『最高のプレゼント〜サンジに捧ぐ男の命〜
4』
『も……ダメだ。もう我慢出来ねェ……。ゾロ…、テメェのが欲しい……』
そんな声が聞こえていたらそれはきっと幻聴で。ゾロの妄想だ。
……と、言うことをゾロはつくづくと思い知った。
計画の重要なポイントは相手を良く知ればチョモランマよりも高いハードルで、『お願いするサンジ』と言うシロモノは確率の低い、殆ど幻想の様なモンでしかなかった。
がぶり。
そんな音が聞こえそうな程、強い痛みを右肩に感じ、気付けばゾロはサンジに喰い付かれていた。
絶対に血が出ているぞ。と、言う程に強い噛み付き。
「あだっ! 何しやがるっ、テメエ!」
一瞬、最中である事を忘れて殴ってやろうかと思ったが、勃っているモノを無駄にしたら勿体無いと言う本能が先んじ、衝動は抑えた。
だが、腹立つのでゾロはサンジの玉を握りって仕返す。
「うがっ、テメェこそ何しひゃがるっ!」
さすがにサンジが抗議に口を離し、肩からキツイ痛みは去ったが、じんじんとした痛みは残る。絶対に見事な歯型が残っただろうとゾロは顔を顰めた。
「いー加減にしろって言っただろうがっ!」
ゾロの痛みを思いやる様子はサンジに無く、声を潜めて怒鳴り続けた。顔を真っ赤にさせ、怒りの形相で赤鬼状態だ。
こりゃ酔いは完全に醒めたな……と、サンジの様子に気付かされる。声を潜めている辺り、誰かの存在を気にするだけの状況判断が出来るようだ。
「だったらちゃんと言え。噛み付くな」
「言っただろーが!」
(………………)
その言葉でゾロは『やっぱコイツ、ダメだ』と思った。
野良猫みたいな男に素直な言葉を求めた自分が馬鹿だったのか――と、珍しく人らしく頑張っていた野生の獣みたいな男はひそりと溜息吐く。
そもそも、手前勝手な計画を練ったゾロの方がどうかしていたのだが、そこはそれ、これはこれ。
たまには素直に自分を求めて欲しい。そんな思いを抱いて何が悪いか。と、ゾロは切れた。
そして、不服そうにサンジを見る。
「だったら欲しいって言え。ちったぁ素直に言ってみろ」
「言ってんだよ、俺はっ!」
「あれのどこが欲しい、だ! きちんと言え。じゃねーと入れねーでこのまま干すぞっ!」
短気を起こし、頭煮立てたゾロは喧嘩腰に言い放つ。
干される時は一緒なのだが、興奮していてそれには気付かないらしい。そして頭が興奮しているせいか、アソコの方はやや萎えかけていた。
「………………」
だが、そんなゾロの勢いにサンジは負け、返答に逡巡する。悔しそうに唇を噛み、潤んだままの瞳から涙が零れそうな程だ。
「どうしたよ……」
勝ち情勢に余裕なゾロ。その意地クソ悪い笑みにサンジの頭も煮立つ。
そして……
「わかったよ。言やーいーんだろ、言やー! オラ、入れろ。入れてクダサイ。オネガイシマス」
サンジも切れた。
「ホラ、言ったぞ。とっとと入れやがれ!」
完全にぶち切れたサンジはとんでもなく威勢のいいお願いをかまし、寝転んだままなのに何故か踏反り返っているようにすら思える。
「……………………………………おう」
言葉的には間違ってないが、何だか夢想していたモノとは一味違う『お願い』。
だが、サンジらしくもある。男らしいまでの『お願い』。
負けたゾロはただもう頷くしかなかった。
こんなことなら意識も理性もトロトロになるまで酔わせたままの方が良かったのか。
だが、あまりにもトロトロ過ぎて記憶もトロトロ。ヤった内容を忘れられても困る。
そんな想い散り散りで意気消沈気味。物悲しい気持ち漂わせながら、サンジの後の孔をほぐし、少し萎えかけていた息子を己の手で励まし、思惑とズレ始めた計画に沿っての挿入と相成った。
「…ック」
抑えた声がゾロの唇から零れる。
人間入れてしまえばどうにかなるもんだ。と、誰かが言ったかどうかは知らないが、入れたら入れたでその感触にゾロは素直に煽られていた。
やっぱ中はいい、とか。
生はいい、とか。
その前に『サンジの』を付けておかないと乱闘になってしまうが、付けてもうっかり言おうものならば、やはり乱闘だ。
だからゾロは黙って味わう。
