第3章 2 誘い 後編

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妙に静かな時間が、二人を包んでいる。
ふと、美香は黒澤に対してある衝動にかられた。
眠っている彼の顔にそっと、息を殺しながら近づく。
引き締まった唇に、美香の薄くルージュを引いた唇が触れる。
ほんの少しだけ触れて、それでも彼は目覚めそうな気配を感じない。
胸が急にドキドキと早く鼓動を始め、もう一度美香は唇を重ねにいった。
キスをしながら、耐えきれない吐息が唇から漏れてしまう。
唇の表面だけを触れさせる、まるで少年と少女のようなキス。
それなのに、彼が眠っている隙に、知られないようにするというだけで美香はたまらない
興奮を味わっていた。
これだけのことなのに、もう濡れはじめているのがわかる。
腰がじんとして、クリトリスの周囲がしびれるような快感が走る。
彼に抱きついてしまいたいとも思った。

数秒間続いたのちに、唇を離そうとしたその時。
彼の舌が、美香の口内に入ってきた。
同時に、腕が美香の上体を押さえつけて引き寄せられる。
「ん……!」
たちまち美香の身体はねじ伏せられ、あっという間に黒澤に組み敷かれる。
「おまえのほうから、キスを仕掛けてくるなんてな。思ってもいなかったよ」
「……眠ってたんじゃ、なかったの?」
驚きに目を見開きながら、美香は黒澤に尋ねた。
「眠ってたさ。おまえがキスしてくるまではな。二度目は、ずいぶん長くしてくれたんだな。
……俺が眠り続けてたら、あとはどうするつもりだったんだ?寝たふりで確かめてみりゃ
よかったな」
笑みを浮かべながら、彼は美香にそう言った。

どこまでも、この男にはかなわない……
美香は戦慄と快楽の余韻に同時に襲われる。
黒澤は美香を見下ろしてにっと笑ったあと、激しいディープキスを迫ってきた。
舌先を立てて美香の軟口蓋に擦りつけるようにして這い回らせる。
そのまま左右に幾度もゆっくり、時には素早く移動させる。
唇の合わさるあたり、互いの舌が絡み合う淫らな音が響く。
美香が溜息をついても、逃れようとして顔を反らそうとしても、執拗に黒澤の唇に追われ
吸いつかれてしまう。
やがて美香の身体から力が抜けていき、黒澤のなすがままになる。
虚脱したように横たわる美香の様子を見て、ようやく唇が離される。

そのまま黒澤は、ベッドサイドに落ちているものを拾う動作をした。
そこに、なにが落ちていたっけ……?
確か、服とか……下着とか……
美香は虚ろな目で黒澤を見ていた。
そして彼の持っているもので、何をされるのかを瞬時に察した。

「いやっ!」
飛び起きようとした身体は押さえつけられ、腕を片方ずつ掴まれてバンザイの格好に
させられる。
そこから彼の手が美香の細い手首をまとめて掴み、頭上で固定される。
身体の上に跨られ、男の体重をかけられるとどうにもならない。
「やめて、お願い……乱暴にしないで!」
美香は怯えた瞳で黒澤に哀願した。
さきほどまでの静寂に満たされていた部屋の空気が、なにか灰色に染まっていくような
気さえする。
黒澤の手には、美香の履いていたストッキングが握られている。
「心配するなよ。この前みたいに、跡はつかないからな。もっとも、おまえが暴れなけりゃの話だ」
黒澤はにんまりと笑いながら、美香の両腕を押さえつけてストッキングで拘束する。
手早く、慣れた様子で縛る彼を、美香は呆然としながら見つめていた。
手首を結ばれたそのあとで、もう片方のストッキングで、今度は肘関節の下あたりを
縛られてしまう。
こうなると、両方の腕をバンザイさせたまま頭上から動かせなくなる。

美香は自分の身に起きていることを信じがたい思いだった。
さきほどまでの甘いセックスとは対極の、彼が本来持っているだろうサディズムに、無抵抗に
その身をさらしている。
「いやっ……!こんなの……」
美香はそう言いながら、身をよじろうとしたが黒澤の身体で押さえつけられていて、上半身
しか動かせない。
「縛られてするのは、いやか?」
黒澤の顔が、美香の顔の30pほど近くにまで寄せられる。
「いやよ……いや!自由にさせて!」
美香がそう言っても聞きはしないだろう。
それでも、抵抗が男を燃え立たせるとわかっていても、言わずにはいられない。

「この前、ネクタイで縛られた時もあっただろう?まんざらでもなさそうだったぜ。あの時
一生懸命しゃぶってくれたよな。……今度も、そうしてもらおうか?」
美香を言葉でもいたぶりながら、冷笑を浮かべて卑猥な行為を口にする。
「おまえだって、さっき眠ってて身動きもできない俺に……何をした?それと同じさ。抵抗
できない状態でやられることを、好きにさせてやるよ」
眠っていた彼の唇を奪った……そのことを言われると、美香は反論出来なかった。
重ねて黒澤は美香に言いつのる。
「ほんとうにいやなら、バイブ突っ込まれた時みたいに、なぜ泣かない?おまえも楽しみ
たいんだろう。そういう気持ちがあるんだろう。
……俺が、おまえのマゾを引きだしてやる。縛られるのが好きな女に変えてやるからな」

美香は黒澤の言葉を聞かされながら、身震いしていた。
それでいて頭の芯と身体の奥底から灼熱感が湧いてくるのを感じた。
腕が動かせない。
それだけで熱泥のような粘液が、下肢から分泌されていくのがわかる。
美香の身体を覆っていた水色のバスタオルが、男の手で引き剥がされる。
黒澤の下で、美香の白い裸体がさらけ出された。
恥じらって隠そうとしても、手が動かせなくてはそれもできない。

美香を見下ろしながら、黒澤が両手を彼女のウエストのあたりに這わせた。
ビクッ、と美香の身体が反射的に動く。
「おまえは、ほんとにきれいな身体の線をしてるな。胸の大きさも、ウエストの締まりも……
尻の膨らみ具合も、均整がとれてる」
そう言いながら手でそっと撫で回されていき、
美香は声を出すまいとして唇を噛みしめた。
身体を拘束して、言葉で嬲っておきながら今はこうして誉めてくる。
これが、噂には聞いていたけど……ソフトSMとでもいうのだろうか?

やがて彼の手が、美香の乳房をそっと撫ではじめた。
外側から内側に向けて揉みしだくようにして、ときおり力を入れられるけど、すぐにまた
緩められる。
「もう、こんなに乳首が立ってるぜ。……感じてるんだろう?もっと感じさせてやるよ……」
乳首が彼の指、人差し指と中指で挟まれる。そのままこすりあわされる。
「……んっ……ん…………」
感じまいと身を固くしていても、うっかり押し殺した声が出てしまう。
「ほら。見ろよ、自分がされてることを。……乳首がこんなにいじくられて固くなってきてるぜ。
声出せよ。その方が、俺も感じるんだよ」
黒澤は上に反らしていた美香の顔を、ぐっと顎を掴んで下に向けさせる。
「見てろよ。今、たっぷり舐めてやるからな……」
下から美香の瞳を見据えながら、舌先を突き出して、わざと派手に音を立てて乳首を
吸い立てる。
幾度か吸い続けたあとに、爪の先で乳頭の部分をこすられた。
「あっ……。あっ!ああんっ!」
途端に、美香は顔をのけぞらせて大きく喘いだ。
「いいぞ……。もっと声出せ。もっと悶えろ。感じさせてやる」
右側の乳房を愛撫されたあと、左側も同じようにされる。

