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奇譚小函―きたんこばこ―

R-18 二次創作テキストサイト

ジョジョSSつめあわせ

掌編いろいろ

web拍手のお礼として置いていたSSや、某所に投下した短編、旧日記のログをごちゃまぜに再掲載しています。
カップリングが混在していますので、苦手なものはスルーの程よろしく願います。

 

 

 

 

 

 

 

 

SICILY / シシリー(ドルチェ&ガッバーナ)…リゾトリ

トリッシュがその香りを身につけようと思ったのは、彼女の好きなブランドの物だからか、それともリゾットの故郷と同じ名前が気になったからだろうか。
蜂蜜のような、春の陽射しのような黄金色の香水。
つけ始めは強いぐらいの柑橘が香るが、肌に馴染むにつれて体温で温まり、陽に照らされた花の香りになる。
自分にはまだ早い大人っぽい香りではあるが、これをつけていると、どんなに寒い日でも春めいた華やかな気分になれるので、トリッシュはこの香りが気に入っていた。

「香りを変えたのか」
わずかな変化も捉える暗殺者のセンサーが新しいこの香りを感知したのか、ベッドに入ってきてすぐリゾットにそう聞かれた。
「うん、嫌い? この香り」
「いや……どうしてか分からんが、懐かしいと思った」
「懐かしいの? ふふ、やっぱり!」
トリッシュの言う意味が分からないまま、珍しい花に惹かれる蜜蜂のように、リゾットはトリッシュの首すじや耳朶に口付ける。
柔らかい肢体がシーツの中で身動きするたびに、艶めかしい香りが鼻をくすぐり、いっそう情欲を刺激する。
部屋の外は小雪がちらつく厳寒だというのに、甘く濃密な香りで満たされたベッドの中だけが五月の花園のようだった。
「ねえ、リゾット……シシリーの話、して」
「こんな時にか? もう何度も同じ話を聞き飽きただろう」
「何度でも聞きたいの」
「……後でだ」
シシリーの地を踏んだ事のないトリッシュだったが、リゾットにせがんで彼の故郷の話を聞く度に、古い遺跡や教会の立ち並ぶ町並みにいつも燦々と陽光が降り注ぎ、初夏になるとレモンやオレンジやアーモンドの花が咲き乱れている景色がまるで見て来たように鮮やかに目の前に浮かぶのだった。
故郷を遠く離れた今でもなお、その思い出の全てがリゾットの内に息づいているのだろうとトリッシュは思う。
リゾットの熱いぐらいの体温を全身で感じながら、トリッシュは遠い南の地へ思いを馳せた。


OPIUM / オピウム(イブ・サンローラン)…ディアボロ

生きていく上で、できる限りあらゆる危険を回避したいと思うのは人として当然のことだ。
もっとも、自ら進んで落とし穴にはまりに行くマヌケだって世の中にはいくらでもいる。
そいつらのおかげで、わたしは今の地位を手に入れられた、と言ってもいいだろう。
わたしは一身上の都合から、常人よりもずっと危険に敏感にならざるを得ず、これまでずっとそうやって生きてきた。
小さな島を出て暗黒街へと足を踏み入れた時から、堕落した人間とその原因を飽きるほど見てきて、わたしはそれを反面教師としてきた。
酒色に耽り身を持ち崩すなどはありふれたケースだろう。ドラッグは言うに及ばずだ。
なぜ心身を損なうものをわざわざ求めるのか気が知れない。
それに過去ーー血のつながり、出生、人間関係、それらは時としてナイフや銃よりも危険なものと化して立場を脅かす。
過去のあらゆる痕跡を焼き尽くしたはずだったが、ただ一つだけ記憶の中から這いだしてきたものがあった。
開ければ蠱惑的な香りを放つ、東洋風の装飾の小瓶。
15年も前に、ある女から贈られたものと同じ香水瓶だった。
個人を特定される要素は一つでも排除しておきたいわたしにとって、特徴的な香水をつける事はリスク以外の何ものでもないが、こうしてわずかな間だけ香りを楽しんでいると、ほんの短い間だけ付き合ったあの女の事を思い出さないでもない。
どうして彼女は当時のわたしにこの香りが似合うと思ったのか分からなかったが、名前を知った今となっては、あれは未来の暗示だったのかもしれないとさえ思う。
この「阿片」が詰まった小瓶を、わたしは何故か手放せずにいる。
過去に脅かされるリスクと引き替えにしても、思い出という一時の安楽のために。


Diorissimo / ディオリッシモ(クリスチャンディオール)…ミドラー

鉱物になら何にでも姿を変える彼女のスタンドと同じく、ミドラーは仕事とプライベート関係なくその時の気分で姿を変える。
薄布と宝石の装飾品だけの踊り子の格好は、彼女の姿態を最も魅力的に見せるスタイルだが、それしか衣装を持っていないわけではない。
例えば依頼人と会う時や改まった場では、スーツにピンヒールを合わせて、場合によっては髪もきちんとまとめ、女秘書然とした格好になる。
仕事の都合上、変装して相手の目を欺く事もよくある。
スチュワーデスやナースになりすまして標的に近付くのもお得意だ。
ただ服装を変えるだけではなく、化粧やしぐさ、つける香水にまで気を配るミドラーの巧みな変身に「年増だと聞いていたが、ずいぶん若作りだな」と不用意な発言をした同業者は、身体に新しい傷を十カ所ほど増やされたという。
そんなミドラーではあるが、たった一つだけ人前でつけない香水を持っている。
甘く清楚なスズランの香りを再現したその香水は、ミドラーの一番のお気に入りだ。
不安な夜も、仕事の前で緊張している時も、この香りのおかげで不思議と安らいだ気持ちになれるのだった。
お気に入りなのは、彼女の慕う「DIO」の名が入っているから……というのは安直すぎるだろうが、人前でつけない理由については、ミドラーはこう思っている。
「だって、いかにも清楚で慎ましくて可愛いスズランのイメージなんて、あたしに合わないでしょ?」
しかし、その可憐なスズランが恐ろしい毒を持っている事を知れば、なるほどこの女に相応しい香りだと誰もが思うだろう。
今夜もスズランの香りに包まれて眠るミドラーは、殺し屋としての普段からは想像もつかない、無邪気な少女のような表情をしていた。


Poison / プワゾン(クリスチャンディオール)…マライア

マライアは体に悪いものが好きだ。
夜遊び、アルコール、煙草、カロリーたっぷりのジャンクフードにスイーツ。
彼女ご愛用の美容液や週4度のエステ通いだって、不摂生を相殺するためにあるようなものだ。
それでいて心身共に健康なのだから呆れてしまう。
もっとも本人に言わせれば、好きなものを我慢しているほうがよっぽど体に悪いと力説するだろう。
「自分の思うままに行動して、ストレスを溜めないのが一番の美容法よね」
「分かるー、美味しいものもいい男も我慢するなんて生きてる値打ちがないわ」
こんな具合にミドラーとお喋りしながら、チョコとカスタードクリームたっぷりの見ているだけで胸焼けしそうなケーキを頬張るマライアは、輝くばかりの美貌でしみ一つない美脚を見せびらかしている。
ネーナがここに居合わせたら「あんたあたしの人生にケンカ売ってんの!?」と言いたくなるに違いない矯慢さだ。
甘い菓子を愉しんだ後は、口直しに煙草を吸う。
くわえ煙草で脚を組み替える上品とは言い難いしぐさも、マライアに限ってはなんとも絵になった。
猫が行儀の悪い振る舞いをしてもそれがかえって魅力になるように、彼女も悪徳が自らを引き立てる事を理解していた。
マライアの愛用する香りの銘柄からも、それはうかがえる。
一見すると毒薬でも入っていそうな、黒い丸い小瓶から一滴垂らした香水は、褐色の肌の上で甘美な猛毒となって香り立つ。
毒の香りだけを身につけて、主の待つ寝室へ猫のように忍んでいくマライアを横目で見てヴァニラは(この毒婦め)と呟いたが、彼女にとっては褒め言葉でしかなかった。


DIO様のご褒美

10回目の拍手ありがとうございました!
DIO様からあなたへねぎらいのお言葉があるようです

「フン、よくここまで辿り着いたな。
何もなしではなんだから、暇つぶしがてら貴様に褒美をくれてやろう。
このDIOが相手をしてやるのだ、光栄に思うがいい。

1.ロードローラーで圧迫祭り
2.タンクローリーで圧迫祭り

ああ……ちなみにこのDIOがお気に召さんのなら後はアイスに相手してもらうがいい

3.ヴァニラのケツで圧迫祭り

……早く選べ。 夜が明けてしまう」

あなたは にげられない!
あなたは にげられない!
あなたは にげられない!


アラウンド・ザ・ワールド(???)

