痛えさ・・
一瞬、息ができなかった。
傷口を殴りつけられたのだから当然だ。
楊ゼンさん、いままで俺っちの腹狙うの避けてたさ?
今のもきっと手加減された。
その瞬間、そんなことには頭が回る。
悔しいようで、でも不思議と悔しくはない気がした。
悔しいことはもっと他のことなのだ。
間を置かず、天化は呼吸を整え顔を上げる。
その眼の色の変わりなさに、
楊ゼンはふっと笑って一度収めた三尖刀を構え直した。
ふたたびふたりは向かい合う。
微かな動きも見逃さない、張り詰めた空気が生まれる。
互いに視線が外せない。
楊ゼンの眼を見つめたまま、天化は口を開いた。
俺っちがもっと強かったら、コーチや親父を助けられたさ?
目の前のひとには何度でも向かっていけるけど。
悔しいことというのは取り返しのつかないことなのだと、彼は意識した。
短編その9。
なるべく早く次を、とは思いましたが、
これはあまりに短すぎというものかも。
捕まえたかと思った天化にするりと逃げられる感じです。