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私が会社を辞めた理由(2/4)

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  I. はじめに
  II. 私がこの会社に入ってしまった理由
  III. 客観的分析から
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  IV. 私のお客がつぶされるまで
3/4
  V. 細かい嫌な事リスト
4/4
  VI. 週の勤務体系
  VII. 入社前から騙されていた
おまけ
  VIII. 辞めるまでの道のり
  IX. 辞める直前
  X. 余談

II. 私のお客がつぶされるまで

私が新規を上げたのは9月の下旬で、 実際の取引は10月からガソリンを100万円(実際に入れてもらったのは株券で約150万の評価) ほどで始めてもらった。 (私の勤めていた支店では新規は最低でも100万からでないと受け付けず、 300万未満はゴミ新規と呼ばれていた。その環境の中でのこの時期の新規は、 新人の中では標準的であった。)そのお客の名前はここではAさんとしておく。

そして最初の2ヶ月くらいは、 ほとんど私が売買を担当し約30営業日で20回ほどの売買を行ない、 その間驚くべきことにすべての売買で利益を出し、 結果として200万円ほどの利益がついて資金が約350万円になっていた。 これは私のアドバイスが良かったというよりも、 Aさんの運が良かったことのほうが大きかったと思う。 理由はどうであれ、ここまでの結果は大変良かった。

ちなみに通常、先物の会社では新規を取る営業の者と、 お客に売買を勧め注文を受ける者は区別されていて、 新規取りの営業の者は契約後はお客の売買には関与しないものなのだが、 私の場合上司がそのお客さんのことが苦手だったことと私の力を認めていたために、 私に売買注文を受けさせていたのだろう。

2ヶ月間で20回という売買は比較的多いほうで、 会社の平均の約2倍のペースにあたる。 Aさんはもともと資金の少ないお客であったので、手数料稼ぎのために、 上司にどういう売買をさせられるかわからないという恐怖感があった。 そこで、私が自ら自分のお客に対して、平均の2倍のペースで売買をさせることによって、 それ以上のことは求められずお客を守れると思っていた。 しかしその考えは甘かった…。


11月の下旬、原油・ガソリン相場は爆発的な上昇を遂げており、 Aさんも大きな利益をあげていた。このときRSIという指標 (70以上で買われすぎ、30以下で売られすぎで、それぞれ売買のシグナルといわれている) で80を超えていたため私は危険と判断し、 買っていたガソリンの買い玉を処分させ、 RSIが落ち着くまで新たな買いはしばらく控えようと思っていた。

しかし月末が近く、かつ手数料がノルマに達するか達しないかという水準であったこともあり、 何も売買をしていない状態の金(遊び金・手空き)があることは許されず、 『何でもいいから売買させろ』の命令が出た。 ガソリンは大きなトレンドでいえば上昇の傾向があったため、 RSIで80を超えていたからといって売り込ませるのには抵抗があった。 またこのころの私は、ほとんどガソリン専門でやっていたので、 他の銘柄はわからなかった。そこで 『今は勧められる銘柄がないので売買を控えさせてくれ』と言ったところ、 『じゃあ粗糖を買わせる』と言われた

このころの粗糖は世界的に在庫過剰の状態になっており、 価格が下落する見通しが強かったらしく支店の合計では売り越しになっていた。 そのために新しい買い玉を作り店全体としての売り越しの量を減らそうとしていたのだ。 (このように買いと売りの量を同じにすると、支店もしくは会社レベルでの顧客資産の合計が、 相場が万が一の方向に動いた場合にでも増減が無く安定した経営計画が立てられる。 多くの会社で採用している対策であり、会社の運営上は当たり前の考え方である。)

Aさんはすでに粗糖を8枚買っている状態で、 買った時点から値段が下がっていた。 この状態で新たに粗糖を買わせたいとは思えず、 かといってドテン売りをさせるほど粗糖には自信が無かった。 そして粗糖の新たな買いを入れさせない様にするために、 ガソリンの新規買いと下げ止まった感じがあったブロイラーに買いを入れてもらった。

その数日後ガソリンは下げ始めた。 そのときはまだ今までに積み上げた利益が少しずつ減っているだけの状態であったし、 Aさん自身が損切る気が無かったので、損切りを勧めずにそのままにした。 ガソリンは連日下落を続け今までの利益がすべて無くなり、 さらに下落し元金に傷がつき始めた。

ガソリンの下落は速くあっという間に初めての追証がかかり、 その追証を入れてもらう間も無く12月1日に2回目の追証のラインまで 値段は下落した。

このときAさんの持っていた玉の内容は下のとおりである(すべて買い玉)

銘柄 限月 約定日 約定値 枚数 終値 値洗い差金
東京パラジウム 00/10 11/29 1232 5 1235 22500
東京ガソリン 00/05 11/22 25600 6 24240 -816000
東京ガソリン 00/05 11/22 25400 6 24240 -69600
東京粗糖 00/11 11/2 16530 8 14250 -912000
関門ブロイラ 00/06 11/26 621 10 601 -240000
充用証拠金(株券) 158万3400円
現金証拠金(利益金) 191万7010円
合計証拠金 350万0410円
本証拠金 267万0000円
値洗差金 264万1500円
本証拠金50% 133万5000円
必要証拠金 400万5000円