もう、声を放たずにはいられなかった。
乳首をじっくりと舐めているところを見ているように命じられる。
男の舌先が、美香の敏感な小さな蕾を弄び、吸い、つつく。
そんなところを見させられているだけで、秘唇が疼いていってしまう。
乳首への快楽は、秘所へと直結している。
美香は自分自身で膣を締め付けて、より深くクリトリスとその周辺の快感を味わおうと
してしまう。
ここで、クリトリスへの刺激を与えられたら、すぐにでもイってしまいそうになるほどの
快さだった。
腕を拘束されて、乳房を舐め回されただけなのに、こんなにも感じる……
思うように抵抗もできないというもどかしさが、快感を増している。
そのことに、美香はうすうす気づきはじめていた。

いや……!
ほんとうに、黒澤の言っていた通りにされてしまう。
縛られて、犯されるということが無上の快楽というような女にされてしまう。
自分自身の心の奥底、深く暗い闇の部分を彼は丹念に掘り起こす。
愛し愛されるだけの普通のセックスよりも、身体を、そして心の自由を奪われて、嬲られ
燃える……
その事実を決定的に美香の眼前に突きつけられる。

乳房だけへの愛撫で悶え、乱れる美香の痴態を見ながら、黒澤は満足げな笑みを
浮かべている。
「だいぶ、感じてるみたいだな……ここは、どんな具合だ?」
美香の足を広げさせると、彼はくっと低く笑った。
「汁が、太ももまで溢れてきてるぜ……。どれ」
美香の尻の下に手を滑り込ませると、腰を浮かせる形にさせた。
「凄え……。後ろの穴まで、垂れてるぞ……」
言いながら、美香の股間を覗き込む。
「いやぁ……。見ないで!」
美香は顔を桜色に染めながら、足を閉じようとした。
「閉じるな」
黒澤の声に鋭さがこもった。
足がビクッと震え、美香はうっすらと涙を浮かべてそのまま広げていた。
「よし……広げてたら、気持ちよくさせてやるからな。そのままでいろ」
美香の股間を指で押し広げ、息をそこに吹き込む。
「あ…………」
思わず、甘い声が出てしまう。
「見ろよ……ほら。見ろ。おまえのあそこ、ようく舐めてやるから。俺が舐めてやるところ
よく見てろ。顔を反らしたら、やめるからな」
そう言いながら、黒澤は美香のはざまに唇をつけた。
「ああっ……」

感じているのに、顔を反らすなとは酷な命令だった。
美香がたっぷりと分泌させた愛液を啜りながら、黒澤は舌を使いはじめた。
舌の先で、クリトリスを根元から下へ舐めていく。
「ああっ……!あっ!あっ!」
美香は断続的に襲う快楽の大波に、叫び声をあげ続けた。
いってしまいそう……。
もうだめ、これ以上…耐えられない!
「あああっ!ああっ、ああんっ!あ、イクっ!イクぅっ……!」
鋭い快感が、クリトリスから腹部を貫いて胸へ、そして頭を突き抜けていく。
顔を反らしても、彼は愛撫をやめなかった。
イった直後の、まだひくついているそこを執拗に舌でねぶっている。
その様子を、潤んだ瞳で美香は見下ろしていた。
まさか……また、このまま……
「もう、イったのか?」
黒澤はにやりと笑いながら、美香の顔を見つめてくる。
「また、イかせてやるよ。……ふふ、これで今日何度目だ?」
舌の蠢きは、また一段と激しさを増した。
クリトリスのわきをつつき、舌全体を使って大きく舐めながら、浅く膣口へ入れられる。
それを繰り返されると、もう美香の二度目の絶頂は間近に迫っていった。
「ああっ、ああっ……!いや、ああ!ああ、イっちゃう!」
叫びながら、美香は縛られている腕を頭上に突っ張らせながら、激しく昇りつめていった。
「ああ…………」
声を震わせながら、身体をくの字に曲げて横たわる美香を、黒澤はほくそ笑みながら
見つめている。
 
