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奇譚小函―きたんこばこ―

R-18 二次創作テキストサイト

 

※エロ注意※

EPISODE3.5 おとめのおもちゃ


夜も更け、部屋にひとつきりの時計は、もうじき短針が12時を指そうとしている。
消灯時間はとうに過ぎ、寮生は皆眠りについている時間だったが、トリッシュはベッドの中でいまだ寝付けずにいた。
目をつぶるたびに、昼間に見た光景が瞼の裏にちらついてなかなか眠れない。
もとはといえば、それは自分の余計な好奇心のせいだった。
今日トリッシュは、門限に戻って来ないヴァニラを探しに、一人で入っては危ないというあの図書館へ初めて足を踏み入れたのだった。
薄暗い館内に無数に並ぶ書架の片隅から、囁くような声とかすかな衣擦れの音がした。
それに誘われるように、彼女は書架の奥へと近づき……
そこで見てしまったものがまた頭の中に甦り、トリッシュはあそこで妖しい気配を察して引き返せばよかったものを、と今更ながら思った。



書架の影で二つのシルエットが何やら蠢いている様を見た時、初めは何をしているのか分からなかったが
書架にもたれている方の肌の白さと、それに後ろから圧し掛かる大きな身体が徐々に暗がりに浮き上がって見えるにつれ
影の主である二人がどのような行為に耽っているのかを理解して、トリッシュは息を呑んだ。
大きな影の方は、暗い中でも目立つ金髪をしており、この図書館の司書のDIOという男だった。
その男に、制服を乱した髪の長い女が背後から抱きすくめられていた。(後でトリッシュがヴァニラから聞いた所によると、彼女はミドラーと言う高等部の生徒らしかった)

「DIOさまぁ……DIO、さま……! もっと、深く……!」

弾む息に混じって、甘く蕩けた声が細く聞こえてくる。
相手の事を呼ぶと言うよりは、ただその名だけが口をついてこぼれ出ているようだった。
ミドラーは並んだ本の背表紙に手をかけ、後ろからDIOに揺すぶられるままになっていた。
制服のスカートが捲り上げられ、露になった生のお尻が突き出されている。
DIOはその豊満な肉を指が食い込むほど掴み、思うさま腰を打ち付けていた。
その二人の身体の間で、何やら赤黒い不気味なものが濡れた音を立てて激しく出入りしているのが見えた。
生まれて始めて見たあまりに衝撃的な光景に、トリッシュは呼吸も忘れてその場に硬直していた。

「んんっ……」

ミドラーは制服の下にブラを着けておらず、剥き出しの白い膨らみをDIOの手で掬い上げられ、
どこか敏感なところを弄られでもしたのかもどかしそうにお尻をくねらせる。
くしゃくしゃになって彼女の足首に引っかかっていた下着が、やけに生々しかった。
立ったまま交合っている二人の身体が蠢くたび、吐息や睦言がトリッシュの耳にも届いた。
具合がいいだの奥まで届いているだの、二人の言葉の意味はまるで分からないのにどうして顔が熱くなるのか分からずトリッシュは混乱した。
古紙とインクの独特の匂いに酔いそうになりながら、観客がいる事さえ知らず演じられる淫らな舞台から目が離せず
ただ息を殺して見入っていた所をヴァニラに発見され、トリッシュが慌てて情事の現場を離れたのはその後すぐの事だった。
DIOとミドラーははまだどちらも気をやってはおらず、周りの事など意に介さぬ様子でいぜん絡み合っていた。



(ああ……あんなもの見なければよかったわ……)

トリッシュは何度目か分からない寝返りを打ち、何度目か分からない小さな溜息をついた。
セックスという行為を知ってはいるが、それは自分とはまだ関係無いものだと思っていた。
彼女が見た事のあるドラマや小説の中でも、せいぜい匂わせる程度の扱いで、決してあからさまにするものではないはずだった。
それなのに、まさかあんなに生々しい光景を目にしてしまうとは思ってもみなかった。
何も、誰に見られるか分からない図書館なんかでする事ないじゃないの! とトリッシュは一人憤慨したが、それでも妙な気持ちは収まらなかった。
昼間の衝撃が尾を引いて目が冴えているせいもあるが、それ以上に身体が火照ってむずむずしているようで、眠るに眠れない。
どうしよう……と思ったが、この妙な気持ちを収めるために絶好の方法があるのに気付き、トリッシュはそれを試す事にした。

(ひとりで……しちゃおうかしら、でも……)

