第11章 淫欲の挙式

 廃教会の礼拝室。
 板が腐ってところどころに穴が開いた床や壁。
 だが、似合わないタキシードを着た不二夫の前にある演壇は新品そのものだ。
 礼拝堂の四隅にはビデオカメラが設置されており、録画中を示す赤いランプがこの場の行く末を見つめんと出歯亀さながらに光っている。
 操と美咲を連れて来た時にはぐちゃぐちゃだった長椅子は、不二夫の手で整然と並べ直されていた。その真ん中に、軽そうだが太い鉄の鎖が不二夫の演壇の上から半開きのチャペルの扉の間に渡されている。
「くふふ、この鎖を引っ張れば俺の夢が叶うんだよな」
 演壇の上の鎖の端を握る不二夫の手は震えていた。それは、三人の奴隷妻に決して見せることのない姿である。
「嬉しいのか、それとも怖いのか不二夫。早くその鎖を引っ張るんだ」
 不二夫は震える手に向かってそう言った。しかしそう自分に言い聞かせているくせに、手はいっこうに動かない。
 懐から錠剤のビンを取り出し、おもむろに蓋を開けて、適当な量を無造作に喉に流し込んだ。薬を飲み下してしまうと、不二夫の手の震えはようやく治まり、彼自身も安堵の溜め息をつく。ビンを額に当てて、演壇の中にしまう。
 一緒に、演壇の中に忍ばせておいたラジカセのスイッチを入れた。大きな部屋一杯に、ワーグナーの祝婚曲がこだました。
 それにあわせて不二夫が演壇の鎖をピンと引っ張り、ゆっくりたぐり寄せる。
 半開きの扉が開け放たれる。まばゆい太陽の光。その明るい外の世界から薄暗い礼拝室の中へ、鎖に引かれて三人の女が横に並んで入ってくる。
 不二夫がたぐり寄せる鎖は、三人の目前で三本に分かれ、それぞれの黒く太い首輪に繋がっていた。
 子供をあやすように優しく下腹部を叩く操。
 後ろからの光で、股間の隙間が眩しい美咲。
 幼い割れ目を手で覆っておどおど歩く陽子。