その右手は、既に大きく膨らみきった男の怒張を握っている。
しごいている。
喘ぐ美香の口許に、それは近づけられた。
「いや……」小さく首を振る美香の顔を、濡れ光る先端に向けさせた。
「見ろよ。……おまえがあんまりいやらしいから、こいつもおまえを欲しがって、困るんだよ。
ほら、見ろ。先走りの汁が、こぼれてきて止まらないんだよ」
口調からして、美香に何をさせようとしているのかは明らかだった。

「しゃぶって、きれいにしろ」
横臥する美香の唇の上に、ぬらぬらと亀頭部分が押しつけられた。
「んっ……」
せつなげな美香の声とともに、その愛らしいピンクの唇を、男のものが犯しにくる……。

亀頭の先、鈴口の割れ目から、とめどもなくその半透明の粘つく液がこぼれ落ちてくる。
それを美香は舌で受け止め、飲み込む。
ねっとりとからみつく感触と、少し塩気のある味がたまらなかった。
黒澤のものの味が、美香の好みに合っているのか、いつしか口を犯されるたびに好きな
行為へと変わっているのを自覚した。
先だけでなく、幹の部分にも粘液が垂れて伝い落ちていた。
こんなにも、この男が興奮しているなんて……。
それは男の欲情を、抑えきれない熱狂を如実に示す証拠だった。

「……きれいにできたか?」
さすがの黒澤も、どこかうわずっている声をあげる。
美香はうなずくと、それは唇から引き抜かれた。
しゃぶらされていたことと、男の性器の淫猥な現象を見せつけられていたことで、美香は
またもや熱い蜜が湧いてしまうのを感じた。

黒澤の腰が、どういうわけか美香の上体をまたいで、黒いストッキングで縛られた美香の
腕に寄せられていく。
手のひらを合わせるような形でいるところに、熱く固いものの感触。
「握れ」
命じられて、両方の手のひらで包み込むようにそのものを握らされた。
まさか、こんなことをされるとは思ってもいなかった。
美香からは見ることができない位置に黒澤は回り込み、そんな卑猥な行為を彼女に強制
させる。
自分から腰を数回動かすと、すぐに離れた。
それからすぐに、頭上にまとめられている手首から下へ、
柔らかい皮膚の内側に沿って勃起したものが擦りつけられる。
「ああ…………!」
未知の快感が、腕に与えられた。
それは肘のあたりにも同じようにこすられ、なんともいいがたいおぞましさと相反する
ように性感を刺激されていく。

本来こんなところに与えられるべくもない、男根での愛撫。
それが背徳感とともに、まったくの新しい愉悦を美香にもたらしていく。
縛られて、拘束されていることがそれに拍車をかける。
自然と、息が荒くなっていってしまう。
男にさらしている脇の下の部分に、それがつついてくる。
「あっ……!いやっ!」
美香は思わず叫ぶが、すぐにそこを通り過ぎて乳房へ、腹部へと下りていく。

男の勃起で、身体をこすられる屈辱。
そして確かに湧き起こる快感。
汚される、という感覚が美香のマゾの歓びを誘いだしていた。
太ももの間に、黒澤の腰が割って入る。
まだコンドームをつけていないままの男根が、太ももの内側を擦る。
感じやすいその部分を責められて、つい快感の声を放ってしまう。
「ああっ……!あん……」

「感じるか……?」
わかっているはずのことを、わざと確認する意味で聞き返してくる。
「あっ……。あ……。……感じ……ます……」
美香は興奮のあまりに声をうわずらせて、男の問いに応じた。
「そうか……そうだろう。ふふ、じゃあ……ここはどうだ?」
美香の濡れそぼった秘裂に、亀頭があてがわれた。
「ああっ……!あっ!!」
今までの、あまりに卑猥な責めに興奮しきり、感じ入っていた美香のそこは
蜜を溢れさせて、男を迎えるために待ち受けていた。
通常の性行為でも、感じる部分なのに……
普通ではない異様な責めを受けた彼女の感覚は鋭敏になっていた。
また、イきそうなほどに高まっている……。
「……凄い濡れ具合だな。そんなに、こうされてるのがいいのか」
黒澤に、侮蔑の意味がこもったような声を浴びせられる。
彼の視線にも、彼女を見下しているという印象がある。
それさえも、美香の性感を引きだしていく効果でしかない。