「たまには気晴らしも必要だろう」といきなり教会を訪ねてきた古い友人によって、わたしは僧衣のまま夜の街に連れ出された。
素性も職業も謎に包まれた彼はここらの顔役らしく、行く先々で彼に「わたしの友人だ」と紹介されただけで、わたしは下にも置かない扱いを受けた。
頭も目もクラクラするような一時を過ごし、わたしたちはようやく落ち着ける店に入った。
よく分からないので彼と同じものを注文して出てきたのは、澄んだ緑色の美しいカクテルだった。
その名を聞いたとき、わたしの中で何かが目覚めるような不思議な衝撃を受けた。

「『世界一巡』……?」
「『世界一周』だよ。 どうした? 飲む前から酔ってしまったのか?」
「……何かすごく重要な事を思い出しそうになったけど、思い出せなかった。 一体何だったんだろう?」
「デジャブ(既視感)というやつか? 君には珍しく詩的な事を言うな」
「そういうのじゃなくて……まあいいか、美味しいねこれ……」
「そうだろう、さすがは『世界』の名を冠する一杯だと思わないか?」

わたしはずっと昔に会っていたはずの誰かの事をついに思い出せなかった。
あの澄んだ緑色の、星のような気高い光を宿す瞳の持ち主を。


ゾンビ(DIO)

「10回も拍手をするとは物好きなヤツだな……せっかくだ、ダービー、あれを出してやれ」
DIOの館に辿り着いたあなたの前に出されたのは、鮮やかなオレンジ色のトロピカルカクテルだった。
DIOならブラディマリーのような真っ赤なカクテルの方が似合いそうなものなのに……と思ったが、そのカクテルの名前を聞いてなるほどと思う。
「たまにはこういうものも悪くないな」
それはおどろおどろしい名前からは想像できない、まるでジュースのような口当たりのいいカクテルだった。
死人も生き返るほどきつい酒だからとか、ゾンビグラスというグラスに注ぐからだとか命名については諸説あるが
翌日、あなたはゾンビと名付けられた理由を身をもって思い知る事になった。
……といっても、DIOに血を吸われて夜の亡者にされたわけではない。
つい調子に乗って何杯も飲みすぎたせいで、ひどい二日酔いでそれこそ生ける屍のようにぐったりしているあなたをヌケサクが甲斐甲斐しく介抱していた。

そんなあなたの事などすっかり忘れ、同じものを倍も飲んだDIOはケロリとした顔でいつもどおり『食事』を摂っている。
吸血鬼を酔わせるのはただ新鮮な血液のみだった。


アイスブレーカー(ヴァニラ・アイス)

※パラレル・ジョ女学園設定です

「これ美味しそう……あ、でも駄目だわお酒だから、ガクセーはガクセーらしくしないとね」
トリッシュはカクテルメニューの『アイスブレーカー』を指差してすぐ引っ込め、代わりにソフトドリンクの枠からクリームソーダを頼んだ。
「ヴァニラは?」
「同じものでいい」
いつもそうなんだから、と笑ってトリッシュは今日の戦利品を膝から下ろした。
たまの休日に友達同士で買い物や映画に出かけ、帰りに喫茶店に入る。
どこにでもいる女子中学生のささやかな楽しみだった。
「卒業して大人になったら、こーいうのも飲めるようになるかしら」
未練がましくメニューを開いて、色とりどりのお酒の写真を見ている。
そこにクリームソーダが二人分運ばれてきた。
「この氷とアイスが微妙にくっついた所が美味しいのよね~」
カクテルを飲みたがっていた事もすっかり忘れてご機嫌になっているトリッシュの真似をして、ヴァニラも美味しい所をスプーンですくって口に入れてみた。
……自分は変わったと思う。
DIOと出会った時もそう思ったが、こういうふうに何でもない日常を楽しむ事を覚えたのはトリッシュと出会ってからだ。
それがいい事か、悪い事かはヴァニラには分からないが。
「大人になっても、こうやって一緒にお茶できたらいいわね」
二人の輝かしい将来を疑いもしないように微笑むトリッシュに、ヴァニラはとまどった。
(彼女が成人する頃、わたしはどうしているのだろう? DIO様は?)
ヴァニラは自分の将来の姿など考えた事もなかったが、10年後も20年後もDIOの傍に仕えている自分しか想像できなかった。
寮を離れ、学園を卒業してもまだ彼女と友達でいられるのだろうか?
「……そうだな」
あてのない未来には何の保証もないが、その言葉は本心だった。
溶けかかったアイスクリームが浮かぶグラスの中で、氷に内側から亀裂が入る小さく澄んだ音がした。

(アイスブレーカー……「砕氷船」という名のテキーラベースのカクテル。
氷を砕くことから転じた、打ち解ける、雰囲気を和ませる、という意味もある)


ビトウィーンザシーツ(ミドラー)

ミドラーはシーツに挟まって寝るよりも男の身体に挟まって寝る方が好きだ。
しかし好みのうるさい彼女のお眼鏡に叶う相手はそうはおらず、特に承太郎という男に入れ込んでからは実に清らかな生活が続いていた。
例えば、強欲で残酷で淫乱と悪名高い「あの」ミドラーがまるで普通の女の子みたいに初々しいデートを楽しんでいたと聞けば、彼女を知る殺し屋連中はショックの余り改心して出家でもするのではないだろうか。
デートと言っても、ほとんどミドラーが一方的に連れ回したようなものだったが、承太郎も「やれやれだぜ」とボヤきながら付き合ったのだから、少しは脈があるという事かもしれない。
あんな楽しい時間を過ごしたのは初めてだったわ……とため息をつき、ミドラーはホテルの部屋に帰った後も夕陽に染まった海の色や彼の煙草の匂いを思い出していた。
ただ一つ残念だったのは、食事の後ミドラーをホテルの前まで送って承太郎がさっさと帰ってしまった事だ。
(このあたしに何の関心もないみたいに……ムカつくわ!)
一人でシャワーを浴びて毒づきながらも、内心ではそんな冷淡な態度に惹かれてたまらないミドラーだった。
唯一身に着けていたタオルを放ってベッドに寝転がると、白いシーツにさざ波のように皺が寄った。
ルームサービスで運ばれてきた寝酒にちょうどいい一杯に口を付ける。
(……承太郎が隣にいれば、もっと美味しく感じられたかしら)
星のように輝く宝石は手に入れられても、いくら手を伸ばしても届かない本物の星は……
『女教皇』が変化した宇宙船を操縦する自分の姿が思い浮かび、あまりに飛躍した空想に思わず吹き出す。
だが、できて当然と思う精神力が大事だとあの老魔女も言っていたではないか。
(あんたはあたしのものにするって決めてるんだからね、だから承太郎……あたし以外のヤツに殺されるんじゃないわよ)
ミドラーはいつも通りシーツの間に裸の脚を滑り込ませた。
楽しい一日の最後、眠りに落ちる前に、遠くで海と煙草の匂いがした。


リモンチェッロ(トリッシュ)

レモン色をした、レモンの香りのお酒。
小さなグラスに注がれたそれは意外に度数が強く、初めて飲んだトリッシュはむせ返りそうになったものだった。
その時珍しくリゾットが話してくれた、彼の故郷の話は今でも思い出せる。
シシリーは春になるとレモンの花が満開になり、その香りでいっぱいになると聞いて、いつか見に行きたいな、と思った。

リモンチェッロが置いていない店でトリッシュが代わりに口にするのは、冷たいレモネード。
(本当は、あれが飲みたかったのに)
シシリー産のレモンの果汁がたっぷり入った甘酸っぱい飲み物は、きついアルコールの代わりに蜂蜜の甘さが喉に染みた。
(……でも、これも悪くないわ)
しゅわしゅわ弾ける炭酸の泡の向こうに、シシリーの青い海と黒い姿が歪んで映った。


プッシーフット(マライア)

仕事の前なので何かノンアルコールのものを、というあたしの注文にバーテンダーが出したのは禁酒法時代に作られたという甘いカクテル。
こんな小娘が飲むようなもの、と内心バカにしながら口にしてみると意外にもいけた。
飲み干したところで、タイミング良く待ち合わせの相手がやって来たので、あたしは口直しに取り出しかけた煙草をまた仕舞わなければならなかった。
「待ったかい」
「いいえ、ちっとも」
ドラマのベタな恋人同士みたいな会話をしながら、あたしたちは連れ立ってバーを出て行った。

ホテルの部屋に着き、あたしはシャワーを浴びてくると言ってカクテルの名前通りの忍び足で部屋を出ていった。
ベッドに座って一服を点ける男は、手の甲にスチール製の灰皿が張り付いているのにまだ気付いていなかった。
鼠はもう罠にかかったも同然だ。
標的の最期を見届けたら別の店に飲み直しに行こう、とあたしは考えていた。


ひよこ(リゾット×トリッシュ)

熱いシャワー、二人寝るには多少狭いがふかふかのベッド、目の前には生まれたままの姿のトリッシュ。
今だけは任務もボスの事も忘れ、リゾットが別腹の美味しい晩餐を頂こうとしたその時、彼女の口から唐突に謎が投げ掛けられた。

「よく見て、あたし、いつもとどこか違うところない?」

自分の変化を鈍い恋人に気づいてほしがる女の子の常套句に、リゾットはまごついた。
虚偽を見逃さない暗殺者の鋭い観察眼は、こんな時はまるで役立たない。
髪型か、化粧か、それとも……

「もっとちゃんと見てよ!」

視線をさらに下へと降ろすと、リゾットはある事を発見した。
ぴったり閉じられた腿の間、恥丘にほんのわずかではあるが、淡い色の柔らかい産毛が生えている。
指先で触れてみるとそこは雛鳥の羽毛みたいにポヤポヤとしていて、何とも心の和む手触りだった。

「……これか」
「そうよ!」

リゾットの知る限りでは、初めて見た時からここはすべすべと滑らかで、いたいけな割れ目が剥き出しになっていたが、ようやく生えてきたらしい。
周りの子に比べてここだけ発育が遅いのか、無毛のままなのをトリッシュ本人も少し気にしていたので、見せびらかしたくなるのも無理はなかったが、生えているといっても産毛程度なのに得意げな顔をしているのが可笑しかった。
リゾットは何と言っていいやら分からなかったので、とりあえず良かったな、とだけ言っておいた。