腕の中で熱く、跳ねる身体はいつも心地良い。女を抱くのとは違って柔らかさは無く、それに落ち着くとかの心地良さはないが、想っているヤツの身体だと思うだけでどこかホッとする。
何より、コイツを抱いているんだと思うと闘争本能とか、征服欲だとか、雄の本能みたいなものが刺激されるとゾロは感じていた。
その逆の気持ちはどうなんだか。ふと、ゾロは思い、抱いている相手の身体から表情を目で追う。
元から男に慣れていると言う身体では無い。
何故、自分は抱いているのか。自分に抱かれているのか。
気が付いたらとしか言い様のない関係。
最初の性欲処理だなんて理由は今ではもうなく、他の身体を抱いても満足出来ないくらいにこの身体を求めてやまない。
普段はムカツク程憎たらしいクソコックなのにな。
何かの折りに触れ、身体に触れれば全てが欲しくなる。匂いを感じれば欲情する。
ヤりまくれる環境下じゃないところ、理性で欲を抑えれば、反発する如く抑圧された欲は高まり、それが感情を育てたのかも知れない。
等とどんな風に思っても、今では抱く身体に愛おしさを感じるのが真実なのだからしょうがない。
躊躇うこともなく、ゾロは自分の気持ちにケリを付けているが、対する相手はそうでもない様で、もう何度もヤっているのに気持ちはイマイチ不明だ。
愛があるとは思っているが、そこがそれ、両思いなのかそうでないのか。
今、腕にある身体は素直に感じているらしく、珍しく「いい」とか「もっと」なんて可愛い単語を可愛らしく口パク程度に小さな声で零している。
焦らしに焦らした甲斐があったな。
思わず悦び、口元が綻んだ。
しかし、感じている事は明白だが、抱かれること自体に関してはどう思っているのか……。
やっぱ一度、聞いといてみるか、今度――と、ゾロはぼんやり思った。
「……にっ……考えてやがるっ」
意識が集中してないのを悟られ、ゾロは綻んでいた口元を引き締める。
「いや、イイ具合だな……って、な」
「なっ!」
怒り出しそうなサンジの気配を察して、ゾロはワザと荒っぽく腰を揺さぶった。
「…あッ!」
急なコトに一際高い声が上がる。
まだ慣れきってない身体は激しくされると僅かの痛みを感じるが、声に表れたのは痛みだけではなく。求める部分も強くあって、サンジは縋るようにゾロの背にやっていた手に力を込めた。
指を立て、肩口に近い肉を押すように掴む。
「ふ…ッ、ぅうっ…」
サンジはまた、声を殺し出す。
それが面白くなくて、ゾロは憮然とした表情で上体を起こして抜けるギリギリまで腰を引き、
「あ…、ぅんん」
排泄感と共、自分の中からゾロの熱が引いて行くのを感じると、追い求めるように反射的に強く締め付け、縋っていた手にもサンジは力を込めた。
指は汗で滑り、ゾロの背を離れ、それでも咄嗟に腕を掴んで放さず。
「オイ…っ」
このまま終わりだとは思わないが、それでも不安に揺らめいた目を向ける。
「なんてツラしてんだ……バァカ」
こんな目をされると抱き締めてしまいたくなる。ゾロは苦く笑いを浮かべ、掴み、開いているサンジの足をより広げ、押し、身体を2つに折り曲げた。
「う…、あ…にっ……すっ…、んあッ!」
腰が床から浮き、ただでさえ羞恥する格好をより酷くされてサンジは身じろぐが、そこを上から押すように突かれて文句も喘ぎに変わり、ゾロはゾロで、もう一度、イイ声を上げさせようとグイグイと上から腰を押し付け、大きな動作で抜き差しを繰り返し、内壁を何度も擦り上げる。
「……っ、ぁ…ああ…うッ」
ぐっ、ぐっ。腰が深く穿つ度、抑え切れない声が上がる。
その声が聞きたかった。上げさせたかった。強く、深くと、欲望のままにゾロはサンジの身体を貫く。
振り乱れる髪。赤く染まった頬。潤んだ瞳。我を忘れたように上がる声。身体を流れる汗。我慢を訴えてピクピクと蠢き、滴る汁で腹を汚すサンジのモノ。
完璧だ。
ゴールを間近に見て、ランナーズハイみたいになってる男はより一層激しく腰を動かした。
今日のタメに鍛えに鍛えた。それで。
そうしてゴール目前。計画の破滅する音が――ゾロの中を走った。
腰から……。
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