甘い水　(7)

身体の中、硬いものがずるりと動く感触。ぐいぐいと突き上げられ、息が苦しい。

「あ―――ああ」

限界まで入り込まれた内側の壁が濡れて、爛れて、溶け始める。ぐちゃぐちゃとかき回され、ぞくりとする甘さを感じる。いいのか、と聞かれるから、いい、と声を上げた。ずるりと入り口近くまで抜き出される感触がたまらなくて、無意識に身体を捩り、中に入り込んだ質量を締め付ける。太い先端が、入り口のあたりを引っ掛けるように行き来する。

「ん…あ、あ、あは」

とろとろと濡れた快感が、強く擦られるあたりから広がる。唇を舐め、眉をしかめて、堪らない快感に耐える。浅く、熱を持った粘膜を撫でられるような抽送がじれったかった。頭の中が痺れて、それが四肢の先にまで広がってくる。どうにも我慢のききそうにない飢えに似た欲を、身体の中心に感じる。延々と弄られ、しゃぶられして焦らされているから、完全に理性のたがが外れているらしい。ロイドは心の中でため息をつく。
こうなったら発情期の獣と一緒だ。

「ライナス―――もっと」

我慢がきかなくなって、快感をねだる言葉を口にする。
もっと強く。もっと深く。

はやくしろって―――どこもかしこも甘ったるくて、頭ァおかしくなりそうなんだからよ。

「うん」

見上げた弟の、褐色の目が細められ、自分の顔を見つめている。
腰を取られ、ぐいと引き寄せられる。身体を深く折られ、体重をかけて入り込まれ、押し出されるように息を吐き出す。息苦しいけれど、気持ちが良かった。硬くなった自分のものも、自分の腹と相手の腹で挟まれ、ぬるぬると擦られている。

「ん、は…っ」

叩きつけるように、思い切り深くまで打ち付けられる。身体の奥深くを開かれ、硬く熱い性器全体で擦られ、抜かれ、また突き上げられる。

「ア―――はあ、あっ」

動かれると、粘膜と陽物が擦れる、くちゃくちゃと乱れた音。ときおり、下腹の皮膚が触れ合うまで深く入りこまれる。ぴちゃり、と肌と肌が吸い付き、名残惜しげに離れる濡れた音が聞こえた。

「んや、甘い、う…ん」

「甘いの、嫌いか」

苦笑するような声で、弟が聞いてくる。

嫌いだ―――嫌い―――甘い、なんでこんなに―――嫌いだ、って言ってるだろうが。

繰り返し深く塗りこめられる甘さ。犯してくる熱と苦痛と快感を、混乱した頭は甘さとして感じとっているのだ。

「あ―――いい、ライナス…イ―――」

いい―――気持いい。どろどろに溶けて一つに繋がってしまいそうだ。啜り泣くような、鼻にかかった音が止らなくなる。
腰を持ち上げるようにされ、さらに引き寄せられ、深く入ったまま揺らされ、抉るように突かれる。良いと分かっている場所を狙って突かれ、きつい快感が神経を擦る。悲鳴を上げながら、自分からも腰を擦り付けていく。

「や、だめ…だ……アアァッ」

強い波が来て、意識を持っていかれる。がくがくと震える身体の奥のひくつく場所をさらに抉られ、さらに高みへと突き上げられる。
甘い―――甘い―――溶ける。
抉られ、震え、身もだえながら、熱を吐き出す。
自分の放出から少し遅れて、身体の奥に熱い流れを感じる。大量に流し込まれてくる液体を搾り取るように、入り口と内側がひくひくと動いた。

「や――――」

ぐちゃぐちゃに濡らされる快感に身体中が震え、唇が意味の無いいやらしい音を口走る。目の前が一瞬白くなり、ふっと意識が飛ぶ。

「ん――――」

感覚が戻ってくると、はあはあと荒い互いの息遣いだけが聞こえた。
限界まで高まった熱がゆっくりと引いていくにつれ、全身から力が抜けていく。達した体は重いが、意識はふわふわと浮いて漂う。
自分の上に乗ったままでいる体に、ゆっくりと腕を回し、汗ばんだ肩のあたりを撫でてみる。

「ん、ごめん、重いだろ」

重いは重いのだが、嫌ではなかった。

「別に、いい―――」

首に腕を回すと、離れようとした体が戻ってくる。鼻筋に唇が下りてきて、軽く口付けながら肌をたどってくる。顎を上げると唇が合った。目を開けたまま緩く口付け、唇が離れていったので、目を閉じる。
大きな手が頬を撫で、首筋を辿ってきた。

「ん」

くすぐったいのだが、掌で撫でられるのは気持ちよくて、目を閉じたまま笑う。

「うわ―――」

ライナスが慌てたような声を上げる。
なんだ、と重い瞼を上げると、弟はなんだか困ったような顔をしている。

「いや、兄貴可愛いなあ、と」

馬鹿だ馬鹿だと思ってはいたが、てめえは、本っっっ当に――――まあ――――どうでもいいけどよ。

「可愛いんで、ほら―――ね」

ライナスが身じろぐから、身体の中にいまだ迎え入れているものの、大きさと脈打つ動きを感じとる。

―――――やっぱり、良かあねえよ、馬鹿。

「嫌だ」

「そりゃ無いよ、兄貴。まだ入ってんだから、ちょっと我慢しててくれれば―――眠っててくれてもいいからよ」

こんなんで眠れるか、馬鹿。俺が眠ってても、やれればいいってのか、馬鹿野郎。