「変じゃない? 生え方とか…… こんなちょっぴりじゃなくて、もっと毛皮みたいなのの方が好き?」
「オレは生えていようがいまいがどっちでもいい」

どんなトリッシュでも魅力的だという意味だったのだが、どうやら言い方がまずかったようで「何よ! どーでもいいっていうの!?」と叩かれた。


ベッドの中で仲直りした後、トリッシュは腕枕されながらふわふわした産毛をリゾットの身体に擦り付けてきた。
その柔らかな感触が愛おしく、何かにつけて大人の女の振りをしたがる彼女のあどけない一面を思わせた。
少しだけ大人になったトリッシュだったが、リゾットにとってはまだまだ可愛らしい雛鳥のようなものだった。

「……あ! もしかして、リゾットって生えてないほうが好みだった? べ、別にあなたがそうしたいなら剃っちゃってもいいけど、ちゃんと生え揃うまでだめよ!」
「……やはりお前の考えている事は分からん……」


ダービー弟×マライア 剃毛

そもそも発端は何だったか思い出せない、退屈しのぎのつまらない賭けだった。
しかし彼女自身がテレンスに持ち掛けた『勝った方が負けた方の言うことを何でも聞く』という条件でマライアは見事に負けてしまい、ふてくされた顔で煙草を揉み消した。

「ふん、それであたしをどうしようってのさ? 体で払えとでも言うの?」
「なぁに、そんなありきたりな事など申しませんよ」

そんな度胸はないだろうと高をくくってマライアは居直ったが、こともあろうにテレンスは剃刀を持ち出してきて「脚を開いて下さい、あなたのここを私好みにさせていただきます」などと抜かしたのだった。

「冗談じゃないわッ、このビチグソ野郎!!」

何て悪趣味な事を考えやがる、とマライアは真っ赤に憤って席を立ちかけたが、テレンスは抜け目なく彼女が負けた際に生まれた魂の隙にスタンドを侵食させ、身体の自由を奪っていた。

「おとなしくさえしていれば、何も魂まで取りはしませんよ」

……椅子の上で『アトゥム神』の手に膝を開かされ、腿の間を息がかかるほど間近で覗き込まれながら、それでもマライアは精一杯虚勢を張っていた。

「少しでも傷を付けたら承知しないからね、その時はあんたのすかしたツラをズタズタに切り刻んでやるから」
「分かっていますとも」

抵抗しようとうかつに動けば切れてしまうので、動くに動けない。
下着とストッキングだけを脱がされたマライアは、テレンスの顔を見ないように顔をそむけながら、大事なところに冷たい刃を当てられるゾッとするような感触にひたすら耐えていた。
褐色の地肌とアッシュブロンドのヘアの対照に見とれながら、テレンスは恥丘にたっぷり泡を乗せて剃刀を滑らせる。
ふわふわした猫っ毛は見る間に刈り取られていった。
細部を整えようとテレンスが長い指で割れ目を押し開くと、粘膜が潤い出しているのが分かった。
それは体を守ろうとする生理的な反応だったが、テレンスは面白がって剃毛の手を止め、オアシスの奥へと指を進ませた。

「んあぁ!? こ、この変態っ……!!」

マライアは椅子の上で膝を立てたままの大胆なポーズで仰け反り、指を締め付けた。
触られるのを待つようにぷっくりと興奮した蕾にまで指は伸びてくる。

「ひっ、そこ、だめっ……だめぇ……」

普段の高慢な態度とは裏腹に、物欲しそうに腰を揺らすマライアを、テレンスは心底愉快そうに見ていた。
やがて指を抜かれ、溢れ出した蜜を泡ごと拭われても、マライアは涙目でテレンスを睨みつけていた。


ここまでが昨日の話だ。
マライアは今夜DIOの寝室に呼ばれており、せっせと支度をしていたが、念入りにシャワーを浴びる彼女の表情はどこか浮かないものだった。

(こんな真似して……あいつ、ぶっ殺してやるわ!)

マライアは自分の恥丘を見下ろし、舌打ちをする。
あの時テレンスは全て剃毛したわけではなく、ヘアは一部残されてなんと可愛いハート型に整えられていた。
しかし、こんなみっともない様をDIOに見られるのは正直気が進まない。
誰が手を加えたかと聞かれたら、何と答えればいいのだろう?
全く変態サイコ野郎になんか関わるもんじゃないわ、とマライアは思ったが、それが彼の歪んだ独占欲だとは気づいていなかった。

……その後マライアは覚悟して寝室に行ったが、ハートは意外にもDIOに気に入られたという。

ミド「ハートってどんなの? 見せて見せてッ」
マラ「じゃかあしいーッ!! 執事のところにでも行ってろ!!」


ヴァニラからのバレンタインチョコ

何度も拍手をしたあなたの目の前に、コルク栓を抜いたような丸い穴がガオン!と開き、そこから音もなくヴァニラが現れた。

「む……なんだお前は、チョコ目当てでこんなに押したのか? お前の期待するものはここにはない。
 しかし、どうしても欲しいと言うなら……」

何を思ったか、ヴァニラは股間に手を突っ込み、なんとブルマーの中から取り出したチョコバナナをあなたに差し出した。
よりによってこんなものを……と絶句するあなたに構わず、ヴァニラはなぜか顔を赤らめてまくしたてる。

「か、勘違いするなッ! お前のために用意したんじゃない! は、早く受け取れッ!」

迫ってくるヴァニラから逃げようと思ってもあなたの脚は恐怖にすくみ、一歩も動けない。
まだ温もりの残る怪しげなチョコバナナを食べても食べなくても、すでにあなたの運命は決まっている……

<BAD END>


ボスと娘のバレンタイン

バレンタインデーの当日、ディアボロは気が気でなかった。
ゆうべ遅くまで年頃の一人娘がキッチンに立ち、チョコを手作りしていたのだから、贈る相手が誰か気になって仕方ないのは父親として当然の心境だろう。
しかも上等のクーベルチュールチョコを使った、見るからに手間隙かけて作っただろうそのチョコレートケーキは
ただの義理チョコとして贈られるレベルのものではなかった。
あの生意気な新入りの小僧か!? それともオカッパ野郎か!? いや、暗殺チームの白黒反転目かも……
思い当たる男の顔と名前がいくつもディアボロの脳内に渦巻いている。
そうこうしているうちに娘はきれいにラッピングした包みを抱えて出て行ってしまった。

『ドッピオ!! 緊急の命令だッ! お前にしかできない事だッ』

ボスに(身勝手な理由で)娘の尾行を命じられたドッピオは、何度か撒かれそうになりながらもついに彼女がチョコを渡す相手の姿を目撃した。

「ペリーコロさん、いつもお世話になってるお礼代わりに受け取ってちょうだい」
「孫のような年のお嬢さんから頂けるとは、わしもまだ捨てたものではないかもしれませんな、ハハハ」
「ウフフ、お口に合うかどうか分からないけど召し上がってね」



『良かったですねボス、ボスが心配していたような事はないみたいです』
『いいわけないだろう! どうしてトリッシュを世話してやってるこのわたしがないがしろにされてるんだ! クソッ! クソッ!』
『そんな事ないですよ……あ、トリッシュ!』

「こんな所でどーしたのドッピオ? そうだ、父さんに失敗作のケーキを食べていいって言っておいてくれる?」

『……だそうです、ボス……』
『……去年のように噛んだら歯が欠けないといいがな……』


チョコの香りの香水(マライア)

2月14日、聖バレンタインの名のもと恋人同士がチョコと愛を交換する日。
そんなロマンチックな祝祭も、甘いものが苦手なあなたにとっては特に関心のないいつもどおりの日だったが
目の前の可愛い恋人はあなたのそんな態度がいささかご不満なようだった。

「……せっかくのバレンタインなのに、つまんないわ
 男から女にチョコを渡したってバチは当たらないわよ」

そうボヤきながら、ベッドの上のマライアは猫のようなしぐさで、ころんと寝返りを打つ。
猫はチョコレートを食べると中毒を起こすんじゃなかっただろうか、とあなたがどうでもいい事を思い出している間に、
マライアは「ぼーっとするためにあたしの部屋に来たの?」と手早く衣服を脱ぎ捨てていく。
真っ白いレースの下着が褐色の肌に映え、目に眩しいくらいだったが、どうやらブラのホックがうまく外れないらしく、手伝って、と言ってきた。
彼女の後ろに立ってホックに手をかけた時、チョコレートの甘い匂いが不意にあなたの鼻をくすぐった。
マライアが今日のために選んだ、とっておきのフレグランスだった。
顔は見えなくても、彼女があなたの反応を察して悪戯っぽい表情を浮かべているのが分かった。
香りを堪能しながら、あなたの手が下着を外すと褐色の肌が露わになる。
まるで、甘い香りをまとったマライア自身がチョコレートで出来ているような錯覚を起こさせた。
堪らず、目の前のうなじに口付けを浴びせるとマライアはくすぐったそうに笑った。

「あんた、甘いものは嫌いなんじゃなかったの?」

そう言う彼女の唇ごと食べてしまいたいぐらいで、あなたはベッドの上で本物のお菓子よりも甘美なひと時をゆっくり味わうことにした。


媚薬入りトリュフ(ミドラー)

