第5章 美咲の受精

 美咲の降りる駅は、既に通り過ぎてしまっていた。
 彼女がおろされたのは、その電車の終着駅。駅員はおらず、ただ運転士と車掌が電車の点検をして早々出発の準備をしているだけ。乗客も数人だけで、彼らもすぐにいなくなってしまった。
「ほら、さっさと歩け!」
 男に背中を押され、美咲は電車から降りる。乗る前と同じ灰色のスーツを着ているのだが、背をややすぼめており、歩幅も小さい。
 誰もいない改札口をくぐりぬけ、二人は駅を出る。小さな売店、二台程度しか止まれなさそうな駐車場、錆のこびりついたカップ酒の自販機、腐りかけたバス停の標識――その他は何もなく、青々と稲が育つ水田が広がっているのみであった。人通りも車通りも、何もないに等しかった。
「……随分窮屈だろ?」
 男はその手で美咲の両肩を握りしめる。
「こ、こんなのいや……もういいでしょ……」
「ここまで来て何言ってるんだ、お楽しみはこれからさ!」
 美咲のスーツを、男は突然引きちぎる。
「いやあぁっ!」
 スーツの下は柔肌であった。だがその肌は、ささくれだった麻縄で荒々しく縛られていた。上下を縄に挟まれた胸、強固な縄の網に阻まれてただひくひく動くだけの腹。
「どうだ、えぇ? 外の空気を肌で感じる感想はぁ? ははは」
「恥ずかしい! 恥ずかしいから……あうぅ……」
 体を折り曲げてなんとか体を隠そうとする美咲であったが、男はそれを許さない。彼女の両手を背中にがっしりと掴んで手早く枷をはめてしまうと、手荒に引っ張る。
「さあ来い、オラ!」
 狭い駐車場に、プライベートスクリーンの窓がはめられている大きなRV車が止められていた。その後ろのドアを大きく開け放つと、男はその中に美咲を思いきり突き飛ばし、すかさず閉める。
 前のめりに車内に倒れ込む美咲。彼女の鼻に車特有のゴム臭が嗅ぎとられる。体を反転させて美咲は車内を観察しようとした。と、その彼女の目に一人の女の顔が飛び込んで来た。ウエーブの利いたセミロングの髪をほつれさせ、どことなく虚ろな目で、彼女は美咲の顔を覗き込んでいた。最初は顔しか分からなかったが、よくよく観察してみると、彼女は体に何一つ身に纏っていないことが分かった。いや、正確には白いワイシャツの襟を模したチョーカーと、異様に高いピンヒールを身につけているのだが、しかしそれでもピンク色の乳首や薄く茂る陰毛を覆うものは何一つ着ていない。
 サイドの扉が開き、かの男が入って来る。
「……もう一人の妻って……この人なんですか……」
 裸の女が、控えめな口調で男に聞いた。
「ああそうだ。名前は美咲だ」
 男は女にそう答えると、まだ破いていなかった美咲のスーツのパンツを一気に引きちぎった。
「やぁっ!」
 車の中だとはいえ、誰とも知らない女の前で自分の裸をさらすのには抵抗がある。しかも荒々しく自分の服を引きちぎられるのはやはり恐かった。
 だが縄で縛られた彼女の体は、二人の目にしっかり暴かれてしまった。
「ほらみろ操」男は女を呼んで美咲の股間の辺りを指差す。「こいつ腰はでかい癖に脚は細いんだ。しかも関節が広い目についてるもんだから、何をどうやっても股に隙間ができるのさ。エロい体してるだろ」
「はい……不二夫さん」
「こいつバイブとか挿したらさぞかし気持ちよさそうだなぁ。オナニーなんか股開いてする必要もなさそうだしなぁ」
 男はそう言いながら、美咲の股に通した二本の縄をぐっと上に引っ張る。縄は陰唇の横に卑猥に食い込む。
「あぁ……いやぁ……」
 一目にさらされている自分の恥ずかしい部分を手で隠したい一心だが、枷を嵌められてはそれもままならない。
「操、触ってみろこいつの割れ目」
「そ、そんなこと……」
「お前御主人様の言うことが聞けないのか?」
「い、いえ、そんな……」
「俺と幸せになりたいんだろ? それともどっか山奥に捨てられたい?」
「いやです! それだけは……」
 操と呼ばれた女は男の言葉に怯えた様子で、おそるおそる美咲の股に指を忍ばせる。
「ごめんなさい、ごめんなさいね……」
「ひ……ひうっ」
 指はしっかりと美咲の秘裂にめりこんだ。背をのけ反らせる美咲、男はその彼女の肩を持ってやや体を起こさせ、彼女自身の卑猥なさまが見えるようにした。
「ほら操、もっと奥まで入れてちゃんと中を優しくかき回してあげるんだ」
「うぅ、そんなことしたら嫌ぁ」
 だが、操は命令されるままだった。男に言われる通り、指を深々と入れる。
「ぐぅう、きつ……」
「――不二夫さん、ひょっとしてこの人……」
「そうさ、お前と違って処女なんだよ」
 その言葉は美咲の胸中を荒々しく掴んで引っ張り回す。羞恥心の余りに美咲は目から涙を流し始めた。
「美咲は本当によく涙を流すやつだよ……、おい操、ぼーっとしてないで指動かして慰めてやれよ」
