「箱すらみてないんですが、良作でしょう」
いきなりの勝利宣言から始まったこの企画。
私は、ギラギラしたパッケージで「買ってー!」という雰囲気ではなく、ちょっと目を離すと消え去ってしまいそうな儚い雰囲気が漂っているものに良作のオーラを感じる場合が多いように思います。
水月、もしも明日が晴れならば、そして明日の世界より――などは、パッケージ(表か裏)からそんな消え去りそうなオーラが漂っている好例です。
今回のゲームは事前に箱を見れなかったので、公式ページから判断しました。アクセスしてみて下さい。
ヒロインが星を背景にして足が消えていたりして「生きているのか死んでいるのか分からない」不思議な雰囲気があるでしょう?
地震や津波の設定(東北大震災の前から作られていたゲームなので関係はないはず)からも、何かありそうな臭いがしますよね。
公式のストーリー解説では普通のラブコメを装っていますが、多分そうではなくて大きな「仕掛け」が施されているような気がします。
そんな期待を抱かせる空気がこのゲームにはあるのです。
インストールしたところ、5.01GBありました。ディスクレス不可。
というか姉さん、眼鏡着用ですか……。
眼鏡っ子属性の人には申し訳ないが私は眼鏡属性ないんですよ。がっかり……
と思ったら、シチュエーションによって変わるのね。学校では眼鏡、家では眼鏡なしですか。どっちもなしで良いのに。
まあ、絵がハイレベルなので、眼鏡かけててもそこそこ美人に見えるのが救いですね。
それと主人公がおかしい。面白いんじゃなくて変という意味で。
頭の悪いトレーニング好きな武道家学生で皆から敬遠されているという微妙な設定で、いつもムスッとしているくせに、頭の中では一日中「姉さん可愛い! 姉さん綺麗!」とか連呼しているというムッツリぶり。
皆から抱かれているイメージと頭の中が余りに乖離していて、笑えるといえば笑えますが、いまいちキャラが掴みにくいです。
まあ、これで武道家ステータスを外したら単なる重度のシスコン患者ですが。
まだまだ「触り」なのでもう少し進めてみましょう。
姉さん一筋ゲーだと思ったらいきなり浮気してるじゃないかっ!?
過程が過程だけに分からんでもないですが、意外と主人公あっさりしてますね。
まあ、ビビ可愛いから許す。……そういやビビってキャラがFFにいたなぁ、どうでもいいけど。
ここまで進めてきて気になったこと。
テキストのレベルが低すぎです。
姉さんが美人なのは分かるけど、それをテキストで
「今日も姉さんは美人だ! 綺麗な服を着ていて美しさが際立っている! 見ていて胸がドキドキするほど素敵だ!」
とか書くのはどうかと思います。分かりきっていることをそのまま字にして説明されると、読んでいてうんざりしてきますよ。
全部文章にするなら、私ならこんな感じにします。
「16世紀、イングランド国王ヘンリー8世は絶世の美女アン・ブーリンと結婚するために、ローマ教皇と対立し、最後にはイギリス国教会を作り上げてしまった。今の俺になら、その気持ちが理解できる。」
かなりうざい感じですが、「可愛い! 美人!」と連呼されるよりはマシでしょう。
一方、シチュエーション作りは素晴らしいです。特に「星空」の使い方。
ロマンチックな「星空の下」というステージを逆手にとって、敢えてそこでマイナスの要素を持ち出すというのが面白いですよね。
例えば、地震や津波の話をしてみたり、男を振ってみたり……。
こんな話を日常の中でしたら、暗くドヨ〜ンとした雰囲気になってしまうでしょう。雨の日だったりするともう目も当てられません。
しかし、舞台が星空の下になることで、不思議なことに「甘酸っぱい思い出」に変化してしまうのです。
特に告白の後、船の上で姉さんと背中合わせに二人で語り合うところはしんみりしていて良かったです。
こんなシチュエーションの時は、不思議とテキストもグダグダではないのが救い。
もしかして、わざとやってるのかなあ?
