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奇譚小函―きたんこばこ―

R-18 二次創作テキストサイト

俺屍サマナー

KNOCKING ON HEAVEN'S DOOR(R-18)


春先の庭で鶯が鳴く声がしたが、障子も襖も締め切った和室の中には届かなかった。
もし鳴き声が届いていたとしても、室内に篭る二人にはお互いの囁く声しか耳に入らなかっただろう。

「灯代さん、どうすれば、いいの……?」
「えっと、まずはそっと優しく触って下さいね」

布団の上で、生まれたままの姿で身を寄せ合っている二人の少女。
片方は長身で手足が長く、片方はまだ成長途中といった感じの小柄な体躯をしている。
赤と青の瞳、青みがかった長い髪と短い赤毛、大理石のように白い肌と小麦色に日焼けした肌、何もかもが対照的だった。
灯代と呼ばれた小柄な少女の方は、そっと長身の少女の乳房へ手を伸ばす。
小さな掌にとても収まりきらない量感だったが、灯代はたわわな膨らみを無遠慮に掴むのではなく、円を描くように柔らかく撫でさする。
その頂点ははかなげな桜色で、強く摘んだりしてはいけないようなものに思えた。

「同じように、やってみて下さい」
「こんな感じ……?」

灯代と同い年の長身の少女、天(はるか)は、自分のものよりは大分控えめな膨らみを白い掌で包み込む。
小さいながらも弾力のある瑞々しい乳房を、真似をするように撫でられ、灯代は肯定するように頷いた。
今日の天は呉服屋の娘らしく、桜の花びらが流水紋に散りばめられた春らしい振袖を着ていた。
すらりとした肢体に映えていたその着物は帯を解かれ、布団の横の畳に重ねられていた。
せっかく天と会うのだからと、灯代の方も今日はミニスカートや短パンではなく着物姿でお澄まししていたが、こちらも同じく天の着物に混じって脱ぎ捨てられている。
深緑地に色とりどりの手毬が描かれた柄は、季節を問わず着られるからと、仕立てる時に天が一緒に選んでくれたものだった。

「んん……」

天の吐息に甘さが混じり、素肌がしっとりと桜色に熱を帯びていく。
着物姿の時は日本美を形にしたような姿の天だが、今あらわになっている細すぎる位の手足と、長身の割には驚くほど華奢な身体の中でそこだけ豊満な双乳は、アンバランスだがやはり美しかった。
……こうして二人が少女同士で奇妙な戯れに耽っているのには、それに至る一応の理由があった。
灯代は以前、曽祖父に連れられて着物を仕立てて貰いに呉服屋を訪れ、その時店の手伝いをしていた天と知り合った。
お互い同年代の少女という事もあり、なおかつ魅力ある同性に入れ込みがちな灯代の性格もあり、もっと仲良くなりたいと思っていたが、その機会はすぐに来た。
今度、反物を渡しに鬼首家に行った時に灯代さんと少しお話してもいいですか、と天から連絡を受けた時、灯代はタタラ陣内から不審がられるほど舞い上がってしまったものだった。
それが今日の事で、彼女に見立ててもらった手毬柄の着物姿で出迎えた灯代を見て、天は桜の花が綻ぶような微笑みを見せた。
和室で緑茶とお菓子を楽しみながら二人の少女は他愛ない話に花を咲かせ、このひと時がいつまでも続けばいいと灯代は思った。

「天さんは彼氏とかいるんですか? 誰か好きな人とか」
「ううん、まだ誰とも付き合った事はないんです」
「ああ、格好いいお兄さんがいつも一緒にいるから、そこらの男の人じゃどうしても見劣りしちゃいますね」

天の表情が僅かに翳ったのに気付き、灯代は何かまずい事を言っただろうか、と少し気になった。
彼女の双子の兄の密(しずか)とは顔を会わせた時にちょっと挨拶しただけだが、天と二人でいる所を見て、素敵な兄妹だな、と思ったのだった。

