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04. |
少年は佑の瞳を覗き込み、ズボンの上から佑のペニスを撫でまわした。指の動きがさっきよりもたどたどしく、少年が大きな興奮を抑えているのがわかる。
いきなりこんな事になって、佑はどうしていいのかわからなかった。ナイフは今どこにあるんだろう? 声を出したら刺されるのだろうか? 少年の言葉や態度に見え隠れしている何かが佑の気持ちを淋しくさせようとして、それに反抗する気持ちは充分にあるのに、なぜか反応に戸惑っている。
身体を捩って少年の指から逃れようとしても、満員電車の中では身動きが取れない。指先はペニスの先端をくすぐるように弄んだり、形状や太さを確かめるように蠢いている。
「や……」
少しずつ勃っていく恥ずかしさに佑は思わず声を出したが、言葉は最後まで言えなかった。少年は穏やかな微笑を返しながら、佑の赤くなった顔を嬉しそうに見つめているだけだ。
「や……め…ろ…」
声を震わせながらもう一度言うと、
「して欲しそうな顔してるけどな?」と少年が目を細めて、悪びれもせずに堂々と返した。「大きくなってきてるし」
その言葉に、佑は耳まで赤くした。少年には何を言っても無駄のようで、素直にやめてくれそうにもない。少年の楽しげな顔を見ていればわかる。
佑がうつむこうとすると、
「顔を見せろよ」と少年が、小さいけれども力の篭った声で命令した。
その瞬間に佑は、車内にいるのはずなのに突然自分と少年の二人の周りの空気が濃密になっていくような奇妙な感覚を味わった。枝のように伸びて外界を掴んでいた知覚が急に縮んでしまい、自分と少年を認識するのがせいいっぱいのように感じる。そこに留まるのは良くないことだとわかっているのに、自分は逃げ出そうともせずに少年の指先に弄ばれている。真っ白な雪が降り積もった庭に自分は留まっているのだと訳のわからないことを思い、なぜそんなことを思ったのかさえ、鈍り始めた頭では明確に考えられない。
少年の指は動きを変えて、佑の股間から臍へと這い上がっていく。それから身体に当たっている手が静かに下へとおりていき、ファスナーを下げられているのだと佑は感じた。なぜもっと抵抗しないのだろう? このままだと引き返せなくなる。そんな恐怖からあわてて顔を上げて口を開いたけれど、
「しっ…」と少年に言われて、声は喉の奥で固まってしまい、それきり出てこなくなった。
もぞもぞと動く指がファスナーの開口部を分け入り、ボクサーブリーフの中へと入って佑のペニスを掴んだ。
「…ぁっ…」
佑は呼吸のような音を喉から漏らした。少年の指先は温かく、ズボンの外へとペニスを掴み出していく。ペニスの先端が外気に触れ、少年の掌に包まれてしごかれる。
「…ぅ……」
佑は唇を噛み締めた。力が抜けて、持っていた鞄が指先から離れていく。電車の振動に合わせて車両の壁と佑の身体の間にある鞄は少しずつ床へと滑り落ちていく。
「気持ちイイんだろ?」
薄笑いを浮かべた少年が訊いた。
佑は屈辱と快感が入り混じった目で少年の顔を見つめていることに気づき、羞恥心から身体を捩って少年の手から逃げようとした。電車が大きく揺れた時に腰を引いてみたが、それはより強くしごかれただけだった。
「あっ……」
思わず大きな声が出そうになって、あわてて唇を噛む。それでも刺激を受け続けて息が荒くなる。佑は我慢しながら、周囲に聞こえない溜息を漏らした。
「先が濡れてきた…」
耳元で少年が嬉しそうに報告する。
恥ずかしさに貫かれた佑は、両手を何とか動かして自分のものを隠そうとした。それをさりげなく少年が身体を押し付けてやめさせる。
「動くなよ、やめてほしくないだろ?」
そう言いながら、指はずっと蠢いている。身体の奥から発熱したような感じがして、佑は唇を開いてその熱を吐き出した。
(こんなのって、狡い……)
目元にも熱を感じながら、佑はそう思った。動けず声も上げられない自分は少年に弄ばれている。
同性の少年の指は、どういう触り方をすれば佑が感じるのかちゃんと理解していた。どうすればもっと感じるのかも判断が確かで、佑の僅かな反応を見逃さない触り方だった。
「俺の指…おまえので、もうヌルヌルになってる…、わかるか?」
「…………」
何か言い返したいけれど、佑の頭の中で言葉は熱に融けてしまったように見つからない。
「足、もう少し開け…」
