遠洋に馳せる想い3


 船長は甲板で俺を裸にして、船員に説明をする。万引きがばれて袋叩きにあったことはあっても、こんなに大勢の前で裸にされたことはない。前を隠す俺に四つん這いになるよう命じる。

 嫌でも従わなければならない。これが俺の仕事なのだから。ちゃんと働いて駄賃をもらったことのない俺は、仕事という言葉にも惹かれていた。そして仕事をこなしたら船長に認めてもらえるかもしれないと勝手に思い込んでいた。
 少しでも好意を持っていたらこんなことをさせれるはずがないと、大馬鹿野郎な俺が気が付いたのはそれから4年も経ってからだった。


 船員から声が飛ぶ。
「どうすんだ、そんなガキ裸に剥いて」
「航海が長いからな、性欲処理に使う」
「は〜ぁ、洋平、気は確かか。そのガキはどう見ても男だぞ」
「穴は空いてるだろうが」
「もっもしかして‥尻? ‥に突っ込むんか」
「ああ、膣圧の倍と言われてるからな。やってみ? 気持ちいいぜ。トルコ嬢だと思えばいい。だけど女と違うからちゃんと手順を踏んでくれ。今からそれを説明する」


 船員全員が見てる前で船長は俺の尻に指を入れる。
「まずは指入れて解すこと。そのときに必ずこれ使えよ。怪我させたら責任とって代わりになれよ」
 みんなから笑いが漏れる。船長は使っていた変な液体の入ってるビンを投げた。
「それから突っ込むときはゴムを使うこと。1年分用意したから安心して何度でもやってくれ」
 今度は大笑いだ。その間も俺の中は掻き回され続けているのに。

 堪えていた喘ぎが出始めた頃、船長は乳首を摘んだ。
「くんっ」
 俺は子犬のように鼻で鳴いた。
「胸はナインペタンのねーちゃんだと思え。ちゃんと感じる」
 中を弄られ、胸も引っ張るようにこねくり回されて、メチャクチャ感じた。背中を仰け反らしてそれを表現する。周囲から「ほ〜ぉ」、なんて感心するため息が出た。
 船長は近くの一人に合図し、その人が反対側の乳首を摘む。

「あっ‥ああっ」
 両方の乳首が引っ張られて、チンポが痛くなってきた。
 苦しくて尻を振ると船長は乳首から手を放し、前を扱いてくれる。
「どうだ。気持ちいいか」
「いっいいっ‥も‥イっちゃう」
 みんなが見てる前で俺は恥ずかしげもなく、思いっ切り吐き出した。

「誰か突っ込んでみるか」
 船長に聞かれてすぐに誰かのモノが入ってきた。
 男は自分が相手を気持ち良くさせることが出来ると思えば、自尊心が満たされ、かなりの確率で勃つ、と言った船長の言葉通りだった。
「うっ‥く‥ぅん」
「いや‥ほんと、こりゃたまらん」
 その人がそう言うと他の人たちもやってみたいと言い出した。

「いっぺんに何人もは無理だ。こいつが壊れちまうからな。20人ちょうどだから一日2人ずつ。2日間やらせて1日休ませる。月に2回は回ってくる計算だ。あとで順番決めるぞ。あ、そうだ。こいつの名前は洋一だ。可愛がってくれよ」
 飼い犬でも見せるかのような扱いだったが、みんなの興味が引けたので俺の初めての仕事は成功したのだ。
 そこで2回目を吐き出すと俺の1日目の仕事は終わり、船長室へ戻る。
「俺、どうだった。気に入られたかな」
「ああ、皆興味津々だった。溜まったモノが抜ければケンカも減るだろうしな。お前もきついかもしれんが頑張れよ」
 そう言って船長は俺の頭を撫でた。


 −−1年もの長期間を航海する船員は家族と一緒だ。ある意味家族よりも深い絆があるかもしれない。それは生死を共にくぐり抜けてきた仲間だから。そんな仲間だからこそ、逆に気兼ねなくケンカになっちまう。少しでも苛つく原因が取り除ければいいと思ってな。お前にはみんなの潤滑剤になってもらいたい。−−


 船に乗る前、船長はこんな事を言って俺に期待を寄せてくれた。誰かに頼りにされたり、期待されたりなんてもちろん経験がなかった。それだけでどんなことでも頑張ろう、と思ってしまった。そして船長に良くやったって言って欲しかった。

