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奇譚小函―きたんこばこ―

R-18 二次創作テキストサイト

俺屍サマナー

OVERHEAT OVERFLOW(R-18)


小説で男女が愛し合う場面を読んだ事もあるし、同級生の中にはもう経験したと誇らしげに言う子もいる。
何も知らないわけではないが耳年増でもなく、ただ、自分にはまだまだ先の事だろうと思っていた。
それだけに、実際にこんな時が来て、初めての相手を前にして何と言うべきか灯代は分からない。

(若葉ちゃんから聞いておけば良かった)

今の灯代は、何重もの真っ白いフリルで飾られたローライズに、同じく白いフリルが可愛らしいブラを身に着け、 そのセットの上に、胸元に水色のリボンがついた透けるベビードールを重ねた格好だった。
友達と買いに行って箪笥の中に仕舞ったきりの下着だったが、今日思い切って着てみたのだった。
とっておきの装いで迎えた灯代を見て、タタラ陣内は自分の方が照れ臭いように口元を綻ばせた。

「こんないい格好、俺だけが見るなんて勿体無いぐらいだな」

いつもの浴衣から覗く首筋も無意識の色香があるが、今夜はまた分かり易いぐらいに灯代の意気込みが伝わってくる格好だ。
やや日焼けした彼女の肌に白一色の装いは実によく似合っていたが、誘惑するというには清楚すぎる見た目だった。
灯代は布団の上にちょこんと座り、決闘でもするように緊張した面持ちで口を開いた。

「初めてで、不手際があるかもしれませんけど……でも、途中で逃げ出したりしませんから」

これから床入りするにしては硬過ぎる台詞だったが、一生懸命な灯代の気持ちは痛いほど陣内に伝わった。

「よろしくお願いします、陣内様」
「俺は別にいいが……それを着けたままおっ始めるのか?」

陣内が指したのは下着の事ではなく、灯代の太腿のガーターリングに挟まれた短刀だった。
試練を受けてサマナーになった時、折れた『天目一刀』を陣内が打ち直して作ったこの短刀を、灯代は入浴と眠る時以外はほとんど身に着けて過ごしている。
いざという時の隠し武器として、またお守りとして肌身離さず持っているのだった。
薄い下着だけのしどけない格好のせいで、太腿に結わえ付けた短刀が余計に物々しい。
敵国の将を暗殺しに閨に入る烈女の逸話を思い出し、もっとも灯代ならそんな色仕掛けよりも一太刀で斬り捨てる方を選ぶだろうと一人苦笑した。

「事の最中に、これで俺の首をかっ切る気だったのか? 油断のならん奴だな」
「……外すのを忘れてただけです、そんなつもりは」

失敗したとばつの悪そうな灯代に構わず、陣内手ずからそのガーターリングごと短刀を外して武装解除した。
誰かの手でこれを外されるなど初めてで、灯代はどぎまぎして自分の太腿を直視できなかった。
一々意識しないぐらい、あの短刀を身に着けているのが当たり前になっていた。
目の前の男神がいつもそばにいるのと同じぐらいに。
こんな事をするのも当たり前になるのだろうか、とふと思い、わけもなく体が熱くなった。

「おい、それも取らなくていいのか?」

耳飾りも着けたままだった事に気付いた灯代が、うっすら染まった耳朶に手をやる。
陣内が手ずから穿刺して着けてやった小さな耳飾り。
今度はあの時のような真似事ではなく、本当に灯代と情を交わすのだと改めて思う。
房事など数百年ぶりで、しかも相手にとって初めての男になるのだから、陣内自身も灯代ほどではないが上手く事が運ぶか気がかりだった。

「今、外しますから」
「構わん、俺がやる」

こうして身に着けたものを一つ一つ取り去っていくのはなかなか愉しい作業だ。
灯代に代わり両の耳飾りを外してやろうとしたが、陣内ともあろうものが外すのに思いのほか手間取り、尖った金具で指を傷付けてしまった。
(焦ったりするもんじゃねえな……)と忌々しげに指先を擦り合わせる仕草を見て、灯代が声をかける。

「陣内様、指……」
「ああ、こんなもん、舐めときゃ」

治る、と口に出そうとした時、灯代は陣内の傷付いた指先をその唇に含んでいた。
ちょっと突いて血が滲んだ程度だったが、少しでも痛まないようにと恐る恐る舌で触れてくる。
指を舐るという意図せぬ艶かしい行為に、陣内は頭に血が上りそうになるのを堪えた。
含まれた唇の柔らかさ、口の中の温かさに微動だにできない無骨な指がちゅ、と軽く吸われる。
「上手いな、どこで覚えた?」と戯れで言おうとした一言を陣内は呑み込んだ。
灯代は戯れなど出来ない娘だという事は、この自分が一番知っているというのに。

