eden* They were only two, on the planet.
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●オートメッセージ ●スキップ(既読判定あり) ●バックログ ●バックログ中の音声 ●オートセーブ ●クイックセーブ ●パニックモード ●CG鑑賞 ●音楽鑑賞 ●シーン回想 |
●BGM:eden*全32曲 ●BGM:eden*PLUS MOSAIC全4曲 ●OP歌 原田ひとみ little explorer | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
必要な機能はすべて揃っています。オートメッセージやスキップの速度調整もスライダーで感覚的に調整可能。バックログは、テキストエリアで1セリフ・1文単位で遡り、同時に立ち絵や音声も遡るビデオの巻き戻しのようになっています。一気に遡りたい人もいるでしょうから、ここだけは好き嫌いが分かれそうです。パニックモードは、所謂「ママ来たボタン」。音をミュートにし、ゲームを最小化してトレイへ格納します。面白いのは、画面モードがウィンドウとフルスクリーンの2種ではなく、ウィンドウズのブラウザ感覚で解像度を変えずに任意の大きさに拡大縮小出来ること(縦横比は固定)。音声も個々にしオンオフ設定が出来ますし、ストレスなくプレイ出来るでしょう。 | シックでミステリアスな鍵盤曲が多いです。美しすぎ。教会で流れていそうな宗教色が感じられるものもありますね。いずれもBGMとしてかけておくだけでも雰囲気が出ます。音楽担当の天門氏は新海誠氏のアニメ映画やイース等の音楽を手掛けていることでも知られています。そのキャリアが遺憾なく発揮されています。 ●Presentiment ●Android ●Geniality ●Separation ●To the new world ●Nostalgia feeling ●Silent night ●Sleeping Beauty ●Estranged | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
世界終末物は大抵当たる? パッケージを見て「これだ!」と思ったゲーム。私の勘は結構当たるので(!)、良作を確信してのプレイでした。「そして明日の世界より――」にしてもそうですが、どうも世界終末系を匂わせる後光が差したような神秘的なデザインが好きなのかもしれません。 製品は全年齢対象ですが「eden* PLUS+MOSAIC」という拡張ソフトが別に同時発売されてまして、これを追加インストールすることで、クリアー後にHシーンを見ることが出来ます。PLUS+MOSAICを追加することで本編中にHシーンが加わるのかと思いきや、ストーリーに関係ないまるでどうでも良い形でのおまけ的な見せ方でしかなく、がっかりしました。無い方が本編の綺麗なイメージを維持出来て良かったとさえ思います。こんなの拡張でも何でもありません。単なるHシーンが入ったファンディスクです。そうならそうとはっきり謳って欲しいし、こういう商法は個人的には嫌いです。どうせなら成人向けオンリーにしてしっかり作ってほしかったですね。 ……まあ、それはさておき、eden*本編は中々良くまとまっています。一本道なのでゲームとは言えませんが、絵・音楽・ストーリー、どこを切り取っても美しいのです。それは、パワフルで今花開こうとしているような美しさではなく、線香花火の持つ儚さと夕陽が沈む瞬間に見せる達成感を合わせたような、まさに「終わり」に相応しい成熟した美しさなのです。 美しい世界を新しい方法で演出 ■シナリオ 地球滅亡の運命が決まりすべての人が宇宙へ脱出する中、ただ2人地球へ残り愛を紡ぐという内容。物語はシオンを施設から連れ出すまでと、連れ出した後の2部構成になっています。一般的な感覚からすれば、わざわざ死滅する星に残る必要性はありません。非常に不自然な話なのです。それを如何に自然に美しく見せるか工夫が凝らされています。 まず、如何に若い主人公を星に留まらせるか。主人公はマシンのように冷静な人物ですが、自分というものを持っておらず、主体性に欠けています。そこでターニングポイントでサブキャラが登場し、主人公が何をすべきかを示唆します。そして助言を受けた主人公が大切なことに気付き、話を進行させていく……ということを繰り返していきます。失った欠片を他人の助けでひとつ一つ取り戻していくような感じです。見方を変えればこの助言者達の言葉は主人公を星へ残る方向へ導く「死への誘い」になってしまうわけですが、主人公もサブキャラもその言葉と結果に後悔や未練といってものを見せないので、死にに行くのが実に自然且つ正当であるように思えてしまうのです。 この未練の無さを演出するのが要所要所で挿入される回想シーンや夢想シーンです。そこに登場する人々はまさに「思い出の中の人」であり、皆、温かな言葉をかけてくれます。その言葉は叱咤激励といった類のものではなく、主人公を褒め称え、祝福するものばかりです。「よくやったね」「頑張ったね」……そんな優しさに満ちています。そんな達成感、やり遂げた感を繰り返しプレイヤーに与え、死地に残る選択をしたことにも後ろめたさを感じさせないのです。 そんな二重・三重の策を弄した結果、不自然さは消え去り、実に綺麗な世界が生まれたのです。 シナリオはこうした理由付け・自然体を装うことに力を注いでいるため、展開は極めて読み易いものとなっています。しかし、それは構わないでしょう。変にどんでん返しを持ってこられるより、静かに終わっていく方が「楽園の死」には相応しいのですから。 ■キャラクター 原画は女性キャラがちこたむ氏で男性キャラがKIMちー氏。ちこたむ氏の絵はF&C時代から一貫して目が大きくて弾力性のありそうな顔が特徴。シオンは特にそのクセが顕著なので、好き嫌いはが出るでしょう。また今回は顎が尖っているのが目立ちます。KIMちー氏のキャラは「曲者」感のある悪人面に見えます。後、目のバランスがおかしいような……。斜めを向いている絵ばかりだからそう感じるのかしら。 キャラ設定は、重要な部分だけしっかり作られています。逆に、重要ではない部分についてはほとんど語られません。具体的には、ストーリーに大きく絡む現在の職業や生活環境、フェリクスという種などについては語られますが、生い立ちなど主人公と出会う以前の事柄については触り程度しか明らかにされません。そのためキャラにどうしても「厚み」が出ないのが弱点です。これらの厚みの無い登場人物達を無理なく繋ぎ合わせているのが、主人公の姉とされる人物です。彼女の存在が主人公に厭世感を与え、フェリクスとの接点を生み、シオンとの暮らしを決意させるのです。それでも彼女は飽くまで触媒としての役目を果たしているに過ぎず、主役の座はしっかりシオンやエリカに渡しています。サブキャラの使い方の好例といえましょう。 ■テキスト 地の文は、基本的に主人公の視点で語られます。総じて感情の起伏が感じにくく、笑えるような面白さはありません。ともすれば息苦しさを覚えます。とは言えそれは、主人公が冷静沈着な人物だからで、そのキャラ性を表わしていますので減点対象にはなりません。それにこの浮ついたところがない雰囲気が、破滅してゆく重苦しい世界には良く似合います。状況説明があまりないのも特徴です。これは演出と関係するので、次の項で詳しく述べます。また、稀にザッピングが入り、この際はナレーションによる説明となります。 一点注意事項。ラストで、テキストが出ずに声だけ出る箇所があります。私は声をオフにしてプレイしていたので、混乱してしまいました。終わりが近付いたら(雰囲気で分かります)ボイスありでプレイすることをお勧めします。 ■演出 オープニングムービーは完全新規製作のアニメーション。流石にminoriで、とんでもなくハイクオリティーです。キャラ紹介は一切なく「捕らわれの鳥を籠の中から飛び立たせる」物語のイメージをアニメーションと3Dを駆使して描きます。シオンだけ本編の絵とやや印象が異なりますが、それを除けば映画にしても良いレベルです。特に入射光の使い方は美しく的確。こういうのをプロの仕事と呼ぶのでしょう。 本編では、アドベンチャーゲームの「立ち絵+イベントCG」による従来パターンとは異なる表現方法を採用。立ち絵のように一つの場面で絵を止めてテキストで状況を説明するのではなく、絵により状況を説明する映像的な手法を取り入れています。 「道を歩いていると見知らぬ女が近付いてきた。すれ違う際に女は『やっと見つけた』と言って口許に笑みを浮かべた。気になって振り返ると、女は銃口を向けて『父親の仇!』