わたしの黒騎士様

エピソード2・3

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 日は過ぎて、王の御前で日頃鍛えた力を示す、騎士団対抗の御前試合の日がやってきた。
 今回は馬を使わず、剣と盾を使用して戦う形式だそうだ。
 前回と違う点は、闘技場が一般市民に開放されていないこと。
 観客は騎士団員と王と側近だけ。
 客席を彩る華となる貴婦人達の姿も無い。
 例外的にエミリア姫だけが、赤を基調にした豪奢なドレスを着て、絹の扇を優雅に振りながら、見物に訪れていた。

 今日のわたしはレオンの指名で付き人をしていた。
 控え室で鎧の装備を手伝って、出番が来る頃を見計らい、磨き上げた剣を差し出す。

「レオン、頑張ってね」
「ああ、お前の前で無様な戦いはしない。必ず勝つ」

 レオンは不敵に微笑むと、わたしの手から剣を受け取った。
 控え室を出て行く彼について、闘技場へと進む。

 暗い廊下の先は光と歓声で満ちていた。
 真上に青空が広がる円形の闘技場は、先の戦いによってすでに熱気に包まれている。
 両騎士団の団員達が、興奮の面持ちで、最後の戦いに挑む二人の騎士を場内に迎え入れた。
 一戦目の勝者は白騎士、二戦目は黒騎士。
 今回も、最後の試合で勝利騎士団が決まる。

 闘技場の脇には、ウォーレス団長とグレン様がいて、わたし達を待っていた。先の試合に出た二人の騎士と、付き人を任された従騎士達もいる。
 反対側にいる白騎士団の陣営も、準備を終えていた。

「レオン、用意はいいか?」

 団長の問いに、レオンが頷く。
 目配せで進行役の騎士に合図が送られた。

「これより、第三戦。一級騎士の試合を行います!」

 進行役に続いて団長達が、試合に臨む二人の騎士に中央へ進むことを促す。
 剣と盾を構え、レオンとアーサー様は中央で対峙した。

「始め!」

 開始の合図と共に、激しく剣が打ち合わされた。
 両者の剣は火花が散るかと見まがうほどの威力を放ち、観衆をどよめかせる。
 黒騎士団最強を誇るレオン=ラングフォードと対等に渡り合えるのは、白騎士団最強の騎士アーサー=メイスンだけ。
 それは誰もが認める事実であり、それゆえに彼らは代表騎士に選ばれた。
 一級騎士となるまでにも、それぞれの階級で、幾度も対決した二人の戦歴は五分五分だったと聞いている。
 なぜか、二級騎士となったある時期を境にして、ずっとレオンが勝利を収めているけど、試合内容は僅差での勝利。実力差はほとんどなく、いつレオンの無敗の記録が破られてもおかしくない。

「レオン様! 今回も勝利を我らに!」
「アーサー様! 今日こそ、無敗の騎士に敗北を与える時です! 我々はあなたの勝利を信じています!」

 互いの陣営から、従騎士達が声を張り上げて声援を送る。
 その間にも、剣は相手を追い詰め、盾は持ち主を守り、それぞれ一歩も退かない攻防が続いた。
 試合を脇で観戦しているわたしの隣で、グレン様がぽつりと呟いた。

「今日はいつにも増して力が入っているな。例の賭けに変更があったと聞いたんだけど、それが影響しているのかな?」

 わたしはグレン様を見上げた。
 グレン様はアーサー様の賭けのことを知っているんだ。

「グレン様はお二人がされている賭けのこと、ご存知なんですか? 」

 問いかけると、グレン様はこちらに顔を向けた。

「一級騎士で知らないヤツはいないよ。公言することでもないから、下位の騎士には広まってないけどね。キャロルは知りたい?」
「はい、実はわたしも巻き込まれてるみたいなので、ちょっと気になって……」