「あ、はい」
 操は、美咲に深々と入れた指を中でかき回し始めた。たまらず喘ぎ悶える美咲。
「あぁ、凄くあったかい……」
 その目をうっとりと潤ませる操。
「ん? 自分とこいつのどっちがあったかい?」
 男にそう聞かれると、操は自分の割れ目にもう片方の手の指を入れた。
「んうんっ……す、すごいぃ、この人私より熱い、ぅんんっ!」
「うんんんいやあぁ、そんな……そんなこと、ないっんんんん!」
「だ、駄目ですぅ、そんなに締め付けられたら私、私も……」
 顔を火照らせて、操は自分の中に入れた方の手指をさらに押し込んで悶える。
 美咲の背筋がダイナミックにはねる。操の腰が悶々と動く。
 ひどく恥じらう美咲のきつく閉じた目からもれる涙。ひどく乱れる操の放心した口角からもれる涎。
 男――不二夫の肉剣を雄々しく立たせるには充分な光景であった。
「よおしよおし、いい具合にウォーミングアップできてるな。よおし、そろそろじっくり頂くとするかぁ」
 不二夫は操の肩を叩く。
「美咲の身体押さえときな。こいつのよがる顔でもじっくり見とけ」
 命令して男は、仰向けの美咲に覆いかぶさる。彼女の下腹に、不二夫の熱くたぎる肉棒が押し付けられる。
「喜べ、これからお前は俺と契りを交わすんだ。良かったな、バージン捧げた相手と結ばれるんだぜぇ」
「あぁ、いやぁあ、お願いもうゆるしてぇ」
「許すって何を? ……あぁわかった、じらすなってことか」
「そんなこと、――ああだめいやぁ! そんなのもぞもぞ動かさないでぇ!」
 不二夫が腰を動かして、自分のを美咲の下腹にぐりぐりと押し付けているのだ。
「これを今からお前ん中にいれてやっからなぁ」
「いや、ほんとうに許して……」
「わかったわかった、今からゆっくり入れてやるから」
 そう言うと不二夫は腰を浮かして照準を合わせる。
「ひぃぃいやああああああああ!」
 絶叫する美咲。
 それに栓をするかのように、不二夫は雄の象徴を処女の秘襞に勢いよく挿し入れた。
「ぎひぃぃぃぃぃぃ、痛ぁぁぁぁい」
 大量の涙を目から流し、大量の血を下の口から流す。
「おおぉう、やっぱ初もんはすっげーしまるぜ。もう今すぐでもバコバコ動かしてーぜ」
 口ではそう言っておいて、しかし不二夫は腰を動かさない。彼は、そこでようやくサングラスをとって美咲の顔を見つめたのだ。
 痛みになれてきたのか、ようやくまぶたの力を緩めて目を開けた美咲は、そこで不二夫の目を真正面から見つめたのだ。
 まるで射抜かれるような視線であった。一方的に、そしてこれほど無情までに人の処女を犯した男のくせに、その目は無気味なくらいに澄んでいた。恐いのに、美咲は不二夫の目から自分の視線を反らすことができなかった。
「ゆっくりとお前を俺のものにしてやる。お前は俺のものになっていく。どんどん逃れなくなっていく。俺なしじゃ生きていけなくなる」
 ようやく不二夫は腰をゆっくり動かし始めた。ひどく痛がるのかと思えば、美咲はまるでしゃっくりあげるように掠れた喘ぎ声をあげはじめる。もう彼女の中にあった痛みは失せてしまっていた。ただそのかわり、風穴を開けられたような鳥肌立つ感覚にうちのめされていた。もう抗う気が起きない。
 しかし、心の片隅で彼女は思っていた。――せめて優しい目だったらよかったのに……。
「あっ、あ、あうっ、ぐうっ」
 不二夫の腰の動きも激しくなり、単調なピストン運動だけだったのが、腰を回したり強弱を加えたりするなど、バリエーションに富んでくる。破瓜の血に愛液が混ざる中で、不二夫は思い思いの交合を繰り広げる。
「いいんだぜ。気持ちいいんだろ? もう気持ち良すぎて駄目そうになったら、『イクっ!』とか『ダメぇっ!』って叫ぶんだ。しっかり聞き届けてやるからな。中に熱いプレゼント注ぎ込んでやる」
「や……やめて、膣内には出さないで……」
「中に出さなきゃ何のための契りなんだよ、おらおらおらおらおらあぁぁぁ!」
 美咲にそれ以上何も言わせまいと、不二夫はマシンガンさながら腰を打ち付ける。
「ああああああいやいやいやいやいやいやぁ、だめええええええええ」
「ああ? イクかイクか、ええ?」
「い……あ、あ、い、っくうぅ……」
「よおし、飛んでいけ、飛んでいってしまえぇー!」
 美咲に負けんばかりに不二夫は叫んで、腰を強く突き上げた。
 息の力の割には非常に弱々しいかすれ声をあげて、美咲は白目を剥いてしまった。
 ゆっくりだが一回一回力強く腰を彼女に沈めながら、不二夫は限界までせき止めていた熱いほどばしりを子宮目掛けて勢い良く送り込んでいく。
 空白の中の幸福。
 美咲はうすれた意識の中で、快楽に痺れる。

 

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