あなたの目の前、小さく仕切られた箱の中には、一口サイズのトリュフがいくつも収まっている。
ミドラーが他ならぬあなたのために手ずから作ったものだというだけでなく、
その優美な指で摘んで直接食べさせてくれるのだから、夢見心地にならない方が無理と言うものだ。
トリュフの中に仕込まれた一つ一つ違う味が、更にあなたを楽しませる。クリーム、リキュール、アーモンド……

「美味しい? 気に入ってもらえてよかったわ、でもね……この中に一つだけ、大当たりがあるの」

その意味ありげな笑みに、あなたは彼女の本業が何だったかを思い出した。
いつか推理小説で読んだ、アーモンドの香りがするという劇薬の名前が頭をよぎった。 ……まさか。

「そんなのよりもっといいものよ……」

理性も何も吹っ飛んでしまうほどの強い媚薬が、このチョコのどれかに仕込まれていると彼女は言った。

「みんな同じ見かけだからあたしもどれが媚薬入りか分からないの。 もしかしたらもう食べちゃったかもね?」

それを聞いたあなたは、勝負はフェアでなくては面白くない、と自分からもトリュフを摘みミドラーの唇へと持っていく。
ミドラーは妖艶なまなざしを逸らさないまま、甘いトリュフを味わうついでにあなたの指を挑発するように舐めた。
どちらが媚薬入りに当たるかは分からないが、そんなものは無くても同じ事だったかもしれない。
あなたはもうすでに、女教皇のミドラーの術中に堕ちているのだから……


友チョコ(ヴァニトリ)

寮の部屋に戻ったトリッシュを出迎えたのは、ルームメイトのヴァニラと室内に大量に積み上げられたダンボール箱だった。

「ヴァニラ、何これ!? もしかして寮を出て行っちゃうの?」

トリッシュは荷造りをしているのかと勘違いしたが、よく見るとダンボール箱の中身はみな包装を剥いだチョコレートだった。

「こんなにいっぱいもらったの!? ヴァニラってもてるのね……」
「違う、全てDIO様宛てのものだ」

毎年DIOに贈られる大量のチョコの処分役をヴァニラが仰せつかっている事を知り、トリッシュは
(DIOったら、乙女の真心を何だと思ってるの!)と憤慨しそうになったが
目の前のチョコの山は普通に考えてとても一人では食べきれそうにない。
捨ててしまうよりは気持ちだけ受け取ってヴァニラの胃の中へ処分させた方がまだましだろう。

「でも……あなた一人でこんなにたくさん食べる気?」
「去年はロードローラー3台分はあったが、今年はそれよりは少ないからまだ楽だ」

ロードローラーって荷物を載せるための乗り物だったかしら……と素朴な疑問を抱きつつも、トリッシュは自分も食べるのを手伝う、と宣言した。

「他人宛のチョコなんかが食べたいわけじゃないのよ、ヴァニラ一人でそんなに食べさせられて太ったらかわいそうだもの。
 あたしもいっぱいチョコ食べて、いっしょに太ってあげるわ」

そう言いつつも、彼女が甘い匂いの漂う箱の中身をちらちらと見ているのをヴァニラは気づかないふりをした。

「……そうか、ところで後ろ手に隠しているものは何だ?」
「!! これは……」

贈る恋人がいなくとも、年頃の少女であるトリッシュにはやはりバレンタインデーは気になる行事のようで
密かに家庭科室を借りてチョコを作り、『友チョコ』と称して徐倫やエルメェスに配ってきたのだった。
最後にヴァニラにあげようと思っていたが、こんなにたくさんチョコを処分しなければならないならかえって迷惑かと思いとっさに隠したものの、
結局見つかってしまいトリッシュはばつの悪さに少し頬を赤らめた。

「トリッシュが作ったのか、わたしが食べてもいいのか?」
「うん……でも、チョコならあんなにあるし、無理しなくても……」
「いっしょに食べて太ると言ったのはお前だ、それも二人で食おう」
「……ふふっ、ありがと! 実はけっこう自信作なの」


そして一週間後、二人は大量のチョコをおいしく処分し終えたが、トリッシュはそれからしばらくチョコと体重計は見るのも嫌になったとか。


聖夜の暗殺者(リゾトリ)

街外れの教会でクリスマスミサを終えて出てくる人々の波に逆らい、黒衣の男がひとり扉の中に入っていった。
その男――リゾット・ネエロは今しがた、組織の邪魔になる要人の暗殺を終えた帰りだった。
標的の家族もろとも殺害という条件付きで、その中には小さな子供もいたが、ヘマをするはずもなく任務は完遂させた。
聖夜に殺人を犯した事へのせめてもの贖罪のつもりか、誰もいない礼拝堂で一人祈るようにいつまでも俯いている。
いつにも増して陰鬱なその表情を、祭壇にいくつも灯されたキャンドルの明かりが照らした。
しばらくして、リゾットの耳に重い扉を開ける音と小さな足音が聞こえた。
ゆっくりと顔を上げると、横にはよく見知った顔があった。

「あ、リゾット! 妙なところで会うわね、クリスマスだからお祈りに来たの?」

ふわふわの白いコートを着たトリッシュは、天使のように微笑んだ。
友達の家でクリスマスパーティーに呼ばれていた彼女は、交換したプレゼントを抱えて帰路につく途中たまたまこの教会に寄ったのだった。
教会に行くなど母の葬儀以来だったが、せっかくのクリスマスだからキャンドルでも供えていこうかしらと気まぐれを起こしたのだ。
リゾットは曖昧な返事をしただけで、仕事の帰りだとは言わなかった。
それがどんなに辛いものであっても自分の胸にだけしまい込む事にしており、彼女が知らなくていい事を聞かせた事は一度も無かった。

「手袋もつけてないじゃない、手、冷たくないの?」

血みどろになった手袋はすでに処分したので、リゾットは素手のままだった。
暖めてあげる、とでも言うようにトリッシュがミトンに包まれた手を差し出すが、リゾットは手を引っ込めたままだ。
ついさっき人を殺めてきたばかりの手で彼女に触れる事はためらわれた。
その様子に何を思ったのか、トリッシュは何も言わずリゾットに抱きついてきた。
分厚いコート越しでもトリッシュの身体はあたたかく柔らかだったが、せっかくの白いコートに自分の返り血が付くのではないかとリゾットは気が気でなかった。

「リゾット、この後予定がないならあたしの部屋に来てくれる?」

腕の中で囁かれた誘いの言葉にリゾットは、今夜はお前に何もする気が起きない、と控えめに断ろうとした。

「もう! そんなのじゃなくて、そばにいてくれるだけでいいの」
「……それだけでいいのか」
「ええ、それだけでいいの」

他愛ないやり取りをする二人を、飾られた絵の中の天使たちが見下ろしていた。
燭台の上の短いキャンドルはもうじき燃え尽きそうになっている。
外では雪が降り始めていた。


微熱(マラミド)

「具合はどうお?」
「特に変わりないわ…… ずっと最悪だから」

寝室に上がりこんできたマライアに、ミドラーはふかふかの枕に顔を埋めたままぶっきらぼうに応えた。
最近の一段と冷え込む気候のせいでまともに風邪を引いたミドラーはここ数日寝込みっぱなしで、せっかくのクリスマスにもベッドから起き上がれなかったのだった。
体調の悪さとイベントに参加できなかった悔しさに不機嫌なミドラーだったが、マライアは気にせず彼女が寝ているベッドの端に腰を下ろした。

「バカねえ、あんな裸みたいな格好で出歩くから風邪引くのよ」
「失礼ねッ! ちゃんと上に着てたわよ!」

ミドラーの言い分は半分だけ正しかった。
風邪を引いてしまったその日には豪奢な本毛皮のコートを羽織っていたが、敵スタンド使いに急襲されあわや捕らえられそうになった時、
ミドラーはとっさに毛皮だけを犠牲にして敵の手から逃れたのだった。
変幻自在の『女教皇』は応戦のため服に変える事も出来ず、おなじみの水着のような格好で街中を駆け回る羽目になったわけだった。
とはいえ、マライアも外は小雪が舞っているほど寒いのにいつも通りの大胆なマイクロミニで脚線美を見せ付けているのだが……

「まだ熱あるわね、寝てなさい」
「言われなくってもそーするわ」

勝手に額をくっつけて熱を診たマライアに、ミドラーは生意気な口を叩く。

「自分の立場をわきまえてもの言いな、この小娘!」
「きゃあああ寒いぃッ!! 毛布めくるんじゃねーわよ!!」

風邪で弱っている恋敵に『お仕置き』をしてやろうと、マライアは無理矢理ベッドに入ってきた。
しばらくベッドの中でごそごそしているうちに互いの肌が触れ合い、妙な事に気付く。

「……ていうか今も裸じゃない、治るものも治らないわよあんた」
「パジャマ着て寝るのって落ち着かないのよ、もっとこっち来て……」
「この露出狂、無駄にでっかいばかりの胸がそんなに自慢?」
「何とでも言いなさいよ……あったかーい……」

やがて毛布の端からマライアの衣服が一枚ずつ床に落ちていき、最後に黒い小さなショーツが衣服の山の上に落ちた。
狭く暖かい二人きりの空間で、とろけるような時間が過ぎていった。
後日風邪を移されたマライアにミドラーがどんなお返しをしたかは、また別の話。


初雪(ヴァニトリ)

