クドわふたー
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3年経つとシナリオが思い出せず…… 2007年に発売されたリトルバスターズ!(以下リトバス)の人気ヒロイン「能美クドリャフカ」と主人公の生活を描くファンディスク。実際は2008年発売のリトルバスターズ!エクスタシー(リトバスの18禁版)の後日談になります。CLANNADのファンディスクである智代アフターが人気を博したことに味を占めたのでしょう。 リトバスから期間が空いたのでストーリーを忘れかけていたのですが、智代アフターが予想以上に密度の濃い話だったので、ファンディスクとはいえ侮れない出来になっていると思い、購入しました。結論から述べるとそこそこ泣ける話に仕上がっていたのですが、これまでのKey作品と決定的に異なる点もありました。それは一体何なのか、見つめていきましょう。 初回限定版には、オフィシャルガイドブック『入寮規則』、Rewrite体験版、サントラ、ヴァイシュヴァルツのカード、『ai sp@ce 能美クドリャフカ衣装セット』アイテムチケットが、予約特典としてポスターが付属します。結構豪華ですね。 クド一筋ゲーム ■シナリオ リトバス後の、クドと理樹(主人公)との夏休みの寮生活模様を描くファンディスク的内容。ゲーム性項目でも触れますが、10日ほどのわふたー編と、クリアー後に現れるアフター編の2部構成になっています。アフター編はわふたー編の事後の話ですが、プレイ済みのわふたー編の頭まで巻き戻ってプレイさせられます。違いといえば、クドの母親についてのエピソードが挿入されることと、1周目は毎日のようにHシーンが挿入されますが、2周目はほとんどそれがないということでしょうか。とは言え、カットしただけであり、H自体はした描写があるので、わざわざ話を分けた意図が伝わってきません。 本編前半はクドと理樹のラブラブ生活が描かれ、後半では悲劇がクドを襲う鬱展開となります。主人公は常にクドを支える存在であり、クドはその手を借りながら精神的成長を遂げていきます。一方で主人公も将来を決め兼ねており、その原因となっている過去のトラウマを探り当てようと悩んでいるのですが、クドを助ける内にその答えを見つけていきます。クドが主人公を頼るのに対して主人公は自己解決していくのが特徴的です。 また、本作で最も注目すべきは、最終的解決に「奇跡」を用いなかった点です。これまでのKey作品では、最後に信じられないことが起こってハッピーエンドという展開がお約束となっていました。しかし、今回はそうした理屈では考えられない展開を排除して、確率的に十分起こり得る出来事を展開させることで、エンディングに説得力を持たせているのです。かなり力技でしたが、これは今後のKeyブランドを占う上で、重要な転換点となるかもしれません。 ■キャラクター 原画メインはNa-Ga氏、サブキャラの二木佳奈多とあーちゃん先輩が樋上いたる氏。クドリャフカは前作と変わりありません。その他は新しい絵が起こされています。Na-Ga氏の絵は一般的ですが、いたる絵は相変わらずクセが強く、口の形が「台」の字状になっています。 性格設定は、やや浅めです。ファンディスクという性格上、クドについては「リトルバスターズ!」で語られた内容についてはほとんど触れられていませんし、出生や故郷での暮らしについて思わせ振りな発言はありますが、踏み込んだことは語られません。サブキャラの有月姉妹については、家族関係などメインキャラ級の扱いですが、二木と先輩については、お助けキャラ程度の扱いであり、存在価値はそれほど大きくありませんでした。他方、氷室はクドとは対称的な個性が与えられており、役割もクドと対称的であるという、良い意味で鏡のようなキーパーソンとなっています。 ■テキスト 会話と主人公の独白で進める通常のアドベンチャー。一〜二日に一回、クド視点に変わり、クドが独白します。ただ、このクド視点はいらなかったと思います。特に終盤の主人公不在でクドだけで進める展開は、些かシナリオ及びテキスト構成力の低さを感じます。クドと付き合っていることを楽しませるゲームなのですから、クドのシーンを単独で見せるのではなく、クドにそのシーンの出来事を主人公に対して語らせるべきなのです。