「一応……好きな人はいるけど、大事な人は作れないの、すぐ駄目になってしまうから……」

あまりに哀しげな表情だったので、灯代は思わず天の手に自分の手を重ねていた。
灯代の手よりは大きく、武器を取り戦う者の手だったが、それでもか細く頼りなく感じたのは錯覚だったろうか。
天の声色は穏やかだったが、それゆえに立ち入る事を言外に拒んでいるようで、彼女がそんな風に考えるに至った事情を灯代は聞けなかった。

「好きな人と付き合う事になっても、どうせそうなってしまうなら……」

……大事にされるより、いっそ道具みたいに扱われた方が、気が楽かもしれないですね。
そう言う天の横顔は穏やかなままだったが、それだけに秘められた孤独の片鱗を感じ、灯代は眉を曇らせた。
こんなに綺麗で優しくて、妹の事を理解してくれているはずの兄もいる天が、どうしてこんな哀しい事を口にするのか分からなかった。
過去に自分のせいで『大事な人』を失った事があるのだろうか、それが天の内面に陰を落としているのだろうか、と灯代は憶測したが、天にわざわざ尋ねて辛い思い出を掘り返す事は出来なかった。

「……そんな事ないですよ、天さんを大事にしてくれる人はきっといますよ」

天の手に重ねられていた灯代の手は、着物越しでも優しい丸みをもつ彼女の肩を労わるように抱いていた。
困ったように微笑む天を見ていると居ても立ってもいられなくなり、灯代はどうすれば天の抱える辛さや哀しさを解きほぐせるのか、せめて少しでも軽くしたいと切実に思った。
ふと、一つの方法を思いつき、おずおずと提案してみる。

「あの、だったら……天さんに『大事な人』ができた時のために……どんなふうにするか、一緒に準備してみませんか?」

誰かとのため、というのは一種の方便だったが、灯代としては大真面目だった。
予行練習ですらない真似事だとしても、天と触れ合う事で少しでも彼女を知り、孤独な心に寄り添いたかった。

「どんなふうに……?」
「身体のどこが気持ちいいかとか……自分で試して知っておくと、いいですから」

変な事を言っていると思われないか、と灯代は今更ながらどきどきしたが、天は少し考えるような素振りの後、小さく頷いた。

「じゃあ、灯代さんの好きにしてくれて、いいですよ……? 私で、よかったら」
「ううん、天さんと一緒に気持ちよくなりたいんです」

捨て鉢ともとれる天の言葉に、灯代は首を横に振って答えた。
天の身体をうんと優しく扱う事で、自分は大事にされているのだと天自身に分かって欲しかった。

まだ一人で着付けのできない灯代は天に手伝って着物を脱がせてもらったが、自分で提案した事とはいえ裸を見られるのは少し恥ずかしかった。
とはいえ、帯できっちり締めた着物姿のままでは肌に触れにくいし、まずは自分から脱がないと話にならない。
美しいが窮屈な帯の締め付けから解放されて、灯代は大きく息をついた。
天の方は慣れた手つきで自ら帯を解いたが、襦袢の下から覗いた素足に灯代は意外なものを見た。
すらりと伸びた天の太腿から足首にかけて、横に切られたような傷がいくつも縞状に刻まれていた。
彼女もサマナーとして戦いに身を置く以上、負傷は日常茶飯事だろうが、明らかに人の手でつけられたようなその傷に灯代は目を見張る。
なまじ肌理の細かい綺麗な肌だけに、赤く残った傷痕は余計に目立って痛ましかった。

「大丈夫ですよ、痛くはないですから」

傷痕に注がれる視線に気付いたのか、むしろ心配する灯代の方を気遣うように天が言う。
天の抱える陰と、この普段見えない傷痕は何か関係があるような気がして、灯代は脚に刻まれた赤い傷痕を何度もさすった。
もう大丈夫だから、と天に子供を諭すように優しく言われても、灯代はそうせずにはいられなかった。

「……天さんは、綺麗だなぁ」

ぽつりと呟いたその言葉は本心で、痛々しい傷があってもやはり灯代の眼に天の姿態は美しく映った。
着物姿でいると目立たないが、丸々と張り出した双乳は細い身体とは不釣合いな位で、驚くほどの量感を誇っていた。
大きい胸で悩んでいる友人がいるにも関わらず、自分もこの位あったら、とつい灯代は考えてしまう。