「なおりましたか……?」

返事の代わりに、濡れた指は今し方まで捕らえられていたその唇をなぞった。
間もなく奪われた唇を、すぐに灯代は陣内から奪い返した。
激闘で全ての力を失い、一度は帰天したタタラ陣内が再び灯代の元に還って来た時、生気を分け与えるため初めて自分から口付けた時と同じように。
真っ青な空が見える九重楼の最上階で、復活したばかりで希薄な陣内の実体が存在感を得るまで、灯代も満身創痍だというのに何度も何度も口付けたのだった。
元々、召喚主と仲魔という関係以上にお互いを想っていたが、あの騒動を乗り越えて二人の絆は一層強くなった。
一線を越えるのに葛藤していたのはむしろ陣内の方だったが、遅かれ早かれ、こうなるのも自然な事だったのかもしれない。

(あすかの奴、「彼女も君に『お前の全てが欲しい』なんて熱い告白されるのを待ってると思うよ!」とか知ったような事を言ってきたが、あいつやはり召喚主に手ェ出してるんだろうか……ほとんど犯罪だよな……)

自分の腕の中で身を硬くしている灯代に、楽にしてろ、と声をかけ、陣内はもう一度唇を重ねた。
口付けする間にも陣内の指は休まず、灯代の髪をさらさらと梳く。
刀を振るうたびに赤い髪が流れるようだった先輩サマナーの姿を思い出し、あのぐらい長さがあれば髪がお布団に広がってきっと綺麗だろうな、と羨ましくなる。
鋭い反面脆さを抱えた彼女が、自分と同じ位に初心だとは灯代には思いもつかない。

「……何を考えてる? 灯代」
「もっと、髪、伸ばしておけば良かったかなと」
「俺はこのぐらいが好きだ」
「ふふっ、ありがとうございます、お世辞でも嬉し……」
「これから床入りする相手にお世辞なんか言うかよ」
「もう、陣内様……」

囁くような睦言に加え、口付けと衣擦れの密やかな音が互いの耳を心地よくくすぐった。

事を始める前にすみずみまで身体を洗い、陣内のために装いながらも、こんな土壇場で今更どうにもなるものではないのに、自分の身体が相手にどう見えるかばかり気になってしまい、灯代はどきどきする反面いたたまれない気持ちだった。
一応膨らむ所は膨らんではいるが、同年代の女子サマナーの面々と比べると自分のはどうにもささやかで、つまらない体型にしか思えない。
年頃の娘なら誰でも同じように悩むものだが、今の灯代にはそんな些事を考える余裕はもうなかった。

「ふぅ、あぁ……」

耳飾りを外した耳朶に軽く歯を立てられ、灯代の首筋から腰にかけてぞくぞくとした妙な感覚が走る。
こんな所を噛まれて気持ちいいなど想像もしておらず、初めて受ける愛撫に翻弄されるばかりだった。
くすぐったいがそれだけではなく、陣内と触れ合う部分がどんどん熱くなっていくようだった。
早くも汗ばみ始めた肌が、薄い下着に透けそうなほど紅潮していた。

「灯代」

熱を持った耳朶に、陣内が低く囁く。
名前なんて何度となく呼ばれているのに、初めて聞いたような響きだった。
はい、と返事しようとした寸前、開いた背中に伸びた指にブラのホックを外され、胸が外気に晒されるひやりとした感覚があった。
どうしようと思う間もなく、ベビードールの肩紐もするりと脱げ落ち、動悸が収まらない心臓の真上に熱い掌が重ねられる。
量感こそ慎ましいがやさしい曲線を描く膨らみは、その掌にすっぽり収まってしまい、灯代の動悸はいっそう激しくなった。
初めて男に触れさせるその胸を、陣内は無遠慮に揉みしだくのではなく、掌の熱で温めるように優しく愛撫する。
その手つきに、決して手荒な真似はされないと安心する灯代の身体からは徐々に力が抜けていき、いまだ恥じらいながらも、行為を受け入れつつあった。
無防備なうなじに、首筋に、何度も口付けが落とされるたび、身体の芯から蕩け出しそうな気持ちだった。

「ん……はあぁっ……」
「お、気分出してきたな」

燃えるような吐息を唇から漏らす、灯代の可愛らしい反応にタタラ陣内は喜色を浮かべた。
その熱い指先は相手のあらゆる箇所を知ろうとするように動き、的確に弱みを見つけ出していく。
戦いと鍛錬で生傷の絶えない肌なのに、痛ましい程に柔らかく瑞々しかった。

