短剣を下ろして、ため息をつく。
憎しみは消えていた。
だけど、全て忘れて前に進むことはできない。
どうしても許せないの。
家族を奪ったこの国の人間を恨む気持ちが消えることはない。
わたしは幸せにはなれない。
あなたを愛してしまったわたしに、未来はない。
アシルの上に屈みこみ、寝息のこぼれる唇に指先で触れた。
次に唇を重ね、すぐに離した。
あなたにとって、わたしはただの玩具でしかなかった?
答えは聞きたくないから起こさない。
今夜消えるのは、わたしの命。
過去に起きた事を全て忘れてしまえれば、わたしも幸せになれたんだろうか。
体を起こして寝台の前に立ち、手にした剣を自分に向けて、迷うことなく胸に突き立てた。
胸から流れ出た血が白い夜着を赤く染めていく。
次第に意識が朦朧としてきて、揺れた視界の端に動くものを見つけた。
「レリア!」
アシルが飛び起きて、わたしに手を伸ばしてきた。
わたしの名を呼んでくれたこと。
駆け寄ろうとしてくれたことが嬉しくて微笑んでいた。
だけど、あなたの手を取ることはできない。
さようなら。
この世で一番憎くて、愛しい人――。
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