もうクリスマスも近い12月のこと、朝早く目覚めたトリッシュが寒さに震えながらカーテンを開けると
外は薄明かりの中小雪がちらつき、いつもの景色がきれいに雪化粧していた。
わあっ、と思わず声を上げたトリッシュは、急にわくわくして大急ぎでパジャマから着替えた。
きっちり着込んだ上にお気に入りのコートを羽織り、ピンクのマフラーを巻いて家を出ると
膝丈のブーツの下で新雪が小さな音を立てた。
まっさらな雪の上に一番に足跡をつける喜びにはしゃぎながら、トリッシュは朝の散歩に出かけた。

同じくして、新聞と牛乳を取りに出たヴァニラもちらほら降る白いものに気付いていた。
カイロ暮らしが長いヴァニラは生まれてこの方雪を見たことがなく、雪に覆われた街並みは物珍しく思えしばらく目を奪われていたが
ふと、人気のない路上に友人の姿を見かけた。
同じくしてトリッシュもこちらに気付き、顔を輝かせて駆け寄ってきた。

「おはよう! 朝早いのねぇ、ヴァニラ」

雪が積もっててきれいだったから出てきちゃったわ、と笑い、トリッシュはヴァニラを散歩に誘った。
いつもなら主への務めを優先させて断るところだが、どういう風の吹き回しか……それともめったにない雪のせいか、
ヴァニラは新聞をダービー弟に任せて少しの間出て行く事にした。

「ヴァニラって雪は初めてなのね、あたしもこんなに積もってるのを見るのは初めてだわ」

家も木々も、二人が歩く道路も白く冷たく覆われている。
それは熱砂の地とは対照的な眺めだったが、悪くはない、とヴァニラは思った。
やがて二人は公園に辿り着き、雪だるまを作りましょうと言い出した。
雪だるまと言われても何か分からないヴァニラに、トリッシュが手本を見せた。
足元の雪を握って固め、ころころと雪の上を転がしていくと丸い雪玉ができた。
大小の雪玉を二つ重ね、頭と胴体にして腕の代わりに小枝を差してやる。
二人でしばらく雪遊びに夢中になる中、トリッシュは両手を口元にやってはぁーっと息を吹きかけた。

「つめたーい」

手袋もなしで冷たい雪に触れていたトリッシュの指先はピンク色に染まっていた。
ヴァニラはその冷えた手を自分の手で包んで暖めようとした。
もし他人が見れば、その様は仲のいい兄妹にでも見えたかもしれない。
包んだ華奢な指先には徐々に体温が戻り、ヴァニラはトリッシュがじっと自分を見上げているのに気付いた。

「ヴァニラはその格好で寒くないの?」

確かに、雪の早朝出歩くにしてはヴァニラはかなり薄着で、特に脚はいつもの通り太腿までむき出しになっている。
マフラー貸してあげるわね、とトリッシュは自分の首からピンクのマフラーをほどき、
半ば強引にヴァニラを屈ませて首に巻いた。
相変わらず脚は露出したまま吹きっ晒しだったが、マフラーのおかげかとてもあたたかくなった気がした。
唐突に、トリッシュのお腹がぐう、と鳴った。

「やだッ、恥ずかしい」
「何にも食わずに出てきたのか」
「ええ、もうそろそろ帰ろうかしら」
「……うちで済ませていくか」
「いいの!?」
「……今さっきDIO様はお休みになった所だ
 執事に頼めば朝食ぐらい用意してくれるだろう 嫌味を言われるかもしれないが」
「ありがと! わぁ、いっしょに朝ごはんなんて初めてね!」

朝日がさす中、二人は公園を後にした。
後には寄り添った小さな雪だるまが二つ、残されていた。


愉快なハロウィン(マラミド&ヴァニラ)

不吉な赤い月が昇る埃及の夜、主の思い付きによるハロウィンパーティーが開かれた。

「DIO様、Trick or treat!」

いつにも増して色っぽく登場したのは、人魚に扮したミドラーだった。
貝殻のアクセサリーで大胆に開いた胸元を飾り、裾の長いターコイズブルーのドレスに鱗のようなスパンコールが無数にきらめいている。
そんなミドラーをやれやれと見ているマライアも仮装の類は嫌いではないらしく、
黒猫の耳と尻尾を模した飾りを着けて、首から下をラインのはっきり出る黒いボディスーツで覆っている。
黒一色の中で、鈴付きの赤い首輪がアクセントになっていた。
もちろん、二人ともハロウィンに付き物のお菓子が目当てであるはずがない。

「このDIOにどんな悪戯をするつもりだ?」

そう言うDIOもいつもの格好とは違う、黒を基調とした19世紀風のゴシックな衣装を身にまとい正統派なイメージの吸血鬼に扮している。
さすがに本物は違うわぁとマライアとミドラーはうっとりため息を漏らした。
これからどんな淫靡な悪戯に耽ろうかと待ちきれない二人だったが、そんな甘く淀んだ雰囲気は思わぬ邪魔者によってブチ壊された。

「アイスか、ずいぶん長い事かかったな」
「遅れまして申し訳ありません。 斧と鉈と、どちらにしようか迷いまして……」

闖入してきた邪魔者を一目見て、マライアとミドラーは思わず「ヒッ」と声を上げた。
それは黒い髑髏の覆面を被った筋骨隆々な上半身裸の男だった。 左右の手に握られた凶器――斧と鉈は鈍い光を放っている。
不気味な男の正体は、中世の処刑人に扮したヴァニラだった。 よく見ると、覆面のデザインは彼のスタンド『クリーム』にそっくりだ。
それはコスプレという面白おかしいものではなく、いつにも増して禍々しいその風体はどう見ても本職の殺人鬼にしか見えなかった。

「この血が染みて黒ずんだ柄が実にリアルだ」
「実際に処刑に使われていた本物でございます」
「………………」

どこかずれた主従の会話を聞きながら、二人の美しい悪魔は遠い目でお菓子を食べ始めた。


楽しいハロウィン(デボミド)

10月も終わりに近づいたある日、デーボはミドラーがカボチャの形の器にせっせとお菓子を詰めたり、きらきらした衣装を用意しているのに目をつけた。

「忙しそうに何をしている」
「ハロウィンのために用意してるの。 勝手にお菓子を食べたらブッ殺すからね」
「ハロウィン?」

何の事か分からない様子のデーボに、ミドラーはお化けの仮装をしてお菓子を強請る祭りだと適当に教えてやった。

「……オレも何か仮装でもするか……」

人を脅して甘いもん貰えるってボロいよな、とデーボは傷だらけの顔にニヤリと引き攣れたような笑みを浮かべた。

(それって、ひょっとしてギャグで言っているの……? そのツラで!!
 ていうか、あんたお菓子欲しいの!?)

彼なら仮装などせずとも、素顔のままで町中のお菓子をせしめられるだろう。
後日、このやりとりを忘れた頃にミドラーはテーブルの上に無造作に広げられた雑誌を見つけた。
開かれたページはホラー映画やゲームの造形特集で、『ピン●ッド』(@ヘルレイザー)と
『レッ●ピラミッドシング』(@サイレントヒル)の写真に赤い丸印がつけられていた。

(こんなのやる気か!? 怖すぎて洒落にならないだろ……)

こんな怪物がドアの前に立ってお菓子をねだっていたら、飴玉やチョコの代わりに鉛弾をたっぷりご馳走したくなるだろう。
せめてフランケンシュタインとかゾンビとかメジャーなのにしなさいよ、と忠告するとデーボはまた予想外の事をしでかした。

「だが、自前のだけだとちょっと傷が足りねえな…… だいたいあの頭のボルトってどーやって埋め込むんだ?」

髭剃りする時のように鏡の前で剃刀を持ち、特徴的な顔の縫合傷跡を作ろうとするデーボをミドラーは必死で止めた。
マスクや特殊メイクではなく、素顔自体を加工してどうにかするつもりらしい。
足りないのは傷じゃなくてあんたの腐れ脳みそだろーがッ!! 脳だけなら立派にゾンビ並みだわ!! と怒鳴りながらも
デーボの何事にも手を抜かない徹底したプロ意識(?)に戦慄するミドラーであった。


浜辺の華(マラミド)

「せっかくの浜辺でも、いい男がいなかったらつまんないわねぇ」

ビーチベッドの上に寝転んだマライヤがボヤいた。
鮮やかな原色のホルタービキニが褐色の肌によく映えている。
銀色のピンヒールミュールが蓮っ葉に投げ出された脚線美を引き立てていた。
その隣のミドラーは小花柄の水着に造花の飾りがついたサンダルを履き、透ける素材のパレオを腰に巻いている。
水着姿だというのに、彼女の場合不思議といつもより肌の露出が少なかった。
この静かな浜辺にはいい男どころか、彼女らのほかには人っ子一人いない。
まるで高級リゾート地のプライベートビーチのようだ。
空はどこまでも青く晴れ渡っていたが、よく見ると光源であるはずの太陽はどこにもなかった。

「ウミネコの鳴き声や海水の冷たさまで、すごいリアルだけど……」
「あくまで気分だけって感じよね、つまんない」

ミドラーは溜息をついて小さな傘のささった海の色のカクテルを口にした。
館の執事であるダービー弟に(むりやり)用意させたものだ。

「あ、そうだ! 太陽がないんなら、DIO様もここで遊べるんじゃない?」
「いいわねそれ、お誘いしようかしら? きっと水着でもステキに違いないわッ!」

誰もいない浜辺に、きゃっきゃっとはしゃぐ嬌声が響く。
二人のわがままに付き合わされているケニーGは(これって時間外労働じゃあないのか……?)と内心ボヤいていた。


バカンス(リゾトリ)

