特定調停は、民事再生と同様、2000年2月にスタートした、比較的新しい制度です。
「特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律」に、その内容が記載されています。
基本的には、任意整理と同じく、過去に遡った引き直し計算を行い、借金を減額する救済制度ですが、任意整理との大きな違いは、裁判所を介して行われる点です。
裁判所が、債務者と債権者の間に入って、弁済計画の作成をしてくれるので、任意整理のように、弁護士や司法書士に依頼しなくても、個人での手続きが可能です。
裁判所の仲介なら安心...と、安易に考えてしまってもいけません。
調停はあくまで調停、両者の協議の場でしかないので、債務者本人が、債権者と直接話し合いを行う必要があります。そのため、それなりの労力や時間を覚悟したほうが良いでしょう。
また、費用はかかりますが、弁護士や司法書士に依頼することも可能です。その場合、個人が行うよりも有利に話し合いが進む可能性があります。(かならずしも絶対ではありませんが...)
任意整理との違いを明確に把握し、どちらが自分に適しているかよく考えて下さい。
特定調停を行うには、引き直し計算を行った後の借金を、原則として、3年程度で返済する必要があります。
そのため、継続的に安定した収入のある人向けです。
特定調停のメリットを整理します。
利息制限法を超えた利息を支払っている場合、引き直し計算が行われます。
引き直し計算は、過去、借入が発生した当初に遡って行われ、将来における利息も無くなるので、原則的に、借金の総額は減額されます。
ただし、利息制限法内の利息であった場合は、過去の利息を減らすことはできません。ですが、将来における利息はなくなりますので、その分の元本は減額されます
過払い金とは、利息制限法を上回るお金を支払っていた場合に発生する、払い過ぎてしまった超過利息のことです。
この過払い金は、返還の申立てができます。
20%以上の利息で長期間の返済を行っていた場合、過払い金が発生している可能性が高いです。場合によっては、元本がなくなり、さらに超過分のお金が戻ってくるようなケースもあります。
任意整理では、手続きの一環として行われますが、特定調停の場合は、別途申立てを行う必要があります。
特定調停のデメリットを整理します。
特定調停は、申立書の他に、財産状況を示す明細書や、権利者一覧など、いろいろな書類が必要になります。
個人で手続きを行う場合、それらをすべて自力で集める必要があり、また裁判所へも何度も足を運ばなければなりません。
そして、実際に書類を集めて、申立てを行うまでは取立行為も続きます。
ブラックリストに載るということは、つまり、信用情報機関に、「自己破産をした」という事故情報が登録されるということです。
この間5〜7年は、新規の借入や、クレジットカードの作成などが行えなくなります。
ですが、定められた期間が過ぎ、事故情報が消えれば、ふたたび借入が行えるようになります。
調停は、債務者と債権者の話し合いを行い、借金を減額してもらう場ですが、この際、債権者がYESと言わなければ、特定調停の手続きは行われません。
その場合、「債務額確定訴訟」や「債務不存在確認訴訟」など、別の債務整理を検討する必要があります。
個人で行う場合は、こうした手続きを全て自分でやらなければいけないので、債権者が和解になかなか同意しない場合も含めて、長期戦になることを覚悟しておいたほうが良いです。
債務整理を実行ための訴訟には、いくつかの方法があります。
利息制限法による引き直し計算を行った後に、「残高が減ったので、減った金額で借金の残高を決めましょう」という訴訟のことを指します。債務者が計算した残高に確定してもらうだけなので、根本的な債務整理には至りません。
確定後の残高を一括で払って終わりにしたい(払える能力がある)ひとには有効ですが、そうでない場合、特定調停が良いでしょう。
利息制限法による引き直し計算を行った後に、「残高が0円に近い金額だったので、借金の残高が無くなったことを認めさせよう」という訴訟のことを指します。
たとえば、引き直し計算後の債務総額が2万円であったり、逆に2万円の過払いであったりした場合、この金額に対して、債務不存在確認訴訟を行うことで、借金をナシにしてもらうことが可能になります。
いわゆる「過払い金」返還請求訴訟のことです。
利息制限法による引き直し計算によって、余分に払い過ぎた利息が発生していることがあります。この、払い過ぎた利息について、貸金業者に返還を求める訴訟のことを指します。