第1幕 〜著作権って何のこと?〜
第1場 何かをつくった人に権利がある
第2場 「何かをつくった」
第3場 つくった人の心のための権利
第4場 つくった人が損をしないための権利

第5場 できることだっていっぱいある
  許可がなくてもできること。そもそも著作権が対象にしていない利用法。
  許可がなくてもできること。著作権法が定める著作権の制限。
  許可をもらうこと。だれから?いつまで?どこで?

第6場 勝手に使ってしまったら?

  第1幕 第5場  できることだっていっぱいある
えーと、旦、もう一回聞くぞ?
勝手にやれねえ使い方ってゆーのは決まってて、
なんでもかんでもやっちゃいけねえってことじゃあないんだな?
決まってないことはやってもいいワケだ?

禁止されていないことはやっても構わない、という昨今の風潮はいかがかと思いますが。
・・・・・いえ、それは別問題でした。
著作権については小兄さまのおっしゃるとおりです。
前回お話しましたとおり、つくった人だけの権利としてとくに決められていることが いくつかございます。
それ以外はほかの方が勝手にされても問題はありません。

勝手に使ってもつくったヤツから「使うな」って言われねえってことだよな。
どんなことやってもいいんだ?

前に武王がおっしゃった、買うとか、読むとかは問題ないのですよね?

そうですね。作品を読む、見る、聞く、買うという利用の仕方で文句を言われることはありません。
どんな人でも自由に勝手に見たり聞いたりすることができます。
例えば私が描いた絵を、小兄さまにはともかく邑姜さんには見られたくなかったとしてもですね、 邑姜さんに「勝手に見ないでください」と、言うことはできません。

見るなと言われれば拝見いたしませんけれど・・・(どんな絵かしら?)
例えば周公旦さまが見るな、とおっしゃってもそれは単なるお願いで、 法律上の根拠はないということですね。

やっぱ売るのはだめか?

いえ、読み終えた『封神演義・全23巻』を、ご友人に3000円で売った、とか 古本屋に500円で買い叩かれた、とかは問題ありません。 ゲームソフトだとまた違いますが。

ええ?(ところでそれって実話か?おい。)

(実話ではないと思いますがどうでしょう?)
周公旦さま、あまりに話がややこしくなりますから 「売る」と「ゲーム」はちょっと脇へ置いておきましょう。
今のところ文章にしろ絵にしろ漫画にしろゲームにしろ、読む、見る、聞く、買うは問題ない、と。

そーゆーのは法律に「やるな」って書いてないってことだな?
つくったヤツのものをそのまま受け取るだけならいいんだな。
ま、これはつくったヤツだって悪い気しないだろうし、儲かる理由にはなっても損はしねえもんな。

はい。お二方のおっしゃるとおりです。

でもさ、旦、できることってほかにはねえのか?
つくったヤツの心もカネも大事だってのは分かったけどさ、 読むだけ、とか見るだけ、とか、要するに受け取るだけってなんかやっぱ足りねー気がする。
なんっつーか、世の中ってみんなでちょっとづつ先に進んでいくもんじゃねえの?

あら、めずらしく建設的なご意見ですわね。
それで?

んーと、だから例えばさ、太公望の書いた戦術書があるだろ。
でも、あいつはこうゆってるけどこう直したらもっといいとか、 お前らだったら思うんじゃねーの? そういうふうには使っちゃいけねえ?

そうですね、太公望さんの書いたものに思うところがないとは言えませんわね。
何も思うところないとすれば先の時代に比べて私たちには進歩がないということですから。

そして私たちに進歩があったとすれば、それは太公望の戦術あってのことだというのも 確かです。
小兄さまのおっしゃるとおり、世の中は過去の他人の業績を積み重ねた上にすこしづつ進んでいくもの。
ほかの人がつくったものを全く使用することができないとなれば先へ進んで行けません。

だろ?
だったら太公望の書いた戦術書、使っていいのか?

慌てないでください小兄さま。
やはり問題になるのは、太公望の書いた戦術書をどう使うか、というところにあるのです。

ただつくられたものを受け取ること以外にも、許される使い方があるわけですね。
著作権がつくった人を守るのも、新しいものやよいものをつくりだしてもらいたいという目的から。
つまり最終的な目的は文化の発展をもたらすことだったのですから、 そのためにはつくった人でなく使う人を守ることもある、と。

ええ。 著作権法は文化の発展という目的のためのバランスを考えて、
つくった人を守ったり使う人を守ったりしているのです。
ですから、つくった人の許しがなくてもやっていいという使い方はいくつかあります。
元々は勝手にやってはいけないことのなかから「でもこんな場合は許しはいらない」と著作権法が明言しているのですよ。
この部分については使う人の権利が保証され、つくった人の権利が制限されているわけですね。

で?だから何ができるんだよ?

