玩具は遊ぶためにあるもの。
でも与えられる時期が早すぎれば、子供は上手く遊べない。
たとえば、生まれたばかりの赤子に、玩具の弓を持たせてもあまり意味がない。
では、あの棒は?
あのあと姫を宥めるのは本当に大変だった。思い出すと未だに冷や汗が吹き出る――自業自得だ。
事情が飲みこめていない姫に対して、僕はいきなりあの棒を振るい、反応を愉しんでいたのだから。
悦んでもらいたいなどと思いながら、いつのまにか、くだらない嫉妬に突き動かされていたのだから。
後日、あの玩具が紛れこんだ経緯が判明した。
悪意あってのことではなく、本当に単なる手違い。そしてあれはどうやら試作品で、誰かのお古というわけでもないらしい。
布にくるまれ、衣装棚の奥で眠っているあの玩具。
果たしてもう一度あれを使う日はくるのだろうか。
姫の足音が近づいてくる。そろそろ寝る時間だ。静かに棚を閉めた。
炎が生み出す影が木目の上で揺れる。それはまるで、未熟な僕を嘲笑っているかのようだった。
―end―