 グレン様は目を見開き、「へぇ」と声をもらした。
 何か思い当たることがあったんだろうか。

「それじゃあ、知りたいだろうね。なるほど、メイスンが君にね。それじゃあ、レオンに気合が入るわけだ」

 グレン様はちらっと団長の方を盗み見た。
 団長は試合に真剣に見入っている。
 それを確認して、グレン様はわたしの耳元に顔を近づけた。

「二人の賭け……、と言っても、メイスンが一方的にふっかけているだけなんだが、勝者は相手から祝福のキスをもらうことになってるんだ。もちろん、レオンは嫌がっているから、毎回勝って賭けを無効にしているんだけどね」
「祝福のキス?」

 誰が誰に?
 きょとんとしているわたしの顔がよほど面白かったのか、グレン様は口元を押さえて、笑いを噛み殺した。

「今回はキャロルに祝福のキスを希望しているということか。君も厄介な人間に好かれたものだ。メイスンのアプローチは激しいよ。だけど、レオンが守ってくれるだろうから、安心していいと思う」

 祝福のキスをわたしが?
 それじゃ、代理でレオンがって、キスを?
 でも、わたしはここでは一応男ってことになってるし、レオンは正真正銘の男性で……と、いうことは、アーサー様って、まさか……。

「その様子だと気づいてなかった? メイスンは男もいけるプレイボーイで有名なんだ。黒騎士団と違って、白騎士団では意外にそちらの性癖を持つ人が多いから、恋人もたくさんいるらしいよ」

 こ、恋人? プレイボーイ?
 男性、女性問わずに、複数の恋人と付き合ってるってこと?
 それでレオンを狙ってるの? 
 そして、わたしも狙われている?

 あまりのことに目眩がしてきた。
 ふらりとよろけた体を、グレン様が支えてくれた。

「大丈夫かい? まあ、見ていればいい。レオンは負けない。守る者がいる時の彼の強さは、まさしく最強だ」

 戦っている二人の方へと視線を戻す。
 彼らの勢いは衰えることを知らず、剣戟の響きは強くなる一方で、観客の声援も大きくなる。

 鎧に剣と盾を合わせた重量は、相当のものだ。
 今のわたしでは、あれら全てを装備して動いては、数分と持たず倒れてしまうだろう。
 やっぱり、レオンはすごい。
 そしてアーサー様も……。

 戦う二人の間に漂う緊張感は、こちらにもひしひしと伝わってくる。
 アーサー様の祝福のキスなんてふざけた言動は、レオンを煽るためのものなんじゃないのかな。
 二人が交える剣の軌跡が、威力が、この戦いが真剣で神聖なものであることを物語っている。
 悔しいけど、入っていけない何かを感じた。

 一進一退の攻防が続いたが、勝負には終わりの時が必ず訪れる。
 レオンの剣が閃き、アーサー様の盾を叩き割った。

「やったっ!」

 黒騎士団側の席から歓声が上がった。
 アーサー様は壊れた盾を捨て、剣でレオンの攻撃を受け止める。
 だけど、レオンは構わずに一歩さらに踏み込んだ。
 重ねた剣に力を込め、下方に振りぬき、アーサー様を後方に吹き飛ばす。
 斬るというよりは、力押しでの一撃。
 アーサー様はかろうじて転倒こそしなかったものの、体勢を崩して片手と片膝を地につけた。

「そこまで! 勝者は黒騎士団レオン=ラングフォード!」

 勝敗を見定める審判の声が高らかにレオンの勝利を告げた。
 殺し合いが目的ではないために、勝敗の判定には細かい取り決めがあり、このように地に手か膝をついた場合は即座に敗北とみなされる。
 ここが戦場であれば、二人の戦いはまだ続いただろう。
 両者とも大ケガを負うことなく戦いに決着が着き、ホッと胸を撫で下ろした。

 黒騎士団の勝利が宣言されて、こちら側では勝利に喜ぶ歓声が、白騎士団側では次回への勝利を誓うと同時に闘志を燃やす気合の声が湧き起こり、それぞれ交じり合って騒がしくなる。
 あっと、いけない。
 レオンの剣と盾、受け取りにいかなくちゃ。

