ門、お前は私を愛しているのだろう。私を抱いて、好きに扱いたいだろう。」
「そりゃぁよ、だけど・・・・俺、ダメだし・・・。」
「大丈夫だ、普段は普通に勃つのだろう。ならば私に任せておけ。」



そうして私は三木の膝の間に割り入り跪いた。



恥ずかしがって足を閉じようとする三木を諭して足を開かせる。元気無くうな垂れている三木を口に含んだ。
柔らかい感触のうねうねとしたそれは生暖かい餅の様だ。その柔らかいものを口の中でころころと転がし弄ぶ。


ピクリと三木の肩が跳ねる。


舌先で先端を探り当て、ソコを執拗に突付くと三木の太腿に内側に力が入る。
その反応を確かめながら焦ることなくゆっくりと、確実に三木に快感を与える。
急いてはいけない、叱り付けてもいけない。子供にひとつひとつ物を教え込むようによい反応を示せば褒め湛える。
そうするとまた一層敏感に反応をする。
子どもが物事を学び確実に成長していく様に三木も少しづつ成長し、今では私の口の中は三木に占領されてしまっている。
だが、いくらなんでも此れは・・・!?
私は堪らず三木を口から離した。




「んぐっ・・、ケホッケホッ・・・、み・・・三木ヱ門、お前・・・、お前のって・・・」
「なんだ、何か変か?滝夜叉丸おかしかったら言ってくれ。俺、人と比べられたことないし標準とか正直解らないんだ。」
「いや変じゃない、ただ・・・。三木ヱ門、お前は興奮するとこの大きさになるのが普通なのか?」
「あ・・あぁ、そうだな、これでいつもどおりかな。変なのか?ち・・小さい・・とか・・・?」
「小さく無い、むしろ此れは・・・・」




でかい・・・・。
三木の物を見て絶句した。





私は仕事で多くの男を誑かした経験がある。女装をして閨に入り込み、いざ事に及ばんと言うときに必ず標的の男の腰の物を見て大きいだの素敵だの、しおらしいことを言ってやると大抵の男は「そうか、俺の物はそんなに凄いか」と視線を自分の物に向ける。その一瞬の隙を狙い髪に挿していた銀の簪で心の蔵を一突きして任務を成し遂げるという手順が多かった。
私の知り得る限りの何れよりも三木の物はでかい。


とっさに私は中指と親指で輪を作りそれを握って太さを測ると指先がかろうじて届く太さ。
次に自分の左手首の太さも測ってみると同じ太さだった。
私は男の中では身体の線は細いが女と比べればがっしりしている。その私の手首と三木は同じ太さなのだ。長さは私より一寸ちょっと長い。

言葉を失いただじっと見つめていると不安げな顔をして三木が尋ねてきた。


「滝夜叉丸、あの、嫌だったら別に今日は、その・・・、口付け出来ただけでも儲けモンだから。」
「嫌じゃないちょっと驚いた。三木ヱ門、お前のちょっと・・・・太すぎる・・・。平常時は私とそう変わらん大きさなのに。この大きさは初めてだな・・・。」
「そうなのか?俺のってそんなに凄いか?」
そう言って三木は自分の股間を覗き込んでいた。


「三木ヱ門、お前のこの太さは・・・・・・その・・・・私は抱かれるのは慣れているが・・・・・こんなのは初めてだ・・・。」
「俺のは入らんか?じゃぁ、お前を抱くことは出来ないのか。」
「そうじゃなくて・・・、あの・・・慣らしてもらえば大丈夫・・・。」
「慣らすって・・・・・・指でしていいのか!?」
「ん・・・・、そう。」


布団に横になり三木の指を口に含んだ。私を見下ろしながら口の中を確かめるように三木の指が蠢く。歯列から舌の付け根まで指でなぞられると、息苦しいがやめて欲しくない妙な感覚襲われる。舌を指に絡ませながらこの指が今から私の身体の中に入るのかと思うと腰のあたりがピリピリとしびれる様に疼く。
舌先で三木の指を押し出してもういいと合図をする。
トロリと湿った三木の指が私の下腹部へと伸びてゆく。その指を迎え入れるために私は足を開いた。


