ハリポタ著作権問題とは

ハリポタ著作権問題とは

 2001年の冬から2002年の春にかけて、ハリー・ポッターの各権利者は「ファン活動」に好意的でなく、このジャンルでの活動は危険だというウワサが流れました。
 閉鎖サイトが相次ぎ、オンリーイベントも幾つかは見送られます。2001年終りの冬コミでは撤退宣言をするサークルも出、オンオフ両方で不安感が膨らみました。具体的な経緯については項を改めてまとめたいと思いますが、これらの一連の流れを私は「ハリポタ著作権問題」あるいは「ハリポタ著作権騒動」と呼んでいます。「著作権問題」であったことは事実なのですが、ウワサばかりが先行する騒動的側面もありましたので、私のなかでも表現が一定されていません。

どうして"ハリポタ"だったのか

 「ファン活動」が行われているのは「ハリー・ポッター」だけではありません。なのになぜ、このジャンルにおいて著作権騒動が起こったのでしょうか。
 日本における「ファン活動」の多くは創作を伴い、1歩間違えれば海賊版と変わらないものになります。そうでなくても、解釈を創作という形で表現されることに抵抗を覚える権利者もいるでしょう。ことに「同人活動」は売買を伴い、本やグッズなどが行き交います。認めるにしろ認めないにしろ、日本の出版社はまず間違いなくこの存在を知っています。否定的であるにしても、同人出身の作家などとの係わりもあることから、とりあえずの理解をしめす側面もあるかもしれません。
 ところが、「ハリー・ポッター」は海外児童文学であり、同人への理解の低さからより強い反撥を受けたり、一足飛びに海賊版とみなされる危険性があります。権利獲得の考え方の差異もあるかもしれません。海外では、自分の主張を通すため裁判を起こすことは、日本より簡単にあり得ます。また、邦訳を出版している静山社は以前に同人と係わりがあるような作品を出版していません。そのため、反撥を受ける危険性が他の出版社に比べて高いと感じます。先に上げた「同人出身の作家」の付き合いもおそらくない(か極めて少ない)ため、もし同人誌に対して否定的であるならば、思いきった行動を取ることも考えられるのではないでしょうか。
 「同人活動」を行っていないファンサイトであっても、自作のイラストや小説を展示していないところはかなり少数です。公開している以上、売買を行わないファンサイトであっても著作権侵害の可能性は認識してください。(まあ、認識程度でいいだろうとも思ってますけれども)

どのジャンルでも起こり得ること

 これは私が勝手に思ってることですが、「ハリポタ著作権問題」が表面化するには、このネットの普及と同人界の一般化が前提条件として不可欠でした。予想できた問題であり、それにハリー・ポッタージャンルが丁度合致してしまったのも騒動の一因であったのではないでしょうか。それについて書きます。
 かつて同人誌というものは即売会でしか買えなかったものだったようです。なんで「ようです」なのかといいますと、私が知った頃はもうアンソロが本屋で買えたからです。(1992年ごろだったかと)
 おそらくはその頃から、「マンガ好き」や「同人誌」は珍しいものではなくなり、「知っている人」が増えたことで入手が比較的容易になりました。アニメの普及により、「マンガ好き」の全体数が増えたことや、印刷技術の進歩により同人誌の作成が手軽になってきたこともあったのでしょう。
 ところで同人誌の現在の主流は既成作品のパロディであり、なかには性を取り扱った作品も多くあります。それらを予備知識のない相手に軽々しく見せた場合、混乱や反撥を引き起こすことがあります。そもそも「既成作品のパロディ」である時点で反撥を受けたり海賊版と間違えられる危険性はあり、「同人誌」に対する理解のある人以外に読まれることは避けられるべきでした。
 同人誌が限られた場所でしか手に入らなかった頃は、その前提は比較的守られていました。ある程度の知識がなければ、同人誌は手に入らなかったのです。けれどその前提は今や崩れ、「一般禁」(「同人誌を知らない方の目に触れるような行為は止めてください」という意味)と書かれる必要さえ出てきます。逆にいえばこれを書かなくてはいけない時点で、すでにかつての「一般」が同人誌を手にする可能性を認めているとも言えます。
 そしてインターネットの普及です。友達にノートを見せるような気軽さで、自分の作品を世界に向けて配信できるようになりました。「同人誌」でしか見れなかった創作が、自宅で簡単に閲覧できる時代です。同人誌の紹介もあり、懇切丁寧に通販方法を書いてあるサイトも珍しくありません。売る側も買う側に「慣れていない人」がいることを知っているのです。一般人と同人の垣根はとても低く曖昧になっています。
 また、海外における日本のファンアート(イラスト)の転載が増え、ネットオークションにより同人誌そのものも流出しています。オークションで買った同人誌を、ネットで公開しているサイトも探せば見つかります。
 長々と書きましたが、「どうして"ハリポタ"だったのか」のなかで上げている、海賊版と違えられたり、前提知識の不足による反撥を呼ぶ危険性は、今の同人全体にあるといえます。低年齢層が増えたことも問題の顕在化を助けているのではないしょうか。1999年にはポケモン事件も起こっています。これは、危険度の違いや温度差があるとはいえ、どのジャンルでも誰にでも起こり得ることだと思います。

2019年7月29日追記
上記記事を書いてから16年が経ちます。一般禁という言葉はすっかり廃れ、pixivやtwitterを通じて同人界はますます広く薄く世界に広がっています。同人抜けを10年ほどしていたので隔世の感がありました。世界中の人が同人誌や二次創作にそれなりに理解があるのでは、みたいな気さえします。
だからもう今更なのかもしれないです。さらに言うならディズニーについて根拠も調べず怖いってイメージを鵜呑みにして撒き散らしていた私が言うのもなんですけど、やっぱりそれでも他人の著作物に関係する活動なのだという意識は持って欲しいと思い、もとの文章はいじらず追記という形を取りました。

当時の様子

 基本的に「注意して欲しいけど萎縮しないでね…」という意図で書いています。上記の長文読んだ時点で多分おそらくこの騒動をご存知の方だとは思うんですが、知らなくて結局大した事ないんじゃ? と思ってる方。
是非当時の2ちゃんねるの該当スレッドを読んでみて下さい。
(おおまかな流れは「事の経緯」にまとめています)
どうしてこんなサイトを作るほど気に病んだのかは理解していただけるかと思います。(長いんで2001/12/10を目指すかEgY8l5Xwで検索をお奨め)慣れないとかなり戸惑われるかと思いますが、異世界だと思って深く考えないで下さい。色んな人が色んなこと書いてるだけですが、読むとまず間違いなくへこみます。警告を発するという意味では必要な騒動だったのかもしれませんが、正直かなり痛かったです…。

2ちゃんねる過去ログ倉庫より
携帯からは見られないようです。すいません。

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