どこまでも広がる青空に湧き上がる積乱雲、美しい入り江に打ち寄せる白い波。
エメラルド海岸という名にふさわしい絶景だ。
浜辺に立てられたパラソルの影で、ピンクのボーダーの水着を着たトリッシュは冷たいペリエを口にしていた。
水着に合わせたラメ入りのピンクのペディキュアがむき出しの素足に光る。
トリッシュの視線の先、同じく水着のリゾットが海から上がってきた。
生まれ故郷はシシリーで海のすぐそばに住んでいたと言う彼の泳ぎは、遠くから見てもかなり達者だった。
バカンスに出かけるのも海で泳ぐ事も久し振りだったが、リゾットなりにこのひと時を満喫しているようだった。

「海に来たのに、泳げないのか?」
「泳げるわよ(バタ足だけど)、日焼けしたくないだけ」

とはいえ、日焼けを気にしてこれほど青く澄んだ海に入らないのはもったいない。
どうしようかしら? と悩むトリッシュに、リゾットはまた声をかけた。

「ほら、お前にみやげだ」

さっき海の中で拾ってきたらしい。
貝殻か何かかしら? とトリッシュは思ったが、差し出されたリゾットの掌に乗っていたのは蠢く極彩色のウミウシだった。
きれいな色だから気に入るかと思った、というリゾットの言葉をかき消す絶叫が美しい浜辺に響いた。

「いやあああぁぁ気持ち悪いいいぃぃ!!! ひぃぃぃ動いてるぅぅ!! キャーーー!!」
「あと、ナマコもあるんだが」
「こっちに近づけないでぇぇぇ!!」

二人の騒ぎを横目に、おともの亀(ココ・ジャンボ)は暑そうに首を引っ込めた。


水着(ヴァニラ)

(※いつもの事ですが、時間軸や背景設定がかなり適当です)

燦々と太陽が照りつける、吸血鬼にとっては最も忌むべき季節。
世間のニュースも街を歩く人々の様子も、すっかり夏らしいものになっていたが
ヴァニラは意に介さずいつもどおりDIOに仕える日常を送っていた。
今日から夏休みだと言うトリッシュは、うきうきした様子でスイカバーを食べながらヴァニラに話を振ってきた。

「ヴァニラはどこか行かないの? 海とかプールとか」
「DIO様が行かれるならお供するが……そもそも水着なんか持っていない」
「それなら、いっしょに買いに行きましょ! あたしも新しい水着欲しいと思ってたの!」

こうしてヴァニラは言われるままホイホイと買い物についていってしまったのだった。
女の買い物は長くなるものだが、ヴァニラの水着はそれ以上に選ぶのに時間がかかった。
ヴァニラは適当なのでいいと言ったが、トリッシュが「いいのを見立ててあげる!」と余計なおせっかいを焼いたのだった。
そしてとうとう、トリッシュとヴァニラ両方のお眼鏡にかなう水着が見つかった。

「身に着けるのが少し難しいが……余計な装飾が無いのが気に入った」
「すっごい斬新な水着ッ! 絶対これがいいわ、超似合ってるッ!!」

ヴァニラがその日館に帰ると、折り良くバカンスの話が持ち上がっていた。
そして、買ったばかりの水着に着替えたヴァニラが浜辺に姿を現した時、その場にいた者全員の視線が彼に集まった。
鍛え抜かれた肉体にその水着はよく似合っていたが、それはどう見てもふんどしだった。
もしジョセフあたりが目撃すれば、柱の男の生き残りか!?と思っただろう。
あまりにどぎついインパクトに、うっかり直視してしまった者はみな日射病のようなめまいを感じた。
幸いにも見ないで済んだのは盲目のンドゥールと、棺桶の中にいるDIOだけだった。


ビーチの悪魔(デボミド)

南欧で一仕事終えた後、マライヤとミドラーはただ帰るのはもったいないと
陽光差すホテルのビーチでリゾート気分の余暇を楽しんでいた。
蜜に群がる蟻のように寄って来る男をパラソルの影で品定めしていた二人は、浜辺におかしなものを見つけた。
いつからそこにあるのか分からない、もちろん持ってきた覚えも無いクーラーボックスが、ちょこんと置かれているのだ。
しかも奇妙な事に、かすかにゴトゴト動いているようだった。
マライヤは不審なそれをただ遠巻きに見ていたが、ミドラーは『女教皇』を南京錠つきの鎖に変え
がんじがらめにしたクーラーボックスを岩場まで引きずって行き、そのまま海に捨ててしまった。

「いいの? 誰のか分からないもの不法投棄しちゃって」
「あのぐらいで死ぬとは思えないわ」

噛み合わない会話だったが、マライヤはそれ以上追究せず額に載せたサングラスを下ろした。



その日、地元誌の夕刊に漁船の網に全身傷だらけの男がかかった、という記事が小さく載ったという。


殺伐同棲(デボミド)

夜中に目が覚めてトイレに立ったミドラーは、信じられないものを見て立ちすくんだ。
薄暗いリビングで、デーボが大きな身体を丸めて人形で遊んでいたのだ。
どうやら右手にあるテディベアを女役、左手の藁を束ねた呪術道具の人形を男役に見立てて一人芝居の人形劇に興じているらしい。
ご丁寧に声色まで使い分けて演じている。

熊子「ああ愛しい藁夫、こんな毛深いあたしでもいいの?」
ミド(うわあ~~……どこからあんなかわいい声が出るんだか……)

藁夫と熊子の愛の行方を見守っていたミドラーだったが、そこに別の人形が乱入してきた。
それはデーボが最近購入したという、紅いドレスのアンティークドールだった。
ひとりでに動いているのは、『エボニー・デビル』を取り憑かせて操作しているからだろう。
元は上品な表情は憎悪に歪み、あろうことか小さな手に包丁を握っている。

深紅「よくも藁夫さんを奪ってくれたわねこの泥棒猫ッ! てめーの×××を××殺してやるわァァァメーーーーン!!!」(いきなり刺す)
熊子「ぶっぎゃあーーァァァ!! よ……よくも……だがただじゃあ死なねえェ! 貴様を地獄へ道連れにし
ミド「やめて! やめてあげてッ!! 人形劇なのに何なのこの修羅場!?」
デボ「(素に戻って)!!! おっ起きてやがったのか!? いつから見ていたッ!?」

その夜から、秘密の人形劇にはただ一人の観客ができたそうな。


パンプスをはいた猫(マライア)

(あ…ありのまま 今起こった事を話すわ!
『あたしが朝起きて何か変だわと思ったらいつのまにか猫の耳が生えていた』
な…何を言っているのかわからねーと思うがあたしも何でなのかわからない…
頭がどうにかなりそうだわ…新手のスタンド攻撃だとかネコミミモードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ
もっと恐ろしいご都合主義の片鱗を味わったわ…)



猫を象徴とするバステト女神の加護か、それとも崇りかは分からないがマライヤの頭に猫の耳が生えた。

「もう、何なのよォ~これ! こんな耳じゃあピアスもつけられないじゃあない!」

フードで隠そうにも耳の形に出っ張ってしまい、不恰好極まりない。
さらに尻からは同じ色の尻尾が生えて、履く下着にも困る有様だ。
マライヤは不機嫌の絶頂だった。

「ほ~らニャンコちゃん、猫じゃらしよォ~♪」
「フーーッ!! 見世物じゃあねーわよ!! 向こう行ってろ、ビチグソがッ!!」

からかってくるミドラーに突っかかる様は、背中の毛を逆立てて怒る猫そのものだ。
そこにタイミング悪く主が姿を現した。

「騒がしいな……」
「DIO様ッ」

マライヤはあわてて両手で猫耳を隠そうとしたが、とても隠しきれるものではなかった。
それは何かと主に問われ、観念して両手を下ろす。
うなだれるマライヤとは対照的に、可愛い猫耳はぴんと立っていた。
DIOの手が猫耳に伸び、摘んだり軽く引っ張ったりして感触を確かめる。
どうやら本物らしいと納得したDIOは、なおも興味深そうに耳を弄り回す。
指が触れたのに反応して、猫耳がぴくぴくと動いた。
面白いな、と呟きながらDIOの指はビロードのような毛並みを愛撫した。
耳が猫のそれに変わろうとも、撫でられて心地良く感じるのは同じなのか
マライヤの唇から恍惚とした吐息が漏れた。

「ふぁ、あ……」

しなやかな尻尾がゆるく振られ、もどかしそうにくねくね動いている。
それに気付いたDIOは、尻尾を掌に捕まえて柔らかな毛を逆撫でした。

「なるほど、確かに猫だな」
「…………!!」

腰が震え、尻がきゅうっと締まるのがスカートの上からでも分かった。
マライヤは必死に声を噛み殺していたが、彼女が今どんな状態であるかは一目瞭然だった。
ひどく敏感らしい尻尾を弄ばれ、自慢の脚をもじもじと擦り合わせながら荒くなる息を必死に抑えている。
いつも強気なマライヤが立ったまま辱められているような姿は、嗜虐心をそそる眺めだったが
DIOはそんな事など気にも留めずに見事な毛並みを堪能するだけして、そのうちに飽きてどこかに行ってしまった。
腰が砕けてその場にへたりこんでしまったマライヤを遠巻きに見て、
今度ためしにマタタビを嗅がせてみたらどうなるかしら? とミドラーは思った。