 付き人の従騎士の務めを果たしに、急いで闘技場の中心に向かう。
 レオンの前にはアーサー様が立っていて、兜を外して、勝利を祝う言葉をかけていた。

「おめでとう、今回も私の負けか。勝つつもりで戦ったけど、レオンは強いな」

 負けた悔しさを表に出すことなく、彼は微笑んだ。
 レオンも兜を外して、アーサー様の目を正面から見据えた。
 どこか不穏なレオンの気配に、わたしは立ち止まり、近くにいた人達も戸惑った顔で二人に注目した。
 ざわついていた客席も、彼らの様子に不審を抱いて静まり、不気味なほどの静寂が場内に訪れる。
 レオンはそんな周囲の変化に動じることもなく、アーサー様に対して言葉を発した。

「オレの勝ちだ。勝者に敗者に命令する権限なんてものがあるのなら、お前に命じる。今後一切、キャロルをふざけた賭けや遊びの恋愛ごっこに巻き込むな。あいつはオレの恋人だ」

 きっぱりと、レオンは言った。
 その声は、恐らく闘技場の観客席にまで届いただろう。
 しん……と、おそろしいほどの無音の時間が続いた後、一気に声が場に満ち溢れた。
 驚愕と冷やかしの声が交じり合い、わたしを探す会話があちこちで聞こえ、絶叫が幾つも響いた。
 うわあああ、言っちゃった。
 どうするのよ、レオン。

 呆然としていると、肩を叩かれた。
 手の主であったグレン様は、指でレオンの方を指し示した。

「とりあえず、君は自分の仕事を果たすことだ。二人とも控え室で待っていてくれ。これから大変な騒ぎになるぞ」

 グレン様はため息をついて、レオンの発言を聞いて固まっている団長のところに歩いて行った。
 当事者のレオンはと言えば、まだアーサー様を牽制して睨みつけている。
 もう、そんな場合じゃないのに。

 呆けた顔でレオンを見ていたアーサー様は、ぐっと引きつった声を漏らすと前かがみに体を折り曲げた。

「……くぅ、あ……、あははっ、うははははっ!」

 急に笑い出した彼は、体を起こすとお腹を押さえて、レオンの肩をバンバン叩きだした。

「何だ、やっぱりそうだったんだ。素直に認めるとは思わなかったけど、まさかこんなところで告白されるなんて予想外だったよ!」
「うるさい、笑うな!」

 レオンがさらに眉根を寄せた。
 わたしは慌てて彼に駆け寄った。

「レ、レオン! グレン様からの指示だよ。早く控え室に戻ろう!」

 剣をもぎ取るように抱え込み、レオンの腕を引く。
 レオンは舌打ちして、わたしが導く方向に足を動かしかけた。
 立ち去りかけたわたし達の背に、アーサー様が声をかけてきた。

「敗者の私は君の命令に従うよ。今後一切、キャロルを賭けの対象にはしない、遊びでは手を出さない」

 気のせいか『遊びでは』の辺りを強調して、アーサー様はレオンに約束してくれた。
 アーサー様のことはこれで納まりそうだけど、何だか大変なことになりそうな予感がする。




 レオンの告白は、聞こえていなかった残りの騎士団員にも一晩で知れ渡り、わたしと彼は晴れて(?)公認の仲となった。
 聞こえていたはずの王や姫からもお咎めはなく、あの場に一般人がいなかったのが幸いして、国中に広まることはなかったので、ひとまず安心だ。
 意外にも仲間達の反応は穏やかなものだった。
 嫌悪感を向けられることはほとんどなく、ふざけて冷やかしてくる人や、祝福してくれる人、抵抗はあるけど他人事だからと受け止める人、様々だ。
 トニーは抵抗なく受け入れてくれた。
 どうやら自分が対象でさえなければ、同性愛も認めるタイプらしい。
 ノエルの方は複雑そうだった。
 笑顔はなく、戸惑いと苦々しさをない交ぜた表情で、それでも仲間だと言ってくれたけど、やっぱり気持ち悪がられているのかな。
 せっかく友達になれたのに、嫌われるのは悲しい。
 でも、それはわたしの思い違いだったことが、すぐにわかった。