佑の両足の間に脚を入れた少年が、外側へ押した。力の抜けそうな脚は簡単に開かされて、股が無防備に晒される。
怯えた目で見上げる佑に、少年は優しく笑いかけた。不意に場違いな笑顔を見せられて佑がひるんでいる隙に、指先はペニスの根元を撫でるとボクサーブリーフの中へと入ってきた。
「…やっ……」
驚いた佑の顔に、少年が顔を近づける。
「もっと気持ちイイことしてやる」
互いの顔が間近にある。身長差がある少年はより身体を密着させ、股を擦りながら後ろへと移動した指が佑の×××を探り当てると、指先についている液をその周りに塗りつけた。
「……!」
佑は息を飲んで、少年を睨んだ。
「ここ、こうやって触られるのは初めてか?」
「………」
黙って睨みながら、瞳が潤んでいく。
「へえー…、そうなんだ。俺が初めてなのか」
恥ずかしさに震え始めた佑が答えなくても少年はわかってしまったらしく、嬉しそうに口の端を上げて笑った。
「×××もヌルヌルになったな…」
場違いな優しい声が、佑から言葉を取り上げ、いっそう辱しめる。
「…いいモン入れてやる」
その囁きが終わらないうちに、佑の×××に奇妙な振動が伝わった。
「あっ……!?」
佑は息を吸い込み、窮屈な空間の中でわずかに背中をのけぞらせた。振動は、少年が手の中に持っていたワイヤレス型のローターのせいだった。長さ5センチほどのローターは直径が1.5センチぐらいの太さで、佑の×××にあてがった先端は丸く挿入しやすい形になっている。
「イイだろコレ…、感じるだろう?」
どうしても答えが聞きたいのか、粘りつくような声だ。
「は…ぁ…」
抵抗も身動きもできない佑は奇妙な振動から逃げようとして腰を動かし、やめて欲しいと懇願するように視線で縋った。
「駄目だ」
見透かしたように、少年があっさりと否定する。
「おまえの中に入れる」
(どうして……?)
佑の瞳が訊き返す。
初めて体験する刺激に身体の芯をぐにゃりと曲げられて、全ての力が抜けてしまいそうになる。冷たい車両の壁と少年の身体に挟まれ、下から股間に手をあてがわれて佑はなんとか立っていられる。
「コレが入っていくとき、どんな顔するのか見せろ…」
興奮している少年が囁く。
佑は呆然としてしまった。顔なんて見たいのかと頭の隅で思っても、刺激が抗議の言葉を食い尽くしてしまう。少年の目は食い入るように佑を見つめている。
指に力を込めた少年が、ローターの先を×××に押し当てた。
「や……ぁ……」
目を見開いたまま、佑の喉から声が搾り出た。
少年は無慈悲にローターを押し続け、佑が力をふりしぼって拒否しても×××の中へと無理遣り沈めていった。
「あぁ…っ…、ぁっ……ぁっ……」
切れ切れになった佑の声が開いた唇から漏れる。ローターに貫かれていく感覚よりも恥ずかしさと少しの恐怖を感じていた。切なげに顔を歪めて、逃げ場も無く少年を見つめながら、×××は完全にローターを飲み込んでしまった。
「ひっ…あぁっ…!?」
その最後の瞬間に佑は身震いして、立ちながら腰を浮かせた。
身体の中に埋まるローターの耐えがたい震動が佑の身体を弄び、少年の指先が×××を揉みほぐすように執拗に蠢くと、佑の唇から荒い息が漏れた。
顔を輝かせながら佑の表情を見ていた少年は、もう片方の手でシャツの上から佑の腹や胸を撫でていく。その手がブレザーの内ポケットにすべり込み、生徒手帳を素早く抜き取った。
(返せ…)
佑が潤んだ目で訴えても、少年はただ薄笑いを浮かべただけで、自分のジーンズの後ろのポケットにそれをねじ込んだ。
ブレザーの下から少年の手が入ってくる。シャツをまくられ、指は素肌の上をゆっくりと滑る。佑は自分から身体を密着させて少年の這い上がる指の動きを止めようとしたけれど、電車が揺れるたびに身体はわずかに離れ、指は乳首へと近づいて突起を触り始めた。
「う…ぅ……」
佑にはもう少年の顔を睨みつける力が残っていなかった。×××に埋まったローターの振動と乳首への刺激を感じながら、その感覚に飲み込まれないように抵抗するのが精一杯だった。
佑の乳首が少しずつ硬くなって、小さな突起になる。
「いやらしい乳首だな」と少年が満足そうに言い、指先で乳首を左右から弾く。
「嫌っ……!」
真っ赤になった顔を伏せようとした佑は、いきなり乳首をつねられた。
「ひっ…」
驚いた佑が少年を見上げる。
「顔は上げてろ」
「………」