ふっ、と黒澤が鼻先で笑った。
「気持ちいいんだろう?また、いきそうなくらいになってるんじゃないか?」
美香の欲情で潤んだ瞳を見下ろしながら、黒澤は言った。
「…………」
美香は、黙ったままゆっくりとうなずいた。
「どうしてほしいんだ?お願いしてみろ」
またも、言葉責めを始められる。
「……こすって……。こすって、ください……」
「どこを。何でだ」
「……わたしの、あそこを……あなたの、で……」
「それじゃ、わからないだろうが。ちゃんとはっきり言ってみろ」
声に冷たく、突き放す調子が加わった。
美香は懸命に恥辱をこらえて、男性器と女性器の卑称を口にした。
それでも、声が小さいと言われてもう一度言い直させられた。
こうしている間にも、高まっているクリトリスの快感が遠ざかっていってしまいそうな
焦りを感じる。
言い終えると、黒澤はようやくそこへ勃起を当てた。
「ほら……これがいいんだろう?イけよ。声を出せ」
そう言いながら、ゆっくりと濡れきった部分に上下に擦りはじめる。
すぐに、美香の腰に鋭い快感が突き刺すようにして戻ってきた。
「あっ……あ!ああっ……あ、ああ……」
「ほら!見ろ。おまえがされてることを、よく見ろ。ちんぽでおまんここすられて、それが
気持ちいいんだろうが。見ていろ。自分が何をされてるか、ほら、よく見ろ!」

激しく美香を責め立てながら、黒澤の声にも興奮の色が隠せない。
美香の声が、せつなげに鼻にかかってくる。頂点が近いしるしだった。
「イけよ。ほら、イけ。何度でも、イかせてやる。腰が立たなくなるまで、何度でもな!」
この言葉を聞かされた途端、美香は頂上に突き上げられた。
「ああっ!あっ!あ、あああっ……!イクぅ……っ!」
全身を波立たせて、美香は高処へと昇っていった。
膣口を何度も締め付けながら、快感を味わい続ける。
立て続けに、3回もイかされた。
美香の全身は汗にまみれ、黒澤の攻撃に耐えていた。
あの日、初めて犯された時以来の、ゴムなしでの性器の接触だった。

美香は息を整えていると、黒澤がコンドームを着けているのを知る。
ようやく、入ってくる……。
期待に、美香の胸はうち震えた。
美香の身体は、軽々とひっくり返され、うつぶせにされる。
自分から尻を上げて、男根の侵入を待つ。
そこに、熱いものが当てられた。
「入れてほしいか?」
「…入れて……入れて、ください……」
「犯してください、と言え」
「……犯して、ください……」
言い終わると、すぐに怒張がぐっと奥までひといきに突き込まれた。
「……ああっ……!」
何度か、激しく出し入れをされる。
「ああっ!あっ!あっ!」
突かれるたびごとに、美香は歓喜の声をふり絞った。
唐突に、美香の内部を満たしていたものが引き抜かれる。
「ああっ!いやぁっ!!」
美香は、思わずそう叫んでしまった。

黒澤は美香を仰向けにさせると、M字開脚をさせて、両足を抱え上げた。
そして再び、突き入れられる。
「ああ……!ああっ!あっ!ああんっ!あっ!」
早いスピードで奥まで突き、そして入り口まで戻される。
一度また引き抜かれ、そして入れられる。
今度は角度を変えて、Gスポットのあたりを念入りに擦られる。
腰遣いも、ゆっくりとしたものに変わる。
膣奥とはまた違った快感に、美香は歓びの声をあげて応えた。
すると、またしても唐突に怒張が引き抜かれてしまう。