 夜、レオンの部屋を訪ねて寮に向かう途中、ノエルと一緒になった。
 ノエルはグレン様からチェスの相手に呼ばれたらしい。
 わたしの用事を、彼はわかっていると思う。
 恋人の部屋に泊まるんだもの。何をしているのか、想像がつくよね。

「なあ、レオン様は優しくしてくれる?」

 ノエルの問いに、ためらうことなく頷いた。

「うん、優しいよ。大事に愛してくれてる」

 改めて言葉にしてみて、照れくさくなって俯いた。
 自然に顔がニヤけてくる。
 レオンに愛されて、間違いなく、わたしは幸せだって言える。

「そっか……」

 ノエルは小声で呟くと、いきなりわたしの髪をぐちゃぐちゃ乱しながら、頭を撫で回した。

「うわあっ、何するの!?」

 頭を押さえて抗議の声を上げると、彼は大口を開けて笑っていた。
 あ、久しぶりに見た。
 ノエルの笑顔。

「惚気るなよ、妬けてくる。いいよ、それで。キャロルが幸せなら何も言わない。レオン様に泣かされたらすぐ言いに来いよ、オレが怒鳴りに行ってやる。キャロルのためなら、誰とだって戦えるからな」

 え?
 思いがけず、かけてもらえた優しい言葉にびっくりした。
 嫌われたわけじゃなかったんだ。
 もしかして、ノエルはヤキモチ妬いてたの?
 レオンのことが好きだからって、友達を蔑ろにするほど、薄情なつもりはないのに。

「ありがとう、ノエル。あなたとトニーは、ここでできたわたしの一番の友達だよ!」

 彼の手を取って、ぶんぶん上下に振りまわす。
 ノエルは気の抜けた笑顔で「友達かぁ」って呟いてたけど、親友って言った方が良かったかな。
 何はともあれ、彼とのぎくしゃくした空気がなくなって嬉しかった。




 ノエルと別れてレオンの部屋に入る。
 二人っきりの空間で、わたし達はいつもの戯れを始めた。
 唇を浅く重ねては離し、互いの体に触れ合う。
 レオンの大きな手が、わたしの素肌を這い回り、わたしは彼に抱きついてキスの合間に喘ぎをもらす。

「……あ、ん……。そこ……、気持ちいい……」

 膨らんだ胸の先端を、指の腹でいじられるとゾクゾクと快感が背中を這ってくる。

「ここか? じゃあ、こうするとどうだ?」
「あ、ああんっ」

 乳首を唇に含まれた。
 温かい舌で転がされて、淫らな響きを含む声をもらしてしまう。

「ぁあ……、レオン…、やぁ……」

 清潔な寝具の上に体を横たえられ、レオンの口付けで、肌に幾つもの赤い華が咲いた。
 彼はわたしの肌に痕をつけては、癒しを与えるように舐めていく。
 その度に感じて、言葉にならない声を上げた。

 胸を弄んでいたレオンの手が、下へと降りてきた。
 濡れ始めた割れ目に指を添えて動かし始める。

「あっ……、ん…ああぁ……っ!」

 腰が跳ねて、びくびくと震えが来た。
 ぐにゅっと中に入ってきた指が、わたしの性感を刺激するために、愛液を絡めながら中で動き回っている。

「ああっ、イク……、いやっ、だめぇっ!」

 胸がぺろっと舐められて、下からの愛撫と相まって絶頂に達する。
 指が抜かれてひくひくと余韻で震える花びらの中に、レオンの高まった欲望が呑み込まれていく。

「んっ、ああんっ」

 レオンが腰を打ち付けてくるたびに、わたしは波に翻弄された。
 一際激しく動いた後、レオンはゆっくりと腰を引いた。
 荒い呼吸を繰り返して、わたしの上に覆い被さってくる。
 潰さないように、彼は腕で自分の体を支えながら、わたしの頬を撫でた。

