parasite-NET


甘い水 (4)




へその下あたりに少し冷たい感じがあって、落ちてきた固体とも液体とも言えないものが、くんにゃり、べっとりと肌にへばりついていく。ズボンの前を空けられ、強引に、下着ごと脚の半ばあたりまでずり下ろされる。とろりと肌の上に乗ってくる嫌な感触は、下腹のほうへと続いていった。諦めてマグロになってばかりもいられなくなって、不承不承に目を開く。
自分の腹の上、餓鬼の粘土あそびよろしく、ライナスがべたべたの固まりをいじくって伸ばしているのが目に入ってきたので、げんなりする。

「てめっ、そんなとこにくっつけやがったら、はがれなくなるだろうがよ。うっわ、馬鹿、嫌だっつって―――」

んなとこ無理やり剥がされたら死ぬほど痛えに決まって―――

「大丈夫、全部舐めっから」

なめっから、って俺ごと舐めやがる気か。なするな、なすりつけるな。

「つ―――いてっ」

べたべたになったでかい手が腹から離れるときに、肌にぴりぴりと刺激が走った。とりもちなみの粘着度である。股間のあたりまで糖蜜がくっついているので、無理やりはがしたら間違いなく大変なことになるはずである。
この状態でやめろ―――と言って、本当にこのままで止められたら、どうにも困ったことになるに違いない。

「よし、わかった。舐めろ。このシロモンが一切合財きれいに無くなるまで舐めろ」

半ばやけっぱちでそう言うと、ライナスは嬉しそうに尻尾を振った―――ように思えた。

我が弟ながら―――ほんとに馬鹿だろ、おまえ。されるがままに、こんだけ情けない格好をさらしてる俺もたいがい馬鹿野郎だけどよ―――似合いの馬鹿兄弟ってことか―――もうどうでもいい、好きにしろ、気力が尽きた………

へその上、身体の中央に沿って大きく舐め上げられ、ビクリと反応を返す。ぴちゃぴちゃと音をたてながら、腹筋のあたりを円を描くように舌が動いた。唾液と体温で糖蜜が溶けて、甘ったるい匂いが漂ってくる。その匂いを仕方なく嗅いでいると、なんだかぼんやりと頭の働きが鈍ってくるような気がする。
大きな手が足の付け根の筋の上に置かれ、その辺に微妙にへばりついたり、粘り気を残して離れたりする。中途半端に刺激されていた自身へと、皮膚伝いにじれったい微妙な刺激がくる。

「は―――」

身体の中にじりじりと溜まってくる熱を逃がそうと息を吐く。
大きな口は、腹の上で咀嚼に近い動きを繰りかえしていた。べたつく肌を舐め、吸い付き、噛みついてくる。平たい腹に、尖り気味の犬歯があたり、そのまま強くこすりつけられる。痛いぐらいの刺激に顔をしかめれば、おそらくは赤く歯型ががついたであろうあたりを、舌先が細かく動いて舐めていく。

ライナスの食欲から言って、固まりを噛みとって飲み込んでしまえば、あっという間に食ってしまえるはずである。さっさと片付けろと思うのに、棒つきの飴を惜しんで舐める子供よろしく、ぺろぺろと舐めたり、関係のないところを吸ってみたりしてくる。
ぬかるんだひどくじれったい接触を、身体を捩って耐える。

「ライナス、はやくしろよ」

いらついた声で言うのに、腹の辺りで笑っている気配がする。

「堪え性がないぜェ、兄貴」

馬鹿野郎、そんな話はしてねえよ。早いとこ、このべろべろを何とかしろと言ってんだろうがよ。
弟の言いざまに真剣にむかつく。脚の上に乗っかっている重石をどけて、自分の腹をしつっこくしゃぶっている頭を蹴ってやりたい。
腹の上で動いているライナスの頭頂部を睨みつけて、小さく舌打ちをすると同時、いきなり身体の中心を握り込まれ、絞るように先に向かってこすられた。直裁な刺激に、身体が跳ね上がる。

「ん―――」

声を上げかけて、唇を噛む。

「ほら、な?」

やめろ、触るな。そんなべとべとの手でよ。
うわ、ほらくっついたじゃねえか。

「や、ばか、動かすな、ああ」

皮にへばりついたまま握り込んだ手を上下されるので、根元やら頭やらをぐいぐいと引っ張られる感じがある。親指が先端を撫でてくるのだが、指が触れてくればぺたぺたと吸い付き、離れれば諦め悪く粘ついて一番敏感な場所をきつく刺激される。
緩く頭を持ち上げていたものが、立ち上がってびくびくと反応するのがわかって、唸り声をあげる。

てめえ、これは俺のせいか。俺の堪え性が無いからだと言いやがるのか。その頭、てっぺんから真っ二つにかち割って欲しいのか。

「えええと―――ごめん。ごめんな、兄貴」

ほとんど殺気に近い兄の怒りを、本能で感じ取ったらしく、ライナスがぎくしゃくと顔を上げ、視線を合わせてくる。

「いい…から、はやく、っ…ん」

早く片付けろと言いたいのである。
ライナスの目がきらきらと輝いたのを見て、いや、ぜんぜん違うから、としかめっ面をするロイドであるが、自分で聞いてもげんなりするような上擦った声だったのは確かなので、弟ばかりを責めるわけにはいかない。

「ちっと、待ってて」

くちゃくちゃとはっきりした咀嚼音が聞こえてきたので、結果的には、早く食え、の命令は有効であったことになる。
ライナスの動きが荒くなって、張りついた固まりを半ば、無理やり引き剥がして食っている。痛いようなむず痒いような刺激が腹から下半身へと移って行く。立ち上がったものの先を掌が掠めるから、声を上げる。気持は良いのだが、触る場所すべてをべたべたにされたのではたまったものではない。

「ライナス、手―――」

「ん?ちっとぐれえべたべたでも平気だぜ」

てめえが平気でも、俺が平気じゃねえ。なんとかしろ。

長い手が顔のあたりに伸ばされてきて、ロイドの唇を探ってくる。甘い匂いのする大きな手から顔を背けようと思うのに、ごつい指が食い閉めた歯を割るように唇を探ってきた。ライナスの口は糖蜜で塞がっているので声は無い。

舐めろって言うのか。俺が舐めなきゃいけないのか。何故だ―――

そう聞けば、ニノの作ったモンは―――と返されるだろう。困ったことに、こればっかりは言い返す言葉を持たないロイドである。



―――――いい加減もうどうでも―――良かァねえよ、畜生――――



Back Next

SS index

home


http://red.ribbon.to/~parasite/  Copyright 2003 ©Torino Ara,All Rights Reserved.

楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル