もう、ありすぎる程に自覚はあった。
あったが……。
「ここに拇印を押せば完了だ」
「何が……」
壁際に追い詰められてスコール。必死にラグナが差し出してくる書類から逃げる。
あれにサインと拇印を押したら――いや、拇印だけでももう、終わりだろう。
「今更何を言ってる? 婚姻届だろう?」
「い、いや。俺――あんたの息子だから」
「ムスコ? ムスメの間違いじゃないか?」
「あんたがしたんだろう!」
妙な薬を飲まされてこっち、スコールはすっかり女に(体も心も)されてしまい、更には拉致監禁を受けている間に、男なしではいられない淫乱体質にされてしまったのだった。
いやだが、まだスコールは諦めていない。いずれ男に戻れることもあるかもしれない。いや、きっとある。
そうに違いない!
にじりにじりと近付いてくるラグナを、どうやって避けようか脳内で綿密な計算をしながら、スコールは瞬時に割り出したタイミングを待つ。
しかし敵もさるもの。元は軍人。
「スコール?」
声の色を変えたラグナは、書類を放り投げてスコールの名を呼んだ。
ビクリ、スコールの体が過剰に反応する。
これだ。
二度目の濃厚エッチの際、呼吸困難状態のきわまったスコールに、ラグナは暗示を施した。
即ち、ラグナの呼び声に、体が反応してしまうように。
へにゃり、とスコールの体が床に落ちる。
もう、スコール本人の意志はまるで関係なく――である。
「良い子だ、スコール。脱ぎなさい」
「……い、やだ……」
ともすれば、手が、シャツのボタンに伸びそうになるのを、スコールは懸命に耐える。
一応SeeDの訓練で、暗示を避ける方法は教わっていた。
だが、ラグナがかけたのは、生命危機状況に陥った際に、強制的に発揮される暗示の方で、SeeDの訓練で避けられるよな簡単な暗示ではない。
「スコール。脱いだら、良いものをあげるよ」
ニヤリ、と笑うラグナの、その股間にスコールの視線が。
体はもう、あの熱い肉棒で貫かれ、快感を得ることを覚えていて、それを好ましく思っている。
考えるだけで熱く潤む中が、スコールは恥ずかしくて、同時にそれに恍惚を見出していた。
じわりと滲み出した股間を、ぎゅ、と足を閉じることで堪えようとするが、それすらラグナには判っていて。
「指で触れて欲しいだろ? 舐めて欲しいだろ?」
「や……だ……」
「あそこをぐちゃぐちゃにかきまぜてあげるよ?」
言われて、脳裏に過ぎったその感覚を思い出せば、もう駄目だった。
スコールは泣きそうになりながらズボンを脱ぎ、下着も。
自らベッドに上がると、ラグナに足を開いてみせる。
既に濡れて光そこは、ラグナの触手を待って蠢き、スコールはさらにそこを指で押し広げると「して……」
言っていた。
「良い子だな」
ラグナはそんなスコールに近寄り、脱げなかった上着を切り裂くと、豊満な胸に舌を這わせ、同時に既に濡れているそこに、指を押し込んだ。
熱く潤む中は、ラグナの欲を柔らかく包み、動く砲身に合わせる様に蠕動を繰り返した。
欲情の涙に濡れるスコールの顔は綺麗で。
「可愛いな……」
囁くと、嬉しいのか、表情が歪む。
ラグナはそれでも、目的を忘れはしなかった。
結合の体勢を変えるべく、突き入れたままでスコールの体を反転させ、背後から貫く。
「う……っん……っ」
イイところを突いたのか、甘い声が上がるのと同時に、放り投げた書類を引き寄せた。
「拇印を押せ、スコール……」
同じ場所を、何度も突きながら、ラグナ。
「あ……や…だ……」
「押せ、スコール……」
今度はゆっくりと前壁をなぞり、ぶるりと震えたスコールに、もう一度。
既に快感のとりことなっているスコールは、でも強烈な意志でラグナの命令を拒絶し、それでも、与えられる感覚に悶える。
「強情な……」
吐き出したラグナは、スコールの目の前に書類を置くと、細い腰を捉え、ぐい、と凶刃を奥へ。
より一層深い挿入に、身を反らせたスコールは悲鳴を上げて書類を掴んだ。
意識が遠い。
目覚めさえそう思ったスコールは、正確に寸前の記憶を思い出していた。
数度の深い挿入の末、中に迸りを放ったラグナは、朦朧と意識を漂わせるスコールに、拇印を押させた。
その後、もう一度。
二度放たれたスコールの体内には、たっぷりと精液が残り、元気なおたまじゃくし達は、スコールの卵子を求めて泳いでいる。
あれだけ愛液を垂れ流し、ラグナの放出を受け入れていて、出来ないのが不思議なくらいだ。
と思って……。
「そっか、準備が出来ていないからか……」
女になってこれまで、一度として月のもの――というものにお目にかかっていない。
まだ女性として完全体ではない?
となれば、まだ……まだ男に戻れるチャンスがあるかもしれない。
強制的にラグナの妻になってしまったが、今後男に戻れたら……。
「覚えてろよ、ラグナ!」
怒りに燃えるスコールは、まだ気付いていなかった。
大統領の妻になるということの意味を――。