 白薔薇の造花をあしらったベールを頭に戴いてはいるが、三人とも「普通の」ウェディングドレスは身に纏っていなかった。
 両乳首の間にはピアス穴を通して金の細い鎖が渡され、その真ん中には真珠のハート型の装飾がぶら下がっている。白いレースの長手袋をつけた腕には皮の手枷ががっちりつけられ、その両手には白いブーケが下向きに握られていた。あとは、膝上までの白いストッキングと、ヒールの異常に高い白靴を履かされている。
 不二夫のところまでやってくると、三人は股を開き気味に片膝をついてしゃがんだ。彼女たちの恥丘に陰毛はなく、子供のころそのままの姿をあらわにしていた。
 咳払いを一、二度して、不二夫は声を張り上げて言った。
「操、美咲、陽子。お前たちは俺のチンポの前に淫らな自分の本性をあらわにし、いやらしく悶え、喜びの声を上げた。そして、俺の精をその欲望の子宮に吸い込み、懐胎するに至った。そのことからして、お前たちはすでに俺の性の奴隷であり、同時に人生の伴侶として逃れられない契りを交わしたことになる。事実を認めるか?」
「……はい」
 三人ともうつむきがちに答えた。ほくそ笑む不二夫。
「お前たちは今後俺の奴隷妻として、一生俺に服従せねばならない。そのことを、自分たちの子宮にかけて誓えるか?」
「……はい」
 それを聞いて、不二夫の気持ちはますます舞い上がった。
 彼はこの言葉を待っていたのだ――それは奴隷妻三人にも理解できた。
 彼、不二夫は自分の意になる女の奴隷を囲いたかったのだ。だからこそ、三人の女の体に自分の精を送り込んで屈服させようとしたのだ。幸運にもそれは実った。不二夫の前に淫らな一面を見せてしまった彼女たちは、さらに懐胎という運命をつきつけられ、その上にそれぞれのウィークポイントまで握られて、結局奴隷妻として彼に一生を捧げなければならなくなったのだ。
 彼女たちは、もう不二夫なしで生きることのできない存在になってしまっていたのだ。
「よおし、よおしお前ら、俺の前でオナニーだ。尻をついて、大きく股を開いてスケベ汁垂れ流すんだ。俺がそれを存分にすすってやる!」
 大声を張り上げて不二夫が命令する。
 躊躇は見せたが、抵抗ではなかった。三人は赤く爛熟した自分たちの花弁に指を絡ませる。
 鼻にかかったうめき声をもらし、あたりにむんとした淫香を漂わせる。
 とろけた瞳は、自己憐憫と性の恍惚で潤んでいる。
 彼女たちは思い思いに自慰行為に耽っていた。
「お前たちの本当の姿、綺麗だよ。ほら、だんだんその花びらから露があふれてきたぞ。――おお、一番若い陽子が沢山スケベ汁垂らしてるな。よしよし」
 陽子の側まで行くと、不二夫は陽子の首輪に繋がる鎖を引っ張りあげる。首輪にかかる力が思いのほかに強く、陽子はいやでもその場に立たされる。その股ぐらにすかさず不二夫が頭を潜り込ませ、陰唇に舌をしのばせ、音を立てて強く吸い付きはじめる。
「や、ああぁ」
 秘裂の奥からとめどなく湧き出てくる愛液をちゅばちゅば飲みながら、時々口を離して不二夫は陽子に言う。
「良かったな。随分早いゴールインじゃないか、え? ……お似合いのウェディングドレス着て、この通りいい思いして、おまけにこの奥じゃ今頃『生きたパチンコ玉』がむくむく膨らんでるんだぜ」
「ああ、駄目……言わないで……それだけでイッちゃう……う、うううううっん!」
 足をよろめかせて、陽子はぐったりと床に倒れた。
 陽子の次に、不二夫は美咲の鎖を持ち上げ、立たせたその股ぐらに潜り込んだ。
「うあ、あん、うううっん!」
「本当にやらしい股ぐらしてるぜ。すごく飲みやすいぜ……良かったな。俺のおかげで自分のあるべき姿を見つけれたんだからな」
「ぐぅう」膣前庭で暴れる不二夫の舌からくり出される、体をえぐられるような極上のくすぐったさにかろうじて耐えながら、美咲は言う。
「私……私の事……せめて、愛して……」
 不二夫が支えるのを止めると、そのまま彼女は床にすとんと尻を落とし、うずくまってしまった。
 美咲の声に答えることなく、彼は操を立たせてその愛液を啜り始めた。
「呼び掛けたら聞こえるかな、んんっ? ……おーい、淫乱ママのパパでちゅよ〜」
「ああ、すごく恥ずかしい、私……う、うんんっ」
 不二夫がなめるのを止めて離れると、操はそのまま前のめりに倒れこむ。
 淫戯に疲れて床に横たわる奴隷妻たちの肢体。
 だが、それで終わりではなかった。不二夫は太い鎖を引っ張って無理矢理三人を起こす。
「おらぁ、お前らだけでいい思いして、それで終わりか? 違うだろ」
 ズボンのファスナーから、赤黒くそそり立つ剛直が飛び出している。不二夫はそれをしごきながら、三人を呼び寄せる。
「よぉし、精液シャワーだ。三人仲良く浴びるんだ。ふん、ふん、ぐううぅぅぅ、おぅあ!」
 びゅるびゅると、勢い良く飛び出す不二夫のザーメン。おびただしい量のザーメンが、操の顔、美咲の顔、陽子の顔に沢山降りそそぐ。
 射精の余韻にふけって立ち尽くす不二夫であったが、思い出したかのように歩き出し、礼拝堂の隅にあるビデオカメラの一つを持って三人に近付ける。
「いい思い出だな。一生ずっとのこしてやっからな」
 快楽に立たぬ腰、肩を寄せあって一人の男のザーメンを浴びた三人の奴隷妻。
 四人は今、奇妙な幸福のただ中にいた。

 

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