※最初にはじめたときに入れてもらったの株のそのときの評価額が158万で、 それまでの売買の結果でた現金利益が191万円。 その合計が350万でその時点での未決済分の含み損を考慮した合計金額が264万という意味。

私にとっての大きな事件はこの日に生じた。 この日ガソリンはストップ安で始まったので、 午前中は2回分の追証が必要で約184万の不足金請求が出ていた。 そのため、Aさんには「損切る気が無いのであれば、184万を用意してください」と伝えていた。 しかし、午後にガソリンは急上昇を遂げ、ストップ高あたりまで上昇してその日の取引を終えた。 その結果、終値では2回分の追証である184万は必要無く一回分の追証の 不足金の約50万5000円だけが必要な状態になっていた。

しかし、上司からは 『一回分の証拠金だけでいいなどという余計なことを言うな』という命令が出された。 より大きなお金を入れさせることによって、その後でそのお金を使って更に大きな取引をさせるためだ。 そしてAさんにお金の用意ができたかどうか連絡をとったところ、 『借金をしたが170万しか集められなかった』と言われた私は必要な金額(184万円)が集められなかったのなら意味が無いし、 借金までしたと言うことを聞いて 『終値では2回分の追証が必要ではない水準になりましたが、 一度2回分の追証が必要な状態になっていますので請求が出ています。 (と嘘をつき)2回目の追証分を入れなければならないかどうかは上司に相談してみます。』 と言ったところ、

上司に『(本当のことを言いやがって)ふざけるな、 おまえは正義の味方にでもなったつもりか。 客が借金をしようと何をしようとおまえには関係無いだろ、 おまえの金じゃないんだから、借金でもなんでもさせて金を入れさせろ。 言ったこと(客を完全に騙す事)ができないんだったら、もうその客に2度と電話をするな。』と、 ものすごい勢いで怒られた。結局この後上司が電話をし、 Aさんには170万を入金してもらった。 このとき私は会社を辞めることを決意した。

この後、入れてもらった分のお金が追証として必要無くなり手空きになると、 上司は『粗糖が下がります』と言って、持っている8枚の粗糖の買いを処分せずに、 16枚の売りを入れさせると言う私には手数料稼ぎにしか見えないようなことをさせていた。

私が辞めたのは、別にこのことだけが原因と言うわけではない。 上司にこういうことを言われたこともある。 私が客のためを思って仕事をしたいと言ったところ 『客のために仕事をしている会社なんか一つも無い、 そんな会社があったってすぐに潰れるか、大きくなれないかどっちかだ。 おまえは社会を知らなさ過ぎる。 おまえがそういうきれいごとで生きていくのは勝手だが、 そんな考え方じゃあ絶対に偉くはなれないぞ。それだけは覚えとけ。』と。

また、私の客がマイナスになってきて、 予想していた潜在的資金能力を上回るマイナスが生じてきたときに、 上司は大変嬉しそうに『金の切れ目が縁の切れ目じゃな、良く言うじゃろ、ゲームオーバーや』と言っていた。 なぜあんなに嬉しそうだったのか良くわからない。 綺麗事や理想論を言って反抗ばかりする生意気な新入社員の唯一の客が潰れたことが、嬉しかったのだろうか。 少なくとも客が大きな損失を被っているのを見て、 申し訳無いとか何とかしなくてはとかいうことは微塵にも思っていなかっただろう。

うまくは言えないが、そう言う姿勢態度で顧客に接している、 もしくはそうでもしなければやっていけない上司の下で、 あるいはそう言う環境の会社で、仕事を続けるのは大きな苦痛だった

ちなみにこのお客さんには、私が辞める直前に、粗糖を処分し、 当時RSIや出来高等の分析から強い売りのシグナルが出ていたパラジウムを一発逆転を狙って、 10枚売り込んでもらった。その後パラジウムは急上昇を続け、 最終的には大きな含み損(パラジウムだけで1000万円以上?)を抱えることになった…。

マイナスが出始めたのは、私の上司による相場動向を無視した無謀売買が原因ではある。 しかし最後のパラジウムの売りは私の判断でAさんにお願いをした。 ので、Aさんにトドメをさしたのは私である。

また、そもそもそんなに大きな額を負けることができたのは、 最初150万円分の株券のみで始めたのに、200万の利益を出し、 証拠金を増やしてしまった私に責任がある。 「儲かるかもしれない、外務員は信用できるかもしれない」と思い込ませてしまった私に…。 最初から50万や100万の損失を出していればこんなことにはならなかった。

今でも心苦しい。しかし、 心が痛むうちに、すなわち人間性が残っているうちに辞める事ができた点は、 私にとって幸いであったのかもしれない…。

2003年06月29日 加筆


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