「いいなぁ……私の胸も天さんぐらい立派でなくても、もう少し……」
「小さくても、灯代さんは可愛い女の子ですよ」
「……もう」

嫌味の無い天にそんな事を自然に言われると、少し照れ臭かった。
布団の上に二人で横たわり、気持ちいい所が分からないから教えてほしい、と言われ、灯代は自分の経験に照らし合わせてやってみる事にした。
よく知っている武骨な手での繊細な愛撫をなぞるように、頭の中で夜毎の営みを思い出しながら、天の柔肌に触れていく。
自分がされて気持ち良かった事の全てを、そのまま天の身体に実践するように。
灯代は決して焦らず、まずは緊張をほぐして身体を温める所から始めた。
すぐに胸や秘処といった敏感な場所をまさぐる事はせず、真っ直ぐな髪や滑らかな背中を撫でながら、首すじや耳朶に何度も触れるだけのキスをする。
くすぐったそうにしていた天だったが、次第に表情は神妙になり、灯代が唇で弄んでいる耳朶もほんのり染まり始めた。
魔除けのピアスを着けた灯代の耳朶にも、見よう見まねで同じ事をしている天が小さく囁いた。

「……灯代さんは、耳をこうされると気持ちいいんですか?」
「え、うん…… 気持ち、いいです……」
「そう、知らなかった……他にもいい所って、たくさんあるんですか?」

天の何気ない疑問に、灯代は首から上を見る間に紅潮させた。
確かに、自分の気持ちいい所を天に試しているが、相手にそれを余す所なく知られるわけなので改めて恥ずかしくなる。
耳朶もうなじも、乳房も脇腹も膝の裏も、外から見えない隠れた所も、いい所を天に全て知られてしまう。

「……うん、いろんな所にあるんです、だから天さんも気持ちよかったら教えて下さいね」
「今……耳が……」
「え? 耳……?」
「耳が、変な感じで……息がかかると、ぞくってして……でも、嫌じゃないです」

そう訴える天の声は僅かな色香を含み、紅い眼を少しだけ潤ませていた。
はっきりした快感はまだ無くとも、だんだんと身体が温まり、内側に火が点き始めているのだと灯代は知った。
至近距離で混じる二人の吐息の温度が上がり、互いの胸へと手が伸びるまで時間はかからなかった。
それぞれ大きさも形も違う乳房を遠慮がちに撫で回していたが、掌の熱が肌に移るにつれ、色づいた先端がつんと勃ち上がって健気に主張し出した。
色素が薄い天に対し、灯代の方はやや赤みが強く食べごろの果実を思わせる色合いなのも対照的だった。
いかにも敏感そうな天の桜色の突起がとても可愛らしく思え、灯代は羽が触れるようにごく軽く、指の腹で突付いてみる。

「くぅ……んっ」

思わず小さく声を漏らした天の反応に、灯代は嬉しくなり他の所にも範囲を広げようとする。
ふと、眼に焼きついた脚の傷痕が気になり、大丈夫と言われたもののそこに触れるべきか迷った。
愛撫の最中だというのにちらちらと余所を見ている灯代に気付いたのか、天が少し不満げに囁いた。

「そんな傷より、私を、見て……?」

灯代の小さな身体を強く抱き寄せ、語尾も消えないうちに唇を深く重ねてきた。
今し方まで触れていた天のたわわな丸みが灯代のささやかな胸に押し付けられ、互いの乳房が柔らかくつぶれる。
天がキスもまだだったら、と思い、やっぱり初めての相手は好きな男の人がいいだろうと遠慮していた灯代だったが、思わぬ行動にさすがに意表を突かれた。