「え・・・と、ココでいい・・んだよな。」
「ん・・そこ。あ、いきなり・・・あっ!!・・・・・・ばか、いきなり深く入れるなと言おうとしたのに!」
「えっ、ああっ、ごめんっ!・・・。」
「くっ・・・・!だからっていきなり引き抜く奴があるか!」
「そうポンポン言うなよ、おれは初心者なんだから。」
「知識ぐらいはあるだろう!」
「あるけど、あるけどさ・・・。」
「・・・・・。早く、続き。」
「はいはい。」


軽く返事をする三木を睨み付けると奴は口付けを返して来た。私の身体を乱暴に扱っておきながらそんな事で誤魔化されるものか。
再び三木の指が、今度は進入を請うように優しく私の入り口をくすぐる様に指でなぞる。コイツは解ってやっているのか、そんなにじらされては私のほうが我慢できない。
せがむ様に腰を浮かせると今度はゆっくり指が身体の中に入ってきた。指が進入の深さを増すごとに、三木の首に絡めた腕に力が篭る。



「ぁ・・・・・・あ・・・ん・・・ふぅっ・・・・、三木ヱ門・・・・ゆっくり動かすんだ、円を描く・・・・よ・・に、ふ・・・・ぅん。」

三木の指が私の中をかき乱す。




それはゆっくりとした動きだったが既に私の中は三木に支配されていた。
三木の指が動くとおりに腰が浮き、意識しない内部の動きが三木の指を締め付けた。


「なぁ、滝夜叉丸、指二本にしてもいいか?」
「ぅン・・・・但しそっとだぞ、そっと。」



三木の指がもう一本私の身体に入って来る。身体を労わる様にゆっくりと優しく。


「滝夜叉丸、中の方が動いてる。これって意識して出来るのか?」
「ちが・・・・ぁ・・・」
「こんな狭い所に俺の入るのか?」
「あ・・・ン・・・・心配なら・・・・・もっと・・・・・掻き回せ・・・・・。」



突然に三木の指が激しく動き出した。
指を別々に動かし私の中で暴れまくると思えば急に動きを変えて抜き差しをしたり、その度に陰湿な音がそこから響き私の耳を焦がす。



「滝夜叉丸、これ・・・・・・・・お前の音。」
「ぅ・・・・、貴様が・・・・あ・・・・はぁっ・・・・三木・・・・みきぃ・・・・。」



三木は満足そうに笑うとするりと頭を下へ滑らせ、そそり立ってしまった私をその口に含んだ。
蕩けるように熱い舌が私を絡め取り、強く優しく愛撫する。経験が無いとは言え男同士、敏感な部分はよく解っている。



「三木、もうダメ!離せ・・・出るから・・・・あっ・・・んっ・・・・。」


私随分と焦らされていた事も在り上り詰めてしましそうで堪らず三木に懇願した。
しかし三木は私の腰をしっかり抱え込み離そうとしない。その間にも私を攻める動きは止めず絡んだ舌は私を追い込みとうとう私は・・・。


「ぁあっ・・・・ぁあっ、ぁあっ!!!・・・・っはっ、はぁっ・・・・はぁっ・・・ん、三木、馬鹿、離せと言ったのに。」


三木を避難し睨み付けると、やつは口の中に私の物を含んだままホラ、と指さしてにっこり微笑んでいた。あまりの恥ずかしさに私は紙を出して吐き出せと怒ると、私を抱き寄せてゴクリと咽を鳴らした。


「あっ、貴様飲んだな!?吐けと言ったのに!」
「だってお前のだもん、もったいないだろうが。」
「もったいないって・・・あんなモンで良ければいくらでも出してやる!だから今度からは飲んだり・・・。」
「じゃ、もう一回・・・・。」




そうして三木の頭がまた私の下腹部へと下がっていった。










〜まだ・・・・続く〜



2001/07



ごめんなさい聖鬼様。
コレにて完結の筈がまだ終わりそうにありません。
どう終わらせようか、悩み悩み悩んだ末あまりにも日にちは経ち、とうとうこの期に及んでもまだ終わる事が出来ませんでした。
大変ご迷惑でございましょうが、この作品が見事完結するまでなにとぞお付き合いくださいませ。
ココまで来れば私も自棄でございます。とことん三木滝に付き合っていきたいと思います。




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