 約2週間の間は結構きつかった。初めだからみんなが何回もやりたがったし、俺も慣れてなかったけれどみんなも慣れてなかった。一日くらいの休みじゃ回復もしないままに次にいく。船長が毎日尻に軟膏を塗ってくれたが、そんなもんじゃ追いつかなかった。尻はズキズキと痛み、チンポも扱かれすぎてやっぱりちょっと痛かった。
 それでもみんなが気持ち良さそうにしてるのを見たら、我慢できた。俺が求められているって事実が何故か最高に嬉しかった。

 一回りすると次からはやらない人もいたり、回数をこなす人も少なくなった。反対に俺にって言うか、俺の尻に溺れた人も出てきちゃったけど。
 最初がきつかったおかげでそれからは痛むこともなくなった。そしてみんなと身体を繋いだことによって妙な親近感が湧き、一気に仲良くなってしまった。

 船長よりも年上の人たちは俺を息子のように可愛がってくれた。20代の人たちは兄貴のように色んな事を教えてくれた。
 大量に持ち込んだマンガ本を一緒に見たり、プラモデルを作ったり、将棋も教わって、船内の総当たり戦にも参加できるほどになった。
 小学校も行ってない俺は読み書きも教わった。色んな事が夢のようで、少しくらい尻が痛んでもちっとも苦にならなかった。
 いや、そっちの方は回数をこなすとみんなコツが分かってきて、俺の方が本当に気持ち良くなってしまうことが多かったんだけど。

 でもその和やかな雰囲気は漁場について操業が始まると一変した。

 高値で売れるミナミマグロは南半球の高緯度にいた。緯度が高くなるにつれ暴風が増す。南極の氷山が見えるところまで突き進む。荒波と暴風の想像を絶する世界だ。
 そんなところで三千本の釣り針を付けた長さ百五十キロにも達するはえ縄を四、五時間かけて海に投じ、十二時間かけて引き揚げる。シケの海で何度もそれを繰り返す。


 みんなの疲労と睡眠不足は限界に達する。操業中は仮眠に来た人が疲れを取るためにただ抜きに来た。手早く、手荒く突っ込まれる。荒波で船は斜めになる。固定してあるベッドのパイプに掴まって踏ん張った。

 初めての時は船長も心配して様子を見に来てくれた。
「お前、このシケなのに大丈夫なのか」
「えっ、何が」
「普通は気持ち悪くて胃の中が空っぽになっても吐き続けるんだ」
「全然大丈夫」
 そう答えると船長はニヤリとした。
「まあ、特大のジェットコースターに乗ったと思えばいい」
「ジェットコースター?」
「なんだ、乗ったことないのか」
「ないよ、そんなの」
「船を降りたら一回連れて行ってやるよ」
「ほっほんと? いいの?」
「ああ、約束だ」
 そして船長も俺を気遣う暇もなく、一発抜いたら出て行った。

 2回目の操業の時は縄を引いてるところと、マグロが見たくて、俺も甲板に出てみた。船長は荒れ狂う波に向かって一人立ち、はるか彼方を凝視している。俺は床を這うようにしてそばに行ってみた。
 その時、船長は振り向いて叫んだ。
「でけぇのが来る。波が来るぞーっ!」
 船長の合図と共にみんな一斉に縄を放り出し、掴まれるところにしがみつく。波にさらわれたら一巻の終わりだ。助かる可能性は0に近い。
 あっ、と思ったときには船ごと頭から波に呑み込まれていた。
 痛い。波をただの水だと思ったら大間違いだった。それで頭をかち割られて死んだ人もいると言うことだった。でも俺は少し痛いと思っただけで、あっさりと気を失ってしまったのだった。

 暫くして、頬の痛みで意識が戻ってきた。
「おい、洋平。止めろって。それじゃマジで死んじまうぞっ」
「洋一、起きるんだ洋一っ!」
 もう一度激しく頬を張られて、しっかりと目を開いた。
「いっ痛いって‥」
 俺をみんなが取り囲んで心配そうに見ていた。そこへもう一発平手が飛んできた。
「何すんだよっ」
「バカ野郎! なんで出てきた」
 船長は頭からダラダラと血を流し、そして俺を抱き締めた。
「死んだかと思ったぞ‥」
 殴られた痛みで腹を立てていたのは俺なのに、何故か凄く悪いことをした気分になって謝った。
「ごっごめん」