「あ、んんっ……!」

触れられる前からもう桜桃のように色づいて熟れていた先端を陣内に捉えられ、灯代は思わずはしたない声を上げてしまった。
甘美な刺激がきっかけになったように、素肌にさっと朱が走り、細い指は堪らず布団を掴む。
他愛なく燃え上がってしまった灯代をからかうでもなく、陣内は導いていった。
やがて最後の一枚も剥かれ、しなやかな曲線を描く腰つきが露わになる。
生まれたままの姿にされた灯代はいまだ着衣の陣内の腕に縋り付いた。

「じ、陣内様、待ってっ」
「どうした? まだ怖いか」

初めて受ける濃厚な愛撫に眼を潤ませながらも、灯代は自分ばかりされるがままなのを良しとせず、健気とも負けず嫌いとも言える一面を発揮した。

「私も……何も知らないわけじゃないですから、陣内様を良くして差し上げたいんです……」

この一言にはさすがに陣内も眼を丸くした。
相手を悦ばせようとどんな知識を仕入れてきたのか知らないが、初陣でいきなり実践しようとするのも無謀というか大胆というか、良くも悪くも一生懸命な灯代らしかった。

「う、うむ、しかしそういうのは経験も大事だからな、ひとまず次まで楽しみにとっておくか」

妙に渇いた喉で唾を飲み下しながら、何とか取り繕う陣内は内心では今にも暴走しそうな情欲を抑えようと必死だった。
灯代が初々しく奉仕する様を思い浮かべてしまい、数百年もご無沙汰だった身にはいささか刺激が強かったのだ。

(全く、生娘のくせにとんでもない事を言いやがる……)

灯代の肢体を布団に横たえ、「しばらく天井の染みでも数えていろ」と照れ隠しに冗談半分で言いながら、淡い翳りに覆われた最も秘められた箇所へと触れた。
柔らかな襞の間へ浅く潜り込む男の指に、灯代の裸身が緊張と恥じらいに強張る。
まず濡れた感触で指を迎えた女の器官は、すでに相手を受け入れる準備ができている事を伝えてきた。
自分がどれだけいやらしいか知られてしまったようで、灯代は顔を覆いたくなるほどだったが、指先がとろりと蜜の糸を引く様を見て陣内は満足げな笑みを浮かべた。

「わ……私の、ここ……変じゃないですか?」
「変? ちゃんとこうして濡らしててどこが変だと言うんだ?」

他人と見比べる事などない箇所だけに気になって、灯代は心配そうに聞いたが、陣内の返答はあまりに明け透けなものだった。
露骨な言い草に真っ赤になる灯代だったが、陣内は灯代の身体が女として良好な反応を示しているのが嬉しく、濡れた指で柔襞の内側をなぞる。
甘い蜜で満たされ、綻びかけた花びらの間から小さな蕾を探り出されると、もう灯代は声を抑える事ができなかった。

「ここも、立派に感じてるじゃねぇか」
「あっ、あ……っ!」
「だが、まだお前に気はやらせんぞ」

無骨な指での繊細な愛撫は、日頃の慎みも忘れさせるほど灯代を昂ぶらせた。
昇り詰めそうになるたびに指遣いを止められ、巧妙に焦らされる。
耐え難い甘い疼きにほっそりした腰が布団の上で跳ね、その無意識の媚態は陣内をいたく悦ばせた。
天井の染みを一つ一つ数えるような余裕などとてもなく、玉鋼のような強い意志を持つ娘はいまや陣内の腕の中で身も心も溶かされ、十六歳の乙女の肌を燃え立たせていた。

「あぁ……ふぅ……もぉ、だめっ……」

灯代の藍色の眼は情欲に濡れ、あどけなさの残る顔は薄暗い中でも分かるほど紅潮していた。
その肢体の上に覆い被さる陣内も、気付けば眼帯以外何も身に着けておらず、重ねた肌から互いの熱が生々しく伝わってきた。
特に、柔らかな下腹部にじかに押し当てられている熱の塊が気になって仕方なく、好奇心からそれを恐る恐る確かめてみた灯代は息を飲んだ。
……幼い頃、父と風呂に入った時のぼんやりした記憶を手繰り寄せたが、その時見たものはこんな風ではなかった気がする。
固まっている灯代の様子に気付き、驚かせてしまったかと懸念した陣内は声をかけた。

