先へ飛びたい方用  4話



遠洋に馳せる想い1


この話しは作者が実際にこの時代に話していた言葉遣いがしてあります。いわゆる差別用語なのですが、こんな事を書かれたら大変気分が悪いと思われる方がいらしたら書き換えるつもりではおりますが、当時はこうやって話していたと言うことで、取り敢えずはそのままの表現でいきたいと思います。(謝)


「よし。こいつだ」
 俺は目星を付けていた船「太洋丸」に、荷物を運ぶ船員に紛れて潜り込んだ。何とかほとぼりが冷めるまで日本から離れていたかったのだ。もうすぐマグロを釣りに行くというこの太洋丸は、1年は日本に帰ってこないと言うことだった。

 隠れられそうな倉庫まで見つけたのに、その寸前で捕まった。
「こら、ここはガキが遊ぶ場所じゃねぇ」
 まるでノラネコでも掴むかのように首根っこを押さえられた。そのまま海へ投げ捨てられるかと思ったので必死で暴れる。
「離せ、離せよ」
 思いっきり暴れたつもりだったのに、その相手には微塵も通じておらず、気が抜けた。

 ちぇっ、こんなデカイ奴相手じゃ仕方ないか。
 同じくらいの背丈なら、絶対勝つ自信があった。どんな卑怯な手を使っても。だがその当時150センチそこそこだった俺より30センチは大きかったのだ。しかも筋骨隆々、腕なんて俺の倍はありそうだった。荒くれの海の男、俺が考えていた漁師そのままで少し感動する。
 皮膚の芯から日焼けが染み込んだ黒い肌。バサバサの髪に、無精ヒゲ。獲物を狙う鋭い目。逃げ出すことは諦めた。

 すぐに俺は手法を変える。
「お願い、何でもするからこの船に乗せて」
 両手を合わせ、涙を潤ませてお願いする。俺のこの顔で頼めば一回目はほとんどの相手が許してくれるのに、こいつには何故か通用しなかった。

「お前‥一体どんな生活してきたんだ?」
 俺の姿をしげしげと眺める。まあな、この格好じゃバレバレなんだけどな。
 袖のすり切れたTシャツに色なんて分からなくなったようなジーパン。風呂なんていつ入ったか分からない身体。どこからどう見ても浮浪孤児。
 Tシャツまでまくって身体の点検をするとその男は俺の腕を引っ張った。歩き出した男に引きずられるようにして船を降りた。いや、実際引きずられてたんだけど。

「何だ、お前歩けねぇのか」
「ちゃんと歩いてるじゃないか。あんたの足が速すぎるんだよ」
 そう言ったのにその男は俺を軽々と抱き上げた。
「お前軽すぎ」
「やっ止めろって。俺をどうするつもりなんだ」
「何でもするって言っただろ」
「ふっ船に乗せてくれるのか。それなら何でもする」
「これから俺がすることを仕事として出来るなら乗せてやってもいい。どうだ?」
「ほんとか! それなら何でもする。約束する。けっけど殴られたり蹴られたりってのはごめんだぜ」
「う〜ん、ちょっとは痛いかもしれない。でも我慢できねぇ痛みじゃない。試してみてダメだと思ったら止めたらいい」
 クソ〜ッ。こいつ俺が後には引けないって分かってるな。一体何をされるのか不安は大きかったが、死ぬよりはマシだろうと腹をくくった。


 俺は天涯孤独な身の上で、スリやかっぱらい、詐欺なんかで何とか食い繋いで生きてきた。それが半年ほど前、ドジってヤクザから財布をスってしまったのだ。そりゃ見つからなかったらよかったんだけど、残念ながらああ言う人間って勘が鋭いって言うか、俺が情けなかったって言うか、捕まって足を叩き折られてしまった。
 当然、病院なんか行く金もないし、動けなければ稼ぐこともできやしない。痛む足を堪えながらやれたのは乞食しかなかった。そして足は治るには治ったのだが、変な風にくっついてしまい、びっこを引くはめになった。もう稼げねぇ。悔しかった俺はそのヤクザに仕返しをした。

 都合のいいことに乞食仲間からは色んな情報が入ってきていた。麻薬の取引現場を警察に密告ったのだ。
 しかし何故だかそれがそのヤクザにばれ、そいつは捕まることもなく、俺は血眼になって捜されていた。逃げ出すのに手を貸してくれた乞食のおっちゃん達は、警察はそのヤクザの組に抱き込まれているんだろう、と言っていた。
 そして流れに流れてこんな南の漁港まで来てしまったのだった。


 安宿のような所に入ると質問される。
「お前歳は?」
「18歳」
 ガツンと頭を殴られた。
「いてーじゃないか!」
「嘘を付くな、嘘を。一体何年生まれなんだ」
 ええ〜っと、今の歳に4歳足して‥、なんて泡を食ってたらすぐに突っ込まれた。

