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そうだった。聞いてるうちに思い出した。工高に入りたての頃はどれだけ女を落とせるか競ってたんだ。見境なしに声をかけ、やりまくってたら、たまたまうちの工高の中でも最上級にヤバイ奴の女だったんだ。そうでなくても俺と鋭侍はガタイがあったので目を付けられてたのに。もちろんあいつはそんなドジは踏まなかったんだけど。 通称喫煙場に呼び出されて非常事態に陥ったんだっけ。 「そんでそれが何?」 「その結果は思い出さないのか?」 「確か大兄がナシつけてくれたんじゃなかったっけ」 「そうじゃなくて。いやそりゃ最終的には大ちゃんの力と、一兄の頭でその後の安全まで確保したんだけどさ。呼び出しくらったときにどうやって逃げた?」 「足で」 おもいっきり頭をどつかれた。 「ふざけてるんじゃない」 そんなこと言ったって。俺は記憶力だってそんなに良くないんだよ。 「うーんと、二〜三発殴らせて、向こうの気がゆるんだすきに謝りながら逃げた。これは本当に正解だぜ」 凌兄は少し驚いた顔になる。 「お前、ほんとにそれだけで逃げれたと思ってるのか」 「えっ、何か違ってるっけ」 「あのな。あの時えいちゃんがすごい怪我してたのは知ってるよな」 ああ、そういえば俺が顔を腫らしてたらおんなじように鋭侍も怪我してたっけ。珍しいんだよな。あいつは俺みたいに広く浅くじゃなくて、狭く深く付き合う奴だから親友ってのが二人いるんだけど殴り合いになるなんてさ。俺には殴り合いが出来るほどの連れはいない。少し羨ましかったから良く覚えてる。それに恒例のけんかにも怪我の影響かあっさり負けてたし、体をみたら悲惨だったっけ。 「で、それが何か関係あるの?」 「知らないんなら教えてやろう。あの怪我はお前を逃がすために体張ったからだ」 ええっ、あいつが‥そんな。 「えいちゃんは頭もいい、てのがついておまえよりもっと目を付けられてたにも関わらずだ。彼はお前と違って大人なのに何でそんな無謀なことしたと思う? よく考えてみろ」 凌兄はそこまでしゃべると行きかけてまた戻ってきた。 「それから、生馬、お前は今後どうしたいのかも真剣に考えろ」 そしてなんだか少し怒ってバイトに行ってしまった。 「どうだ。表とグラフは出来たか」 考えることは苦手なのでちょっと棚に上げといて、鋭侍にはいつもの偉そうな態度になる。 鋭侍は書いていたそれを投げてよこす。表の方はもう字を入れるだけだ。 「レポートは?」 汚い字が連なっているが全部きっちりとやってある。俺はそれを写し始め、鋭侍はその横でむすっとしたままグラフを書く。一時間ほどでその作業は終わった。 「よーし、終わったぜ」 俺がそう言うと奴は露骨にいやそうな顔をする。 ―三十分後― 俺達は屋根裏部屋にいた。 「おい、良いって言えよ」 「‥ばっばか‥やろう、とっとと済ませ」 「知ってるだろう。俺は長いんだ」 とは言っても立場が逆になればそっくり反対になるんだが。必死になって堪えているのを悟られないように強がりを言う。 「もう、いいだろう」 「そうだなぁ。お前は二回も出したしなぁ」 「うっ、こ‥のやろう」 俺は鋭侍の一番弱いところをこすりあげる。何度も突くと奴はまた硬度を増す。 「なぁ、まだまだいけそうだぜ。この硬さ。どうだ? 試験してやろうか。何がいい? ロックウェルか、ビッカースか、ショアでもいいぜ」 今書いたばかりの試験方法を並べる。 「そんなっ‥に、硬いか」 この試験は金属の硬度を調べるモノであるから、当然なまものは測れない。 「そうか? ショアなんかだとよく弾みそうだがな」 そう言いながら非試験対象物をまた扱く。一発抜いたら終わり、と言う条件なので俺は動きを前後運動から、根元を支点にしての旋回運動に切り替える。手で扱きながら鋭侍の一番感じるところをかき回す。 「なあ、良いって言えよ」 「‥うっ、くっ‥」 悔しそうに喘ぐこいつの顔がまた堪らない。顔を観察したいから最近の体位はいつも決まってる。足を肩に担ぎ上げて、無理に折りたたむようにして突っ込むのだ。 「なぁ、ここがいいんだろう」 そこだけに圧をかけ動かす。 握られたモノはまたはじけそうになる。 「良いって言わないとイかせてやらない」 俺は奴の根元をしっかりと指で締めた。他は触っても萎えるだけなのだ。片手で支え腰の動きは変えない。だんだん苦しくなってくるはず。 声が声にならなくなってきた。 「観念したら? 雪絵も美里も真美だってこんなに気持ち良くはしてくれなかっただろう。俺にして貰うのが一番良いって言えよ」 「いっ‥言うか。バカ」 俺の方も限界が近い。ここでも勝たなくてはならないのだ。長く持たせて相手を虐めるために、どれだけマスをかいて鍛えたか。女だって練習台にすぎない。 この征服感は何ものにも代え難い。何かやらせたり、貰ったりなんて全然比べものにならない。何せ完璧に屈服させるのだから。 俺の下で喘ぎ、苦渋の汁を舐めながら、それでも時折見せる恍惚の表情。こんなすばらしい優越感を味わうためなら何度でも挑み、絶対に勝とうと思うのだ。 