「男は皆だいたいこうなるものだ、怖いものではないから安心しろ」
「そ、そうですか」

灯代は一応納得したが、まだ気になるのかちらちら見ている。
怖いものどころか、今から灯代を悦ばせるためのものなのだが、何せ数百年ぶりなので、主人の意向以上に張り切ってしまうのも無理のない事だった。

「さぁて、もう観念しろよ、力を抜いて楽にしていろ」

布団に背を預けたまま、しなやかな脚を左右に広げられてあからさまな格好にされた。
これから何をされるか悟り、さすがに豪胆な灯代も少し身震いしたが、陣内の口調は笑みを含んでおり恐ろしくはなかった。
華奢な身体を陣内の胸板に圧されながら、灯代は精一杯の気持ちを告げた。

「陣内様……初めから、覚悟はできてますから、どうか……」

そう言う灯代のあまりに真摯な眼差しを受け、陣内は溢れるほどの愛しさと少しの罪悪感に、胸を刺されるようだった。

「灯代……!」
「っ、うぅ……!!」

突き刺されるような、引き裂かれるような痛さだったが、それでも我慢できないほどではないと思い、灯代は陣内に全てを任せ、悲鳴を押し殺しながらも身体から力を抜くよう努めた。
どんなに潤ってほぐれてはいても、初めて身体を開く以上難儀するのは仕方が無い事だが、時間をかけて徐々に二人の熱は溶け合っていく。
タタラ陣内が数百年ぶりに男として満たされたのと同時に、灯代もまた生まれて初めての痛みと共に女になった。
全力疾走したように心臓は破裂しそうで、体中汗に濡れ、息をするのも苦しいぐらいの灯代だったが、胸の中はそれを上回るほどの暖かい気持ちで満たされていた。

「……もう、いっぱいだ、分かるか灯代」
「聞かないで下さいっ……」

奥の奥まで埋められているのを自覚し、灯代は堪らなくなって陣内の大きな肩にしがみついた。
しかしこれで契りが終わったわけではなく、陣内はなるべく負担をかけないよう遠慮しながら事を進めていく。
柔らかな肉を内側から押し拡げられる圧迫感に悩まされながらも、灯代の中で何かが生まれつつあった。
むず痒いようなくすぐったいような、思わず声を上げそうになる感覚は陣内が身動きするたびに次第に鮮明になり、さっきまで苦しげだった灯代の吐息は艶かしい色を帯び出す。

「んっ……んっ、なんだか……あぁ……」

ゆっくりと掻き回され、繋がったところから秘めやかな蜜音が立つのを恥じらいながらも、灯代の頬は自然に火照り始め、今度は辛さのせいではなく汗が滲み出した。
突き込まれる硬い肉に粘膜が馴染み、柔軟に受け入れている事が自分でも分かった。
反応の変化に気付いた陣内は、灯代の顎に手をかけそむけた顔を正面に向けさせた。

「まだ痛いか?」

その寄せられた眉が、涙に潤んだ瞳が、痛みのせいだけではないと知りながら、陣内は灯代をまっすぐに見つめてわざと尋ねる。
こんなふうにした原因は目の前の男神だったが、一番愛しい相手に何もかも晒け出したこの上なく恥ずかしい様を見られ、灯代は顔から火が出そうだった。
それなのに恥ずかしいのが嫌ではなく、この方に全て見ていてほしいとさえ思ってしまう。

「そんな……もう……分かっておられるくせに……」

仰向けになっている灯代の動悸に合わせるように、まだ窮屈な柔襞が熱い肉を絶えず締め付けてくる。
陣内が試しに深く腰を入れてみると、可愛らしい喘ぎと共に灯代の顎が上がり、それでも濡れた藍色の眼は視線を逸らそうとはしない。
相手の眼を見つめながら交歓に溺れる灯代は、艶めいた唇を物欲しげに開き、汗の玉が浮かぶ胸を荒い息に上下させ、陣内の背筋が震えるほどの色香を醸し出していた。

「やぁ、あっ……奥まで、きてるっ」

荒々しくも優しく揺さぶられ、灯代の柔らかく蕩けた内を熱い疼きが苛む。
いつしか、より深い抽送をねだるように、押し広げられるままの灯代の腿は陣内の腰をしっかりと挟み込んでいた。
この気丈で純情な灯代に夢中で求められている事に、かろうじて陣内を戒めていた理性の一片までも溶かされてしまいそうだった。