はいはい、お待たせいたしました まずはつくられたものをただ個人的にだけ利用すること。
「私的利用」といいますね。
まったくの個人的な利用でしたら、コピーしたり変形したり、キャラクターの絵やパロディ小説を書いたりしても大丈夫ということです。

私的な利用であればつくった人が困ることも考えにくいから、が理由でしょうか。
現実的にも完全な個人利用でしたらつくった人にも使われているかどうか分からないでしょうしね。

そうですね。理由は断定できませんが、いま邑姜さんがおっしゃったことは重要です。
ここでいう「私的利用」の範囲はごくごく狭いのです。
自分だけで使うこと。それを一緒に住んでいる家族と共有すること。せいぜいこれくらいまで。
友達のためにコピーを取ってきた、とか、友達だけが見るインターネットのファンサイトにアップした、とかは私的利用の範囲に入りません。

狭いな・・・。まあいい、その辺は後でもうちょい詳しく説明しろよな。
ほかにはできることなんかあるか?

そうですね、先ほどの太公望さんの戦術書の例でしたら、引用することがありそうですね。

引用?『このようなことが許されてもいいのか!!!』(藤崎竜 『封神演義』第23巻p72 集英社)
ってことでいいのか?

はい・・・そうですが。
いまなさったように引用部分、引用元をはっきりさせて、そして引用する目的に応じた正当な範囲内でしたら。
引用することは許されますよ、燃燈道人。

(・・・しまった・・面識ないヤツの発言引っ張ってくるんじゃなかったぜ・・・)
おまえが戦術書を書くとして、太公望はこう言っていたが、ってかぎかっこ付きで抜き書きするのはいいってことだな。
むかしほかのヤツが考えたことの上にちょっとづつ世界が進んでいくってそういうことだよなあ。
ところで、太公望の戦術書を一冊丸々引用するのは?

それは引用と言いませんよ、武王。それは複製と言うのでは。
引用とは自分のつくったものが主体であって、それに付随するものとして他人の言説を提示することですから。

(いまなんかややこしいこと言われたな・・)
あ、やっぱだめか。
とにかく引用にあたるんだったらつくったヤツの許可はいらねえ、と。
それって太公望の戦術の引用が入ってる邑姜が書いた戦術書があるとして、それを書くのにも売るのにも太公望の許可はいらねえってことだよな。

そうですね。
周公旦さま、私的利用と引用のほかには何かできることがありますか?

つくった人の権利を制限するもので重要なのはそれくらいでしょうね。それで全部じゃないですけれど。
あとはもちろん、いままで何度か話題に上ってまいりましたが。
「勝手に使ってはいけないこと」でも、つくった人の許しを得れば、許しの範囲でそれを使うことができますね。

そうでしたね。勝手にできないことであれば許可を取ればいい、と。
つくった人に利益をもたらすことを目的としている著作権という仕組みでは、「使わない」よりも「許可をもらって、必要なら対価を支払って、そして使う」ことのほうがつくった人にも世の中全体にとっても望ましいことですものね。
ところでこの許可、いつまで必要ですか?
現代に生きる方が太公望さんの戦術書の解説を書くとして、まさか太公望さんに許可を取ったりはしないし、そんなことそもそもできませんわよね?

誰がつくった人か、という難しい問題が古い作品には付きまといますが、それはともかく、つくったものが守られるのは永遠にではありません。
基本的にはつくった方が生きていらっしゃる間と亡くなってから50年間。
その人がそれをいつつくったか、18のときにつくったか、85歳になってから書いたか、は問題にいたしません。

死後3000年以上経っている太公望さんの戦術書は書き写して売り払ってもよろしいわけですね?

間違いなく太公望のものでしたら、問題ありませんね。

(時代が錯綜してやがるぜ・・俺たちいつの時代の話をしてるんだ?)
おい旦、亡くなってから50年、って誰から許可を取るんだよ?つくったヤツは死んでるんだろ?

そうなのですが。
なくなっても権利は残りますから、著作権はお子さんに引き継がれたりいたしますね。
著作権が出版社に売り渡されている、ということもよくあるようです。

著作権って売れるのかよ・・・ んでもってもうひとつ、今の話だと、死後50年経ってなけりゃ中国の人間がつくったものが日本でも守られるってことだよな?
海外でもつくったヤツの許可がいるんだ。

おや、よく気づかれましたね。そうですよ。
もともと著作権というのは国で決めた法律があって初めて生まれる権利で、私もいままでの話は日本の著作権法に基づき話しておりましたが。
世界のほとんどの国には著作権を守る法律があり、お互いに条約を結んで違う国の人がつくったものも守ることにしているのです。
だから外国の人がつくったものを使うときも同じように、つくった人の許可がいるのですよ。

ま、今日はここまでだな。旦、ありがとな。

続く
しまった、やっぱり1場足りないわ。
親告罪と刑法と損害と民事訴訟。それが次回。
やっと第一幕終わりそうだよ・・もう1年ぐらいになってない?(まだちょっと。)
最後の部分は最初第2幕の終わりにあったのですがこちらの方がよかったかと移してきたのでした。
疑問点不安点ご感想賛成反論ありましたらぜひ水波まで。
あ、参考文献・・・・ (13.10.31)

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