がしっ、きいん、と宝貝が唸る。
天化は口を引き結んで打ち込み続ける。
気合を掛けることもせず、ただ無言で宝剣を繰る。
その眼は、楊ゼンを睨みつけ。
いや、虚ろなのか。
天化の眼は確かに楊ゼンを捉えているけれど。
繰り出す剣の狙いどころは誤つことがないけれど。
天化は楊ゼンの視線を受け止めきれない。
「道徳さまは聞仲に敵わなかったのだから」
理知的な声が天化の脳裏に谺する。
言葉が返せない。どうしても返せない。
けれど留まれない。どうしても留まれない。
どうしようもなく突き動かされて、天化は楊ゼンに向かっていく。
さっきよりちょっと遅い、か。
そう見ながら楊ゼンは腕が痺れちゃうな、と思う。
一撃一撃はさっきよりだいぶ、重い。
もっと重く。
もっと速く。
楊ゼンは祈ってやる。
もっと速く。
もっと重く。
つまり、もっと強く。
紛れもなくそれは天化の祈りでもある。
まだまだ、まだまだ、と思うのに。
まだまだ自分は敵わないのに。
まだまだ自分は強くなれるのに。
なのに。
その先に自分は何を目指すのだろう。
ちくしょう!
あの日莫邪IIに呟いた科白を、
天化は食いしばった奥歯の向こうから零した。
連作短編その7です。
ふたたびものすごくご無沙汰でした。
短期集中でもう少し頑張れるといいのですが。
これ書いていると天化が好きな自分を再確認します。
実は終わらせたくない?(いえ、終わります、いつかは。)