テキストがとんでもなく下手って書きましたが、美々と付き合い始めてからマトモですね。
ライターが6人もいるから途中で変わったのかなあ。
まだまだ登場人物が揃っていないんですが、ヒロインファーストインプレッションでもいっときますか。
◆桜塚名月……通称姉さん。謂わずと知れた正ヒロイン
義理の姉。職業は保健室の先生。Pure×Cureも保健室が舞台だったし、スタッフが保健室好きなのでしょうか。
容姿端麗家事万能性格良好と非の打ち所のない姉とはこういうことをいうのでしょう。
こんな姉がいたらそりゃ惚れるわな。
私は姉がいないので実のところはよく分かりませんが、優しいお姉さんに甘えたい!ってところだけは同意しておきます。
ただのダメ人間じゃないかって? ただのダメ人間です。すみません。
どうにも気になるのは主人公が子どもの頃、引き取られたという認識がないこと。
施設にいたときのことを覚えているのに、義理の家族だってことを知らなかったのはおかしくないかなあ。
あと、家族の割には過去の謎がかなり多い人です。普通のヒロインと思わせて何かありそう。
◆加々見美々……ちっちゃくて可愛い健気な後輩
どっかで聞いた声だと思っていたのですが「わふー!」と同じ声ですよね?
見た目は可愛くて良いんですが「犯罪じゃないか?」と思ってしまった辺り、私(プレイヤー)もそれなりの年齢になったのかなぁ……と。
基本的に、主人公一筋で健気で良い子ですが、姉さん一本道ゲームなので、この子には過酷な運命が待っていそうです。
この子とのグッドエンドも見てみたいのですが、用意されているのかどうか?
◆春日森明乃……ツインテールの非攻略キャラ
えー、友人の彼女でーす。攻略出来ませーんorz
金髪ツインテールの元気っ子な後輩です。が、個別ルートはないでしょう。
以上。
ここまで選択肢がまったくないのがちょっと気になります。話は丁寧なんですけどね。
あと、タイムマシンとか相対性理論の話が多いのも気になります。過去ルートってもしかしてこれを使うの?
だとすると、かなり楽しみな展開になりそう。
さ、最初の選択肢がいきなり究極の選択とは……っ!!
………………
………………
投了します。
うん、やっぱり私は基本的に姉属性じゃないんですよね。
余裕の態度で主人公を振った姉さんより、健気な後輩の方がしっくり来る気がします。
この幼さはちょっと犯罪入ってるけど、実際は主人公より1つ下なだけだし無問題ですよね。
……って
なんでやねーんっ!?
せっかく美々を選んだのに、泣きたいのはこっちだー!
というか、また選択肢かよぉおおっ!?
……う、うあ、ううぁああああぁっ!!!!