俺の今後なんて決まってるじゃないか。もっともっと勝って勝って勝ちまくって、こいつを何度でも天国に行かせてやることだ。 「天国か、極楽か。気持ち好すぎてさ。素直に言えよ」 「ばっ‥かか、おめぇは‥」 感じまくってるくせにまだ意地を張ってる。言葉を強要しながら俺は、腰のピッチをあげた。追い込みにはいると握った手にも力がこもる。息が荒くなる。そしてとうとう奴の中に、俺のモノを出してやった。 ほっと息を抜いて鋭侍の尻を膝の上に乗せた。 「くっ‥そ、もう、終わったんだろ。放‥せよ」 あれ、まだ鋭侍は苦しそうだ。 俺はハッとする。まだ力一杯根元を締めたままだった。中に入れたまま、手はそのまま、しみじみしながら硬いモノをしつこく扱く。 「初めてしたときは泣きそうだったのになぁ」 手の動きに合わせて入り口がビクビクと締め付けてくると、まだ萎えてない俺のモノはすぐに臨戦態勢にはいる。一番直に感じている鋭侍にはそれが伝わってるだろう。 「一発抜いたら‥終わり‥だ‥ろうがっ」 小学五年生の夏休み。その学年になってから何回目かのけんかをした。俺が勝ったので夏休みの宿題を写しに鋭侍の部屋へ行った。奴の親はいない。俺はその何日か前、大兄にマスターベーションを教わった所だった。 常に一番悔しがることを考えている俺は、目の前で自慰をして見せろと言ったのだ。友達同士なら騒ぎながら同じ格好をしてやるのだが(でも中学になってからだったなぁ)、一人だけ剥き出しにして、嫌いな相手に強制的にやらされると言うことはどれだけ屈辱的だったか想像に難くない。そしてそれはすぐに経験させてもらえたが。 ただ兄貴達がいて、夜中にこそこそといろんなモノを見て耳年増だった俺は悔しい、以外の感情はなかった。しかしいくら体がでかくても、小学生であるほとんど白紙に近い奴には、衝撃がでかかったに違いない。 初めてだったこいつはおっかなびっくりで、出したときには涙ぐんでいたのだ。長いつき合いの中、どれだけ考えても可愛いと感じたのはその一回切りだ。 その少しおびえた顔が見たくて、行為はどんどんエスカレートしていった。当然やったらやり返されるのだが、始めにやった方が気分がいい。俺には悪い兄貴の大馳がいて情報には困らなかったし。こうなったのはいつだったか。そこから割と早かったと思う。 おもちゃにして弄びながら思い出にふけっていると、我慢できなくなった鋭侍が手を振りほどいた。 「いい加減にしろっ」 叫ぶと同時に堰がなくなったおもちゃは噴射した。痙攣している腹を叩く。 「お前ー、負けたくせに勝手なことするな」 「何だと。出したら終わりだろうがっ」 「まだこんなに元気なのに」 「バカ野郎。抜けっ、次は俺がよがらせてやるからなっ。覚えとけ」 鋭侍は立ち上がってしまった。 俺は一抹の寂しさを覚える。つながっているときは一つなのに。 ふと凌兄が言ったことがよみがえる。 「お前、大学に行くんか?」 「ああ」 「じゃあ何でこんな学校に入ったんだよ」 「そっそれは‥」 なぜか焦ってるぞ。 「近いからだろう。俺はそう思ってきたんだけど、凌兄が‥」 俺の話を遮るように鋭侍の言葉が飛んできた。 「そうだ。近いからだ。ほかに何も理由なんてねぇぞ」 ほら、合ってるじゃん。凌兄。 「大学はどこへ行くつもりなんだ?」 「おめぇに言う必要はねぇな」 「なんだとこのっ」 人が珍しく真面目に話してるってのに。俺がムッとしたこと何て気にも留めてない。 「どっか出っててもいいな」 えっ? 「出てく? お前、こっから出ていくのか?」 やっと凌兄の言ってたことが飲み込めてきた。俺は家から通えるところに内定をもらっているのだ。 「ふーん。寂しいのか」 バカにしたように言われ言い返す。 「バッ馬鹿野郎。お前の顔を見ないで済むと思えばせいせいするぜ」 「そう言うだろうと思ってな。ここから通える所にしてやったわ。ありがたく思えよ」 ちっ、勝手に恩に着せてやがる。 「嫌な奴だな。お前って」 ほんとだよ。ビックリさせやがって。鋭侍がいなくなったら、ケンカできなくなる。どうやってストレス解消すればいいんだよ。 「ふん、いなくなりゃすっきりすると思ったのに。だけどまあどっちが強いかハッキリさせとかないといかんからな。また天国にイかせてやるよ。楽しみだろ」 「なっ何だと、次はおめぇの番だ」 三回も出した後なのでばつが悪いのか、怒り方に迫力がない。 そっか。出ていかないのか。 ん? 俺は何にホッとしてるんだろう。 そしてまたいつもの行動が繰り返される。それは永遠かも知れない。 俺は定刻にマンションから出てこない奴を教室で捜す。 すると必ず挑戦的な視線に出会う。 そして今日も俺はガンを飛ばす。 火花を散らして、絡む。 どうして女なんかの所へ行ってしまうのか。俺がそばにいるのに‥。 どうしても奴を服従させたい。 そのためなら何度でも仕掛けるだろう。どんな怪我をしてもいい。 俺は勝って見せる。 −−対鋭侍編完−−
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