「お前はオレの恋人だ。今回のことも後悔はしていない。アーサーのことがなくても、いずれは知れ渡ることだ。誰に何を言われても堂々としていればいい。オレ達は何もやましいことをしているわけじゃないんだ」
「うん……、浮気や不倫をしているわけじゃないんだし、平気だよね」

 わたし達は恋人同士。
 胸を張って、あなたを愛しているって言う。
 本当は性別を明かせれば、肩身の狭い思いはしなくていいんだけど、まだ騎士団には残りたい。
 もう少しだけ、このままでいるしかないか。
 わたし達は寄り添って眠り、やがて夜明けが来るまで安らかな時間を過ごした。




 手を出さないと約束したにも関わらず、なぜかアーサー様はわたしに会いにやってきた。
 真っ赤な薔薇の花束を携えて。

「はい、キャロルにプレゼント。私の愛情がたっぷり詰まっているから、部屋に飾ってね」

 差し出された花束を、条件反射で受け取ってしまった。
 うーん、いい香り。
 結構、手入れの行き届いた高価な薔薇だ。
 ついつい、花に見惚れていると、赤い花たちはひょいっと脇から持っていかれてしまった。
 花束を掴んだレオンは、アーサー様に鋭い非難の眼差しを送った。

「これは何のつもりだ。キャロルには近づかないと誓ったはずだろう?」

 レオンの問いかけに、アーサー様はにっこり笑った。

「遊びでは近づかないって言ったんだよ。私はいつでも本気で恋をしている。かわいい恋人達のためなら、いつでもこの命捨ててもいいぐらい愛しているんだ。ただね、困ったことに素敵な出会いは一度きりでは終わらない。それならば、できるだけ多くの恋をして、人生を謳歌したいのさ」

 プレイボーイの持論は、妙に説得力があった。
 わたしには想像もつかない生き方だけど、アーサー様は彼なりに真剣に恋をしているのかな。

「そんなわけで、君達の愛の語らいの場に、私も混ぜ……」
「断るっ!」

 レオンの靴の裏が、迫ってきていたアーサー様の顔面に入った。
 アーサー様は後ろに倒れこんでいく。
 端整な顔に、靴の跡がくっきり刻まれていた。

「残念だが、オレもキャロルも出会いは一人で十分だ。お前は今抱えている大勢の恋人と存分に語らっていろ」

 倒れているアーサー様に、レオンが冷たく言い放つ。
 アーサー様は体を起こすと、わざとらしい泣きマネを始めた。
 体が大きいだけにかわいくなくて、悲壮感のまったくないその姿は、逆に笑いを誘う。

「うう、レオン、ひどい……。昔はあんなに仲良くしてくれたのに……。同じベッドで寝た仲じゃないか」
「誤解を招く言い方をするな! あれはお前の本性を知らなかったオレの過ちだ! 気色の悪いことを思いださせるな!」

 薔薇の花束を放り投げ、レオンはアーサー様に掴みかかった。
 花束はわたしの上に飛んできたので、手を伸ばしてキャッチした。
 まあ、花に罪はないからね。

「私にとっては、あの一夜は最高の思い出だよ。あの時の君はかわいかった。私の口付けに身を震わせて恥らって……」
「どう変換すれば、あれが恥らって見える! 気持ち悪さで顔を背けて、怒りで震えてたんだ! あの時みたいにアバラ骨へし折って、医務室送りにしてやろうか!?」
「ああ、レオン。君のそういう正直なところが好きだよ、愛してる!」
「黙れ! 一度あの世に行って、その節操のない性癖を改善して来い!」

 わたしは薔薇の花束をどうしようかと思案しながら、二人のやりとりを眺めていた。
 結局、アーサー様はどっちの恋敵になるんだろう?
 レオンのことが好きで、わたしにも恋をして、他にもたくさん恋人がいる気の多い人。
 でも、どこか憎めない。
 騎士団にも色んな人がいるんだな。

 この薔薇は、食堂にでも飾ろうか。
 テーブルに一輪ずつ置いて、アーサー様の困った愛情をみんなにお裾分け。
 そんなことを考えて、一人笑ってしまった。


 END

副団長のバカップル観察記録

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