この二段ベッドの下の段で眠りについているルームメイト――ヴァニラの事を思い出し、もし彼に気付かれてしまったらと考え、気持ちが萎えかけたが
起こさないように静かにすれば大丈夫と無理矢理自分を納得させ、パジャマの前を自らくつろげて指をそろそろと潜り込ませた。
そういえばここに来てからは一度もしていなかったわと思いながら、トリッシュはゆっくり自分の肌に掌を滑らせる。

(……それにしても大きかったわね、あの人の胸)

自分のもなかなか発育のいい方だと思うが、さすがに敵わない。
両掌でむにゅ、と自分の膨らみを掴んでみると、てっぺんの小さな桜桃はもう発情しているようにつんと勃っていた。
その事に戸惑いながら恐る恐る触れてみると、どれだけ敏感になっているのか、トリッシュはあまりの快さに思わず声をあげそうになった。

(やだわ、もしかしてあたしも興奮しちゃってるのかしら……)

そう思いながらも、慰める手は休まない。
今度は乳首を軽く摘んでみると、自分でした事なのにトリッシュは毛布の中で身体を震わせた。

(あんな大きいのが入ってたけど……ひょっとしてあれが男の人のアレなのかしら)

トリッシュは自らの手で胸をいじめながら、もう片手でパンティーを剥き下ろした。
裸の尻がシーツに触れる感じが少し心もとない。
まだすべすべのままなのが彼女の悩みの種である恥丘の下へと忍ばせた指を、割れ目にあてがう。
思ったとおり、もう奥から滲み出した蜜でぬるぬるになっていた。
あの時ミドラーのここに出入りしていたものは、暗くてはっきり見えなかったという事を差し引いても相当大きかったように思う。
多少濡れたからといってこんな所に入るとはどうにも信じられなかったが、ミドラーは怖がったり痛がったりするどころかむしろ悦んでいるのが不思議だった。
そんな事を思い出しながらも、初心なトリッシュにとってはせいぜいここを指で弄るのが関の山で、何かを挿入するなどまだ考えた事も無かった。
入り口のあたりをさまよっていた指が花びらの内側の小さな蕾を探り当て、トリッシュはついに甘い吐息を漏らしてしまった。

(やっぱり、これ……すごくいいっ……)

初めて自慰を覚えて以来、このごく小さな器官がトリッシュの一番いいところだった。
自分の細い指が蜜で溢れる割れ目をにゅるにゅると擦り上げるたび、トリッシュは毛布の中で息を荒くして腰をよじらせる。
おかしな事だが、早く情欲を収めようと自慰を始めたのに、今度はすぐに終わらせるのが勿体無く思えてしまう。
下の段で寝ているヴァニラの事を気にしながらも、より多くの快感を探ろうとする指は止まらない。
DIOの寵愛を受けていたミドラーと同じ恍惚の表情で、トリッシュは声を殺しながらお楽しみに耽っていた。



「…………」

ベッドで眠っていたヴァニラは、ふと目を開けた。
部屋は暗いままで朝にはまだまだ遠かったが、いつもと違う何かが彼の目を覚まさせたのだった。

「……んっ……うぅっ」

妙な声が部屋の中で聞こえたような気がした。
とはいえ、この部屋には自分とルームメイトのトリッシュ以外誰もいないはずだ。
上段に寝ている彼女の声なのだろうか。

「はぁ、あぁ……ふぅっ……もう、だめぇっ……」

途切れ途切れの声と共に、かすかにベッド全体が軋むのが分かった。
やはり気のせいではなく、トリッシュが苦しそうに声を押し殺してうめいているようだ。
具合でも悪いのかとヴァニラは起き上がり、梯子に手をかけて上の段で寝ているトリッシュの様子を確かめた。

「トリッシュ?」
「!!!」

そこでヴァニラが目にしたものは、彼の想像を超えていた。
ベッドに横たわったトリッシュが身につけているものはパジャマの上だけで、それも前がはだけて胸があらわになっていた。
下着もつけてはおらず、臍から下の素肌が剥き出しになって常夜灯のかすかな明かりで照らされていた。
すらりとした脚ははしたなく開かれ、その奥のきわどい所まで丸見えになっている。
彼女が誰にも見せた事のないだろうそこは湯気を立てそうな蜜にまみれて濡れ光り、あてがわれた指との間に糸を引いていて、何をしていたかは問わなくても明らかだった。
自慰に熱中するあまり、暑くなって毛布をはねのけてしまっていたため、何もかもがヴァニラの目にさらされる事になった。
トリッシュの頬は余韻に上気していたが、こんな浅ましい姿を見られてしまったという絶望の表情を浮かべていた。
その怯えきった目からは今にも涙が溢れそうになっている。
彼女はこの状況を取り繕う弁解の言葉を必死に探したが、真っ白になった頭からは何も出てこなかった。
一方、ヴァニラがそんなトリッシュを見てどう思ったかというと、どうやら急病ではないようだと一安心する以外は特に何とも思わなかった。

