実のところ予想以上だなあ、と煌く剣を捌きながら仙号を持つ道士は考える。
力を上げた宝貝に振り回されることもなく、以前の持ち味を失うこともなく。
嬉しそうに、飽きずに剣を振るっている。
確かに天化くんは、センスがいいよ。
それでも。
天化は楊ゼンに、遥かにかなわない。
それを承知で、「センスがいいよ」なんて僕が口にしたら、やっぱり天化くんは怒るだろう。
それでは満足しないから。
目の前の若い道士は、戦うことそのものに没頭している。
ただ純粋に強さを求める、それは若さの特権で。
より強く、もっと強くと飽くなく望む。それはもう無意識の領域。
彼はまだ、そのような時間の中を生きている。
自らの中にもそのような気持ちはあるけれど。
もはや自分がここまで一途になれないことも知っている。
生きることが強くなることと同義であるような。
そんな時間を黄天化はまだ生きている。
ふふっと楊ゼンは笑う。
君は本当に、師父そっくりだ。
意識しようとするまいと、それは彼の人が求めた生のあり方。
まだまださ。
どんなにがんばっても、まだまだ追いつけねえさ。
楊ゼンの口から漏れた笑みと呟きに、天化は応じた。
連作短編その5です。
その4と中味は一緒です。先に進めませんでした。
戦わない天化は「生きて」いないのだろうと(もっと分かりやすく書けよ)。
道徳と天化は似て非なるものと思いますが、
今回は似てるところを優先してしまいました。