「ん……っはぁ……」
「ふぅ……っ」

唇の隙間から忍び込んできた柔らかく薄い舌に絡め取られ、灯代も夢中で応える。
二人の少女は抱き合いながらまるで理性が痺れたように互いの唇を夢中で貪り、くちゅくちゅと濡れた音を響かせる。
それに合わせるように、丸々と豊満な乳房と小ぶりで瑞々しい乳房が押し合いへし合いするにつれ、先端のぽっちりとした乳首が擦れ合った。

「うぅんっ、ん……くぅ……!」
「んふっ…… ふぁ……あぁ!」

感度の良さを競うように、二人は張りのある乳房をくりくりと擦り付け合い、重ねた唇の間からくぐもった声を上げながらもどかしい快感を得ようとする。
思わぬ所で気持ちいいやり方を見つけた天だけではなく、日頃陣内に可愛がられている灯代までも初めて体験するこの乳房合わせの虜になっていた。
敏感な乳首同士は優しく擦れ合うたびに感度を増し、指での愛撫とはまた違う快感を生み、互いの感じている様だけではなく、胸の奥の激しい鼓動までもじかに伝わってくる。
とろりと糸を引いて濡れた唇が離れた時、二人の息は荒く、乳房の間には汗の粒が光っていた。

「はぁっ、はぁ……」
「天、さん……こんなの、はじめて……」
「私も……変なの、体中むずむずして……」
「あは……おんなじですね……」

どちらからともなく、もう一度唇を求めながら裸身を寄せ合う。
布団の上に流れる髪や、上気した柔肌から匂い立つ天の甘い香りに夢心地になりながら、灯代はそっと相手の手を取り、自分の脚の間へと導いた。

「大事なところ……いいの?」
「嫌でなければ、触ってみて欲しいです……」

天はしなやかな指を伸ばし、自分よりも小柄な少女の秘処を恐る恐る探ってみる。
淡い恥毛を掻き分けられ、その奥に隠れた肉の合わせ目に静かに潜り込んでくる感触に、「んっ」と灯代は息を詰めた。
自分で思ったとおり、そこはもう粘膜の縁まで潤んでいるのが天の指先で分かった。

「すごい、灯代さん、こんなに濡れてる……!」
「い、言わないで下さいっ」

濡れた指の間に蜜が糸を引く様をまじまじと見つめられ、いつも落ち着いた印象の天に感嘆の声を上げられて灯代の頬は真っ赤になった。
灯代もお返しとばかりに天の締まった太腿の付け根に指を忍ばせる。
薄絹のような手触りの下生えに守られた花園を手探りで灯代が見つけると、柔襞の間で指が泳ぐほどとはいかないが、確かに蜜が滲み出していた。

「天さんも、なかなかですよ」

恥ずかしい気持ちにさせられた分、灯代は少し意地悪く囁き、先程と同じ要領で「気持ちいい所」がどこか手ほどきしていく。
互いの秘処を探り合いながら本人達は大真面目だが、傍から見れば倒錯的としか言いようがない構図だった。

「こうやって、上の方に指をやると……ちっちゃいのが指先に当たるの、分かりますか?」
「は、はい」
「そこを……突付いてみたり、優しく擦ったりすると、もっと悦くなるんです」

秘密の悪戯の仕方を拙く説明する灯代の声は、興奮を抑えきれず上擦っていた。
灯代は天の身体に直接教授し、天は灯代の身体でそれを実践しようとして指を遊ばせる。
一糸纏わぬ美少女同士が戯れているのはこの上なく淫靡だったが、互いに昂め合う初めての体験に一生懸命な様は、どこか初々しく可愛らしいものだった。

「こ、ここも……灯代さんの気持ちいい所……」
「ん、天さんっ、上手です……やっぱり、素質があるんですね、ふあぁ……!」
「灯代さんは、誰かに教えてもらったんですか……? それとも、自分で見つけたんですか?」
「いやぁ、そんな事……! だめっ、言えません……」
「お願い、私だけに教えて……? あ、んんっ! そこ、指……やあぁっ」

上達していく天の指戯につられ、灯代の指の動きも次第に大胆さを増す。
気持ちの上ではまだ恥じらいが残る二人だったが、今にも溢れそうな秘処は絶え間ない刺激を求めている。
熱っぽく蕩けた粘膜の間で相手の指がにゅるにゅると蠢くたびに、堪らず腰が揺れてしまうのを止められない。
締め切った和室の中は二人の少女の発情した匂いが篭り、熱と喘ぎで満たされていた。