それでも佑がうつむこうとすると、少年は乳首を引っ張りながら捻った。
「っ……」
短く小さな悲鳴が漏れて、佑の目に涙が滲む。
「逆らうな」と少年が冷たく言い放ち、短い沈黙のあと、優しい口調で「…わかったか?」と囁いた。
×××の皺を広げるように押し付けていた指をペニスの根元へと這わせ、佑のボクサーブリーフの中から手を抜くと、外に出しておいたままのペニスを掴んだ。
少年は目を見開いた。
「こんなに勃ってるのかよ」
嘲笑というよりも嬉しがっている口調で笑顔を見せ、佑のペニスをしごき始める。ローターと少年の手が×××とペニスで蠢いて、頑なな佑の抵抗を溶かそうとする。
このままどうなってしまうのか佑は怖くなって、わずかに顔を横に振って、やめてほしいと懇願した。それは聞き入れられず、少年の手は更に激しく動き始める。
顔を上げたままで、「あぁ…」と佑は目を潤ませた。上気した頬が恥辱と快楽に染まり、開いた唇からは周囲を気にした小さな喘ぎ声が漏れ続けている。両脚は微かに震えていた。
少年が顔を近づけてきて、耳朶に熱い息がかかる。
「俺の手の中に出せ。イク時の顔、見せろよ」
電車が減速し、次はO駅ですとアナウンスが聞こえる。佑が降りる駅だ。
「降ろさない」
少年が佑の耳に囁いた。電車が停車し、ドアの開く音がして、更にたくさんの人が乗り込んできた。人が動く気配がしても佑には無関係のように感じられた。埋め込まれたローターもペニスをしごく少年の手も、乳首をいじる指先もずっと動き続けて、周囲の人間は誰も気づいてくれない。そうしているうちにドアは閉まり、電車は発進し、揺れながら加速していく。降りるべき駅からだんだん遠ざかっていくのを佑はどうしようもない思いでいっぱいになりながら、されるがままになっていた。
焦らすようにペニスをしごいていた少年が唐突に訊いた。
「もうイきたいんだろ?」
佑の答えを待たずに少年はペニスを握っている手に力を込めて動きを早めた。佑の身体の中に甘い痺れが広がっていく。
「イきたいよな?」
少年は少しきつい調子で佑の答えを急かした。佑は目を閉じて弱々しく首を横に振った。
「無理すんなよ」
その言葉を無視して佑は震える唇を噛んだ。電車が大きく揺れ、思いがけず少年の首筋に顔をくっつける形になってしまった時、佑は唐突に感じた人肌の温かさと柔らかさに張り詰めていたものがゆるんだ気がして、こらえきれずに少年の手の中に射精してしまった。
「はぁ……はぁ…」
息を乱しながら、佑は恥ずかしくて顔を上げられないでいる。まだ×××の奥で唸っているローターの振動を感じて泣きそうになっていた。
「顔が…見られなかった…」
残念そうな少年の声がして、ペニスと乳首からそっと少年の指が離れていく。佑は目を閉じたまま深い溜息をついて車両の壁にもたれた。
「ずいぶん溜まってたんだな」
わざとらしく少年が言って、腕を動かしている。佑の精液にまみれた手を処理しているのかもしれないが、佑は何も見たくなかった。ローターの振動のせいで引かない快楽を持て余して、頭の中がずっと混乱している。
「次の駅で降りる」と少年は佑の顔の前で言った。「ついて来いよ、生徒手帳、返してほしいだろ?」
佑は目を開けない。脳裏に寒そうな白い庭が浮かんだ。雪だ、雪がまた降っている。庭にあるすべての木や草を、雪は白く覆いつくしていく。そうして自分はその庭に居る。けれども、そこから引き揚げないのは自分の意志だ。そんな気がしたけれど、それから先は何も考えられなかった。
ずっと動いているローターが強制的に思考力を奪っていく。電車の振動が変わって、聴き慣れない音がした。川を越えて陸橋を走っているらしい。
「おい、出しっぱなしで歩くのか?」と少年が笑い、佑のペニスをズボンの中に入れるとファスナーを上げた。
やっと佑は目を開けて少年を睨みつけた。する事はそれだけなのか、と。
「ん? 何だよ?」少年が首を傾げ、鼻で笑う。「ローターは出してやらねぇ」
佑の無言の質問に答えた少年が、手を伸ばして佑の股間を撫でた。
「駅から少し歩くけど、我慢しろよ。もっと気持ちいい玩具を突っ込んでやる」
喜びを隠し切れない声で、少年が言った。
(……玩具?)
力の入らない目をしながら佑は怪訝そうに顔をしかめた。
「たくさんある。…おまえのために」
少年は顔を輝かせた。
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