……う、うあ、ううぁああああぁっ!!!!とか叫びましたが、大事に至らず美々エンド。
何だかおまけみたいなあっさりとした終わり方でした。というか、実際におまけ的なヒロインなんでしょう(^^;
エピローグで物凄く気になる言葉があったんですけど、これは姉さんルートに行けば発生するわけですね。
よぉし、何だかよく分からないけれど、オラわくわくしてきたぞぉおおおっ。
一周してみて、意外とシリアスというのが第一感想です。
「姉と弟」というタブーをしっかり意識して、一線を越えたいけど越えられないという様子を現実的に描いています。
「トリック」に期待していただけに、正攻法で攻めてくるとはちょっと予想外でしたが、今のところ丁寧で印象は良好です。
この手の近親物は加奈やみずいろが代表作で、さくらむすびも秀逸な部類ですが、本作も頑張れば仲間入り出来る可能性がありますね。
序盤のテキストにはハラハラさせられましたが、後半持ち直しましたので、二人の葛藤をどのように描くのか期待出来そうです。
テキスト以外では、エフェクトにこだわりが窺えます。
目パチ口パクはないんですが、遠近によって立ち絵の位置が変わったり、ジャンプしてみたり揺れてみたり。
背景の波がアニメーションしたり、花火が打ちあがったり。
ただ、その度にテキストの表示が鈍くなるのは、私のマシンが悪いんでしょうか?(汗)
一応必要スペックは満たしているんだけどなー。まあ、10年選手だからそろそろ追いつけなくなってきているのかも。
さて、姉さんルート行きますか。
うーむ、でも美々のことを考えると心が痛むなぁ……。
雪さん「え、フリーズですか? はい、温かい紅茶が入りましたよ」 YAMA「ありがとう。……いつも雪さんの入れてくれる紅茶は美味しいなあ」 雪さん「うふふ。ありがとうございます。パソコン、普通に動いてますよ?」 YAMA「ああ、マシンが重いんじゃなくて、話が重いんだ」 雪さん「え、お姉さんにひたすら甘え続けるゲームではないんですか?」 YAMA「フッ、そんな単純っぽいゲームなら今プレイしてないぜ」 雪さん「折角の日曜日にエロゲーをやっていることをそんなに誇られましても」 YAMA「…………」 雪さん「あ、マシンではなくてYAMAさんがフリーズしてしまいましたので、この辺りで失礼致します」 |
えぇええええええっ、もうバッドエンドーッ?
加奈とかメモオフのみなもみたいに引っ張って最後に……という展開かと思いきや物凄くあっさり終わってしまったのですが。
……と思ったら第2章が出てきてますね。つまり、これは単なる「布石」ってことですね?
これは予想していた通りの「超展開」が待っているパターンなんでしょうか!?
本来しんみりする場面なんですけど、次が気になって逆にワクワクしている自分がいます(^^;
この展開を先読みする業の深さはなんとかしたいものです。
ちなみに先程「物凄くあっさり」と書きましたが、第1章全体はそれなりの長さがありました。
例えるならば「君が望む永遠」の遙が事故るまでぐらいはあったんじゃないかなーと。
一部テキストのレベルの低さはありましたが、スピード感のある展開で、今のところシナリオ構成は良いと思います。
ひたすら日常でベタベタするだけではなく、要所要所でバトルイベントを用意したり恋敵を出したりと刺激があるので飽きません。
第2章にも期待!
※予想を書いておいたんですが、考えてみると事故が99年で地震が96年でした。ゴチャゴチャになっていて記述がおかしくなっていたので消します。
沼淵がイクとき……それは俺もイクとき……!
沼淵ってやっぱり変態だったんですね。ああいうキャラ、好きですけど(^^;
ということで'99年です。そうです、この頃はまだ携帯電話は普及してませんでした。
この頃姉さんが17歳とすれば、現在では30歳ですか。結構リアリティーのある年齢ですね(汗)
でも30歳まで臨時採用だったとすれば大卒から8年近くか……。結構苦労してきてるんですね……。
うーん、何だか別の意味でしんみりしてきました。これはゲームなんだから現実と比べるのはやめますか。
で、学園生活を送っているわけですが、ちょっと前のラブコメ見ているみたいですね。
人の恋を後押ししてくれる友人がいたり、ライバルが現れてヒロインを掻っ攫っていったり。
ジャンプでやってた桂正和の電影少女とかI'sとか、あの辺のノリですよ。
テンポ良くこうしたイベントを続けて、合間にHシーンを挟むのが、いかにも週刊漫画的。王道ですが飽きさせない工夫を感じます。
そこに過去の自分が登場して、両親からちょっとしたエピソードを聞けたりするのがなかなか良いですね。
単なる学園物になってしまいますが、このまま未来に帰らないって手もありなのでは……。
ところで、凪博士とかいうのが出てきたのはいいんですが、加々美教授の存在意義って何なんでしょうか(汗)
てっきり加々美教授のタイムマシンを使うと思ったんですが……。
この博士、戸籍上しか存在していない子どもがいたりとか、色々謎が多い存在です。
こういう怪しいサブキャラがいると盛り上がりますね。え、盛り上がらない?