裸エプロン(ミドラー)

あなたが目を覚ますと、キッチンからいい匂いがした。
寝ぼけまなこを擦りながらキッチンに入ると、昨夜ベッドを共にした女が
何とも危なっかしい格好で朝食の支度をしている。
ミドラーはあなたに気付くと、おはよう、と挑発的な笑みをあなたに贈った。
エプロン以外何も身に着けてはいないその姿は不思議に倒錯的で、一目見て目が覚めるほどいい眺めだ。
あなたの手に余るほどの膨らみが、エプロンの横からはみ出してしまいそうだ。
乳首は薄い生地に透け、剥き出しの丸い尻の上で蝶結びが揺れている。
彼女のスタンドが変身・擬態を得意とするように、ミドラーはこうして手を変え品を変えあなたを誘惑するのだった。
よく考えてみればいつもと露出度はあまり変わらないが、その艶かしい姿に見とれている
あなたの反応に満足したのか、ミドラーはあなたに朝のコーヒーを薦めた。
マグカップに注がれた芳しいコーヒー……しかし何か妙な予感がして、伸ばそうとしたあなたの手がふと止まる。
その様子に、『普通の』コーヒーだから安心していいわよ、とミドラーは妖しく笑った。
あなたは普通の美味しいコーヒーを啜りながら、この油断ならない女の誘惑に乗るかどうか朝から葛藤するのだった。


裸に彼シャツ(マライヤ)

あなたが目を覚ますと、隣には褐色の肌の女が眠っていた。
ゆうべの情事の名残のくしゃくしゃのシーツに包まって、しなやかな身体を丸めて眠る様は
まるで子猫のようだった。
軽く揺すってやると、マライヤは不機嫌そうにもそもそ起き上がり
あなたのシャツを羽織っただけの格好で煙草に火を点けた。
前を閉めてもいないので、白いシャツの間から覗く褐色の膨らみがよけいに艶かしい。
お世辞にも行儀がいいとは言えないが、そんな自堕落な格好も彼女には似合う。
マライヤが目覚めの一服を楽しんでいる間、あなたは彼女のために朝食を準備する。
一緒に食べよう、とトレイに載せてベッドまで運んでやると、女王様扱いに気を良くして
にっと笑ってカフェオレのカップを受け取った。
マライヤは自分の肌と同じ色になるまでミルクをたっぷり入れるのがお気に入りで、
もちろんその好みを知っているあなたはいつものように淹れてやった。
両手でマグカップを持って、猫舌らしくふうふうして冷ましている様は
ゆうべの奔放さとはまた違う魅力で、無防備な表情に思わず見とれる。
ふと、何かに気付いた様子のマライヤはベッドから身を乗り出して
口元に卵の黄身がついてるわよ、とあなたの唇の端を舐めた。
目を白黒させるあなたに、マライヤは悪戯っぽい顔を見せる。
そんなしぐさもまた猫に似ており、あなたは微笑ましく思うのだった。


ベビードール(トリッシュ)

鏡の中のあたしとにらめっこするようにいろんな角度から見て、おかしな所が無いか入念にチェックする。
くるっと回ってみると、裾のフリルがふわりと揺れた。
あたしが今着ているシルクのベビードールは、立ち寄ったランジェリーのお店で思わず買ってしまった新作だった。
花嫁さんのヴェールみたいにひらひらで、可愛いフリルがいっぱいついてて、
たっぷりギャザーを寄せた胸の所をリボンで結ぶようになってて、大きく背中が開いたデザインもあたし好みで……
とにかく何もかもがとっても可愛くて、気がついたときにはお揃いのパンティとガーターも一緒に買ってしまっていたの。
財布からお小遣いが飛んでいってしまったけど、全然後悔はしていないわ。
でも、買ったのにはもうひとつ理由があるの。
これを着たあたしを見たら、あの人、びっくりするかしら? ……って思ったから。
誰かに見せようと思って下着を買うなんて、今まで考えたこともなかったのに。
それに、もしかしたら……もしかしたら、だけど、彼がちょっとでも喜んでくれたらいいなって……
あの人が何をしたら喜ぶのか、あたしはよく分からない。
この前初めてした時だって、しゃぶられて喜ばない男なんかいないって聞いてたのに
「そんな事しなくていい」って言われちゃったし…… どうなのよ、もう。
……そんなあたしの思考に横槍を入れるように携帯が鳴った。
この着信音は彼からのメールだわ。 ただボタンを押すだけなのに指先まで期待でどきどきしながら、液晶画面を見ると
『今からそっちに行ってもいいか?』とだけあった。
その一言だけで、あたしはさっきまでの憂鬱も忘れて、思わず胸を弾ませていた。
この格好であなたをお出迎えして、びっくりさせてやるんだから。


煙草(アヴドゥル×マライヤ)

女性が煙草を吸うのは感心しない、と言われた。
古いタイプの男っぽかったから、ああそうと適当にはぐらかしたけど
美容に良くないし子供を産む時にも悪影響だ、なんてくそ真面目なツラでお説教してくる。
子供なんてうっとうしい物こさえるつもりなんかないわ、と内心毒づいているうちに
ひとつ退屈しのぎを思いついた。
火を点けたばかりの煙草を唇から離して、そっと顔を近づける。
濃い眉に彫りの深いはっきりした目鼻、あたしと同じ褐色の肌。
強い光を宿した眼とあたしの眼がかち合う。

「……口が寂しいの」

そっと囁いて、茹で蛸みたいになるかしら? それとも嫌がるかしら? と思いながら唇を重ねた。
……だけど意外な事に、反応はどっちでもなかった。
分厚い掌がごく自然にあたしの腰を抱き寄せ、口付けがより深くなるようにと顔を傾ける。
熱い舌が絡み合って、貪られているのが分かった。

「んん……」

何よ、巧いじゃない。 やる事やってるってわけ?
こっちもその気になって、挑発する気で首に腕を回してやったら
咎めるように大きな手で肩を押さえられた。
あたしの指から落ちた煙草は、床に落ちる前に一瞬で燃え尽きて灰になった。

「ねえ、まさかこれで終わりなんて言わないわよね」

あたしは久し振りにわくわくしていた。
たとえ、自分の方から泣き喚き懇願するような手荒な目に遭ったとしても続きが楽しみだった。
武骨な指が、タロットカードを扱うときと同じ繊細さであたしの身体の線をなぞる。
その動きに堪らなくなって、白い長衣越しに広い背中にしがみついた。
触れられた肌が徐々に熱を帯びて溶かされていく。
ちょっとした悪戯の、火遊びのつもりだったのに……
もう、すでに取り返しがつかないほど燃え上がってしまっていた。
あたしは火傷しそうな愛撫を受けながら、このままこいつに好いようにされていようか、
それとも逆に空っぽになるまで搾り取ってやろうかと愉しい選択に思い悩んでいた。


ピンクのロマンポルノ リゾット-娘と愛犬-

トリッシュが悪戯な表情で、ねえ目をつぶって、と言ってきた。
何か企んでいると思ったが、言われるままに目をつぶると
首周りに何かが触れる感じがし、カチャカチャと金属の擦れる小さな音がした。

「何だこれは」
「首輪よ」

よく似合ってるわ、と笑うトリッシュの手には鎖が握られている。
黒いエナメルのこれは、どうやら犬用ではなく人間用のものらしかった。
いかがわしい店で買ったのか、それともメローネか誰かから入手したのか……
いや、どうやって手に入れたかなどどうでもいい。
リゾットは悪趣味ないたずらに付き合う気は無いとはっきり態度で示した。

「トリッシュ、何に影響されたか知らんがこんな下らん真似は」
「お散歩行く? それともごはんがいいかしら?」

トリッシュは全く聞く耳を持たず、リゾットを大型犬か何かに見立てたつもりで頭を撫でている。
しかし虚仮にされっぱなしで黙っているリゾットではなかった。
首輪と繋がった鎖でトリッシュの両手を絡め、首根っこを掴んで膝の上に押さえつけてやった。
スカートを捲られて下着を下ろされ、青くなったトリッシュは逃れようと暴れたが
リゾットは押さえつける力を緩めるつもりはないようだった。

「こんないい物をもらうだけでは悪いからな…… 俺からもプレゼントだ」
「…… いやぁ! 何よこれッ」

むき出しの肌に冷たい金属が触れる。
それはメタリカで作られた鉄製の貞操帯だった。 ご丁寧に小さな錠前まで付いている。
柔肌と鈍く光る鋼鉄のアンバランスが妙に扇情的な眺めだった。

「よく似合っているぞ」

自分が言ったのと同じ台詞でからかわれ、トリッシュは耳まで赤くなった。

「こ、こんなの、柔らかくしてすぐに脱げるんだからッ」
「……そうだったな」
「……でも、たまには面白いから、もうちょっとこのままでいてあげるわ」
「そうか」

リゾットの含みのある笑みに面白くない気分になりながらも、トリッシュは首輪の鎖をぎゅっと握った。
あなたは組織のものでもボスのものでもなく、このあたしだけのものなんだから。


ナースプレイ(デボミド)