「陣内様、もっと……!」
「もっと、何だ? こうして嵌めてほしいのか?」
「んっ、ふあぁ……いいの……! ふぁ、あぁぁ……!」

さっきまで処女だった灯代の乱れように、陣内も箍が外れたようで意識せず卑語を口にし、遠慮を忘れて腰を使う。
濡れた襞々を余す所なく擦り上げられ、これ以上ないほど深く突き入れられる。
激しい摩擦に火傷しそうな情交の中、灯代は切ない声を上げてとうとう果ててしまった。
初々しい締め付けに、突き上げる陣内の方も限界を迎え、堪えていたものが堰を切って溢れ出す。
陣内が息を詰めた一瞬後に、胎内を力強く穿っていた昂ぶりがびくりと痙攣し、熱く滾る生命の奔流を惜し気もなくぶち撒ける、その全てを灯代は最奥ではっきりと感じ取った。
仲魔とサマナーとして日頃生気を分かち合っているせいか、共通した火の属性を持つ身のせいか、お互いが気をやる一部始終さえも合わせた肌を通して伝わってくるようだった。

「ふぅうっ……」
「あ、あぁ……陣内様の、熱いぃ……!」

サマナーとして、月の満ち欠けに影響するバイオリズムを把握するため、毎朝几帳面につけていたデータが思わぬ所で役に立ったのは有難かった。
誰かと契ったとしても、その種が根付かない期間。
それが心から望む相手だとしても、母になるにはまだ早過ぎる灯代には重要な事だった。
今がその時期だと陣内にあらかじめ告げていた灯代は、初めて身の内に男の精を受け、その熱さに身を震わせていた。

(こんなにたくさん……お腹の中、いっぱいになっちゃう……)

満足感と心地よい疲れが微睡みを誘い、灯代はうっかりするとそのまま意識を手放しそうだったが、繋がったまま陣内の逞しい腕に身体を引き起こされ、はっとして眼を開けた。
相手の膝をまたいで抱き合う格好にされ、戸惑う灯代に陣内はにや、と悪戯っぽい笑みを見せた。

「もう一度できそうか? 灯代」
「え……!?」
「火がついてしまってとてもおさまらん、覚悟しろよ」

初めての情交の熱も冷めないうちに連戦を挑まれ、灯代は慌てたがおずおずと陣内の首に細腕を回し、了承の意を示した。
それに気を良くした陣内は赤みを増した灯代の唇を貪り、受け入れたままの腰を労わるように撫で下ろす。
自分の中に収まったものに再び力が漲りつつあるのを感じ、解放された灯代の唇から熱い吐息がこぼれた。
瞼に透ける朝の光を感じて眼を覚ました灯代は、同衾する陣内の腕を枕にしていた事に気付いた。
髪も解けて乱れるにまかせている陣内の寝顔はとても心地良さそうで、どんな夢を見ているのかと灯代は微笑ましくなった。
素肌が寄り添う幸せな温もりに包まれながらも、朝から胸の高鳴りに眼が冴えてしまってとても寝ていられない。
そっと布団から身体を起こすと、大事な処が火傷でもしたようにひりひりするのを感じたが、それ以外は気力も体力も充実して不思議に身体が軽かった。
人ならぬ者との交接によって、互いの生気を循環させる秘術などは知るはずもなかったが、灯代は昨夜の事を思い出し、陣内からじかに生命力を分けてもらったような気がした。

「……それにしても、初めてであんなになっちゃったなんて……ああどうしよう、私、変なのかも……」

思い出すほどに身も心も溶け合うような濃密な一夜で、あの後も自分から何度も陣内を求めてしまったのだった。
後悔など考えられないぐらい幸せだったが、今になって恥ずかしさがこみ上げてくる。

「確かに、昨夜のお前はえらく情熱的だったな……あんなに搾り取られるとは思ってもいなかった」
「ひゃあああ!! お、起きていたんですかッ!?」

隣で太平楽に寝ていたはずの陣内がいつの間にか眼を覚ましているのに気付き、灯代は頓狂な声を上げた。
昨夜はあれだけ愛し合ったというのに、いやだからこそ意識してしまってまともに陣内の顔を見られない。
どんな神術なのか、瞬く間にいつもの装束を身に纏って髪をみずらに結った陣内は、いつまでも裸でいると風邪を引くぞ、と灯代に浴衣を投げてよこす。
昨夜の情事が嘘だったようなあっけらかんとした態度で、灯代が少し口惜しくなった時、陣内は何かを思い出したように振り返った。

「そういえば、昨夜お前に言ってなかった事があった」
「え? 何ですか?」
「愛してるぞ、灯代」
「……知ってます」

照れ臭そうにそっぽを向きながら、とても幸せそうな微笑を浮かべる灯代を、タタラ陣内は思い切り抱き締めた。

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