第2章クリアー。その勢いで第3章に突入しています。
ははあ……なるほど、分かってきました。
そういうことですか、博士が教授で、教授は博士で……。
ただ、分からないのは、第2章の主人公は一体どこへ行ってしまったのかということ。
まったく別の主人公を敢えてやらせているのは、お兄ちゃんの正体を見せるためってことでしょうか。
ということは、この後第4章があると見た方が良さそうですね。
何にせよ、この第3章で大部分の謎が解けるってことですね。
明日というか今日会社なのに、止められない……。まずいな、これは。
第3章に入ってから、大変盛り上がってまいりました。
一部しぼんじゃった人もいますが、それはまた別の問題。
いや……でもこれは明らかにヤヴァイのでは。だって●学生ですよ●学生!
前とか後ろとかそういう問題じゃないでしょう!
今、博士が熱い……!
このサブキャラ、予想以上の凄まじい執念と男の生き様を見せる重要人物でした。
博士がいるおかげでinfinityシリーズやSteins;Gateに比べると派手さには欠けますが、サイエンス感を味あわせてくれます。
そして主人公が襲い来る脅威に立ち向かいながら、次々に現れる敵をぶっ飛ばしていく
週刊少年漫画的展開も熱い!
ヒロインが悪党に捕まってピンチに陥り、颯爽と主人公が登場するというお約束なんですが、こういうのは何度見ても爽快であります。
多分もうすぐ終わりだと思いますが、良作判定を出せるんじゃないかと。
第3章、エピローグクリアー。コンプリートして終了です。
最後は音々や名月にハラハラさせられましたが、無事エンディングを迎えることが出来ました。
◆総括
結論から入りますがアステリズムは良作でした。
プレイ前に「生きているのか死んでいるのか分からない」と書きましたが、その感覚は概ね当たりました。
ただ、過去の話がこのような形で描かれるとは思っていませんでした。
みずいろのように過去のエピソードが現在に影響を及ぼしたり、若しくは過去に大きな秘密が隠されているのかと思っていたのです。
例えば、地震の日に姉は死んでいたが、博士によって何らかの形で今も生かされている、とか。
これが始め予想していた「仕掛け」だったのですが、実際はもう少しSF的な内容になっていました。
もちろん、予想と違っていても楽しめたから良いのですけどね。
話は3章から成る構成で、1章は姉と弟が恋に落ちる過程を丹念に追っていく内容。
姉弟が恋人になって良いのかという葛藤が良く描けていました。
2章・3章は「姉を救う」ために行動を起こすSF話になっています。
SFとしてはオーソドックスですが、命を賭して姉を救おうとする主人公の姿は素直に共感を呼べるものでした。
オーソドックス故に展開の先読みが容易ですが、スピード感があり緊迫感のあるシーンも随所にあるので飽きません。
ただ、残念だったのは伏線を幾つか回収出来ていないことです。
九厘の過去や主人公の本当の親については、思わせぶりな描写があるにもかかわらず結局よく分かりませんでした。
博士を始めとするサブキャラが全体的に良い味を出しているだけに、勿体無いですね〜。
これと第1章のテキストレベルの低さが減点要因になり、評価が良作止まりになってしまいました。
シナリオ構成が良いので、テキストがもっと良ければ超良作になる可能性があっただけに惜しい!
また、音楽がハイレベルで、戦闘シーンや感動シーンの印象を強める役割を果たしていました。
ゲーム性はほぼゼロに等しく一本道なので、名月を見て合わない人にはお勧め出来ませんが、そうでなければプレイして良いと思います。
普通のラブコメで終わる内容ではないので、お勧めです。