過ぎ去ったひと
 



ちくしょう!


悔しさを言葉に零すと、言葉は感情を増幅する。
行き場のない思いを乗せた打ち込みは烈しいが、力任せなだけに鈍くなる。
分かってはいても、制御できない。

もっと。
だから、もっと。

自分はまだまだ強くなれるのに。
道徳のように、なりたかったのに。

楊ゼンの鮮やかな打突をぎりぎりのところで受けながら、 そのとき天化は呆然とした。


たかった?

過去形の発想は生まれてこのかた初めてだった。
目指すものを、失ったのだ。
その事実は動かない。
もう二度と、追いつくことも追い越すことも決してできない。
やりきれなさが天化を襲う。

宝剣の光が乱れた。


不意に天化は楊ゼンの姿を見失い、
次の瞬間天化の腹には楊ゼンの拳が突き刺さっていた。


「ぐっ・・!」

「天化くん、君の負けだね」

堪らずにうめく道士を見下ろして、楊ゼンは淡々と告げたのだった。



う・・。

その8でした。
なるべく早く、次を。

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