「あ、あんっ……いや、やめないで!」
これが美香の正直な心の内だった。
クリトリス性感が限界にまで達せられたそのあとは、膣内の快感がどんどん湧き起こって
しまっている。
入り口を、Gを、奥を、突きまくってほしい。
膣内の全体が感じる状態で、どこをどうやって刺激されても、
暫く入れられているだけで、いきそうに思えていた。
また、今度はゆっくりと入れられる。
「あ……!」
そして、少しずつしか内部へ入り込まず、入り口の浅い部分で微妙に動く。
それでも美香の快感は、充分に呼び起こされていった。
「お願い……!もっと……もう少し、早く……」
「こうか?」
少しずつ、スピードアップしていく抽送に、美香は素直に喜んだ。
「あっ……あ!そう、ああ……あ、もっと……もっと……」
美香は感じ入って、目を閉じていた。

突然、美香の腰が大きく持ち上がった。
ベッドの脇に追いやられていた枕が、美香の尻の下に押し込まれた。
挿入の角度も当たる位置も変わる。
より深く、Gスポットのそのまた奥へと侵入されていく。
結合がいっそう深くなるとともに、美香の膣内も
自然と締め付けがきつくなり黒澤のものとの密着感、一体感が強まっていく。
「ほうら…見えるぞ。ここから、おまえと俺が繋がってるところが。
……おまえからも見えるだろう。ほら。よく見ろ」
彼の言うとおり、美香の目にも黒澤の男根が、彼女の膣に出入りしている卑猥な光景が映る。

目をそらそうとしても、強い口調で「見ろ!」と叱責される。
それを彼女自身に見せつける意味で、腰の下に枕を入れたのだろう。
「どうだ。感じるか。おまえのおまんこが、俺のちんぽに犯されてるんだぞ。
腕を縛られて、括られて、犯されて。それでも何度もイって、イキまくって。
おまえは淫乱な女だ。こんなことを言われても、感じるマゾ女なんだ」
興奮のためか、矢継ぎ早にまくし立てる黒澤の口調にも余裕がなくなっている。

彼の言うことは、なにもかもすべてが美香の性癖を的確に突いてくる。
蔑まれても、罵られても、それがすべて被虐の快感に繋がっていく。
自分はほんとうに、彼の言う通りのマゾだと思った。
「美香は、マゾ女です、と言え」
「……み……かは、マゾ……おん、な、です……」
焦らすように、男根の動きが緩慢になる。
「縛られて、犯されて、それでも感じる淫らな女です。言え」
美香は、黒澤の言う言葉をとぎれとぎれに復唱した。

「よし。…次にも縛ってほしいか?」
美香の内部の動きを完全に止めて、黒澤は美香の目を見た。
「ああっ……あ!……縛って……縛って、ください!」
美香は誘導されるがままに、そんなことを口走ってしまった。
「縛られたまま、犯されたいか?」
淫猥な笑いを浮かべながら、黒澤が畳みかけた。
「……はい。縛ったまま、犯して……くだ、さい……ああ……」
「ようし…忘れるな。次はそうしてやるからな。……そろそろ、イかせてやろうか?」
そう言うと、黒澤は急激に激しく出し入れを始めた。
「ああっ……あ!あああっ、あ、ああ!」
美香は、迫り来る絶頂感に、声を出すのも精一杯になってしまった。

「ああ……」
黒澤が、大きく快感の溜息をついた。
美香の耳元に、それが響くと同時に、彼女はようやく昇りつめていく。
「……あ……ああ〜〜〜〜っ!!」
美香の膣が黒澤のものを思いきり締め上げると、彼も呻き声をあげて彼女の内部へ精を
解き放った。

大量の精液が、幾度も脈打ちながら注ぎ込まれてくる感覚。
暗い愉悦が、美香の胸を重く塗りつぶしていく。
今夜の最初のセックスとはまったく違う、禍々しさに囚われていく……