 俺は波の来るほんの少しの間に、船長のヘルメットをかぶせられて、そして船長に抱きかかえられて、あの大波に呑まれたのだった。片手で俺を抱き、残る片手で船のヘリを掴み、身体を船体に押し付けていた船長は波の勢いで、激しく頭をぶつけのだった。
 話を聞いて青くなった。俺は自分が助かったことよりも、船長が死ななくて良かったと、心からそう思った。
 今まで船長よりもヤバい橋を渡ってきてると思っていたが、こんなにも命懸けでマグロ漁をしているなんて。俺の方がよっぽど生温い人生送ってきたと思い知らされた。

 地獄のような操業が終わると、その後は俺の方が地獄だった。
 船は動き続けているので全員ではなかったが、手の空いた者たちで宴会が始まる。生死と隣り合わせの操業後だ。酒の量はたいして多くなくても皆が酔っぱらった。悪酔いする者も多かった。
 俺はそんな中で裸に剥かれ、延々と突っ込まれ続けた。座った上に跨らされ、中心を晒した挙げ句、他の者がそこを扱く。下からは突き上げられ、後ろから回された手は乳首を引っ張り、前からはチンポを扱かれ、玉も一緒に弄ばれた。声が嗄れるほど喘がされる。

「も‥イけな‥い。無理‥」
 必死で訴えても誰も許してくれない。周りからは「いけーっ、飛ばせ」と声援がかかる。やってる方は俺をイかすのにムキになる。入れ替わり立ち替わり丸々一日、そうやって嬲られ続けたのだった。

 次の漁場までの間がゆっくり休める期間だった。漁場へ着くとまた同じ事が繰り返された。漁場を点々として、満船になるとようやく帰るために日本へ向かう。そして日本に着くとちょうど1年が経過していた。


「ほら、洋一。降りるぞ」
「いやだ。絶対降りない」
「久しぶりに土が踏みたいだろう」
「そんなの踏まなくてもいい」
 パスポートも身分を証明する物も何もない俺は、給油に寄った港でも降りることがなかった。一年をずっと船の上で過ごしたのだ。もう、前の生活には戻れなかった。ずっとこのままここで居させて欲しかった。一度でも降りたら二度と乗れない気がしたのだ。

 甲板で踏ん張っていたのだが、とうとう船長に担ぎ上げられた。
「ヤダヤダヤダーっ」
 だだっ子のように船長の肩で暴れた。しかし船長に敵うわけがなく、あっさりとタクシーに乗せられた。
「いやだー、俺をどこへ連れてくんだ」
「なんだ、ジェットコースターに乗りたくないのか。遊園地に行きたくないのか」
「いやだ、そんなところへ行って俺を放り出すつもりなんだ。俺は船にいたい」
「また乗ればいいだろう」
「じゃあすぐに船に戻って。乗ってないと安心できない」
 ぐずり続ける俺に手を焼いた船長はタクシーを戻らせる。そして船長室へ俺を置いて出て行った。

 船長は1日で戻ってきてくれた。だけど何故か傷だらけだった。聞けば飲みに行った先でケンカしたと言うことだった。
「もう‥お前の好きにしたらいいんだがな」
 そんな分からないことを呟きながら、一番初めに行った宿屋へ俺を連れて行く。
 そして、傷だらけの身体で‥、俺を抱いた。切れて腫れた唇が俺の敏感なところを這う。包帯をしたこぶしごと、中心を擦る。突き上げるのに見えた腹筋はどす黒く染まっていた。動かすだけでも痛そうだったのに、俺のことなんていつでも抱けるのに、それでも船長は最後みたいに俺を抱いた。
 俺はやっぱり次の航海は乗せてもらえないのだろうか。不安が募る。

「ここにいればいいだろう。船もすぐに見えるし、置いていかれると思ったら勝手に乗りにくればいい」
「ええっ、‥次の航海も乗せてくれるの」
「降りるときからずっと言ってるだろう。お前のおかげで楽しい仕事だったって。みんなまたお前と乗りたいってさ」
「ほっほんと?」
「ああ、本当だ。だからここでいい子で待ってろよ。1ヶ月後にはまた出るから」
 船長はそう言い残して家に戻っていった。だけど2〜3日ごとに顔を出してくれて、俺を抱いていった。

 そしてまた俺は船に戻ることが出来たのだ。船室で去年乗ってすぐに背丈を記したところへ立つ。もう一度頭の上でしるしを付ける。巻き尺で測ると160センチあった。
「凄いな、10センチも伸びてる」
 前とは比べ物にならないくらい栄養がいい。マグロは食べ放題だし。そりゃ背も伸びるだろう。

 それから1年後、次に船を降りたときはもう10センチ伸びていた。


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