「灯代さん、私……あぁ……もう、何だか……」
「いいですよ、天さん……」

初めて体験する深い悦びに戸惑う天は、うわ言のように灯代の名を口にする。
丹念な愛撫の甲斐あって、充分過ぎるほど濡れた天の花園は物欲しげに震えており、今ここに男の人のを突き立てたら……と思い、その淫靡な想像に灯代は一人で身体を熱くした。
天の中はさぞ温かく蕩けるような感触で歓待されるだろうと思ったが、いくら濡れてはいても相手に経験があるか分からない以上、例え自分の細い指でも傷つけてしまいそうで挿れるのは躊躇いがあった。
実際の所、天は全く男を知らないわけではなかったが、灯代は繊細な器官に指を埋める事はせず、もうじき開花しそうに膨らんだ蕾を慈しむように濡れた指先で可愛がる。

「わ、私、やだ……これ、何……こわい……」
「大丈夫ですよ……」

上り詰めそうになるその感覚を何と言い表せばいいか分からない天は、上気した裸身を震わせ閉じ合わされた睫毛から涙を零れさせる。
空いた片方の手を縋るように強く握り締められた灯代は、天を繋ぎ止めるようにしっかりと握り返した。
やがて、全身を貫かれるような初めての感覚が迸り、天は声にならない声を上げて果てた。

「はぁ……はぁっ、はぁ……」

どんな過酷な修行や実戦でも経験がないほどに消耗した天は、指一本動かせないままでただ荒い息を弾ませていた。
桜色に紅潮した頬を幾筋も伝っている涙を、灯代はそっと指で拭った。

(最後まで、いってくれたんだ……)

自分の手で天に気をやらせたというその事実に、灯代の胸は嬉しさと誇らしさと、少しの照れ臭さで一杯になった。
天がまだ涙に濡れた紅い眼をうっすら明け、上体を起こして覗き込む灯代の顔を見上げる。

「気持ち……良かったんですね」

笑みを浮かべてそう聞く灯代に、天は先程のあまりに激しい感覚を快感と受け止めていいのか躊躇うようだったが、やがてこくり、と小さく頷いた。
くったり脱力した裸身を布団に預けたままで、隣に横たわる灯代に腕を伸ばしてぎゅっとしがみついた。

「身体……震えるの、止まらない……」

涙声で訴える天に、灯代は自分からも腕を回してそっと抱擁を返す。
この可憐な願いをしりぞけるはずもなく、灯代は天の乱れた髪を指で梳きながら、震えがおさまるまでずっと抱き締めていた。
ほんの数分とも、長い時間が経ったとも思える中、汗がひいて身体が冷えてきても、寄り添う互いの温もりがいとおしく二人は離れる気になれなかった。

「天さん、もう大丈夫ですか?」
「うん……初めてあんな事になってびっくりしたけど、もう落ち着いたから」

苛めて泣かせたわけではないが、初めての余韻が引いてようやく泣き止んだ天に、灯代はほっとして声をかける。
良かった、と涙が乾いたその頬に触れるだけのキスをすると、そっと腕をほどいて身体を離した天が、耳元で囁いた。

「今度は私が、灯代さんの事を気持ちよくしますね……」

確かに、途中から天を上り詰めさせる目的だけに集中していたせいで、灯代の方はまだだった。
とはいえ相手を気持ちよくした事で精神的には充分満足だったが、天としても彼女なりの矜持があるらしく、このままで終えるつもりはないようだ。
脚を開くよう促され、言われるがままの体勢をとった灯代に、天のしなやかな肢体が覆い被さってきた。
互いの脚を絡め、たおやかな腰をゆっくりと落として、音もなく身体を重ねる。

「あ……!」

まだ熱を持って濡れたままの秘処同士が、二人の折り重なった粘膜が密着した。
初めて体験する艶かしい感触に驚き、灯代は上擦った声を漏らした。
上になった天は恥じらいに耐えるように目を瞑ったまま、灯代と同じく未知の感覚に細い身体を震わせている。