その他、Key特有のファンタジックな表現は今回ありませんでした。要するに在り来たりなエロゲーテキストになってしまったということです。 ■演出 オープニングムービーは、イベントCGと立ち絵を使ったキャラ紹介をするオーソドックスなもの。所々に立ち絵をディフォルメしたチビキャラが散りばめられており、ファンシーな雰囲気に仕立てられています。ただ、クドが歌う主題歌があまりに下手で、Key作品の中では最も酷いムービーとなってしまっています。 画像効果は、大きな絵を使ったスクロール表現がある程度で、他に目立ったものはありません。 効果音は、動物の鳴き声や乗り物の発進音など。こちらも目立ったものはありませんが、必要条件は満たしています。 ■ゲーム性 10日ほどのわふたー編と、クリアー後に現れるアフター編の2部構成。アフター編はわふたー編の事後の話ですが、プレイ済みのわふたー編の頭まで巻き戻ってプレイさせられます。新しいテキストもあるのですが、ほとんどスキップ出来てしまうので、分けた意味がありません。選択肢は極めて少ないのですが、Hシーンの回収と、最後のひとつはトゥルー、バッドエンドの分岐に影響があります。ただし難易度は低いです。 ■Hシーン 全15シーン。妄想としてクド×氷室が1シーンありますが、それ以外はすべてクド×理樹です。通常のベッドシーンの他に風呂や野外があります。正常位、バック、フェラ……と大体の普通のことはやっており、1シーンもKeyにしては長めですが、ロリコンでない私は残念ながら興奮しませんでした。ただ、クドのファンディスクの役目は果たしていると思います。 ■グラフィック 背景は一部リトバスからの流用です。どうも屋内の描きこみがあまく、塗りものっぺりとしており平面的に見えます。追加分はレベルダウンのしている感が否めません。Key作品は背景も楽しみにしているので残念です。 立ち絵はキャラによって差があり、6パターンから3パターンほど。表情がキャラによっては10パターン以上あるので、見ていて退屈はしません。映るのは上半身のみです。 イベントCGは差分抜きで72枚。内22枚は販促用CGなので、実質50枚です。Keyにしては珍しく大半がHCGです。構図は、クドが小さいためか場面全体が小さく収まってしまっているものが多いです。塗りは丁寧です。 ※当初、背景は山城こがね氏が担当していると書いておりましたが、閲覧者のご指摘により間違いであることが判明しましたので訂正致します。背景担当はいつも通り鳥の氏です。
科学の力を駆使することでハッピーエンドを導いたわけで、そこにはこれまでのような奇跡はなかったと思っていますし、テキストとしても奇跡ではないかのように書かれています。しかし、そこまで持っていくには「信じる」力と「諦めない」心が必要でした。 窮地に立たされたとき、人間の行動は理性と感情、どちらが制御するのでしょうか。本作では感情が人間の最後の行動を決定付けています。理性が「どう考えても無理だ、もう諦めろ」と勧告する時、感情が「まだ諦めるな」と叱咤激励するのです。そして諦めないことを選択した人間の感情が、他の人々を突き動かし、果ては「科学」によるキーアイテムを生み出します。何とも逆説的ですが、感情が、理性の代表格である科学を生み出しているのです。 確かにこのエンディングを左右する科学の産物は、オーパーツのような奇跡的な物ではありません。街中から現れる光の玉のようなファンタジックな物体ではないのです。しかし、案外意味するところは似ている気がします。これまでのKey作品では、人々の感情が、説明の付かない正しく奇跡と呼んでよい現象を起こしてきました。今回は、それが説明可能な現象――すなわち、確率的に起こり得る現象――に置き換わっただけなのです。 作中、意味ありげに「シュレディンガーの猫」の話題が登場します。「諦めない」こと「信じ続ける」ことが、箱の中の猫を生かす結果を呼び起こすとすれば、それはもう一つの奇跡の形と言っても良いのかもしれません。これを私は「奇跡ではない奇跡」と呼ぶことにしましょう。形を変えた奇跡を描き続ける今後のKeyに、期待しましょう。 |