といって発砲してきた」 というシーンがあったとしましょう。従来のパターンですと、すべて同じ背景の下で立ち絵がコロコロと変わり、説明はテキストで行われるでしょう。しかし今回の場合、カツンコツンという靴の音が響き、女が近付くと段々絵が大きくなり、笑みを浮かべるあたりでは口許がアップで映され、振り返ると視線が変わるので背景も変わり、撃たれる直前には背景がボケた状態で拳銃がアップで映されて発砲音がする……という感じになるでしょう。固定の立ち絵やイベントCGを映すカメラが設置され、アップしたり引いてみたり左右に動いたりと常に映す箇所を変えていると考えれば分かりやすいでしょうか。止め絵のアドベンチャーゲームとしては現時点では一つの完成形といえましょう。 従来通りの演出は、目パチ・口パクを実装、効果音は銃声・扉の開閉・足音などを中心に豊富に取り揃えていますので、不満はありませんでした。 ■ゲーム性 ゲーム性は皆無です。選択肢はなく、一つしかないエンディングに向かってひたすら読み進めていきます。本編をクリアーすると、おまけとしてPLUS+MOSAICが選べるようになります。 ■シチュエーション 「地球で最後の恋物語」を描く本作。世界が終焉するという絶望的な状況下二人で支えあっていくダウナー路線かと思いきや、残された時間で自己実現を図り完全燃焼を試みる前向きな姿勢の方が前面に打ち出されており、終わってみれば悲しみよりすべてやり遂げたという清々しさが残ります。ただ、これは、ヒロインが病弱(本当は少し違いますがネタバレになるので病弱としておきます)なため「地球最後」というよりは普通の「病死物」と考えた方がしっくりくると思います。加奈レベルまではいきませんが、病弱のヒロインを選んだ主人公が、ヒロインの世話をしながら2人の愛を確認し合う……と。地球滅亡を前に身を寄せ合うというよりは、そうした介護的なシチュエーションが多かったように感じました。個人的には最期まで引っ張らずにいちゃいちゃする展開がもう少しあっても良かったかな、と思っております。 ■グラフィック 背景は、陽光や照明の表現が印象的。採光窓からこれでもかと陽光が差し込んだり、電灯の輝きで全体的に白っぽくなっています。そのため色は好みが分かれるところですが、完成度は高く、室内に配置されたアンティーク調のインテリアが目を引きます。木々や山並みも写実的で、満足のいく仕上がりです。 イベントCG……という概念があるかは不明ですが、登録される一枚絵はパターンを除き311枚(内、PLUS+MOSAICが72枚)。プレイ時間に対してかなり多目です。顔や身体の一部のアップが大半を占めています。一枚絵以外の通常部分でのカメラワークが激しいのに対して、ベッドから身を起こしている姿や椅子に座っているだけなど、安直な構図が目立ちます。塗りのクオリティーは総じて高いと思います。
「諦めない、後悔しない、自分がしたいことをする」――この3つのキーワードが合わさったものが本作のテーマ「自由」です。人間は自由に生き、そして未来へと可能性を紡ぎ続けねばならない……というわけです。わざわざ死に逝く星に残ったのは、これを実現するためなのです。だとすると自由に生きることの何と過酷なことでしょうか。どんな困難が襲い、孤独に見舞われても、挫折することは許されないのです。だからこそ、そうした人間の活動は星のような輝きを見せるのですが……。 それにしてもこのテーマを、なんと綺麗な話にまとめたことでしょう。生と死は表裏一体で、死を目前にするからこそ、生が光り輝くのは分かります。そこに人間本来の自由な姿を求めやすくなるのも分かります。素晴らしいのはそれを、地球の消滅という逃げ場の無いビックスケールな死の舞台と、そこにたった2人残るという壮大なロマンによって表現し、見事に消化しているところです。 短いですしゲームとは呼べませんが、シナリオ、音楽、絵、すべてが美しく、完成度が高いです。特に最後に見る夢とそこで流れる音楽! あのシーンはダメ……何度見ても涙ぐんでしまいます。時間のある人にもない人にもお勧め出来る一本です。 なお、PLUS+MOSAICはHシーンのみです。純愛物なので、濃くはありません。Windレベルと思ってもらえばと。本編にはまったくといって良いほど絡まない内容なので、Hシーンが目当てではないという人は買う必要はないでしょう。 |