「素直に本当の歳を言うんだ」
 ちえっ、仕方ない。
「昭和35年」
「35年? 15ってか、誕生日がまだなら14歳か?」
「誕生日は10月だと思うからまだ14だ」
「なんだ、そのだと思うってのは」
「だって、誰も教えてくれなかったんだもん。な〜んとなく頭に10月ってあってさ。物心付かないうちにもしかしたら母親が言ってたのかもしれない」
「で、親はどうした」
「さあ、元々母親しかいなかったみたいだし。父親が誰かなんて全然知らないし。俺ってもしかしたら戸籍もないかもしれない。母親らしき人は病気で死んじゃって。孤児院に入れられそうになって、どこの誰なんだ? って騒ぎになって。なんだか色々とめんどくさそうだったからすぐに逃げ出した」
 なんで俺、こんな見ず知らずの奴にペラペラと身の上話してるんだろ。

「面倒だなんて‥。そこにいりゃ少なくとも飯は食えただろうが。こうやってやばそうなことに足を突っ込むことも無かっただろうし」
「だって母親がいたときだって雨露がしのげたってだけで、食ってくには悪いこともやり尽くしてたから。ガキばっかりで集団作ってかっぱらいとかやってたんだよ。そんなところに入ったら足が付くだろ。仲間を裏切るわけにはいかなかったんだよ」
 こんな悪事まで白状しなくてもいいのに。

「それで今はどうして逃げてる?」
 俺はここまで言っちまったら同じだと思ったので、正直に全部話した。
「死んじまおう、とか思ったことは無いのか?」
「なんで。せっかく生まれてきたのに。俺は生きて生きて生き抜いて、そのうちに大金持ちになってみせる!」

 高度成長期のそのころ、一億総中流階級なんて言われていたが、まだまだ俺みたいな奴らはいた。昭和枯れすゝきにはなりたくなかったのだ。
「それじゃ、どうしても船に乗るしかないな」
 ニヤリとしたその相手はもしかしたらもっとヤバイ奴だったかも‥なんて後悔しても後の祭りだった。


「いっイヤだ‥そんな‥とこ。指突っ込む‥なんて」
 俺は風呂場で綺麗に洗われて四つん這いにされていた。前を扱かれながら尻の穴にごつごつした指が入ってくる。思わず尻に力が入った。
「こら、そんなに締め付けるな。すぐに気持ち良くなる」
 抵抗することは許されてなかった。したら船に乗れなくなってしまう。
 身を捩りながらもその変な感蝕に耐える。

「お前‥名前はなんて言うんだ」
「く‥なっ名前‥なんて‥な‥い」
「それじゃあなんて呼ばれてたんだ」
「イチ‥」
「じゃあお前はこれから洋一って呼んでやるよ」
 変な感触だったその人の指は、言った通りにすぐと酸っぱい疼きに変わった。前をぬるぬると扱かれ、後ろはぐりぐりと酸っぱいところを集中的に弄られる。
「あ‥あ‥ぅ‥イッイッちゃう」
 堪えきれなくてあっさりと吐き出してしまった。
「ふふん、気持ち良かっただろ」
「はぁ‥はぁ‥うっうん」
「でも気持ちいいだけじゃ仕事にならない」

 そう言ったすぐにさっきとは比べものにならない圧迫感を感じる。
「あああっ‥むっ無理‥」
 限界まで尻の穴を開かれて腰一つ振れなくなってしまう。あまりの苦しさに固まった。なのにこの人は容赦がない。
「やったことないのか?」
「こっ‥こん‥なこと‥、初め‥て」
「セックスは?」
「それは‥ある」
「女の代わりをするんだ」
 こんなクソするしかないと思ってた所を使うなんて。生まれて初めて知った。
 まだ慣れない尻をガシガシと突き上げ始めた。

「ぐぅうっ‥うっ‥う‥」
 苦痛に顔を歪ませ、それでもなんとか身体を支える。楽に抜き差しが出来るようになると、今度は俺のモノも一緒に扱かれた。
 するとさっきまであんなに苦しかったのに、中の圧迫すら熱に変わる。中からと外からの刺激で2回目が飛び出た。
「ああ‥んんっ」
 俺の中でも熱いモノがぶちまけられていた。
「よし、いいぞ。どうだ? 痛いだけじゃないだろう。これを毎日するのが仕事だ。それでも船に乗るか」
 尻は辛そうだったけど、殴る蹴るは常習的に受けてきた。それに比べたら全然どってことなかった。

「乗る」
「いい身体してる。これはやり甲斐がありそうだな。楽しみだ」
 まだ四つん這いのままの俺の尻に湯を掛けながら、中に指を突っ込んで吐き出したモノを掻き出す。
「も‥ヤダ‥」
 身体を買われたようなものだったけれど、いきなり開き直れるわけもなく、とてつもなく恥ずかしかった。
「これから毎日洗ってやる。隅々までな」
 またニヤリと笑うと、その人は最後にこう言った。

「俺のことは洋平(ようへい)って呼ぶといい」
 この洋平って人は自分の名前を俺に分けてくれたんだ。理屈なんて分からなかったけど、どうしてか俺は泣けそうになっていた。


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