「は、天さんっ、これって……んっ! い、いいっ」

少しでも身動きすると花びらがよじれ、蕾が擦り上げられてぞくぞくする快さが背筋を走る。
それが全身に飛び火し、時間を置かれていたにも関わらず灯代はたちまち燃え上がった。
自分の指で同じように灯代を悦くするよりも、先程の乳房合わせのようにお互いが気持ちよくなれる方法を天啓のように思いついた天だったが、予想以上の反応を間近で見て天自身も再び昂ぶりつつあった。

「灯代さん……っ! んっ、んんぅっ……!」
「ひぁあっ、駄目ぇっ! それ、だめっ……よすぎるの……!」

天がぎこちなく腰を使い出し、蕾と蕾が、一番気持ちのいい所が擦れ合うのに灯代は堪らず嬌声を上げた。
自分から動いた天の方も、灯代と比べて慣れていない分、初めての刺激に腰が砕けそうになっている。
二人の恥丘を彩るそれぞれ色の違う翳りがもつれ合い、その奥で互いの女の器官が熱烈な口付けを交わしている。
恥毛が肌に張り付くぐらい溢れ出す蜜のおかげで、ますます摩擦は滑らかになり、二人の腰が揺れるたびに絶えずいやらしい音を立てる。

「熱い……灯代さんの、燃えてるみたい……」

こんなに濡れているというのに、思わず天が漏らしたその言葉に煽られた灯代は、自分の熱を相手に分け与えるように腰をせり上げ、ほころびた割れ目をくちゅっ、と強く押し付けた。
灯代を気持ちよくしようと一生懸命だった天もさすがに堪えきれず、甘美な摩擦にしなやかな背中を仰け反らせる。
上になったり下になったりしながら、互いの痴態しか目に入らない二人は夢中で口付けを交わし合った。
相手を責めるように、慰めるように、快楽を分かち合うように小麦色と象牙色の肢体が絡み合い、ほっそりした腿の付け根で蜜にまみれた花びらが擦れ合って色付きを増した。

「くぅ……もうだめっ、先に……灯代さん、ごめんなさいっ……」
「いいの、天さんっ……私も、一緒に……!」
「私、また……おかしく……あぁ……っ!」

先に音を上げたのはやはり経験の浅い天の方だったが、初めての行為という点で変わりない灯代もまた追い上げられていた。
密着した粘膜が互いの熱で灼け、膨れ上がった快感が最も敏感な蕾ではじける。
天の二度目の絶頂に重なり、灯代も限界を迎えた。
お互いが果てる一部始終を密着した器官でじかに感じ、長く濃密な余韻を味わいながら、二人の少女は汗と熱が染みた布団の上にくずおれた。

汗やら何やらにまみれた身体を、灯代が用意した温かい湯とタオルで拭い、相手と自分の着付けを済ませていつもの顔に戻った天は、穏やかな表情で灯代に礼を述べた。

「今日は、ありがとう」

そう言われても、何も知らない天を自分の無茶に巻き込んだようなものなので、何だかむず痒い気持ちの灯代だった。
冷静になると顔から火が出るような真似だったが、身体はこれ以上ないほど近付いて一つになれたとはいえ、こんな自分が天の内部を少しでも変える事は出来ただろうか?と灯代は気がかりだった。

「灯代さんにいろいろ教わっても、まだ分からない事はあるけど……自分の事に決着がついたら、また、こうして一緒に……」
「うん、待ってます。 その時は……天さんの『大事な人』とも会ってみたいな」

灯代の精一杯の行為に対する天の真心に、気持ちがぽっと温かくなった。
柔らかな外面に秘められた天の強さを見て、いつか、きっと、そんな時が来るだろうと灯代は確信した。
着物姿の二人の少女は顔を見合わせて微笑み、どちらからともなく口付けて、また照れ臭そうに微笑んだ。
部屋の障子越しに、温かな春の陽が傾いていった。

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