美香は興奮と疲労の極限状態にあった。
両手を縛られ、頭上に拘束されて犯されるという異常な状況に確かに高ぶりを
感じていた。
黒澤のサディスティックな物言いも、その口から出る蔑みも罵りも、美香の性的な快感を
増強させるものでしかない。
幾度も焦らされ続け、それこそ何度も繰り返しイかされて……
自分でも、いったい何度イキまくったのかわからなくなっていた。

いつのまにか黒澤は、彼女から離れてシャワーを浴びていた。
美香の腕を縛っていたストッキングはほどかれていたが、薄赤い痕跡が手首と肘の下、
上膊部に残されている。
疲れきっていて、犯された姿勢のまま仰向けになっていた。
身体を動かすことさえも、億劫で仕方ない。
全身のあらゆる部分……腕も、足も、腰も……ひどく重く感じている。
力が抜けてしまっているので、自分で自分の身体が、これほど頼りなく思えた
ことはなかった。

黒澤が出てくる気配を感じた。
キッチンで、冷蔵庫を開けているらしい物音が聞こえる。
美香も喘いで、叫んで……エアコンの空気のせいもあるが、喉がいがらっぽく
なっている。

なにか飲みたい……
そう思って、横を向いて、ベッドに手をついて起きあがろうとする。
ただそれだけの動作をするのに、じれったいほどの時間がかかる。
「起きたのか?」
黒澤が、美香の気配に気づいて声をかけてくる。
彼は水割りを作って飲んでいた。
「飲むか?」
グラスを上げてそれを美香に向けるが、とてもアルコールを摂ることなどできない。
「いえ、それは……。さっきの、ポカリスエット……もらえる?」
「ああ、いいよ。ちょっと待ってろ」
黒澤は、新しいペットボトルを取り出してグラスに注いでくれた。
それを渡されるかと思ったら、彼がそれに口をつけた。

美香に近づくと、また……
口移しで、飲まされる。

美香は驚きながらも、それを飲み干すしかなかった。

なぜだろう……。
美香はこんな風にされるまでは、口移しで飲み物を分け合うということには嫌悪感を
持っていた。
でも、実際に黒澤にこうされると、まるでそれがごく自然なことのように思えてくる。
もうなにもかも、恥ずかしいことも、それこそ知られたくもない身体の奥の奥まで見られて
しまったからだろうか。

「身体、大丈夫か?」
美香は弱々しく首を振った。
「そうだろうな。あんなによがり狂ってたんだ……また、感じすぎて腰が抜けちまったのか?」
黒澤はからかうような調子で、美香の顔をのぞきこむようにして言った。
あなたがそうさせたくせに、と美香は言いたくなった。

黒澤がグラスを美香に渡し、自分は水割りを飲み干した。
「寝ようか?」
と彼は美香に囁いた。
彼女は少なからず動揺した。確かに、このまま家に帰り着くのも難しい。
今までのホテルでの連続したセックスの時にも、眠ったりしてインターバルを置かないと
身体が辛くなるほどに責められ続けていた。
「今、何時なんですか?」
美香は我に返って黒澤に訊いた。
「もう、夜中の一時だぜ」
「そんなに……」
美香はそれほどに時間が経過していたことにも驚く。
長く、激しい責めは美香の身体と心の均衡を奪い去り、時間の感覚さえも失くさせていた。
「俺は飲んでるしな……飲酒運転する訳にはいかない。これでも優良探偵だからな。
つまらないことで免許汚すのは、ご免だ」
「…………」
泊まっていけ、というのか。
「タクシーも、この辺はあまり来ないぜ。ハイヤーでも呼ぶか?どうしても帰りたければ、
だけどな」
美香の目を見て、薄く笑っている。

どうするつもりだ、いまさら帰るつもりなんかないんだろう?
そういうように言われている気がする。
美香はそれを聞かされると、急にいやな記憶を蘇らせて、胸が騒いだ。



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