「そんな格好で寝て、身体を冷やすなよ」

ヴァニラはそれだけ言って、また下のベッドに横になりいくらもしないうちに寝入ってしまった。
トリッシュは予想外のヴァニラの反応に呆気にとられていたが、しばらくして寒気を覚え、慌ててベッドの隅に丸まっていたパンティーを履いた。



結局、翌朝までトリッシュはほとんど眠れなかった。
朝食の席でもヴァニラの顔をまともに見られず、味も分からないまま食事を飲み込んだ。
教室で友達に話し掛けられても上の空で、授業中も睡眠不足からついうとうとしてしまい注意される有様だった。

「どーしたのトリッシュ? 体調でも悪いの?」
「だ、大丈夫よ! ちょっと寝不足なだけ……」

気遣ってくれた徐倫には悪いが、まさか昨夜自慰を見られた経緯まで話すわけにはいかない。
授業が終わり、重い足取りで寮に戻ると、なんと部屋にはヴァニラが先に帰っていた。
大事なルームメイトではあるが、今のトリッシュにとっては一番顔を会わせたくない人物だった。
あんな場面を見られた相手と二人きりにはなりたくないが、かといって慌てて出て行くのもバツが悪い。
トリッシュは気まずい思いでいっぱいだったが、何気ないふりを装って鞄を置き制服を脱ごうとした。

「……トリッシュ」

ただヴァニラに名前を呼ばれただけなのに、悪さを咎められたようにびくっ、と肩が震えた。
昨夜の事を責められるんじゃないかとトリッシュは恐る恐る振り向いたが、ヴァニラはいつもどおり平然とした顔だった。

「な、何……?」
「今日、お前の様子が変だったと徐倫から聞いた。 体は大丈夫か?」

自分の予想とは全く違う言葉に拍子抜けすると同時に、彼はあたしの今の気持ちを知っていてわざととぼけているのではないかという疑念が生まれ、
トリッシュはヴァニラの表情を探るように見つめた。

「ヴァニラ……違うのよ、そうじゃなくって……」
「? 何の事だ、病気とかではないのか?」
「もう! とぼけないでよ! ……あの……ゆうべの事、どう思った? あたしがしてた事……」

トリッシュはほとんど自棄になって、昨夜の事件について切り出した。
顔が熱くなり、頬に血が上って真っ赤になっているのが自分でも分かる。
毎日顔を会わせるルームメイトにあんな所を見られただけでも恥ずかしいのに、改めてその事を自白しなければならないなんて……
そこでようやくヴァニラはトリッシュが昨夜の事を気にしているのを察したらしく、あの事か、とだけ短く口にした。

「あたしの事、いやらしい子だって思った? 軽蔑、した……?」

トリッシュは恥ずかしさの余り泣きそうになりながら、やっとのことで最後まで言葉を続けたが
ヴァニラの答えは実にシンプルなものだった。

「別にわたしはどうとも思っていない、気にしなくていい」
「……ほんとう? でもあたし、ヴァニラがいるのにあんな事しちゃって……どうかしてたんだわ……」
「時々、自分を抑えられなくなる事は誰にでもある 忘れてしまえ」
「……ありがと」

その言葉にトリッシュは一気に気が楽になり、今度はほっとして涙が出そうになった。
彼があたしのルームメイトで本当によかった……としみじみ思ったが、ヴァニラの余計な一言で再び彼女は真っ赤になった。

「ただ、紛らわしい声を上げるのは止めてもらいたい……また急病と間違えるかもしれないからな」
「!! ば、ばか! もう、ヴァニラの意地悪!」

悪気はないにせよ昨夜の事を蒸し返され、トリッシュは無神経な相手の胸板をぽかぽかと叩いたがヴァニラはびくともしなかった。
やがて気が済んだのか、拳を止めたトリッシュはヴァニラの耳元に、誰にも言わないでね、と念を押して囁いた。

「言わない」
「ほんとう?」
「本当に言わない」
「……よかった」

今度こそ安心したトリッシュは、今日はじめての笑顔を見せた。
もうヴァニラと同じ部屋で生活できないかもと思いつめていたが、この一件がかえって彼への信頼を深めるきっかけになるとは思ってもみない結果だった。
しかし今となっては、ヴァニラの前であんなに取り乱してしまって、内心少し悔しい気もする。
今度はあたしがヴァニラの秘密を握っちゃおうかしら、そしたらお互い秘密のある者同士もっと仲良くなれるかも……と、トリッシュは小悪魔的な事を考えるのであった。


<To Be Continued…>

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