ポルナレフに返り討ちにされた後、シンガポールの病院に担ぎ込まれたデーボは
辛うじて一命を取り留めたものの、退屈な入院生活にうんざりしていた。
そんなある日、検温に来た看護婦を見てデーボはぎょっとした。
優雅な足運び、白衣がはちきれそうな豊満な胸、お加減はいかが? と笑う唇の妖艶さ。
看護婦の白衣に身を包んではいたが、まぎれもなくその女はミドラーだった。
さてはしくじった自分を始末しに来たのかと身構えたが、どうやら彼女は別口で一仕事終えたばかりのようで
本人いわく、特別個室に入院中のVIPを殺ってきたとの事だった。

「ついでだからお見舞いに来たのよ。 でも本当にひどい傷ねぇ、よく生きてたわね」

いつにも増して傷だらけの姿をじろじろと眺め回し、遠慮の無い言葉を口にする。
デーボは内心早く帰って欲しいと思っていたが、ミドラーは勝手にベッドの上に乗っかってきて
頬の古傷に口付けた。

「でもあたし、傷のある男ってセクシーだと思うわ」

何のつもりだこの女は? と混乱するデーボをよそに、刀傷や銃創をひとつひとつ指でなぞりながら
ミドラーは色目を使ってくる。
……そういえば、いつかマライヤがこんな事を言っていたような気がする。
『あの娘けっこうゲテモノ食いっていうか、けったいな男に入れ込む趣味があるのよねぇ』
まさか、と思ったがどうやらそのまさかのようだった。
デーボが動けないのをいい事に病衣の前をはだけ、白い指があちこちを這い回る。
そのうちに下半身にまで手が伸び、さすがにここには傷は無いのね、と面白そうに弄り出した。
満身創痍だが、局部まで切り刻まれずに済んだのは不幸中の幸いだった。
こんな時だったが、デーボはクソったれのポルナレフにちょっとだけ感謝した。
彼女の作為かそうでないのか、白衣の胸元から覗く見事な谷間が目の前で揺れている。
せっかくだから自分も愉しませてもらおうと、デーボはためらわず白衣に両手をかけて紙のように引き裂いた。
ボタンが弾け飛び、レースの下着に覆われた巨大な膨らみがこぼれ出した。
全身傷だらけのデーボとは対照的な、傷どころか染みひとつない柔肌があらわになる。
ミドラーは怯えるどころか、挑発的に笑って自ら下着を取り去った。

「たまにはお人形じゃなくて、生身の女も相手してみる?」


怪我人に無理はさせられないとミドラーが上になり、自分のペースで腰を使っていたが
そのうちに焦れたデーボが下から突き上げる形になった。
激しい動きにナースキャップがずり落ち、束ねた髪がほどけて乱れる。
デーボは折れそうに細い腰を力任せに掴み、荒々しくミドラーを揺すり立てた。
倒れこんだ上体のそこかしこを甘く噛み、きつく吸って白い肌の上にいくつも痕を残してやる。

「やっ……あっ、だめっ、傷が……開く……」
「心配してくれてんのか?」

縫合したばかりの傷口から血が滲んでいたが、もはや知った事ではなかった。
入院中で溜まっていたので、一度や二度では終わりそうにない。
ミドラーが悩ましい声を上げて肩口に爪を立ててくる。
またいくつか、傷が増えることになりそうだった。

悪魔が家にやってくる(デボミド)

デボ「さーてと、さっそくオレの荷物を運ばせてもらうぞ」ゴトゴト
ミド「うわっ何この大量の箱……家具? 服?  ……ッ!!?」
デボ「あーっと触るなよ! 大事な商売道具だ」
ミド「(木箱の中から長い髪の毛がはみ出……!? い、いえ見間違いよ! きっとココナッツのスジか何かよ!)」
デボ「次の仕事はどいつを使うかな……」


俺の嫁(デボミド)

宅配「お届け物でーす ハンコお願いしまーす」
デボ「おおっやっと着いたか、拇印でいいな?」
ミド「何そのトランク……? あ!女の子が入ってる!? あんたついに人身売買に手を……やりかねないと思ってたけど」
デボ「違げぇーよ!! 貯金をはたいて特別注文したダービーメイデン第5ドールだ!
   見ろッこの表情、球体間接の動き!! 生きてるみてーにリアルだろ?」
ミド「ええ~~? まさか、寂しー男が生身の女の代わりにする愛玩用のお人形……ってやつじゃあないわよねぇ?」
デボ「え…… お前よくそんないやらしい事思いつくな…… ちょっとさすがに引くわ……」
ミド「あんたに言われたくないわよこのド変態がァーーーー!!」


DIOジョルトリSS「暗くなるまで待てない」後日譚

同時に二人の人を好きになってしまったことってある?
あたしが付き合っている彼氏(きゃー!言っちゃった!)はジョルノと言って、
同い年とは思えないほどに頭が良くて、とても勇気のある男の子なの。
彼と出会って、あたしの心にはさわやかな風が吹いたの。
でも今は、もう一人惹かれてたまらない人がいる。
それはよりによってジョルノのお父さんで……
心の中心に忍び込んでくるような凍りつく眼差し、黄金色の髪、
透き通るような白い肌、男とは思えないような妖しい色気……
その全てにシビれるあこがれるゥ!!
あたしにはジョルノがいるのに、いけないと分かっているのに、あのひとの事を……
ああ、お名前を聞いておかなかったのが本当に惜しまれるわ。
……でも、あたしの心の中でだけ呼ぶなら
勝手にあのひとにお名前をつけてもかまわないわよね?
(例:丘の上の王○様とか紫の○ラの人とか)
そうだわ! 服にハートの飾りをつけてらしたから
ハート様 と呼びましょう!! 我ながら冴えてるわッ!



「ハークショイ!!」
「どうしました父さん? バカは風邪引かないはずですけど」
「何やら悪寒がする。 ペストかもしれん」


性餐 (ヴァニラ&DIO)×トリッシュ

どことも分からない薄暗い部屋の中、大きな寝台の上でひとりの少女が二人の男に口と性器を同時に犯されていた。
淫蕩の熱を帯びたその眼からは輝きが失せ、半ば正気を失ったように見える。
四つんばいにされて長髪の男に後ろから貫かれながら、金髪の男のものを口に含み苦しそうに奉仕していた。

「んっ……んむぅっ……」

ヴァニラの命懸けの訴えに加えて、トリッシュ本人の純潔と引き換えに彼女は血を吸われずに済んだが
その命も与えられる快楽も、いまだ冷酷な主の手の内にあるのは変わりなかった。
つたない舌使いを愉しみながら、DIOはヴァニラにもっと腰を使って悦ばせてやれと命じた。

「さっきまで生娘だったくせに、もう物欲しそうにしている」

DIOの言葉通り、自分の方から尻を揺すり出しているトリッシュの耳は真っ赤に染まって
今彼女がどんな表情をしているのか背後からでも分かるようだった。
万が一にもトリッシュの中に自分の種を零す事が無いようにと、ヴァニラは自ら紐で根元を縛っていた。
その赤黒く怒張した肉棒が、先程初物を賞味した時のように小作りな器官を限界まで押し拡げている。
散らされた名残が赤く滲んだ様は痛々しく、さすがにヴァニラも後悔を覚えたほどだが
DIOから口移しに与えられた媚薬のおかげか、今は悦んで締め付けてさえいる。
形ばかり腰を動かすヴァニラだったが、拒まず吸い付いてくる粘膜の心地よさに
劣情を抑える事が出来ず、つい奥まで腰を進めてしまう。
激しく突かれるあまりにがくがくと揺れ、崩れそうになるトリッシュの腰を両手で抱え
ヴァニラは息を荒くして柔らかな内を蹂躙した。
もしも今トリッシュの口が自由になっていたなら、またいっちゃう、だめ、もっと、と嬌声を上げていただろう。

「アイスよ、この娘はお前のがいたく気に入ったようだな」

すでにトリッシュにはこの異常な交合を嫌悪する感情はなく、ただ本能で快楽のみを求める生き物になってしまったように
口の中の熱い塊を夢中でしゃぶり、吸い上げた。
その熱心さがお気に召したのか、DIOはついにトリッシュの喉の奥へと埒をあけた。
口を塞がれていた時はあれほど苦しかったのに、抜かれた途端にまたそれが欲しくなった自分の心理を
疑問にさえ思わないままトリッシュは濃厚な精を味わった。
同じくして絶頂に差し掛かっても、出すに出せずヴァニラは苦しいばかりだったが
処女を失ったトリッシュの苦痛に比べればこのぐらい何でもないとただ堪えていた。

「褒美に好きな時にアイスを貸してやろう。張型代わりに使ってやれ」

とうとう荒淫に疲れ果てて寝台にくずおれたトリッシュの耳には、もはやDIOの言葉も届いていなかった。


ディオ・ブランドー ―その青春―

ディオ「おーい! みんな上ってこいよ! 隠れてジョナサンの悪口言おう!」
女A「ちょっと変なのが何か言ってるわよ」
女B「向こう行きましょう ここで遊ぶのは危ないわ……痴漢されるからね」
ディオ「なんだって?! ま……待て!! 何があぶないだッ! 言ってみろッ! 誰が痴漢だッ!」
ガッシ! ボカ! メメタァ!
女A「ケッ! 色魔のディオめ! 行きましょう! こいつの射程距離に入ると妊娠させられるわ!」
女B「行きましょう!」
ディオ「誰が色魔だ! もどってこい! ぼくが何をしたってんだ!!
  エリナ! エリナだな! エリナがあいつらにぼくの不利な事実を吹き込んだのだッ」











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