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「騎士の祝宴」 (12)




ゆらゆらと揺らされるような、愛撫に近いような抽送を続けられる。掌がゆっくりと身体を撫でてきて、気持良いと感じる場所を、すべてあばかれていく。筋と筋の狭間を器用な指が撫でてたどり、あばらの辺りをくすぐるように、爪先でひっ掻かれた。思わず息を詰めると、へこんだ腹を、掌全体で撫でられる。いちいち反応を返すのが恥ずかしいような気がして、自分の身体をコントロールしてみようと思うが、無駄だった。

緊張すれば、掌を通じて相手に伝わる。反応を抑えようとすれば、すぐにそうと知られる。身体のほうが音を上げて素直に快感を訴えるまで、執拗なくらいに何度も、同じ愛撫を繰り返される。
一気に上りつめるのではなく、なだらかな坂を上がっていく感じだった。手を引かれて、知らない場所へ、連れて行かれる。曖昧な不安と、漠然とした期待。

「は…あっ、セイン…いやだ」

「何が、嫌なんだ」

「あ、あ…」

後ろから、ぴたりと身体を合わせたまま、胸の突起を指先で撫でられ、腰を回される。少し遅れて、くちゃ、くちゅ、と濡れた音。溶け出しそうだと思う。かき混ぜられて、溶けて、崩れ落ちる。

「いや―――だ」

「いいんだ」

笑いを含んだ声。耳たぶをしゃぶられ、息を吹き込まれる。
両手で腰を捕まれ、息を飲む。

「あ―――」

いきなり、強く叩き込むような動きで、入り込まれる。
ゆっくりと擦り付けられる動きに慣れかけ、強張りを解いていた場所が、きゅっと収縮した。反射的に身体がずり上がるのを、腹の辺りに腕が回ってきて、抱き止められる。

「い―――ひっ、や―――」

がくがくと揺さぶられ、どうしようもなくなって、声を上げ、もがく。

馬鹿者、遊ぶな。貴様が、私で遊んでいるのは、分かっている。昔から―――騎士見習いとして城に上がった、子供の頃から、おまえは私を振り回して、そうやって、楽しそうにしている。
人の腕を掴んで、手を握って、稽古場から引っ張り出し、どこへ行くのかと聞けば、内緒だと言う――――

「イイって言ってよ」

入り込み、抜き出される動きはまた緩くなり、止まりかける。それをじれったいと思う自分に気づき、火照った身体が、さらに熱くなる気がする。脇腹を撫でられ、ひくりと反応する。反らせた喉のあたりにも、指が這ってきた。強く、緩く、追い上げられる。自分の身体だというのに、全く抑制が効かない。せめて動きを合わせようと思うのに、それも出来ない。

「はァ…ぁあ―――や、ああ―――」

穿つ動きの強さに合わせて、ただ声だけが上がる。

「まだ、嫌か」

笑う声が、唇を押し当てられた首筋に響く。

「そういや、おまえはよく、いやだ、とか、だめだ、とか言ってるよなあ」

口調には余裕があるが、セインの声も、熱に荒れてきている。

――――私は嫌だと言う。稽古をさぼってばかりいては、善きキアランの騎士にはなれんぞ、と大人たちの言葉を借りて言う。言いながら、その場に留まりながら、心はすでに駆け出している。おまえの言う、内緒が知りたいからだ。そうして、おまえが手を離さないのをいいことに、私は心を追うようにして、駆け出す。

「は……っ」

びくりと身体が跳ねる。肩口に噛み付かれたからだ。

「俺のこと、考えてよ」

甘ったるい口調で囁かれる。わざとやっているのは分かっている。それでも、身体の奥がとろりと溶ける。頭を反らせ、後ろから抱きしめてくる身体の、肩のあたりに押し付ける。

「―――って、る…は、ァアアッ」

――――考えている。私は、ずっと、おまえのことを、考えて―――でも、なんだかもう、考えていられなくなって――――

「セイン」

泣いているように、声が震える。

「セ―――あ…いい、も―――」

一度せきを切った言葉は、止められない。
いい?と聞かれるから、いい、と答えようと思うが、言葉は途中で意味の無い喘ぎに変わった。腹の辺りに回っていた手が降りてきて、すでに雫をこぼして濡れる性器を手に取られる。ためらわずに、その手に押し付けるように、腰を動かす。

いい、とか、はやく、とか、そんなことを口走ったような気がする。音が鳴るほどの強さで、繰り返し突き上げられる。前を握り込まれているから、セインの掌の中、抽送に近い動きで高ぶったものが擦れる。ぴちゃぴちゃと、聞くに堪えない音が響いている。

「アァ…い…ィ」

前を後ろを一緒に嬲られ、快楽に身を捩る。自分が何をしているのか分からなくなりかけ、少し怖いような気がして、唇を噛み、首を振る。
一瞬、ふっ、と正気が戻り、自分だけがとんでもなく乱れた様を晒しているようで、恥ずかしいと思う。

「や――――」

かあっ、と頭に血が上る。無意識に虚空を掴むようにもがき、どうにか自分を取り戻そうとする。いやだ、と、自分自身に言おうとしたところで、押さえようの無い、震えがきた。がくんと顎が上がる。身体の内側から膨れ上がってくるような、どうしようもない快感にきつく目を瞑る。

耐えられない。我慢できない。いい。

引き攣ったように、唇が開く。叫び声を上げたような気がしたが、耳には聞こえなかった。声にならなかったのか、聞く余裕さえなかったのかは分からない。

「あ…っ、いい」

耳元で低く囁かれる声は、はっきりと聞きとれて、ぞくぞくと背筋に震えが走った。ねじ込むように腰を回され、高みへと思い切り押し上げられた。手足が痙攣しそうな強さで、ビクンと伸びる。見開いた目の奥に、ちかちかとした白光を感じる。

気持いい、いい、いいから―――

「あァ…セイン、あアアアァ―――や…」

悲鳴に近い声を上げながら、脈打つ熱を吐き出す。ほとんど同時に、奥まった場所を濡らされ、一杯にされる感触。泣きたくなるような切なさに、息を詰め、身体を反らせる。ふわふわと身体が浮くような温みが、身体の隅々まで広がるのを感じ――――温かい闇に飲み込まれ、何一つ分からなくなる。



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